城に住む魔物「カーミル」


 私の朝は遅い。

「くわぁぁぁぁぁ・・・」

 捕まえている奴隷に食事を運ぶ仕事がない限り、昼ごろになってから目を覚ます。私は夜遅くまで城の見回りをしてるからしょうがない。

 思い切り背中を伸ばすと、ポキポキといい音が鳴る。

 クローゼットを開き、短パンにシャツを着る。シャツは体のラインを少し出す様なものが好みだ。ブーツはお気に入りの黒。

 爪で短い髪を梳き、毛並みを整える。

 鏡台で軽く化粧をする。ぶっちゃけ必要ないと思うが、主人が少しくらい化粧をしろと言っていたので、毎日している。

 鎖を腰に下げ、首輪をつける。あとはピアスを1つしていつもの格好。

 ―――グウゥゥゥゥ

「腹が減った」

 早速朝飯兼昼食を摂るために厨房に顔を出すことにした。こんなホルスタウロスのメイがうらやましい。寝起きに目の前の草を食べれば食事を摂れるのだから。




「トト、いる?」

 ゴーストであるトトは休憩中は半透明になっていることが多く、声をかけないと姿を現さない。においもないから見つけにくい。

「んん〜?」

 クルリと空中で回転するようにして姿を現す。紫っぽい、ガスのような姿。主人に抱かれるときは、もっとちゃんとした姿になる。

「メシ」

「あいよ、そこにアニーのドックフードがあるよ」

 私は無言でトトに攻撃する。

 だが、私の攻撃はいつもどおりすり抜けてしまう。

「ふざけるな」

「も〜、カーミルは冗談が通じないな」

 私が冗談に付き合ってドックフードを食べても、コイツは止めないでいると確信できる。トトは性格が悪い。

「それよりメシ」

「はいはい」

 火を付けて肉を焼き始める。やっぱり起きたばかりの時はステーキに限る。塩こしょうで味付け、マッシュポテトを添えれば完璧。

「……ジュルリ」

「カーミルってホント料理のし甲斐がない魔物よね」

「なぜ?」

「毎日毎日、ステーキばかり」

「肉は私にとって必要不可欠。そしてステーキこそ肉の摂取に適している」

 当然のことなのにトトは私を馬鹿にしたような目で見ている。失礼なやつだ。

 私はステーキを3枚食べて食事を終わらせた。満腹感で少し眠くなるが、いまから仕事だ。さぼれない。



 城の周りを何周か歩き、怪しいものがないかチェックする。けして散歩をしているわけじゃない。これも警備の仕事。

「あ、花が咲いてる」

 そういえば最近野菜を食べてない。花も野菜も植物だ。

「パク」

 蜜の味が甘く、おいしかった。同じ花が沢山あったのでいっぱい食べた。甘いものは疲労回復によいと聞く。これも警備をするために必要不可欠。


「〜〜〜そうやね」

「やっぱり鞭はいきなり痛くするんじゃなくて、少しずつ強く」

「そしたほうが攻められてる感じがするで!」

「そのセオリーをあえて崩すのも乙なもの」

「さっすがカーミル。わかってんやん♪」

 メイとワイ談……もとい怪しいことがなかったか報告を受ける。

「あ、カーミルさん」

 途中から新人のヴィベルが飼い犬のアニーと共にやってきた。ヴィベルはこの間羽が生えたばかり。それが嬉しいのか、ちょっとした距離でも飛んでいる。

「…ん、おはようヴィベル」

「もうお昼なのに」

「掃除、終わった?」

「綺麗にするのはあんまり好きじゃないけど、終わらせたよ」

 よく考えてみると、汚い環境が好きなベルゼブブを清掃員にするのは人選ミスなんじゃないだろうか?

「……主人はやさしい?」

「うん、びっくりした」

「チンポ魔人は自分のものに対しては優しいから」

「チン…」

 顔を赤くして伏せてしまう。もしや・・・

「まだ抱かれたことない?」

「……うん」

「っていうか、処女?」

「しょお、しょしょ、処女じゃないよ!」

 この慌てぶり、処女とみた。

 あんまり突っつくと泣くだろうしやめておこう。

 こうして皆に城で怪しいことがなかったか聞いて、一日を過ごす。警備の仕事に休みはない。

 夕御飯はそれぞれ違うものが出る。

 メイはサラダの盛り合わせ(果実つき)。ヴィベルはパスタ。私は生肉。それぞれのリクエストに応えるトトはなかなかすごいと思う。

「あんたらさ、毎日同じもので飽きない?」

 トトは頭を抱えている。

「私の主食にケチをつけるつもりか? 肉は大事だ」

「ワイは飽きるも何も、植物以外は精子がごちそうや」

 頭を殴っておく。

「え? 昨日はミートスパゲッティだったし、毎日違う味だよ?」

 ヴィベルはパスタが大好物らしい。それかリゾットをよく食べる。

「あっそう」

 トトは不貞腐れたように姿を消してしまった。

 食器は出しておけば後でトトが洗う。私はいったん部屋に戻り、シャワー
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