ここはとある大学のキャンパス
ギリギリギリ・・・・シュパァーン!・・・・カン!!
休日の午前ということもあり、運動系のクラブがグラウンドや体育館で活動している以外は普段の喧騒はなく、大学内は静かである。
ギリギリギリ・・・・シュパァーン!・・・・カン!!
その一角「弓道場」と書かれた施設から音がしている
ギリギリギリ・・・・シュパァーン!・・・・カン!!
この規則的に音を立てている元は「和弓」と呼ばれる弓である。西洋で使用されていた長弓(ロングボウ)よりも長く、力の無い者でも引くことができる日本独自の弓である。先程からの音はこの弓を引き、矢を放ちそれが命中する音なのである。
ギリギリギリ・・・・シュパァーン!・・・・カン!!
おおおおお〜〜〜〜〜パチパチパチパチ!!!!!!!!
4回目の矢の当たる音と共に歓声と拍手が上がった。
「すっげえ・・・いとも簡単に(※)皆中をやってのけたぜ・・・」
※すべての矢(全四本)をすべて的に当てる事
「さすがは日本代表だな・・・」
「はあ・・・・小笠原先輩・・・ステキ・・・///」
ギャラリーであった男女弓道部員達からは感嘆の声が上がっている。この弓道衣を来た人物の和弓の技術は勿論だが、矢を放つまでの一連の動作、当ててからの動作すべてに人をひきつける魅力がある。
「ふう・・・これくらいは出来なければ人に教えるなんてできないからな」
「お疲れ様です。小笠原先輩」
僕は先程まで矢を射っていた人物へタオルを渡す。
この人は小笠原 早矢(おがさわら はや)先輩
彼女はエルフという種族の魔物である。この大学の弓道部OGであり、僕の一個上の先輩であった。種族の特徴通り弓の扱いに長けており、弓道部のエースとして小笠原先輩は在学中抜群の実力で4年連続全国大会個人種目で優勝をした弓の達人である。それだけにとどまらず小笠原先輩は様々な弓術競技も得意としアーチェリー(洋弓)では日本代表に選ばれている。さらに数年後のオリンピックの指定強化選手にも選ばれているこの大学弓道部の伝説的人物であった。その実績を引っさげ昨年公務員試験に見事合格し、卒業後は警察官となって現在は市民の平和を守るために尽力されている。
「ああ、ありがとう本多」
そう呼ばれたのが僕こと本多 達人(ほんだ たつと)
小笠原先輩の後を引き継いで弓道部部長を務めている。
「相変わらず惚れ惚れする弓術ですね」
「ふふっおだてても何も出ないぞ?」
「ははっわかってますよ先輩。さて、デモンストレーションは終わりですね。全員集合!!」
僕の掛け声に小笠原先輩の弓術に魅入っていた男女部員達が一斉に集まる。
「いよいよ昨年の雪辱を果たすための大会が間近に迫ってきている!本日は御多忙の中我が弓道部OG小笠原先輩を特別講師としてまねかせていただいた!!またと無い機会なのでどんどん先輩から技術を学ぶ様に!!」
「はい!!!!!!」
「ではまず男子は走りこみ、女子は弓道場にて打ち込みをそれぞれ交互に行なう。練習開始!!」
「はい!!!!!!」
僕がひとしきり今日の予定を告げると各自練習の準備の為に散り散りになっていった。
「ふふ・・・少し見ないうちに随分部長らしくなったじゃないか・・・」
「はははっさすがに慣れましたよ」
こうして弓道部の練習が開始された・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕方になり、一連のメニューをすべてこなして本日の弓道部の活動は終了した。それぞれの部員は既に帰宅しているが、まだ弓道場には人影が残っていた。そこには・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・」
弓道衣を着たままの小笠原先輩が正座をし、「何か」を待っていた・・・
「お待たせしました先輩。部員はすべて帰宅しました」
「・・・そうか・・・」
「今日来ていただいたのは他でもありません。もうすぐ全国大会が始まります。僕も含めて部員全員が昨年の雪辱を果たすべく一丸となっています。だから部長である自分が昨年の自分より成長しているのか今一度知りたいのです。だから先輩、僕と勝負してください!!」
「ああ、最初からそれが目的だったんだろう?いいだろう。お前がどれくらい成長したか確かめてやろう。」
「ありがとうございます」
「よし、では勝負だ本多!手加減は一切しないからな」
「はい。本気の先輩を倒さなければ何の意味もありません」
「ふふ、言うようになったじゃないか。」
「・・・先輩のおかげですよ」
そう、今の僕があるのは「あの日」の先輩のおかげなんだ・・・
あれは丁度一年前・・・
「ううっ・・・ぐすっ・・・」
あの日僕は会場の片隅でひたすら泣いていた。4年生の小笠原先輩をはじめとする先輩方の最後の全国大会
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