「あ〜はい、思い出してきた」
そう、俺の名は勇者レイバ、ある日、神の加護を受けた俺は勇者として魔王を倒す旅に出る事になった。様々な冒険をしたものだが、ここでは関係ないので割愛する。俺は旅の途中、未知の病に罹りあっさり死んでしまったのだ。魔王討伐が使命の勇者がこうも簡単に死んでしまうなんて、人生なんてあっけないものである。
「あんたが死んだせいで私のアーチくんが2週間部屋に閉じこもりっぱなしだったのよ!」
で、俺を起こしてくれたこいつはうちのパーティの僧侶のリスト、僧侶の割には性格がキツイ。というか本当に僧侶か?回復魔法よりもバ○クロス撃ちまくる方が楽しいって言ってたぞこいつ。
そして、アーチとは、リストと同じく俺の仲間だ。職は便宜上狩人、俺が旅立ちの時からいっしょにいた仲間で幼馴染である…言っておくけど男ですよ? リストが攻撃に夢中になっているときに、よく薬草やポーションで俺の傷を癒してくれたものだ。ちなみにリストのものではない。
「そういうお前は落ち込まなかったのか?」
「いえ、ライバルが減ってうれしいな〜と思ってたわ」
「神さまぁぁぁぁぁ!!天罰を!この娘に一番きっつい天罰をお願いします!」
「冗談に決まってるでしょ、落ち込んでる暇はなかったってのが本音よ」
「結局、落ち込んではくれなかったのね…」
「アーチくんとオリアが私の分を賄えるほど落ち込んでくれてたわ、あの二人引っ張るの大変だったんだから」
紹介が最後になったが、パーティの前衛である戦士オリア、女性であるが自慢の怪力でパーティの攻撃の要を担っている。性格は豪放磊落。そういうと聞こえはいいが、いわゆる脳筋。ミノタウロスの頭と交換しても多分大差ない。というか、ミノタウロスじゃないよね?
「さっきスルーしたけど何のライバルだよ?」
「決まってるでしょ?アーチくんの恋のライバルよ」
「いくらかわいいからといっても、あいつ男よ? そんなのあるはずないでしょ」
「幼馴染だからって危険な冒険にまでついて来るなんて怪しいわよ!」
「いや!?王道中の王道でしょ!?」
「それにあんたばっかりアーチくんにスリスリされたり抱きつかれたりずるいのよ!」
「俺の方が年上だし、兄貴として慕ってただけじゃないの?」
…とはいうものの確かにいき過ぎではないかと思ったことは多々ある。
馬車に乗っていると必ず隣に座り体を密着させた。
強敵を倒したときや依頼を成功させたときなどよく抱きつかれた。
それとなくたしなめても「男同士だからいいの!」とやめようとしなかった。
あるとき、もしかしたら魔物娘が化けているのではないかと疑い、期待しながらこっそり真実の鏡を使ってみたが…残念ながら本当に男であった。あ、いや残念じゃなかった。
「そういうことにして置いてあげるわ、意味のない議論ですしね」
「俺が死んだあとどうなったんだ?」
「行けるところまで行こうってなったんだけど、あんたがいないから全然進まなかったわ」
「そうであろう、そうであろう。どこまで行けたのだね?」
こう見えて勇者の中でも実力のある方だと自負している。やはり俺がいないと始まらないのだ。
「魔王城一歩手前まで」
「むちゃくちゃ進んでんじゃん!」
「で、今は冒険をやめて魔界近くの町で暮らしてるってわけ」
「さいですか…」
皆元気ならばそれに越したことはないが…自信なくすわぁ…
「一番気になってたんだけど、死んだ俺がどうして生き返ったんだ?」
「使える手駒が欲しかったから私が蘇らせたわ!」
「おい、なんてことしやがる外道!!」
「まさかこんなに理性が残ってるとは思わなかったわ。腐り切っても勇者ってことね」
「誰がうまいことを言えと…」
「どちらにしても、私の言うことを聞くようにしておいたから何の問題もないけど」
「僧侶とはいったいなんだったのか」
「とにかく、話を聞きなさい」
「あいよ」
「…アーチくんとオリアの野郎が結婚することになったのよ」
「お〜!おめでとう!!」
アーチが女性と結婚したことに安心した。あ、でも、オリアって女か?
顔と体だけだよな?中身完全にお子ちゃまだよな?あの二人で本当に出来るのか…?ナニがとは言いませんけど。
「ぜんぜんおめでたくなぁぁぁぁい!!」
「ひっ」
「信じらんないわアイツ…何が「あたしがレイバの代わりに一生お前を守ってみせる!」よ!! そもそも、あんた大してアーチくん守ってなかったじゃないバカ者!」
「なぜ俺が怒られるんですか!?」
「傷心のアーチくんに付け込みやがって…」
「でも前から仲良かったじゃん」
人見知り気味だったアーチも豪快で明け透けなオリアには何かと話しやすかったのだろう。
「私ともよかったでしょ!
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