爆音と衝撃
濛々と立ち込める煙の中で、オリアを抱えたリストの姿を確認する。どうやらうまくいきそうだ。
「じゃあね! ひねくれ勇者様!」
「じゃあな!ドS僧侶!」
そう最後の言葉を交わし、破れた天井から飛び立っていった。
さて、やりますか。
バイザーを下げ、臨戦態勢に入る。ブランクはあるがそれくらいどうってことない。
リストを追いかけようとするアーチを発見する。
煙の中からの一撃はあっさりと避けられてしまった。
相変わらず機敏な奴だ。
煙も晴れてきたし、いい加減名乗りを上げてみましょうか。
「結婚おめでとう、地獄からお祝いに来たぜ!」
まあ75点くらいだな。というか私、地獄と天国どっちに行ったのかわからないし。
「というわけで、あいつらが帰ってくるまで私と遊んで欲しいな」
アーチは呆然とこちらを見ている。よっぽど私のかっこよさに驚いているのだろう。
「…レイバなの?」
アーチがやっと口を開いた。
「想像にお任せします」
「なんで!?死んじゃったんじゃなかったの!?」
「そんなのはどうでもいいだろ?」
「それよりも、オリアのことはいいのか?」
「っ!そうだ、オリアさん!!」
教会の出口に向かって走り出す。
「まぁ、行かせないんだけどさ」
アーチの前に立ちふさがり、斧槍を横払う。これまたあっさりとかわされてしまう。
最初から当てるつもりはなかったがな …と負け惜しみを言ってみる。
「…どうして?」
泣きそうな顔をしながらこちらを見ている。罪悪感を感じるがここまできたらやるしかない。
「理由聞いても納得しないと思うし言いません」
「とにかく、今オリアは大変な目にあってるだろうとだけ言っておきます」
「レイバはそんな酷いことしない…」
「じゃあ私、レイバじゃないかもな。というか結構酷いことしてきましたけど?
何の罪もない山賊さんや奴隷商人さんたちを金銭目的で襲ったりとかね」
「どいて」
私の冗談が利かないほど怒っている。
「嫌だ」
「どうしても通りたいというならば、私を倒してから行くがいい。ふぁっふぁっふぁっ」
一回言ってみたかったんだよね。
教会全体にリストが用意してくれていた結界を展開する。私が倒れない限りは破れないだろう。
招待客も事態が飲み込めてきたようだ。こちらに視線が集まっている。何人かこちらに向かってくるものもいる。普通の人間相手ならば物の数にもならないがな。
「ほう…それならば手を貸すぞ花婿殿」
え? こいつもしかしてドラゴン?
「全く、結婚式に水を差すなんて無粋な奴もいたものね」
え? なんでヴァンパイアもここにいるの?
「オリア君とアーチ君の門出を邪魔するとは… 覚悟はいいな?」
デュラハンまで…
よく見ると他にも魔物娘が混じっている。まさかのモンスターハウスだ!!
「ありがとう皆…」
「お礼は後だ。さっさとこの賊を倒して、花嫁を助けに行くぞ!」
「…うん! ……例えレイバだとしても本気で行くからね?」
簡易の術式で小さくしていた弓矢と短剣を元に戻し、こちらに向けて構える。
どうやらハッタリでもなく本気のようだ。というか結婚式の時まで持ってきてるのか。
魔物娘たちも一斉に飛び掛ってくる。
「ゆ…勇者舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
想像以上に絶望的な状況である。
ヘルムで顔を隠していて本当によかったと思った。
涙でぐしゃぐしゃですから。
「あ、いっけない。あいつにここが親魔物領だってこと教えてなかったわ」
「うがーー!!は〜な〜せ〜!!」
暴れるオリアを小脇に抱えながら一人呟く。あいつならあの数の魔物くらい大丈夫でしょ。
「放していいのかしら?」
オリアの体を空中に投げ出す。これくらいの意地悪なら許してくれるわよね。
「うわぁぁぁぁ!!!や、やっぱりはなすな!!」
「まったく、ワガママねぇ…」
落下中のオリアを掴まえ元の位置に抱えなおす。
「ワガママじゃないと思うんだけど…」
「それよりもリスト!何のマネだ!いくらお前だからってこれ以上すると怒るぞ!」
「もう怒られようが、恨まれようが自分の欲望に忠実に生きることにしたわ」
「むかしから、欲望に忠実じゃなかったか?」
きょとんとした顔で聞き返された。こいつに悪意が全くないから質が悪い。
「…さらに忠実に生きることにしたのよ」
「それはいいことだ、我慢はよくないからな!」
そうやってにっこりと笑われると罪悪感が半端無いわ…
あんたは嫌いじゃないけど苦手なのよ…
「でも、それとこれって何の関係があるんだ?」
無事家に着くことができた。追っ手が来てないことをみるとうまくやっているみたいだ。
「ちゃんとそこらへんは説明してあ
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