「寝ているアポ様の体を拭いて酒樽に入れて、
明け方になったら布団に戻すという作業を何日も何日も…」
「最近やたらと筋肉ついてきたと思ったらそんな理由だったわけね」
「でも、アポ出汁とアポイズンが溶け込んだ素晴らしいお酒になったので大満足です」
「アポ出汁はともかくアポイズンって何よ、締め倒すわよ」
「アポ毒配合よりもアポイズン配合って言った方がウケがいい気がしまして」
「ああ、化学調味料をうま味調味料に名前変えるような感じね。死になさい」
「顧客にマイナスイメージを持たれては売れるものも売れませんしね」
「本気で売る気なの?」
「冗談抜きで滋養強壮と催淫効果が凄まじいので、販売したら大ヒット間違いなし!」
「あんたも飲んでるの?その割にはどれくらいすごいのか実感できないわね」
「昼頃から交尾を始めて、先にバテて寝落ちしたアポピスをしばらく犯した後に、
そのまま酒樽の中にぶち込めるくらい元気が出ます」
「女王に対する扱いじゃない」
「国民一人だけの癖に女王気取りとは笑わせてくれる…」
「あんた国民から奴隷に降格だわ」
「は?それじゃあ神聖アポピー帝国は滅亡ですか!?」
「滅亡決定ね。是が非でもその国は滅亡させるわ」
「じゃあ、アポ様は亡国の姫君ということですか…ムラムラするな」
「女王を勝手に姫に戻すんじゃないわよ」
「実は酒を作れたので酢も作れたんだよね。アポピ酢」ツーン
「うっ、こんなキツイ臭いのものに私の名前を使うのやめなさい…!」
「え、でもアポ様の腋とか胸の下とかたまにこんな臭……ぐふっ」
「すぐに私の艶やかでいい匂いのするアポピ水を作りなさい。今すぐ」
「今回のプレゼンが終わりましたら取り掛かりたいと思います」
「何?まだあるわけ?」
「だいたい100種類くらい」
「あと5個までは聞いてあげるけど他は全部却下よ」
「とりあえず5個は聞いてくれるあたり名君ですな」
「淫靡なる堕落と腐敗を司る蛇后たる私を名君扱いするのちょっとどうかと思うわよ」
「その淫靡なる堕落と腐敗を司る蛇后って名称、ちょっとどころかマジでどうかと思う」
「アポピ酒やらアポピ酢やらのネーミングセンスの奴に言われたくない!!」
「このセンスがわからないとは…寝起きで時代に取り残されてしまっているようですね」
「次のが納得できる名前じゃなかったら、ありったけの毒を首から流し込んでやるわ…」
「ふふふ…いいでしょう!
とくと御覧じろ!ビードロ細工の最高傑作!気の抜けた音があたりに響く!
アぽぴん!!」
「……」ガブッ
「ァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
「ぽぴん響かすよりもあんたの悲鳴響かせてやるわ」
「実は噛まれたところで毎日同じくらいの毒を晩酌で摂取してるので特に問題ないのだ」
「ファラオも斃す毒で晩酌するんじゃないわよ」
「毒っていうけど精神高揚と精力増強が主効能って、それもう栄養ドリンクだよね」
「ぐっ…即座に反論できない自分が情けないわ…」
「痺れて動けなくするとかそういう搦め手ないしね。アポイズン」
「そういう小細工が必要ないくらい強力な毒なのよ」
「眷属のラミアの方が声で魅了したり町に潜入したりクレバーにやっとるね…」
「……」プルプルプル…
「噛み締めた口の端から毒液垂らして睨むのやめてもらっていいですか?」
「あんただったら、ちょっとくらい旧世代の方の毒を使ってもいいかもしれないわね…」
「やだ…ジョークでも笑えないですよ。ほら僕が育てた『アポピー』でも観て癒されて」
「なんだ、普通の紫色の花じゃない」
「品種改良して作ったポピーでアポピーです。国花に指定してもらおうかと」
「ただの花が国花というのもつまらない話ねえ…」
「じゃあこっち、濃紫色のサボテンの『アポテン』とかどうですか。国境近くに植えまくれば目立って旅人も寄ってくるかも」
「あんた、私の名前を使わないと何も作れない病気なの?」
「そう、これは…」
「恋の病とか言ったら極刑よ」
「いえ、ブランディングですよ。何ですか恋の病って。恥ずかしい」
「……」プルプルプル…
「そんな泣くほど悔しいなら最初から言わなきゃいいのに…」
「と、とにかく、『アポ〜』みたいなやつ以外にはないわけ!?」
「ありますよ。この『マルデカ茄子』とかどうですか」
「ふ〜ん…なんかこのナス、見慣れてるというか、初めて見たように思えないというか…」
「そりゃまあ、アポ様のおっぱいに似せて作りましたからね」
「殺すわ」
「真顔で言われると本気にしそうだからやめてね?」
「作ってて不味いと思わなかったのかしら?」
「おいしいから!めっちゃおいしいから!
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