黒牢 ― また会いましょう ―


私の旦那様の彰くんは幼馴染で結婚したばかり!
新婚早々に外地へ旦那様が単身赴任することになったり、勘違いした豚をリサイクルしたりとスペクタクルな日々を過ごしていた。
でも私は愛しの彰くんがいればいいの!
そう思っていたの・・・・・


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

今私たちはグランマの招きでペイパームーンへと向かっている。
今回の事で話があるって・・・・・。
あの後、一緒にお風呂に入ってからコッソリと彰くんの精の流れを調べてみた。
なんの不純物も交じってなかった。
つまりはあのランタン女とは何もなかった。
でも・・・私は彰くんを信じられない。

「・・・若葉、着いたよ」

「うん」

ドアを開くと、グランマがいつもの笑顔で私たちを迎えてくれた。

「ささっ!座って好きなカクテルを用意するわ。何がいいかしら?」

「僕はシルバーブリットを」

「私はドッグズノーズを」

「わかったわ少し待っててね」

グランマはそう言うとカウンターの奥へと消えた。

「ごめん若葉!!」

彰くんが意を決して私に頭を下げる。
彼女「夏樹伽耶」は本当に彰くんの遠い親戚であること。
弟と母を失い傷ついた彼女のために中学2年から一年ほど彼女の家で一緒に過ごしたこと。
彼女の傷が癒え、実家に戻る前日に彼女から告白され・・・・・その告白を断ったこと。
全てを話してくれた。

「あの日に別れてから一度も会っていないから軽い気持ちで会いに行ってしまったんだ。本当は若葉にも事情を話せばよかった・・・・そうすれば君を傷つけずに済んだのに・・・」

彰くんの目に涙が浮かぶ。
その涙を見て私の中の凝り固まったものが溶けていく。
その瞬間だった。
私の胸のペンダントがじんわりと暖かくなる。
その温かさは彰くんと初めてを捧げあったあの日のお互いの体温に似ていた。
何を意固地になっていたんだろ。
遠くから親戚が来たのなら一度くらいは会いに行くのは普通の事だ。
彼女が魔物娘へと転化していたなんて分かるわけがない。
全ては偶然だった。
そこに邪な考えなんてなかったんだ。
それを騙されたって・・・・。



勝手に怒って

勝手にいじけて

勝手に騙されたって思いこんで

ホント馬鹿みたい

いつだって彰くんは私を見てくれていた

いつだって彰くん・・・・・



「彰くん!!」

私は彰くんを抱きしめる。

「私こそごめんなさい!彰くんが一人で女の人に会いに行ったのが許せなくて・・・意固地になってしまって・・・・」

「僕はバカで・・・周りが見えなくて・・・結婚しても若葉に迷惑をかけてしまってばかり・・・・・そんな僕だけど一緒にいてくれますか?」

「ええ。私には彰くんしかいないもの」

彰くんとゆっくりと唇を重ねる。
私の手はそっと彰くんのソコへと触れる。
手のひら全体に彰くんの精を感じる。

〜 彰くんもうおっきしてる・・・もう我慢できない! 〜

「ちょっと!若葉!前・・・・」

彰くんが叫ぶ。

〜 もう彰くん!素敵なお嫁さんが盛っているのに! 〜

私は彰くんに体重を乗せて、そのまま・・・・・

「あら〜?此処はカップル喫茶じゃないわよ?」

見るとグランマがトレイを持って私たちを見つめていた。
表情こそいつもの笑顔ではあるが・・・目は笑っていない。

「「ごめんなさい!!」」



「もう出てきていいわよ」

若葉たちが店を後にした後、グランマが店の奥に声をかける。
店の奥から件のウィルオーウィスプ「夏樹伽耶」が姿を現す。
昨夜の禍々しい魔力は鳴りを潜めその表情は暗かった。

「貴方はあの二人を見てどう思うかしら?」

「とても・・・幸せだと思います・・・・そんな二人を私・・私・・・」

伽耶が顔を伏せる。

「ねぇアナタは本当に彰さんを愛しているのかしら?」

伽耶はハッとした表情でグランマを見つめる。

「貴方はただ幸せだった少女の頃に戻りたかっただけではないかしら?だからこそ、幸せだった子供時代の象徴だった彰さんを欲した」

「そんなこと・・・・!」

〜 違う! 〜

伽耶はそう叫びたかった。
だが、まるで喉がカラカラに乾きうめき声一つ出せなかった。
グランマはなおも語りかける。

「じゃあなぜ貴方は今になって彼に会おうとしたの?」

幸せな二人の姿を見て発作的に自殺したこと。
強い嫉妬で魔物娘へと転化してしまったこと。
そしてその嫉妬心から彼を襲ってしまったこと。
彼を真に愛しているのならできないことだ。
転化したばかりで「精」に餓えていたと理由はつく。
しかし、その行為の為に一人の女性を不幸にさせるところだったのは事実だ。

「私は・・・どうすれば・・どう償えば・・・」

不意に彼女をぬくもりが包む。
顔を上げるとグランマが彼女を抱きしめ
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