おにぃさまは何を取っても素敵な人です。それはしのが保証します。
最初は驚きの(いや本当に)出会いでした。なぜならしのはダンボール
に入っていたのですから。
親に会いたいなとは思います。しかし、どこにいるのか、まったく見
当がつきません。なぜなら私の住んでいた場所はこんな雪国と違うので
すから。
もしもしのの親が現れても、しのはおにぃさまと離れたくありません。
なぜならしのとおにぃさまは既に家族だからです。
当然おにぃさまはしのを最初に見たときは驚きました。でもおにぃさ
まはしのを厚く歓迎してくれました。「いっしょに暮らそう」と言って
くれたときは、本当に嬉しかったです。
おにぃさまはしのに料理を教えてくれました。最初は何もできず足を
引っ張ってばかりでしたが、おにぃさまが丁寧に細かく教えてくれたお
かげで、色々作れるようになりました。
どんな失敗も笑って許してくれて。
笑って、怒って、時には泣いて。
優しくて大好きなおにぃさま。
しのはおにぃさまを愛しています。たとえ何があっても。
ああ、この気持ちが伝えられたら…………
どんなに幸せなんだろうなぁ。
※ ※
「暑い……」
「暑いれふ……」
真夏。
死にたくなる暑さに負け、しのと俺は床に寝転がる。
「しの、窓を開いてるよな……?」
「開いてますけど風が入ってこないんです。はひぃ……」
スイカを切り分ける気力もない。起き上がるだけでも精一杯。氷枕も
15分でぬるくなってしまい、もうダメかと思った瞬間。
身体がひんやりとした感覚に包まれた。
「ふう、危ない危ない」
目を開けると、俺としのは水に包まれて浮いていた。
不思議なことに、呼吸もできる。
「こんにちはー、サバト・和泉町支部の勧誘員のスラシャですー。大丈
夫ですかー?死んでませんよねー?」
珍しい呼びかけに少し動揺し、間を空けて「ありがとう、助かった」
と返した。
「いやーびっくりしましたよ。勧誘で足を運んだ家の人が死に掛けてるん
ですから」
「君、随分軽く言うんだね」
「ああすいません、私の悪い癖です。でですね、今度この山のふもとに
ある根川町にサバト支部を立ち上げることになりまして、総括のアミナ
様のご命令で新規の信者を募集しているわけです。はい」
「すいません、俺信仰とかそういうのは……」
「いえいえ、強制はいたしませんから。ところで不躾な質問をしますが、
お2人は夫婦なんですか?」
ブハッ!!と、しのはお茶を噴いてしまった。
「そんな、ふ夫婦だなんて夫婦だなんて///」
「違いました?」
「そんなわけ……あります///」
「しの、落ち着いて。まあ一言でいうと同居しているだけですよ」
「そうですか、なら」
ぎゅっ……
立ち上がって、座っている俺の背中に抱きつき右耳を唇で挟む。
「ちょ……」
「今ならお試しできますよ?小さな女の子のミ・リョ・ク
#9829;こんなに小さな
胸も、ふにふにの肌も、未成熟な身体も、望むならいくらでも……
#9829;」
ヤバ、襲われる……!?
「おにぃさまから離れろー!!」
ものすごい勢いでしのがスラシャを突き飛ばす。不意の事態に対応で
きず、受身をとれなかった。
しかし初めて見た。しのが怒るところ。
「いいじゃないですか。付き合ってないんでしょ?誰のものでもないな
ら、私の行動は許されますよね?」
「付き合って無くても、しのとおにぃさまは家族なんです!好きで好き
で大好きで、言葉じゃ収まりきらないくらい愛してるんです!取られる
なんて、もってのほかなんですっ!!」
「………………」
スラシャはしばらく黙り、「ああなるほど」と言う。
「気持ちが先行しちゃって前に進めてないってことですか。じゃあ、仕
方がないですね。そこまでの愛を語られたら適いません」
しのの横を通り過ぎ、玄関に向かう。
「それじゃあ失礼しました。気が変わりましたら、いつでもおいでくだ
さい
#9829;」
扉が閉まる。
「しの、あのさ……」
「わ、忘れてください///今のは……そう!あの魔女を追い出すために
言ったんです!べ、別におにぃさまに言ったのでは……」
俺はしのを抱きしめた。
「嬉しい。めっちゃ嬉しい」
「おにぃさま…………」
※ ※
「グッモーニン!今日も暑い……な……」
富樫が暑苦しいテンションで現れた。
「「!!///」」
「お、お前ら……」
富樫に見られた…………
富樫に見られた!!
「す、すまない近衛!俺1時間後出直すから!」
「行くなぁ!行かないで
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