「アナタ、ご飯ですよ? 今日はちゃんと食べてくださいね」
彼女はゴーレムのルル。もともとは開発された術者に利用されるだけの存在だったが、一人の男と交わり続けて感情が芽生えたゴーレムである。
すでに腕のルーンは彼の名前が彫ってあり、彼だけを愛する魔物となっている。
彼は長いこと伏せっており、最近では食事も満足にとれなくなってしまった。それでも彼の病状をよくしたいがため、日々献身的に世話をしている。
「昨日もほとんど食べていないのですから、今日は少しでもいいから食べてくださいね」
彼が大好きなスープをスプーンですくい、口元に運ぶ。口に流し込んで、せき込むことがないのを確認し、今の一口で口の端からこぼれてしまったスープを拭う。
「はい、今日は最後まで食べられましたね。っと、ベッドが汚れてしまいましたね。ちょっと抱きかかえますよ?」
そっと、負担の無いように抱きかかえると、予備のベットに運ぶ。
今の食事で汚れてしまったシーツを取り換え、洗いたてのものと取り換える。彼はなすがままなのだが、苦痛は無いようだった。
「最近は体は痛まないんですね。よかった。このまま良くなるといいですけど」
床に用意してあった水の張ったバケツとタオル。彼の服を脱がし、そっときれいに拭ってあげる。
「気持ちいいですか? 清潔にしていないとまた体調が悪くなりますからね、今きれいにしてあげます」
彼は気持ちよさそうな顔をしている気がする。表情を動かすのも億劫なのだろう。でも、彼と心が通じ合っているので問題はない。
たとえ言葉による意思通達ができなくとも、心でつながっているのだ。この程度、障害でも何でもない。
「……よし。それでは、私は町に行ってお薬をもらってきますね。くれぐれも無理はしないようにしてください」
買い物袋を下げて家を出る。
ここは森の中だ。自然を愛し、静かに過ごすのが好きだった彼のためにルルが自分で森の中に家を建てたのだ。
もっとも、家を出たのはそれだけが理由ではない。
彼のなかなか治らない病気が他の人にうつったら大変だと半分追い出されたようなものだ。それでも彼はしょうがないと笑っていた。
それに、彼もここの生活が気に入ってたのだ。
ここに来たばかりの時は一緒に木の実を探したり、散歩をしていた。
病気が重くなってからはしていない。
また一緒に散歩をするのが当面の目標だ。
「……あ、奇麗な花」
帰りに摘んでいこうと思い場所を覚えておく。
町について真っ先にお医者さんの場所に行く。もしも薬が売り切れていたら彼が死んでしまうかもしれない。だから町に来た時は真っ先に行くようにしている。
「おい、ルルちゃん。いつものかい?」
「はい、おじさん」
「最近旦那さんの調子はどうだい?」
「体があまり痛まなくなったみたいです。相変わらずスープしか飲めませんけど、落ち着いています」
「……そうか」
医者さんは悲痛そうな顔をする。お医者さんと彼は友人で、町を追い出される時にも、最後まで町にいてくれと言っていた人だ。とてもいい人。
「心配しないでください。これからきっと良くなりますよ」
「患者の奥さんに言われるとはな、立場が逆だ」
お医者さんは彼の容態を訊き、それに合った薬をすぐに調合してくれる。
「先生、彼が最近膿がよく出るんです。痛そうなので何とかしてあげたいんですけど」
「大丈夫だ。今から言うことをちゃんと聞くんだよ?」
お医者さんが言うことをメモする。
お薬を塗って、水断ちする。
「え? お水を飲んだらいけないんですか?」
「あぁ、その水分が膿の原因になってしまうからね。大丈夫、もしも苦しそうにしていたらすぐに辞めれば問題ない。これは治療だからね」
そう言われればそうなのかもしれない。
えっと、水断ちをして、熱して柔らかくなったお薬を全身に塗ってあげる。その上から包帯を巻く。
「それだけだ。それから体を拭くときには注意するんだよ? 固まった薬が皮膚を傷つけるかもしれないからね」
「はい」
それから何種類かのお薬をもらった。
「あぁ、それと」
「どうしたんですか?」
「今後、彼が苦しそうにしない限り大丈夫だ。と、言うより、これ以上できることがないんだ。もし苦しんでいたらまた私のところにくるんだ」
「え? 彼は良くなるんですか?」
「あぁ、後は人が持っている生命力にかければ大丈夫さ。それに、ルルちゃんの方こそ限界だろ?」
指摘されて、やっぱりバレたと思った。
お医者さんが指摘するとおり、私は彼に抱いてもらっていない。私の生命力は彼の精液。それがそろそろ限界なのだ。
まだ激しい運動をしなければしばらくはもつ
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