暗く、湿った地下牢。鉄格子で外には出られない。壁や天井には様々な文字が書いてあり、これが魔物の魔力の使用を封じているのだ。
鉄格子の扉には大きめのランプが煌々と輝いている。『太陽のランプ』と呼ばれるマジックアイテムの光はヴァンパイアが大嫌いな光と同じ効果を持つ。つまりヴァンパイアの力を封じ込める。これで安心して拷問が行えるわけだ。
アッシュが資料を見る限り、このヴァンパイアは中々愉快な事をしていたようだ。人間を殺す、しかもその頃仕方が残虐。怪力を生かして手足を引き裂き、もがいているところを笑いながら見る。気に入らない者がいると頭を潰してしまう。
魔物が人を殺すのは非常に稀な事なのだが、この資料もどこか怪しい。依頼書には『最高の屈辱と苦痛を与えたのに処刑せよ』と書いてある。
「最近この手の依頼が多いな」
傍らに立っていた助手、ミリアに話しかける。彼女はスケルトンだ。墓で彷徨っていたので捕まえた。幸いインキュバスになった体のおかげで、スケルトン如きに多少の精を絞られても大丈夫だ。
「ぅああぁ」
理性が殆どなく、呻く事と言われたことを実行することしかできないが、これはこれで便利なのでまだ捨てる気はなかった。
白い骨だけの手足、青白く、ツンとした腐臭が微かにする体。
「……行くか」
これ以上考えるのを止めて、閉じ込められているヴァンパイアの牢屋の前まで行く。太陽のランプはミリアも嫌いらしく、光に当たらない位置にさり気無く移動している。
牢屋の中を覗くと、ベッドがひっくり返っている。どうやらヴァンパイアは光に当たらないようにベッドを遮蔽物にしたようだった。
「おい」
話しかけても反応がない。アッシュは牢屋に入り、ベッドの裏を覗いた。そこには顔を真っ青にした美女がぐったりと横たわっていた。彼女こそ今回の仕事のターゲットだった。
金髪の髪、メリハリのある体、黒を基調としたレースが編まれているドレスにマント。まさしくヴァンパイアそのものだ。
「……起きろ」
静かに、低い声でもう一度呼びかける。だが、ヴァンパイアは横目で見ただけで反応しようとはしない。状況を分かっていないような態度だが、小さく震えているのがバレバレだった。
アッシュはベッドを蹴り上げてヴァンパイアの胸倉を掴み、ランプの光が一番当たる位置まで投げた。
「キャア!」
更にヴァンパイアを蹴り、仰向けにしてから馬乗りになる。
「返事くらいしたらどうだ? ん?」
「…フン!」
反抗的な目が気に入った。
まともに食事も与えず、身を蝕む光の中に居たにしてはまだまだ元気そうだ。これなら多少のことをしても耐えるだろう。
天井から吊るしてある鎖にヴァンパイアを繋げる。それから様々な器具をミリアに持ってこさせる。これで準備は整った。
ヴァンパイアは相変わらず気丈な態度を崩さない。ここに連れてこられるまで何もされなかったとは考えにくい。軽く犯される程度の事はされているだろう。これから始まることが同じだと思っているのかもしれない。
「ラフィ・フォン・ドゥーイ、これから始まることは聞いているか?」
「低俗な人間め、私にこんな事をしたことを後悔させて…」
ッガ!
「聞いたことに答えろ」
レイギスの口から血が流れた。一瞬何をされたか分らなかったらしく、ポカンとしていたが、されたことを理解した瞬間に鬼のような形相で睨みつけて来た。どんな顔をしようとも何もできないことは彼女自身分かっている。それでも睨まずにはいられなかった。
「人間…貴様!」
「それとも何をされるか聞いてなかったか? なら教えよう。お前はこれから処刑される」
処刑、という言葉に小さく反応したのをアッシュは見逃さない。
「処刑されるまでにわずかな日数がある。それまで、お前に凌辱と拷問をする。それだけだ」
「なぜ私がそんな事をされなければならないの!」
髪の毛を掴み、乱暴に引き寄せる。それから囁くように
「人間を殺した罪だ」
耳元で言われたことが不快だったのか、首筋に噛みつこうとした。それを余裕をもってかわし、キスができそうなほどの近距離でにらみ合う。
「……ッペ!」
唾を飛ばしてきたが、アッシュは気にならない。むしろこうした気丈な態度を取ればとるほど興奮してくる。笑みが自然にこぼれた。
「いい度胸だ。まずは基本的な攻めから始めようか」
ミリアに命令し、ドレスを剥ぐ。すると美しい肢体が現れた。魅了の呪文が使えなくとも、男を引き寄せるには十分だった。
持ってきた器具の中で、鞭を取り出す。
「たかが鞭程度で、私を屈服させられると思っているの?」
ラフィは鞭の恐ろしさを知らないらしい。使う者が熟練者なら、たったの数
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