― ドラゴニア闘技場 ―
かつてのドラゲイ帝国時代、兵の軍事教練の一種として行われた騎竜同士の戦い。その舞台となった場所がこの闘技場だ。
竜と人間が手を取り合うようになった現在のドラゴニアにおいても、エンターテイメントの一つとして闘技場は残されていた。
もっとも、かつてのように竜や人がお互いを傷つけあうことなどはないが。
「・・・・どうしてこうなってしまったの?」
ホルスタウロスの女性「若葉 響」が傍らに座る伴侶である「斎藤 彰」に話しかける。
彼らの視線の先には二人のワイバーン。
競竜で名を馳せた名選手であり、かつてドラゴニア竜騎士団特殊工兵隊を率いていた「英雄」、クーラ・アイエクセル。
そして
クーラ率いるドラゴニア竜騎士団特殊工兵隊の一員にして彼女の妹分であり、夫のセシルを背に乗せコンビネーションを最大限生かした狙撃を行う「浮き砲台」と呼ばれたアーシア・エルデ。
部下であり
友人であり
背中を任せられる相棒であった二人
彼女達は運命の女神の数奇な導きによりこの闘技場に立っていた。
お互い譲れない想いを抱き、立場を超えた対等な「決闘」を行うために。
話はあのパーティの夜に遡る。
「・・・・・二人とも竜騎士団の掟は知っているわよね?」
竜騎士団を女王デオノーラより預かるアルトイーリスが二人に問う。
先程までの笑顔を見せていた彼女とは違う、竜騎士団長たるアルトイーリスの真剣な表情。
そして件の二人も既に「覚悟」を決めていた。
「掟って・・・・・?」
「若葉さん、私達竜騎士団はこのドラゴニアを守る軍隊でもある。軍隊というのは絶対的な統制と隊員同士の信頼がなければならない。弾は何も前から飛んでくるとは限らないのよ?」
アルトイーリスが若葉を見る。
「だからこそ、隊員間で揉め事が起こったら決闘で解決するのが習わしであり、・・・・絶対の掟よ」
「そんな・・・・!」
若葉達は飛行船フライング・プッシー・ドラゴン号からクーラを逃がした際に、アーシアや特殊工兵隊の隊員たちがどれだけクーラを大切に思っていたかを知った。だからこそ、その二人が「決闘」という結論を出したことに若葉は納得がいかなかった。
「クーラさん!アーシアさん!!どうして・・・どうしてそんな事を言うんですか!!。あんなにも・・・あんなにも大切に思っていたのに!!!」
「若葉・・・・わかってくれ。これは・・・アタシがアタシである以上、必要な事なんだ・・・・」
クーラが若葉を抱きしめる。微かにクーラは震えていた・・・・。
「アーシアさんも!!なんで・・・なんで!!!!」
「・・・・・私たちは掟に従い籠りの間に行く。若葉さんごめんね・・・」
「アルトイーリスさん、その・・・籠りの間というのは?」
「それはね彰さん。決闘に臨む隊員は伴侶がいるいないに関わらず、決闘の日まで籠りの間と呼ばれる独房で過ごすことになっているのよ。同じ条件で戦えるようにね」
魔物娘は伴侶を得るとその能力が底上げされる。故に伴侶がいるいないではその戦闘力も大きく変わる。その事実は若葉は痛いほどわかっていた。
二人は踵を返すとゆっくりと扉へと向かう。
止めなきゃ、そう思った瞬間若葉は動いていた。
「よすんだ若葉!!!」
彰が若葉を押しとどめる。
「彰くん放して!」
「・・・・落ち着くんだ若葉」
「二人の決意を汚すなら例え若葉さんでも容赦はしない・・・・」
見るとアルトイーリスが腰に佩用していた魔界銀製の大剣に手をかけていた。
「こんなの・・・!こんなの絶対おかしいよ!!!」
・・・決闘は両者の話し合いによりパーティーの翌日に決まった。
「どうしてこうなった・・・・・」
彰が一人、闘技場で頭を抱える。
「竜騎士団のアイドル!ドラちゃんだよぉ!!!」
フライング・プッシー・ドラゴン号でリサイタルを開いていた特殊工兵隊隊員であるドーラが例のヒラヒラアイドル衣装でMCをしていた。
周りを見渡すとパムムやチョコレーホーンの出店が開いていたりと、まるで縁日かお祭りのようだ。
「さあさ気前良く賭けなはれ!!賭け事は狂ったもん勝ちやで!!」
「やで?」
聞き覚えのある声に彰が振り返ると・・・。
「ちょ!何で京香さんがここにいるんですか!!!」
若葉達にドラゴニア行きのチケットを手配した刑部狸の京香が京香が賭場を開いていた。
「儲け話のあるところへは迅速に、がウチのモットーや!!」
京香が胸を張る。・・・・・・張る程の胸はないのだが。
「まさか、今回のことは全て京香さんが・・・・?」
傍らの若葉が疑惑の目で京香を見る。
「いくらワイでも友達を売るようなことはせえへんよ。まぁ、ドラゴニアの連中がウロチョロしてんは知っとったけど」
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