― Y13訓練所 裏庭 ―
〜 悪りぃ、書類を提出してたら遅れちまった! 〜
〜 ん?ああ、そうさガンプ。とうとう放校処分になっただけさ。まぁ、あのふざけた先公の顔を見ずに済むからいいけどな 〜
〜 おいおい!泣かなくていいぜ!賢いアタシはちゃんと次が決めてるから心配すんなよガンプ! 〜
〜 な?!アタシは身体なんか売る気はないぜ!よく考えろよ、嫁になって永久就職なんてアタシの柄じゃないだろ? 〜
〜 ちゃんとした所さ。アタシをスカウトした上司も話せる奴だしな、おまけに滅法喧嘩も強いし。ホント、雌にしておくのが惜しいくらいだぜ 〜
〜 なぁ、ガンプ・・・〜
〜 ・・・一緒に来ないか?こんな糞みたいなとこを辞めてさ! 〜
〜 心配すんなよ!今まで以上にバカやれるトコさ! 〜
「一緒に行こうぜ!ドラゴニア竜騎士団特殊工兵隊へ!」
カッカッカッ!
竜騎士団本部の廊下を歩く、ドラゴニア竜騎士団特殊工兵隊の隊員であるワイバーンのタロン・クロフォードの後に若葉が続く。隊員であるドーラも一緒だ。
「ここだ」
タロンの声に若葉が見上げると、重々しい鉄のドアには「ドラゴニア竜騎士団兵装技術科」とあった。
「ここは主に竜騎士団の兵装の開発、実験を行っている工廠だ。・・・・入るぞ」
「・・・はい」
ガチャッ!
鉄製の扉から物々しい印象を持つが、工廠の中はごくごく普通の内装だ。もっとも部屋の内装に似つかわしくない仄かに漂う機械油やオゾン臭、分解された拳銃やホルマリン漬けの何かしらの生物がテーブルに置かれていたが。
「ドラゴニア竜騎士団特殊工兵隊、タロン・クロフォードだ。箱の封印解除を頼む!」
「大声出さなくても聞こえているよタロン・・・・」
奥の机に置かれた本の山が崩れる。中からは眼鏡をかけた黒髪の青年が顔をあげた。
「おいおい里桜。また徹夜だったのか?」
「僕を心配してくれるのかい?タロン」
「なに、お前が倒れると色々面倒だ。特に特殊工兵隊の爆雷はココでしか調整はできないからな。そういえば奥さんのダリアは何処にいる?」
「ああダリアなら、6号フライトスーツを着込んで空の散歩さ」
「相変わらずだなダリアは」
「そう言ってやるなよタロン。ダリアはドラゲイ帝国時代、骨折が治らず飛べなかった事で処分されたんだ。機械の手を借りているとはいえ今は自由に飛べる、これほどうれしいことはない」
― 「ドラゴンゾンビ」のダリア ―
彼女はドラゴニア竜騎士団兵装技術科に籍を置くドラゴンゾンビであり、飛行能力を「アシスト」するフライトスーツの専任装着者だ。
ドラゴンゾンビであるダリアがなぜ竜騎士団に所属しているのか?
それを語るにはあまりにも時間がない。だがいずれ明かされるだろう、今はその時ではない。
「あの・・タロンさん」
「ああ済まない。彼は里中里桜技術少佐だ。この工廠の責任者で、わかると思うが彼は門の向こうの国出身だ」
「初めまして里中里桜です。えっと・・・」
「若葉響です。よろしくお願いします」
「若葉さん、事情はわかったよ。でも・・・・・」
里桜がタロンを見る。
「彼女も覚悟している。それに私と君で、封印解除に必要な幹部二名の同意は満たしている」
「だが・・・・」
若葉の決意は固い。
「仕方ない。見てもらってそれから判断してもいいだろう。ちょっと待っててくれ」
里桜が何の変哲のない壁際に静かに立った。
「ドラゴニア竜騎士団兵装技術科、里中里桜技術少佐が命ずる!ストラクチャー解除!!!」
ピシッ!ピシシシィ!!
ガラスに罅が入るように「空間」が崩壊していく。そして、そこに壁はなく広い研究室が広がっていた。
「認識阻害結界と位相差バリアの応用。極々たま〜に技術を盗もうと侵入する連中がいるんでね。少々大袈裟だが必要なことだ。タロン、それと若葉入ってくれ。あとドーラは留守番」
「え〜〜〜!ドラちゃんも入りたいよ!!!」
「この研究室は魔法警戒レベル3だ。若葉とタロンは大丈夫だけど・・・・・。ドーラ、君が重ね掛けしているソレを解除するなら問題ないけどね」
里桜がドーラを見る。
「これはドラちゃんのアイデンティティなのに!!!いいよもう!ここでダンスの練習してるから!!!!」
「助かるよ」
三人は研究室に入った。
「ッ!」
若葉は身体全体が押されるような感覚に声をあげた。
「門の向こうでは位相差空間は門以外にはないからね。大丈夫、身体には影響はないよ」
ピピッ!
― 指紋及び魔力認証完了しました ―
「セントラル!封印指定物件イの5号を此処に」
― 了解しました ―
すぐさまキャンサーの触腕のようなハンドが伸び、奥から鋼鉄製の箱を掴んで中央
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