まだ月が見える、真っ暗な夜明け前。春の陽気を含んだ暖かい風も、
この時刻では薄気味悪い。
「ハァッ……ハァッ……」
息を荒げて、起きる。
また夢だ……あの夢だ。数日おきに見る、女性の夢。建物の屋上――
患者用ベッド――ナゾの女性。あの女性、本当になんで俺の名前を……
……?
「ああもう……鬱陶しい夢だ。寝起きが悪いにも限度があるだろう」
「ううん……おにぃさま?」
しのが目を開け、こちらを見る。
心配そうな表情で。
「ああごめん。起こしちゃったか?」
「大丈夫です……それでどうしたんですか?顔が浮かないようですが…
…」
「嫌な夢を、見ちゃってな」
《ねぇ芳樹》
《あなた、苦しいんでしょう?欲が満たされない毎日が》
《その有り余る欲を、私にぶつけてみたくない?》
「3〜4日おきにな、女の人が夢に出てくるんだ。同じ女性がな。その
女性が俺に言うのさ……『欲をぶつけてみたくないか?』と、誘うよう
な笑みを見せてな」
「その女の人は人間ですか?それとも魔物ですか?」
「魔物らしい特徴は…………なかったな」
「誰なんでしょうねぇ」
「誰だろうな……ん?」
しのの背中に目を移す。
「お前……尻尾増えたか?」
「へっ!?」
驚き、しのは自分の尻尾を見る。ふわふわの尻尾が2本、もふんと生
えていた。
「はうぅ……///」
「顔赤いぞ?」
「な、何でも無いです!何でも無いのです!///」
「そうか。ちょっと顔洗ってくる」
外に出ると、春真っ只中だからか中途半端に暖かかった。足早に俺は
井戸に向かう。
「ついに……生えちゃいました……」
尻尾をふわふわといじりながら、しのはため息を吐く。
「バレなきゃいいんですけど…………」
※ ※
おにぃさまが洗剤などを買いに街へ行ったので、私が家事を頑張りま
す。いつもおにぃさまを見習って、見よう見まねでできるようになり
ました。
えっへん。
「お布団片付けなきゃ……」
まず私の布団を四つ折りにして畳み、部屋の隅に寄せます。その次
におにぃさまのお布団を片付けるんです。
「はぅ……おにぃさまの匂い……♪」
おにぃさまの匂い……汗の特有の匂いがしのは大好きです。思わず顔
を埋めて匂いを堪能してしまいます。
今まではそれだけで済んだのですが…………
「はぁ……はぁ……
#9829;おにぃさまぁ…………
#9829;
#9829;」
身体がむずむずしてくるのです。
全身が熱くなって、頭の中がもやもやとしてきて――
「忘れ物忘れ物……って、しの?」
「ひゃ!?」
おお、おにぃさま!?
「忘れ物しちまって……しの、なぜ俺の布団に尻尾をブンブン振りなが
ら顔を埋めてんだ……?」
「おにぃさまの匂いが好きなのです♪」
「変態か。とっとと片付けろよ」
おにぃさまが外に行きました。同時に、また身体が火照り始めます。
しかも、さっきより強く。
「おにぃさまぁ……
#9829;だいすきですぅ……
#9829;」
匂いを嗅げば嗅ぐほど身体が熱くなり、かといって止められません。
結果私は、自慰を始めてしまうのです。
「あっ…………ひゃんっ
#9829;
#9829;んん…………
#9829;」
おにぃさまの匂いに全身包まれ、まるで抱きしめられているような感
覚が激しく興奮を煽り、愛液が比例して量が増していきます。
おにぃさまのお布団が私ので汚れてしまう……しかしその思考が、か
えって背徳となりさらに興奮してしまいます。
「おにぃさま……んんっ
#9829;はんっ
#9829;
#9829;私は、私は……
……」
『しのはいい子だよ』
おにぃさまはそう言ってしのを褒めてくれます。
心を込めて、言ってくれます。
でも…………
「私は……あん
#9829;いい子なんかじゃないです……おにぃさまの匂
いで発情してしまう、えっちな雌狐なんですからぁ……
#9829;
#9829;あっ、
ふあぁあんっ!!
#9829;
#9829;」
全身が震え、絶頂。ぐったりと横たわり、胸を大きく上下させます。
「はぁ…………
#9829;おにぃさま……」
ゆっくりと、目を閉じました。
※ ※
買い物袋を提げて帰ってくると、しのが俺の布団で眠っていた。
「しの……しの」
肩を揺さぶり、起こす。
「寝ちゃったのか?」
「おにぃさま…………ハッ!」
ガバッと起きて周囲を見る。そして自分の服がはだけているのに気づ
き、慌てて着なおす。
「今何時ですか!?」
「今は……14時
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