10月15日
まずは元となる人形を手に入れなければならない。手っ取り早く古物店で中古の人形を買おう。…いや待てよ、そのような人形が本当に魔物娘となることが出来るのか?
魔界と交流を持ってからしばらくが経つが、この世界そのものが魔力で充満しあちらの世界と全く同じになったわけではない。そのような状況で魔界と同じようにリビングドールが生まれてくるのだろうか。もしかしたら、未だに解明されず蔓延る者たちの依代となっているのでは…
…話がオカルティックになってしまった。とにかく徒労とならぬように新品を購入し一から自分が手を加えていった方が安心であろう。だがこんな呪術紛いのことをするのだ細心の注意を払っていきたい。
そしてせっかく新品を買うならこだわりにこだわり抜きたい。本場の職人のオーダーメイドで目の色から肌の色まで自分好みに!髪の毛も人毛を使って…はやめておこう。さっそく探してみることにする。
10月16日
ネットの情報力は偉大という他ない。魔界で人形を制作していたという人物が日本に住んでいるそうだ。幸い明日から連休である。明日にでも伺わせてもらうことにしよう。今からアポ取れるだろうか…
10月17日
多少迷ったものの無事に目的の人形作家さんの家に着き、話を聞いてもらうことが出来た。勝手なイメージとして白鬚を生やした老人を想像していたが、ずいぶん若く綺麗な女性だった。そういえば電話で応対してくれた声もこれくらいの女性のものだったか、てっきり娘か孫が出たものだと思っていた。まあそれはいいとして。人形作家さんは、女慣れしていない挙動不審な俺の注文を真摯に丁寧に聞いてくれた。俺が満足できるであろう人形を作ることは可能だそうだ。それを聞いたときは思わずその場で飛び跳ねるところだった。しかし、足りない部品があるため正確な見積もりは後日送ってくれるそうだ。まあ、高くても10万ほどあれば余裕で買えるだろう。
10月21日
見積もりが届いた。三桁に限りなく近い二桁万円だった。もうマジ無理、寝よ。
10月22日
なぜか無性に気になって普段開けないタンスの段を開いてみた。そこには買ったまま忘れていた今年の宝くじが束になって置かれていた。まさかと思いPCの画面に映った当選番号とくじを見比べる。……これで人形が買える。
11月26日
ついに人形が出来上がったらしい。居ても立ってもいられず連絡があった後すぐに取りに行き、なんとか遅くならずに着くことができた。
人形作家さんが大切そうに抱えているものが一瞬人形とわからなかった。それほどまでに精巧なのに人間では決して表すことのできない美しさ怪しさが漂っていた。なるほど、呪いの人形に魅入られた怪談は腐るほどあるが、皆こういう心持ちだったのだろう。
大切にしてくださいと人形作家さんに言われたが、言われるまでもない。俺の一生涯を持ってこの子を大切にしたいと思う。
11月27日
我が家に人形が来た。机の上に座らせているが、男の殺風景な一人暮らしの家に華やかなものができた気がする。まずは彼女に名前を付けなければ…ベタに「メアリー」とかいいんじゃないかな?試しに呼びかけてみる。無論反応などありはしないが少しだけ顔が明るくなったような気がする。気がするだけだが。
さて、彼女が来たというのにこの散らかった部屋は少々情けないものがある。昨日は彼女の服などを買っているうち帰りが遅くなって寝てしまったが、なかなか乱雑な状態である。このような環境ではメアリーに悪影響を及ぼすかもしれない。しっかりと片付けよう。
11月28日
人間だれかしらの視線がなければ堕落してしまう。かく言う俺も最近は大学をサボり気味で今日もサボろうと思っていたのであったが、朝目覚めてメアリーの視線を感じるとサボってもう一度寝ようという気にならなくなった。
人形に見られるというのはもっと不気味なものかと思っていたが、不快感や恐怖は感じない。そもそも、見られていると考えている時点でどうなのだろうか…
11月29日
メアリー用の絵本を数冊実家から持ってきた。ただ座らせて一緒にテレビやパソコンを見させているだけではよくない気がするからだ。やはり俺の理想のレディーとして賢く教養があって欲しい。これからも少しづつ読む本を増やしていこうと思う。
メアリーを膝の上に載せて本を読んでやったが、少し暖かかった。
12月1日
朝起きるとメアリーが持ってきた絵本の中で座っていた。気に入ってくれて何よりだ。メアリーは読書家らしい。彼女の読書する姿を妄想をしてみる。窓辺で日に当たりながら読書するメアリーはまるで名画のようだ。そして俺に気付くと本から目を上げて俺に微笑みかけてくれるのだ…その日が待ち遠しい。ただ、本の
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