惚れたが悪いか ― ウツロカガミ ―

― Bar ペイパームーン ―

カウンター席で二人の女性がカクテルを楽しんでいた。

「でさ、リョウちゃんにネーム見せたらケツの中でションベンって無理ってダメ出ししたんだよ!」

背の低い少女が隣の背の高い女性に愚痴を漏らしていた。

「確かにそうだよ。アンタは男に夢見過ぎ。男は射精した後直ぐにションベンなんてできないんだから」

「でもさ、あのシーンは自分の部下を嬲って縛り首にした憎い将軍を雄奴隷に調教するのに必要な描写で・・・・」

「・・・・流石に50代のガチムチ爺さんをホモ奴隷調教ってハッキリ言ってグロ画像レベルだよ?分かってる?」

少女の名前は「立花深見」。
齢17か18ほどにしか見えない彼女だが、年齢は既にその数倍を超えている。
そう、彼女は「人間」ではない。
満月の光を写したかのような銀髪、赤い鬼灯のような瞳、雪のような白い肌。
不死者の国の貴族である魔物娘「ワイト」だ。
数年前、学業を修めるために「外地」から交換留学生として来日し、世界に誇る「書く兵器」保有国たる日本のサブカルチャーに毒された彼女は、学業を放り出し悪鬼ひしめく同人活動に手を染めた。
元々彼女にその才能があったのか、彼女がプロの漫画家になるのにそう時間はかからなかった。
彼女の代表作は「法衣を脱ぐとき」という作品で、魔王軍のリリムに誘惑された60代の法王がその誘惑に抗うために、騎士団長(こちらも60代)をホモレイプするという筋立ての作品だ。
その臭いまで感じるような描写から「蘇ったヤマジュン」とか「性転換した田亀源五郎」とさえ呼ばれている。
そんな彼女の目下の悩みは同棲している一人の男性のことだ。

「いっそのこと、実際に島崎に協力してもらったら?同棲してんだろ?」

「でも・・・・その・・・・」

深見が下を俯き、グラスの中のバノックバーン ― スコッチのトマトジュース割り ― を一気に呷る。

「・・・・・ヤッてないのよ」

「へ?」

「だ・か・ら!まだリョウちゃんとヤってないのよ、岬。フェラとパイズリはしたけど・・・・・」

岬と呼ばれた背の高い女性は、手元のショットグラスに入ったクレメンタイン・バーボンを一気飲みすると、それをチェーサーとして頼んだサミュエルアダムス・ボストンラガーで洗い流した。

「オーケーオーケー。お前たちは確か半年前から魔物娘専用のアパートで同棲してんだよな?で、なんでまだフェラしかしてないんだよ!」

「岬はリョウちゃんの男根を見たことないんだよ!あれは凶器だよホント!言い表すなら手垢のついたなんちゃってダークファンタジーの種付けゴブリンや孕ませオーク並みだよ!!」

「つまりは島崎のチンポに恐れをなして本番をしていないと・・・・・。アンタ、男舐めてる?」

「リュウちゃんを馬鹿にしてないよ!私が修羅場に入ったら文句言わずにアシしてくれるし・・・。終わったらちゃんとお礼にフェラしてあげるし」

「いいか深見。それを世間一般で都合のいい男っていうんだぜ」

「リュウちゃんを都合のいい男なんて・・・・」

「男なんて所詮はメスに種付けすることしか頭にない生き物なんだぜ?そんな男がフェラだけでホントに満足すると?」

「フェラだけじゃないもん!ちゃんとパイズリもするもん!」

「どっちも同じじゃ!」

正しくその通りである。

「でも・・・今更私からリュウちゃんに言うのは・・・その恥ずかしいし・・心の準備が・・私処女だし・・・」

この深見というワイトはかなりえげつないホモ漫画を描いているくせに「乙女」である。
おまけに結構な年齢であり(人間換算すればだが)、つまるところ「貴腐人」であるのだ。

「ったく!そういうのはちゃんと覚悟してから男と付き合えよな!」

「ちょっと岬!私はちゃんと・・・・!」

フィクションと現実は違う。
性に大らかな魔物娘であるとはいっても女性であり夢見る乙女でもあるのだ。
稀にこういうこともある。
最も毎回毎回燃える凌辱シチュエーション(ゲイにとってだが)について相談される身からすればたまったもんじゃない。
急に彼女を襲い始めた頭痛はバーボンのおかげだと岬は思いたかった。



月光に照らされたベッドルーム。
クィーンサイズのベッドの上では一人の少女が大柄な男性に跪いて、その熱く滾る肉槍を口内に咥え込んでいた。
ジュプジュプと少女の口に余るほどのモノを吸い上げながらも、その細い指はさわさわと彼の柔らかな肉袋を愛撫していた。

「ぅっうっふっぅ・・・この前のアシスタント代だよリュウちゃん」

少女は咥え込んでいた肉塊を口から引きずり出すと、鈴口をそのピンク色の舌でチロチロと刺激する。

「フッちゃん!もう・・・イッ」

フッちゃんと呼ばれた少女、立花深見は男の根本を強く握る。

「だめだよ
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