ワンワンさんとニャンニャンする一日

「ワンワンさんとニャンニャンする一日」

 ふと、目が覚める。何が原因となったのかは分からないが、意識は深い眠りから浮上し、閉じた瞳の向こう側に朝の日射しが室内を明るく照らしているのを感じる。
 そのまま目蓋を閉じ続けていれば再び意識を眠りの中に落とせるかと思い、じっと瞳を閉じ続けるが意思に反し思考が冴え渡り始めた事に気付く。惰眠を貪る事を諦め、そっと目蓋を開いた。
 見慣れた木造の天井と壁。足側にある窓のカーテンの隙間から一条の光が射し込み、天井にラインを描いている。床側に引かれた光のラインは、カーテンの隙間から真直ぐ床を這い、ちょうど俺の顔の位置まで伸びていた。
 道理で眩しかった訳だ。と一人納得し、視線を俺の胸に上半身を預ける体勢でうつ伏せに眠っているワーウルフに移す。何も身に着けていないため触れ合っている個所から直に彼女の体温が感じられる。こちらからだと灰色に黒のメッシュが入った様な模様の彼女の髪の毛しか見えない。
 頭に生えた狼の耳が外の物音に反応していない事に彼女が未だ深い眠りの中にあることを確認した。
 彼女に圧し掛かられているため動くに動けず、どうしようかと思案する。しかし直接肌に伝わってくる彼女の深く穏やかな寝息を感じていると妙に心地よく、起き上がろうとする事がどうでも良くなってしまい、彼女の頭にそっと右手を伸ばす。柔らかな髪の毛に触れ、頭の天辺付近から耳の側に手を滑らせた。若干寝癖が付き跳ねている髪の毛を倒しながら髪の末端まで到達する。
 ショートの髪の毛はあっという間に根元から毛先まで撫でる事ができ、何度も手を往復させ彼女の頭を撫でる。滑らかな手触りと指先に感じる彼女の体温に心が満たされて行く。
 二度、三度と手を往復させると彼女の耳がピクリと動いた。

あぁ起こしてしまったか。

 眠りに就くにはいささか冴えすぎた思考に僅かな後悔が生まれる。
 頭を撫でていた手を止め、外で鳥がさえずる度に反応を見せる彼女の耳を右手の人差指と親指の間に挟み、優しく擦り合わせる。髪と同じ色の、耳を覆う短い毛の下にある軟骨の手触りと温度を楽しんでいると、彼女が深く息を吸い鼻から吐き出す。ひどく満足気な様子で深呼吸を終えると彼女の左手が俺の股間に進み、固くそそり立つ陰茎を優しく握る。柔らかい肉球が陰茎の形に合わせ、ひしゃげたのを感じた。左手の人差指と親指で作った輪で陰茎の根元を締める様に握る。それに加え、やわやわと指を蠢かせてくるので穏やかな快感が断続的に走る。

「おはよ」

 彼女が顔を上げ、眠たげな瞳をこちらに向けた。その瞳は茶色だが、明るい所で見ると金色に輝いている様に見える。真っ白とはいかないまでも、毎日外を駆け回っているにしては焼けてない肌。滑らかな曲線でその存在を主張する鼻と微笑を浮かべる唇。ワ―ウルフと言う種族である事を差し置いても、彼女に最初に抱く印象は快活な人。であるだろう。
 事実、彼女はその健脚で山を走り回るのが好きだし、その様子は飛び跳ねる様だと表現するのが正しい様に思う。

「はよ」

 彼女の柔らかな髪の毛を指で梳りながら短く返答する。

「昨日あんなにシたのにカチカチだね。足りなかった?」

 シ、の音にアクセントを置きながら彼女が嬉しそうに俺に問う。眠たげな眼差しの中に期待感を隠そうともせずに上目遣いに俺を見つめた。

「いや。生理現象だから。分かっててそんな嬉しそうに聞かないでよ」
「でもこんなに固くしてたらほっとけないじゃない」

 そう言いながら期待を孕んだ嬉しそうな表情をそのままに、掌の肉球を陰茎に擦りつける様に上下に動かし始める。指のそれぞれの部位にある肉球が行ったり来たりする度に形を変え、射精に至らないまでも与えられる快感に下半身に力が入り、腰が勝手に動きそうになる。

「エルザ、待て、待て」
「わふぅ」

 だんだんとストロークが早くなり、緩やかに快楽を与えるための動きから、射精させるための激しい動きへと変わり始めた彼女の手淫を止めるため、咄嗟にストップをかける。彼女は残念そうな表情を浮かべ、手淫を止めた。
 俺自身、若干残念であると思う。しかしこのままベッドの中で一日を終わらすのを勿体無いと思っているのも事実である。
 というのも、最近休日の度に雨が降り二人で外出する機会が無かったため、今日こそは二人で外出しようと思っていたからだ。

「とりあえずベッドから出ない?朝ごはん何食べたい?」
「肉!こないだ買ったハムが食べたい!」

 彼女の言っているハムが最近買った大きな骨付きのハムの事を言っている事に気が付いた。なんせそのハムは俺の太ももよりも太く、作る過程で使用されたハーブや塩の風味が周囲に発散され、近くにいるだけで唾が湧いてくる。種族的な嗜好として食事に常に肉を求める彼女で
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