ドラゴンさんに捕まる話

 どうも皆さんはじめまして、俺の名前はエルヴ=ターナー年齢は18歳。親しい人からはエルって呼ばれてる、反魔物領の辺境に住むしがない農家の一人息子だ。ドラゴンが住むと言われる山が思ってたより遠くて心が折れそうだから自分の今までについて話そうと思う。そういわゆる独り言だ。
まず俺がドラゴン退治に向かうきっかけを話そう。

 
さっきも言ったように俺は農家の息子だ、親父とおふくろは2年前に亡くなってる。幸い畑と道具を残してくれたから作物を売りながらなんとか生活はできている。そうして平和な日常を過ごしてきた。
 そんなある日、俺の親友ウェルが結婚することになった、相手は隣村のきれいな娘らしい。なんともめでたいことだ。そんなわけで中の良い友人数人と祝の最後の独身男パーティーを村の酒場で開いた。
 パーティーも終わりに近づいた頃、酒場にウェルのおふくろが青い顔しながらすっ飛んできて
「あんた、教団から徴兵の紙が来たよ...」
それを聞いて俺らはみんな真っ青になっちまった。

「冗談じゃない!ウェルは結婚するんだぞ、そんな危険なとこに行かせられるかよっ」俺は大声を上げ、友人達もそうだ、そうだと同意した。
「僕は行くよ、お前らも教団に逆らうとどうなるか知ってるだろ」
静かにウェルは言った。

「彼女はどうすんだよ?」

「それは..」とウェルはバツが悪そうに目をそらした。

「なら、俺が代わりに行く。」
「エル!?」今あの場面を思い出すとそこにいた誰もが驚いた顔をしてた。
俺も内心驚いた。平凡な自分にこんなことが巡ってくることはないと思ってたからだ。だぶん酒で煽られた正義心のせいだ。お酒って怖いね。


「エルお前、ドラゴン退治なんてできるのか?」



「え、ドラゴン?」鈍器で殴られたような衝撃が頭に響いた。




 その後はよく覚えてない、気がついたらウェル宛の教団からの手紙を握り締めて家のベッドで寝てた。招集は3日後、招集場所まで1日かかるので、明日には村から出なければならない。
 夕暮れに久しぶりに主神様にお祈りをした、俺は信心深くないので効果があるのか微妙だが。リュックに水筒と干し肉など必要最低限の物資を積め、友人達に別れの挨拶をしに行った。
「エル、生きて帰ってこいよ。」
「死にそうになったら混乱に乗じて逃げ帰るさ」
「俺のために、すまない」
「ウェル、彼女とよろしくな」
「エル、幸運を」



 教団に指定された街についたのは次の日の昼時だった。とりあえず教団の支部に向かい、出欠をとる。長机に座ってる教団員に手紙を見せると
「ウェルベス=クリフか、よく来た。これが防具と剣だ、それと昼飯の配給券も忘れるな食堂の場所は突き当りを右だ。」
業務的な会話を済ませ、俺はなりすましがばれないものだなと思いながら食堂に向かった。
 食堂でのメニューはシチューとパンだった。以外にも美味しく量もそこそこあったのでいよいよ最後の晩餐という感じがした。


 それから1時間後俺は薄い革のチェストプレートを纏い、剣を腰に下げドラゴン退治の一行に加わった。
 一行は農民や平民など40名ほどの部隊が先行し、後ろに4人パーティーの勇者御一行がついてくる感じとなっている、一応実力のあるものがついてきてくれるとわかり安心したが、俺ら平民農民軍団は肉壁程度にしか考えられていないためテンションは急激に落ちた。

 街を出てしばらくするとゴブリンなどの魔物娘達に囲まれたが、勇者たちが撃退してくれた。しかしこの時点で統率が取れずグダグダということが露呈し、平民農民軍団10数名がお持ち帰りされた。あぁ真ん中ら辺に配置されて助かった。

 しかし、しばらく進むと今度はサキュバスなどの魔法を使う魔物娘に空から強襲されドラゴン退治の一行は見事に壊滅した。あのときはすごいもので、魔力にあてられた僧侶ちゃんが勇者に襲いかかってたり、周りの奴らが次々と交じり始めたりとある意味壮観だった。俺は当初の予定どおり、混乱に乗じて上手く逃げることに成功した。

 剣だけしか持って来れなかったのは痛いが仕方ない。魔物娘のパーティーの中引き返すことは不可能なので、ある程度進んだら大きく迂回しようとしたら道に迷った。幸い目指している山は目の前に見えている。正直もうドラゴンを説得するくらいしか生きる術がない。やばい。

そんなわけで今に至る。

「ふぅ、山麓まであともう少しか」
俺は重い足腰に力を入れ山麓に向かった。
「とんでもなくやばいなこの山、草木の一本も生えてないし岩肌が丸見えだ、しかも近づいだら魔力の無い俺でもわかっちゃったよ、圧倒的な気配がする」

「そうだろう、そうだろう、お前のような貧弱な者でも我が住処の凄さはわかるだろう」
「ああ、まったくこんなところに住むのはドラゴンしかいないよ」
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