「・・・・・・」
沈んだ表情で場末の雑居ビルへと向かう一人のホルスタウロスの女性。
その後ろを一人の男性が静かに尾行していた。
女性の名前は「若葉響」。
そして彼女を尾行しているのは彼女の夫だ。
その表情に浮かぶのは困惑だ。
〜 若葉・・・助けてやるからな・・・・! 〜
彼女の夫の彰が自らの指から魔界銀製の指輪を外すとそれを展開し、ナックルダスターへと変える。
若葉が雑居ビルに消えるのを確認し彼もその闇の中に身を委ねた。
彼がなぜ探偵まがいのことをしていたのか、話は数日前に遡る。
― ベルデ探偵社 ―
所長であるベルゼブブのベルデッド三世が率いるこの探偵社は調査員が彼女一人しかいないのにも関わらず、依頼の達成率は群を抜く。
ブーン〜!
一匹のハエが彰に纏わりつく。
彰は咄嗟にハエを払おうとしてしまうが、此処でソレをするのはお勧めできないとココを紹介したグランマから教えてもらっていたので思い止まった。
「1号!クライアントに興味があってもじゃれてはいけないと教えたはずだがな?」
ベルデッドの声が響いた瞬間、「1号」と呼ばれたハエはそそくさと彰から離れる。
そう、この探偵社の調査員は「ハエ」だ。魔神であるベルゼブブの異名の一つには「糞山の王」というものがある。
彼女は職能として辺りのハエを自分の手足のように使うことができるのだ。
流石に、「ハエ」に尾行されていると普通の人間、いや魔物娘ですら思いもよらない。
故にどんな調査内容も1日もあれば大概のことは全て知ることができた。
「グランマから聞いているよ。奥さんを疑っているんだって?」
あの夜に感じた違和感。
それは日に日に強くなる。
そして・・・・彼はその違和感の正体について知ってしまった。
「薄い」のだ、若葉の母乳が。
毎日交わっている以上、母乳を濃く感じることがあっても薄くなることは今までなかった。
当然体調の問題もあるだろう。
だが、心に根付いた不安は彼を追い詰めていく。
若葉が他の男に身を委ねることなんてあり得ないが、それでも・・・・。
思いつめた彼はグランマに相談し、この探偵所を紹介してもらった。
「まあ、魔物娘が浮気はしないが、ホルスタウロスの母乳はそれなりに価値がある。因縁つけられて母乳を絞られることもあるな。アメリカでボロい商売をしていた魔物娘が最近摘発されたっけ」
「そんな・・・・!」
「調査料金は2万。結果は保険のダイレクトメールに偽装して送付するから安心して欲しい」
「お願いします・・・。」
彰は契約金を支払いベルデ探偵社を出た。
彼が探偵社を離れたのを密かに尾行させたハエ1号を通して確認すると、ベルデッドは徐に受話器を取った。
「ああ、アタシだよ、京香。グランマが言っていた通りにウチに来たよ。そっちの具合はどう?そう、じゃあそっちも嬢ちゃんに言い聞かせなよ?多少強引でもさぁ・・・」
受話器を置き、ベルデッドは懐から黒革のシガーケースを取り出すとその中からパンチカット済みの葉巻を一本取り出した。
彼女はその薔薇色の唇でコロナサイズの葉巻を咥ると、葉巻用のガスバーナーで手慣れた仕草で火をつける。
フィリピン葉巻のタバカレラ独特の堆肥に似た香りが執務室を包み込む。
葉巻に十分に火が回ったのを確認するとベルデッドは火口を契約書に押し付けた。
みるみる内に契約書が灰となっていく。
「これも渡世の義理ってヤツでね。彰くん・・・悪く思わないでくれよ?」
火に照らされ、ベルデッドは心底楽しそうに笑みを浮かべた。
「・・・・・・」
彰はゆっくりと慎重に進む。目指すのは雑居ビルの二階にある「ポンポコ回春堂」、いわゆるアダルトショップだ。
ベルデッドからの調査報告書には毎日14時頃に若葉が店に入っていく写真が収められていた。
はじめは若葉が店に行くのを止めることも考えたが、それでは肝心な大本がそのままだ。
ほとぼりが冷めた頃合いでまた若葉を狙うことも考えられる。
故に、彼は会社を密かに休んで、こうして若葉を追っているのだ。
調査書に店のオーナーは刑部狸の「高ノ宮京香」とあり、魔物娘であることは不幸中の幸いといえる。
しかし、それだからと言って若葉の身が安全であるとは限らない。
手足を縄で縛られ、その豊満な乳房に凶悪な搾乳機を装着させられた若葉。
「ゲへへ、今日は乳の出が悪いなぁ。そうや刺激を与えたろ!」
悪人顔の狸が取り出したのは全体にブツブツとしたイボを取りつけた小さな子供の腕ほどもあるバイブ。
「い・・・いや・・そんなのは・・・」
若葉の顔が恐怖に歪む。
「奥さん、こんなに熟れた身体をしててこれくらい飲み込めるでっしゃろ?」
狸がバイブのスイッチを入れる。
モーター音を響かせながらウネウネと蠢くバイブ。時折
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