俺、近衛芳樹には恋人がいない。20代後半にもなっていないとか絶望的だと自負する。そんな俺をよそにまわりの友人たちは結婚ラッシュである。
ああ泣いたぜ?
枕濡らしたよ。絞れるくらい。
個人的に獣人型と結婚したいと考えている。元動物だから接しやすいし、それに俺は動物の尻尾が好きだから。つまり狙い目はイヌ科系統。稲荷、ワーウルフ、刑部狸etc.
結婚相手が友人をぎゃふんと言わせるほどの美人だったらなと考えると、思わずにやけてしまう。
そんな俺に幸せが訪れたのは、ある冬の日のことだった。
降り積もった雪。銀世界を見るのはここに住み始めて8回目。豪雪地帯に近いから積雪1メートルとかは全然脅威じゃない。でも天候が吹雪だと最悪。イエティの助けを借りなくちゃどうにもならなくなる。この村とイエティたちはかなり密接に関わっている。理由は村長の奥さんがイエティだから。
「…………」
もがり笛を聞き、小屋の窓を開ける。
「マジですかおい」
吹雪いてた。もう最悪。
お買い物いけないじゃんか吹雪クソテメェ。
とにかく暖炉に火を起こし寒さをしのぐ。そんなとき、扉がノックされたのだ。
誰だろう。え?いやちょっと待てよ。外吹雪いてますよ?最悪天候でお客さん?なにこれ恐い。とか思いつつ玄関の扉をゆっくり開ける(でないと扉が風で吹き飛ぶ)。
「あれ?」
誰もいなかった。もしかして近所の子供たちだろうか……こんな吹雪の中ごくろうさまと労いたくなったが、当然そんな手の込んだピンポンダッシュではなく、人の代わりにダンボールがあった。その箱には何も書かれておらず、何も貼られてないのを見ると宅配ではないようだ。とにかく絶対不動の如く、玄関前にずしりと、ダンボールは置かれていた
子供一人入れるくらいの、結構大きいやつが。
家に入れたわけだが、怪しすぎるダンボールの前に俺は座禅を組んでダンボールをにらみながら座っていた。
座禅って落ち着くからね。
「何が入っているのか以前に、誰が置いて行ったのやら」
ハーピーの運送業だって配送不可な天候だし……
とりあえず開けよう。中にデンジャラスなモノが入っていても座禅を組んでいるから恐くないし怯まない。
ダンボールの中を見る。
「デンジャラス!!」
中には狐少女が眠っていた。
大体10歳くらい……かなぁ。
そんな狐少女がダンボールの中できれいに丸くなって入っていた。
えーっと……どこのお狐様の子供なのだろう。髪の毛ふわふわ、ピコンと長い狐耳、もふもふの尻尾が一本。美少女にもほどがあるくらいに可愛い寝顔を見ていると、なんだか幸せな気分になってくる。
ともあれ寝違えそうな角度で首が曲がってるので、起こさないよう慎重にダンボールから出し、暖炉の前に寝かす。
すやすや眠る狐少女の頭を撫でながら、考えを巡らせる……一応言っとくけど襲う算段とかじゃないからね?この子が目覚めたらどういう対応すればいいのかということを考えてるだけだから。やましいことちゃうで。
そんなとき、俺の中である好奇心が生まれた。この子に狐の鳴き真似をしたら、どういう反応をするのだろう?というものである。
周囲からは「似てる」と言われる鳴き真似が、本物に通じるだろうか。
「こ……こーん」
すると。
「ん……?」
あ、起きた。
耳をピコピコさせながら、眠たい目を擦る。
「パパ……?」
「は?」
「むにゃむにゃ」
抱きつくようにしなだれ、そのまま眠ってしまった。
うわ、髪の毛さらさらのふわふわだ。
「あー、あったけぇ」
子どもって体温高いなぁ。
「……じゃなくて」
柔らかいほっぺを触り、ちょっと気が進まないが起こすことにした。
「起きてお嬢さん」
「ふあぁ……」
あくびを一つして、大きな瞳をぱちくりさせる。
「……あれ?私の家じゃない?」
「君、何でか知らないけどダンボールに入ってたよ」
「ほえ!?わわ私、捨てられちゃったんですかぁ!?」
ダイナミックなリアクションをする。
そりゃ、状況が状況なだけに仕方ないけど。
「ところで君、名前は?」
「しの……です」
「しのちゃん、一緒に暮らさないかい?」
「え?」
しつこく言うが、これはやましい意味ではない。
「行くとこがないなら、ここで一緒に暮らさない?」
「は、はい!」
太陽のような笑顔を見せる。
直視したら死んでしまいそうだ。
「それじゃあ朝ごはんにしようか。しの、そこの野菜持ってきて」
「はーい!」
あれから10年くらい。
「あなた」
あの幼い頃から見違えるほど、しのは女に成長した。
献身的で、美人な妻。
「お夕飯の支度、できましたよ」
「ああ」
「あ、お風呂になさいますか?」
「あーあー」
「それとも私になさいます?」
「あ!?」
さ
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