ここは魔界にあるクリューゲル地方。
ヴァンパイア領主レゼルバ=グラン=クリューゲルが治める地方であり、魔界でも有数の【貿易都市デキャンタ】があることでも有名だ。そのデキャンタでは様々な品物が人間界、魔界問わず流通しているが、現在の領主の取り計らいでとりわけワインの流通が盛んとなっている。
そのデキャンタの領主レゼルバの屋敷ではレゼルバと秘書兼世話係のカーヴが今日一日の貿易の取引に関する報告を取りまとめていた。
「レゼルバ様、本日の取引報告書でございます」
「うむ、御苦労・・・今日はまずまずのワインの取引高だな・・・レスカティエの件の影響からか一時期は取引が鈍っていたが、だいぶ良くなってきているようだな・・・」
「はい、レスカティエ陥落からしばらく時間が経過し、ワイン市場も徐々に落ち着きを取り戻しつつあるようです」
「その様だな。よし、引き続き市場の動向を探りつつ、安定供給量を確保しろ」
「かしこまりました」
「・・・さて、そろそろだな・・・」
「はい。そろそろでございます」
「準備はもうできておるのか?」
「はい、既に準備は整っております」
「ふ・・・相変わらず抜け目がないな・・・」
「恐れ入ります」
「では、私は着替えてくる。カーヴは先に行っていてくれ」
「かしこまりました」
今日の業務を終えた私は私室で着替えを済ませ、屋敷にある客間へと移動した。
今日の夜はとある「客人」を招いて晩餐会を開くのだ。
コンコン・・・・
ガチャッ・・・・
「ようこそ、お待ちしておりました・・・ミリア様」
「こんばんは、カーヴお元気そうね・・・」
「ミリア様もお変わりなく・・・さあ、お入りください」
そう言って私はミリア様をレゼルバ様の待つ客間へと案内いたしました。
「ようこそ。我が屋敷へミリア様」
「こんばんは。お久しぶりね、レゼルバ」
「はっ。お久しゅうございます。どうぞおかけください」
「ありがとう」
今日我が屋敷へお招きしたのは現魔王様の娘「リリム」であるミリア様だ。
我らヴァンパイアを含む全魔物の頂点に君臨している魔王様の御令嬢がわざわざ一魔界貴族である私と会話をしたり、訪ねられるなどもっての他だが・・・
「かしこまりました。カーヴ、ミリア様へのもてなしの用意を」
「かしこまりました。すぐに用意いたします」
「今日はカーヴが晩餐用意してくれるって聞いたから、どんなおもてなしをしてもらえるのか、楽しみね♪」
「はい。必ずや御期待に沿えるものを用意させていただきましたので・・・では」
カーヴはそう言って準備の為に一旦客間を離れ、厨房へと向かっていった・・・
・・・私ではなく、私の世話係であるカーヴがミリア様と面識があるのだ・・・
カーヴは今でこそインキュバスとなり、我が”夫”であるが、カーヴが夫となるそのきっかけを作っていただいたのはこのミリア様なのだ。以前はただの人間に過ぎなかったカーヴがいかにしてミリア様と接点をもったのかが私の中でずっと疑問となっていた。
「ふう・・・さすが、カーヴね。私の好きな白ワインにピッタリのおいしい料理を出してくれたわ♪」
「うむ・・・さすがだな・・・料理に合わせた最適なワインを組み合わせる・・・さすが、元ソムリエマスターだな・・・」
「はっありがたいお言葉です。インキュバスになってからというもの、よりワインの質を敏感に感じ取れるようになっておりますが、日々刻々とかわるワインの質には最細心の注意を払い、その時々で最良のワインを提供する・・・これこそがソムリエの使命でございます。ソムリエとしての肩書きも称号も既に過去のものにすぎませんが、その誇りと使命だけは一生胸に刻んでおります」
「ふふ、相変わらずストイックね♪貴方らしいわ」
「恐れ入ります」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
やはり・・・気になる・・・・・
何故あそこまで打ち解けているのだろうか・・・?
過去に・・・私の知らないカーヴの過去に何があったのだろうか・・・・??
私は少し迷っていたが、直接そのあたりのことを聞き出す機会もないので、思い切ってミリア様にたずねてみた・・・
「あの・・・ミリア様・・・失礼は承知でお伺いいたしますが、その・・・カーヴとは・・・どこで知り合われたのでしょうか・・・?」
「えっ・・・?カーヴと??う〜ん・・・確かあれは〜・・・」
「そのことついては私からお話させていただけないでしょうか?」
「カーヴ?」
私の横で待機していたカーヴが突然話に割って入ってきた
「はい、レゼルバ様にはミリア様との出会いの事は詳しくお話したことがございません。ミリア様との出会い・・・そしてミリア様への感
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