はいはいはいはいっ! もう毎度おなじみになったが、今回も始めちゃおうか! この街で──(中略)──第六弾だあ!!
はい、そこっ! もう団長終わったんだから消化試合だろ〜、とか言うな! まだ二人残ってるだろ〜!?
まあまあ、皆まで言いなさんな! 分かってる、分かってるってぇ、何だかんだと言って皆やっぱり話の続きが気になるんだろう? だったら黙って聞いていきやがれ!
金貸し、暗殺者、スパイ、魔術師、騎士と続き、教国の鉄砲玉は残すところ後二人! その内の一人は、もうこの間話した時にも出てきた団長の副官だ! 今回の主人公はその男だよ!!
団長はまともだったが、一応六人目だってその範疇だ。ちょいと不真面目な部分もあるが、それだって良識の範囲内って奴だ。断言する、こいつは悪人じゃあない。
だけど悪人じゃないって事と、そいつが良い奴かどうかってのは、全く別の話なんだよなぁ。
今回はそんなお話……。『暴食の勇者 〜あるいは異国の人熊猫の話〜』
はてさて、この勇者は何を食べ尽くすのだろうね……。
「小熊のミーシャ」、それが男のあだ名だった。
別に特別体格に恵まれていた訳ではない。とある小さな町で生まれたその年唯一の男子だった彼を、隣人らが「まるで熊の子だな」と言ったのが始まり。同年代の女子と比べて体格が優れているのは当然で、別に見上げるような大男に成長した事もない。
ネタをばらせばそんな程度のこと。大人と呼ばれる年齢になった今、小熊と呼ばれるのは少々抵抗がある。だが悲しいかな、同業たちの間では既にそのあだ名で通ってしまっている。
ミーシャという男は大変に不真面目な奴である。勤務中でも昼寝をかまし、ふらっと姿を消したかと思えば買い食いに興じ、月に一度「六人」揃って開かれる会議にも堂々と遅れて来る、そんな輩である。素行不良という言葉で片付けるには、どうにも責任感に欠けた奴なのだ。
加えて彼自身、他の連中のように突出した能力に秀でているわけでもない。勇者になる前は兵士だったが、それでさえ安定した暮らしが出来そうだからという、如何にも現実を知らない田舎者丸出しな考えで入隊したに過ぎない。勇者で副団長と言えば聞こえは良いが、実際は普段から何の仕事もしていない穀潰しである。
無能とか懦弱とか以前にやる気そのものが微塵も無い、万年冬眠を決め込んだ穴熊のような男……それがミーシャである。
「……くぅ……ぐぉ〜……」
今日この日、ミーシャはいつものように居眠りしていた。すぐそばには報告書と格闘するミゲルがいるのに彼を手伝うどころか労いの言葉一つ無く、甲冑を着込み立ったまま眠るという器用な芸当を披露していた。
何のことはない、ミゲルが率いる騎士団の連中と夜通し博打をしていただけだ。負けが込んで熱くなりすぐに止められず、そのまま懐が素寒貧になるまで賭けてしまった。結局丸儲けしたのは胴元だけで、向こう十日は節約しなければならなくなった。
「人間、自分の生まれと賽の目はどう頑張っても変えられない。これは真理だよ」
そんな気持ちよく立ち寝をしていたミーシャの鼓膜を打つ声があった。書類整理を一段落させたミゲルが話しかけてきているが、安眠を妨害されたミーシャにとっては雑音でしかなかった。
「はあ、そっすか」
「なんだ、その間の抜けた返事は。いけないよ、教国の威信を背負った私達がそんなことでは。休息は取っているのかね」
「ええ、まあ、つい今も」
「嘘を吐きたまえ。明らかに疲れた顔じゃないか」
「いや、これはあんたが長話するから……」
決して自分が博打に入れあげていたからとは答えないあたり、彼もそこそこイイ性格をしている。ミゲルもミゲルでそんな事情を知らないはずはないのに、さも納得したように頷いて見せている。
本来副団長にはトーマスが就く予定だったのだが、何故かミゲルの一存でミーシャが選ばれた。彼曰く、「一人ぐらい不真面目な者がいるほうが気が引き締まって良い」とのことだが、その効果のほどは推して知るべしである。
「うーん、最近君も私に付き従って働き詰めだったからな。ちょうどいい、気分転換も兼ねて少し出てくるといい。聞けば街の広場にサーカス団が来ているとか。入場料は手間賃込みで私が出しておこう」
そう言って気前良く貨幣の入った袋を机に置く。膨らみ具合からして飯代も含まれているのだろう、太っ腹なことだ。
「遊んできてもいいってんなら、そうしますよっと。でもいいのか、リーダー一人で」
「問題ない。私を誰だと思っている?」
「はいはい。そんじゃ、お言葉に甘えて遊んできますかね」
袋を受け取ったミーシャはいそいそと部屋を出ようとする。心なしか足元がスキップを
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