「・・・・・」
「・・・・・」
「ズズッ・・・」
厚生労働省 特殊事案対策課
薫とベルデッド、課長の朱鷺島が沈んだ表情でコーヒーを啜っていた。
時間は早朝と呼ぶには既に遅く、街はすでに夜明けを迎えている。
「薫ちゃん、奴さんの所持品に変なモノはあったの?」
薫が首を横に振る。
「あったのは個室マッサージのメンバーズカードとソープ嬢の名刺、アングラ系バーのマッチくらいさ。所持金もほとんどなかったぜ」
「僕の方は一応成果はあったよ。スライムのジュリちゃんが協力してくれてね」
「・・・課長、もしかして勝手にガサ入れしたんすか?」
薫が朱鷺島を怪訝な表情で見る。
「ははっ問題ないよ。僕は水道に詰まったスライムを助けに行っただけだし。それがたまたまヤツのヤサだっただけだし〜〜」
「収穫は?」
「例のデルエラパンツ爆弾だっけ?その設計図と日本に対するルサンチマンたっぷりの日記だけだよ。アイツこの国でテロを起こして貴族様になりたいんだってさ」
「ははっ!それは傑作だな。で、肝心の爆弾はどんなヤツだ?」
「見た目はただのアタッシュケースで、内部には例のパンツと医療用の精補給剤をそれぞれ円筒に入れたものが入っている。タイマー起爆式で時間になると円筒が割れて精補給剤とパンツの魔力が反応を起こして倍加した魔力が放出される仕組みさ」
「課長のことだから設置場所もわかってんだろ?」
「霞が関。偽装した運送会社のトラックで起爆する予定、だった」
「予定、だったってのは?」
「見つからないんだよ。トラックも押さえたしヤツの部下全員逮捕したんだけど、肝心の爆弾がサッパリ見つからないのよ薫ちゃん」
「つまり・・・・」
「ヤツは真犯人に精魂込めて製造した爆弾をまんまとかすめ取られたってことね。で、口封じされた」
「流石はベルデッドちゃん!うちの単細胞よりも頭がいいね」
「尋問の結果、デビルバグがその爆弾を運んだそうよ。報酬に男を一人差し出す約束でね」
「どうしてそれを早く言わない!関係省庁に連絡して・・・・」
「白い大きな丸いモノの上に置いてきたって言われても、薫さん貴方どこだかわかるの?」
「そうだよな・・・・デビルバグにそんなオツムがあるわけないか・・」
ビルの屋上は言うに及ばず、東京ドームを始め丸い巨大な建物は多い。それらをしらみつぶしに調べるのは骨だ。ヤツが黒幕に始末されたということは既に「下ごしらえ」は終えたと思っていい。
爆弾の行方もそうだが、薫にはどうしても気になったことがある。それはグランマがペイパームーンで指摘した爆弾の「影響圏」だ。東京都の半分しか影響がない魔力爆弾。テロリストは最小限のコストで最大の結果を望むものだ。これではあまりにもありきたりすぎる。
〜 考えろ薫!何か丸くて大きなもの・・・頭がパンパカパーンなデビルバグでもわかるもの・・・・ 〜
窓を見ると、朝日を浴びて飛行船が白銀の輝きを見せていた。
その雄姿を見る薫の中でピースが嵌まった。
「確か、転移門はリリムや高位の魔物が作った・・・魔力の塊・・・・そうか!」
日本を混乱させたいならヤツをわざわざ口封じする必要はない。
真犯人の目的は一国の魔界化じゃない、もっと大きい「テロ」だ。
「課長!飛行船の始発時間を教えてくれ!!」
「そりゃあいつも通り8時だけど・・・・」
壁に掛けられた時計は7時40分を指していた。もう時間はない。
「畜生!!ベルデッド行くぞ!!」
薫はベルデッドの手を引くと走り出す。
「課長は関係省庁と飛行船運行局に運航停止の連絡を!ヤツ、いや真犯人の狙いは日本じゃない!この世界全てを魔界へと変えることだったんだ!!」
薫が省の車止めに駐車されている全自動運転仕様のトヨタ・クラウンに乗り込む。慌ててベルデッドも乗り込んだ。
ベルデッドが乗り込んだのを確認すると、薫はセントラルAIに指示を飛ばす。
「目的地は門、飛行船発着場。公務員特権の行使を要請。安全走行無視の全速力で!!」
「ちょっと!薫さん説明して!!」
「真犯人の目的が分かったんだよ。真犯人は飛行船に爆弾をセットして門に突入させるつもりだ。門はいうなれば高濃度の魔力の塊、外地でもコチラでも安全装置は組み込まれているから暴走はない。でも転移する寸前で魔力爆弾を炸裂させたらどうだ?門は暴走して放たれた魔力は全世界を魔界化させてしまう」
「・・・車を止めて」
「え?」
「早く!!!!」
ベルデッドの迫力に薫がたじろぐ。
「停車せよ!」
薫がAIに停車を命じると、ベルデッドがドアを開ける。
「お・・・おい!今は急いで・・・」
「車じゃ遅いって言ってるの!!」
そう言うとベルデッドの身体が青い炎に包まれ、放たれたまばゆい
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