「あは、どう? 気持ちいい? 気持ち良いでしょ?」
「ぐっ、あがっ……」
ぐちゃ、ぐちゃと言う水音と、ぱんぱんと肉同士が押し付けあう音が狭い部屋の中に響く。
その音は紛れもなく男女の睦み事の音だった。
博之にのしかかる彼女の肉つぼはどろどろと熱く、とろけきってねっとりと肉棒を締付ける。
そのうごめきだけで射精へと追い込まれそうだというのに。さらに激しく彼女は腰を動かしていた。
右に、左に振りたてたかと思うと、上下に激しくシェイク。
深く子宮口をぐりぐりと押し付けたかと思えば、引き抜く寸前まで動かして先端だけを激しく責めなぶってみせる。
変幻自在に男の弱点をを知り尽くしたそれは、熟練の娼姫のようで。
しかし、彼女の秘所からどろりとこぼれる蜜交じりの赤い破瓜の血が、それを裏切っていた。
「ふふ、また硬くなってきちゃったね。ほら、いっちゃえ!」
「〜!?」
どぷ、どぷ、どぷ。
甘い掛け声とともに、もれ出る精液。
びくびくと痙攣する膣壁に搾り取られたそれは、子宮へと吸い込まれていく。
快楽によるものか、声にならない叫びが、喉から漏れ出す。
もう既に幾度となく射精していたというのに、肉棒が萎える気配はない。
むしろ、犯されるほどに彼の肉棒は大きく隆起し、より深く、重く、快楽を味わえるように変化していくかのようだった。
「……ふふ、いいころあいかな」
にっこりと、天使のごとき笑いを見せながら真澄は下腹部を撫でる。
幾度となく彼の射精を受け入れたその部分は、まるで妊婦のごとく膨らんでいた。
無論、子宮という器官は精液だけでそこまで膨らむ筈もない。
『何か』がそこに居る証だった。
「そろそろ、産まれるみたい」
ずるり、と言う音とともに肉棒が引き抜かれる。
引っかかった先端部が抜かれると快楽とともに、一瞬の名残惜しさが博之のにごりきった思考を埋め尽くす。
目を動かすと、きらきらと輝く蜜が粘膜と粘膜の間に橋を作り出していた。
『何』が産まれるのかは言うまでもない話だった。
その正体を彼女は説明していたのだから。
「あはは、アタシがママになるところ……見てくれるよね? アタシと博之が愛し合って、百合子が産まれるところ
なんだから」
ぎゅっと真澄は目を瞑ってから、その股を開く。
子宮の奥で育ちきったそれをこの世に産み落とすために。
直後、すさまじい熱と快楽。
そして苦痛が彼女の矮躯に襲い掛かってきた。
「−−ぐ、あ……あはは……っ。 あははははははははははははは! あがっ……あはははっ!!!」
ベッドの上でのた打ち回る彼女は、泣きながら笑っていた。
めりめりと拡張される苦痛が。
膣壁を刺激される快楽が。
なり続ける二つの心臓が。
彼女を壊れたような笑いへと誘っていた。
「ます、み」
「兄貴……?」
博之は、ぼんやりとした思考のままーー彼女の手を握っていた。
骨折するほどに強く、強く握り返されて痛みで顔をしかめる。
けれど、離さない。
「兄貴は、妹を、守るものだろ……?」
かすれきったはずの喉から漏れた言葉に。
「……ありがと」
真澄は、笑った。
かつて、二人きりで過ごしていたころの。自然で、素直な笑みだった。
「−−あ、ああ、あああああああああああああああああああ!!」
そして、『彼女』が産み落とされた。
※ ※ ※
「うぐっ、はぁっ……はぁ……はぁ……産まれたぁ……」
彼女の子宮から出てきたのは、赤子だった。
いや、正確には赤子のようなもの、であった。
『彼女』は子宮の中に居たというのに、長く伸びた黒髪と、整った目鼻立ちをもっていた。
そしてーーその肌は、植物のように緑色に染まっていた。
「うふふ、ありがとう。真澄。私を産んでくれて」
「あは、は……」
呆けた表情の真澄に向けて、彼女はにっこりと微笑む。
その笑顔はかつて失った彼女の友人にそっくりだった。
「百合子……?」
「ええ、そうよ。 一度死んで、こうして二人の愛を受けて、私は蘇ったの!」
博之の問いに答える彼女の表情は、記憶の中のものから変わらないままだ。
状況さえ違えば、変わらない日常をすごしていると錯覚してしまうほどに。
「本当にあの種は本物だったのね。 ーーこうして私の願いをかなえてくれたのだもの」
「ねが、い?」
「ええ、私の願いよ」
百合子は緑色の蔦を伸ばし、真澄を抱きかかえた。
ぽん、と彼女の髪の間から白い花が咲く。
百合の花だ。
「私は知ってたの。博之が本当は真澄のことが好きだってこと」
「う……あ……」
つつ、と真澄のほほを蜜が伝う。
むっとむせ返るような、花の香り。
むせるほどの粒子で、目の前すら霞みそうになる。
「でも、二人は兄と妹で、つながれない。 その隙間に入ったのが私だって
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