どうも僕は魔物娘という存在が好きになれない。
肉欲と同じくらい愛情を求めているというが、その愛情が問題だ。
魔物娘たちが感じている愛情は魔王が代替わりした際、彼女たちを洗脳し変質させたものだ。元々はただ人間を食い散らかすだけの怪物を女性の姿に変え、人間に愛着を持つようにしたにすぎない。
もしそんなことが出来るのならば、別の存在に取って替わられた時に今度は逆のことが起こっても不思議ではない。
現魔王も娘『リリム』を増やして次の代替わりに備えてはいるが、いくら準備をしようがスムーズに代替わりが行われるとは思えない。
現魔王が勇者と結託し前任者を倒したように、どんな予測不能のトラブルが起きるかなんて誰にもわからないだろう。
そういう訳で僕は時限爆弾のような魔物娘と関わる気はないし、命の危険がある限り過激な自衛の手段も辞さない。宗教勧誘も結構。
そんなことを話した。本当ならばこんなに話すつもりはなかったが、玄関先の彼女は真剣な顔で僕の話を頷きながら聞いていたので思わず喋りすぎてしまった。
「なるほど、貴方の心配ももっともです!
ということは、あまり神々も信用できない…ですよね」
僕が喋り終わるとうんうんと頷いて、話を否定することもなく質問をしてきた。
「そうなんだ、神だなんて得体の知れない存在を信仰しろなんて無茶だと思うんだよ」
今の魔王に好意的な神々も多いと聞いたことがあるが、どんな神がどれほどの数いるのかすら分かっていないのだ。
むしろ逆に、魔王が邪魔で仕方がない神がいてもおかしくないし、いつ人間や魔物に矛先を向けてくるかわかったものじゃない。
触らぬ神に祟りなし、何も信仰するつもりはないし、あの世にだって行きたくない、死んだらきれいさっぱりと消え去りたい。
とまた話した。その間も彼女は真面目な顔でこちらを見つめ、メモ帳を取り出して何かを書き込んでいた。俺の顔とメモに交互に視線を送りながら聞いてくれるものだから、すっかり話し込んでしまった。
流石にここまで話を聞いてもらって、玄関前に立たせているのも申し訳ないので、家に入れて麦茶を出した。
「やはり人間同士で仲良く暮らすのが良いということでしょうか?」
「いや、人間はもっと酷いよ、結局一番悪いのは人間だよ」
人間の悪辣さ加減は殊更に述べる必要はないだろう。そう思っていたが語り出したら止まらなかった。
自分でも何を話したか分からないくらい話した。話しを止めようとすると、ダークプリーストさんがちょうど良い相槌と、次の話をさりげなく振ってくるのでまた喋り続けた。
「私も元人間ですが、そういった面があるのは一概に否定できませんね…」
「そうだろうとも!あ、麦茶だけだと飽きるだろ?コーヒー淹れてくるよ、インスタントコーヒーだけど…クッキーもあるんだ」
お気遣いなく、と言いながらも出されたクッキーを品よく食べ始めた。
「いっそ何も考えずに、快楽に身を任せてしまった方が楽かもしれませんね…」
コーヒーを一口啜った後、嘆息と共にぽつりと呟いた。
彼女の口から漏れ出た吐息に僅かに劣情を抱いたが、彼女に悟られなかったことを祈るのみだ。
「それも一つの答えかもしれないけど…」
所詮、自分が感じている不安など考えるだけ無駄な不安であることはうすうす感じていた。しかし、彼女に話を聞いてもらっているうちに、言語化出来ずに溜まっていた気持ちが形になっていた。
「なんというか僕は…考えて自分が納得できる生き方をしていきたいんだ!」
仕事にしろ、趣味にしろ、世の中にしろ、不平不満は尽きない。それでも自分なりにやれることをやって、足掻いていくことが人生なのだ。
彼女に思いきり腹の中にたまっていたものをぶちまけたら、絡まっていた自分の頭の中がとてもすっきりしたのを感じた。目の前を開けてくれた彼女にお礼を言わなければ!
「んー…残念ですが『納得できる生き方』なんて出来ませんよ?」
申し訳なさそうに言ってはいるが、口元に薄く嘲笑の笑みが浮かんでいる。
「人が盛り上がってるのにそんなこと言わないでよ…」
「そうですねぇ…今、私が怪物に変わって貴方に襲い掛かって食べちゃいました!
貴方の人生は終わりです!…納得できますか?」
彼女の目に異様な光が宿り、爛々と輝きながらこちらを見ている。
本当に今すぐにでも怪物に変わってしまいそうな迫力を出している。
先ほどまでの熱気は冷や水をかけられたよう消え失せていた。
「ならないけど、そういう不安も受け入れて今後も生きていこうと…」
「くくっ…きまぐれな神の神罰も納得して受け入れられますか?八百万存在する神々はあなたが仰った通り、得体のしれない”モノ”も含まれているのですよ…?」
そういって歯茎を見
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