「ご協力お願いしま〜す」
「ん?」
街に出歩いていた僕は何かを呼びかける声が聞こえた
「献血に御協力お願いしま〜す♪」
看護士の服装をした女の子・・・もとい魔物娘が献血を呼びかけていた
「献血か・・・そういえば献血なんて久しくやっていないな〜」
高校生の時に一度やったきりなかなかやる機会もなく、献血はしばらくやってはいなかった。
「ご協力お願いしま〜す、あ!献血希望の方ですか〜?」
呼びかけていた魔物娘の看護士と目が会い、僕に声を掛けて来た。魔物娘は総じて美人揃いだが、この看護士さんは小柄な体も相まってかわいい部類に入っている。青白い肌、紅い瞳、背中に羽、お尻の辺りからは尻尾がのびていることからおそらく種族はデビルといったところだろうか?
「?どうかされましたか〜?」
「あっいや、ちょっと声が聞こえたので、何となく見に来ただけなんですが・・・」
「そうですか〜せっかくなので、よろしければ献血をされていきませんか〜?」
「ああ〜・・・そうですね〜・・・」
高校の時に一度は経験しているとは言え、献血をする以上血抜き取る為には腕に注射針を刺すことになる・・・注射は特別嫌いという訳ではないが、あの独特のチクッとした痛みは大人になってもなかなか慣れるものでもなく・・・できれば注射を打たれるような目にあいたくないとは常々思っていた。
「確かに少し痛いかもしれないですが〜ここのセンターの献血は上手って評判なんですよ〜?」
「そっそうなんですか・・・でもまたの機会に」
「そこをなんとか〜今日はあまり来てくれる人がいなくて血液が不足してるんです〜お願いします〜」
ギュッ♪
そう言ってデビルの看護師は僕の腕と足に自分の腕と尻尾を絡ませてきた。女の子特有の柔らかな感触と彼女との距離が近づいたことで彼女から発せられるいい匂いが僕の思考を鈍らせる。
「わっ・・・わかりました・・・献血・・・します・・・」
「ありがとうございます〜♪」
看護師の熱心な勧誘(誘惑?)に負けた僕は彼女に連れられ、すぐ近くの献血センターへとやって来た。
「ではまずこちらの問診票に必要事項を記入してくださいね〜その間に準備しますのでしばらくこちらでくつろいでお待ちください〜」
「はっはい・・・ありがとうございます」
僕は言われた通り用意された机の上においてあったA4サイズの問診票に自分の名前である堀部 修一(ほりべ しゅういち)を記入し、それ以外の年齢、性別、今日の体調等諸事項を記入していった。
「ふむふむ・・・今日の体調は普通、特に持病もなく、常用している薬やはなし。昨日の睡眠時間は大体7時間くらい・・・と」
病院の診察前の問診票にある様な項目を次々と記入していく。記入用紙の一番下欄に「担当:黒瀬百合(くろせゆり) 種族:デビル」と入っていた。
(あの看護士さんやっぱりデビルか・・・名前は”ゆり”っていうなのか・・・かわいい名前だな・・・)
「ふう、これで全部だな。」
すべての設問に答えた僕は百合さんとは別の受付の看護士さんへ問診票と提出し、用意された休憩室へと出向いた。中に入ると周りを見渡すとちらほら僕と同じ目的ここを訪れているであろう人間や魔物娘等がいた。確かに僕を入れて数人ほどしかいないので、先程の看護士さんの話も間違いではないのだろう。
「へえ、結構いろんなものが置いてあるんだな〜」
献血センターの待合室にはお菓子や飲み物テレビ、DVD、各種雑誌、マンガ等が多数おかれており、それらを自由に手に取ることができる様になっており、くつろぐには充分なスペースとなっていた。なかなかに快適そうだ。
「・・・堀部さん、堀部修一さんはいらっしゃいますかー?」
「あっはーい」
「献血の準備が整いましたので、ご案内します。」
「わかりました」
看護士さんに案内され、「献血室」と書かれた個室の中へ入った。
「あっ!堀部さんじゃないですか〜奇遇ですね〜♪」
「あれ?黒瀬・・・さん??」
呼び込みをしていたはずの黒瀬さんが部屋の中で待っていた。
「呼び込みをしていたんじゃないんですか?」
「今日はもう暗くなってきたので、呼び込みを締め切ったんですよ〜。私は献血ができるので、手伝いに回ったんです。」
「そうだったんですか」
「じゃあ、早速堀部さん、こちらのベッドに仰向けになってください。」
「はっはい・・・」
黒瀬さんと話していて忘れかけていたが、いざ献血用のベットに横になれと言われ、少し緊張してきた。やがて献血をする為の機器が運ばれきた。
「では準備ができましたので、献血させてもらいま〜す」
黒瀬さんがチューブのついた献血用の針を腕に近づけてきた。
「緊張しなくても大丈夫ですよ〜痛くないですからね〜?」
確かにそうやって小さい時から言われ続けたが、言われても痛いものは痛い・・・
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