『オーガなキミに恋をして―――続』
「そんで、あたしに話ってのは何だ?」
「え、えっとですね………」
その頃、オーガにお姫様抱っこされたアレスは魔物達が居た場所から100m程離れた場所まで連れて来られ、そこで漸く彼女に解放されていた。
辺りを照らしてくれる光は頭上から降り注ぐ月光のみ。もしアレスだけがこの場に残されたら、真夜中の森の暗闇によって心細さを感じたり、とてつもない不安に襲われていただろう。だが、目の前に居るオーガのおかげで心細さは無くなっていた。後者の不安は……別の意味で膨れ上がっていたが。
それはさておき、オーガに此処に来た目的を問われたのでアレスは素直に答えた。目的は勿論のこと、そして彼女達に何を求めているかを。
全てを聞き終えた彼女はオーク姉妹のように笑ったり、馬鹿にしたりはしなかった。只、その表情は興味も大して無い様子でもあった。やがて全てを話し終えると、オーガは話を纏めて聞き返した。
「要するに……あたし達にあんたの街に来るなって事だな?」
「は、はい。申し訳ありませんが、街の人々は貴方達を恐れています」
「ふーん……何で?」
「何で……と言われましても……」
そこで彼の口が止まった。何でと言われても答えは一つしかない。いや、それ以前にその答えは太古の昔から今に至るまで変わっていないのだ。その答えとは―――
「あたし達が魔物だからか?」
「…………」
口を閉ざしてしまった“人間”のアレスの代わりに、“魔物”であるオーガが口を開いて答えた。それに対してアレスは沈黙してしまう。そう、彼女の言葉は正に正解であった。
太古の昔から魔物と人間は交り合う事無く、戦いに明け暮れる関係であった。例え魔王が変わってもそれは続くものだと―――アレスはそう思っていた。彼だけではない、他の人間も同じ事を考えているだろう。
だが、次の言葉にアレスは思わず呆けてしまったに違いない。
「お前、魔物が人間を必要としているって知らないのか?」
「……………え?」
正直この瞬間、この魔物は一体何を言っているのだと思ってしまった。魔物が人間を必要としている……そんな馬鹿な話があるのだろうか。それでは今までの歴史が何だったのだと逆に聞きたくなってくる。否、流石のアレスも聞かずにはいられなかった。
「あの……魔物が人間を必要としているってどういう意味ですか」
「ああん? 本当に知らないのか? 口で説明すんのも面倒だから……とりあえず来い」
「え、来いって……うわ!?」
またしても持ち上げられたと思いきや再びお姫様抱っこでオーガの胸の中にポスンと収まるアレス。恥ずかしいが、自分が何を言っても無駄だろうなと何となく分かっていたので下ろすように訴えはしなかった。知らずと己の顔が赤くなってしまうのは生理的に仕方がないと言えよう。
「しっかり歯を食い縛ってろよ。舌噛むかもしれないんだからな」
「はい……」
オーガの有難い助言を耳にしつつ、アレスは自分を抱えて走り出した彼女の体にそっと己の体を預けてみた。
体全身に伝わってくるのは彼女の温もり、そして力強い心臓の鼓動。それらは人間と大して変わらぬ生きている証しであり、生命を持った生き物である事を教えてくれていた。
それを肌身で体験し、彼は思った。どうしてこのような温かな魔物と人間は争い合う関係にあるのだろうかと……。
(もし争いが無ければ自分はきっと彼女に―――)
そこで抱いた想いは胸の奥底に仕舞い込んだ。今はまだ明らかにする事は出来ない。言ってしまえば彼女に拒絶されそうな気がして……。何より先程の言葉が彼の心の中に突き刺さっていた。
(あたし達が魔物だからか?)
あの時、どういう言葉を返したら良かったのかアレスは分からなかった。しかし、彼女の口に言わせてしまったその一言が彼の中で大きい後悔となっていた。
彼女達を恐れなければ、あの言葉を強く拒否していれば……こんな苦しい思いをしなかっただろうか?
それでも過ぎてしまった時間は取り戻せず、彼の中に後悔の念ともしかしたらという淡い想いは燻り続けていた。
オーガが連れて来た場所は先程の魔物達が屯していた場所だ。未だに松明の炎は灯されており、松明の近くからは人間と魔物の声が聞こえていた。
そう、声である。会話ではなく単なる声―――それも極上の“甘い声”が。
「あはぁ……気持ちいいよぉ!」
「凄い! あなたのおちんちん凄く良いぃぃ!」
「ふぁぁぁ……とろけるぅ……子供チンポがお尻とマンコにぃ……」
魔物達が屯していた場所は最早森の中と呼ぶには程遠く、肉欲が渦巻く乱交の場と変わり果てていた。
ワーウルフの少女は青年の上に跨り腰を振り下ろす度に甘い悲鳴を上げ、小柄なゴブリンは筋骨隆
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