時は現代、JIPANGUは平和の真っただ中を謳歌していた……
1940年代に親魔物派と反魔物派の大きな戦争が起きてから早70年の時が過ぎている。
血みどろの益なき戦いの果てに、親魔物派と反魔物派は互いの相互不可侵条約を結ぶことで一応の終結を迎えた。
現在のJIPANGUは親魔物・反魔物どちらにも与さない来る者拒まず、去る者追わずの中立を保つ立場となっている。
JIPANGUのような中立区は世界各地にいくつかあるが、中立区の中でもJIPANGUは最大の発展を遂げた区の一つと言えよう。
主神教の教会がちらほらとある中で、魔物達が街中を歩き回っているという、はたから見れば非常に混沌とした風景であった。
意外にも彼らがぶつかり合うことはほとんどなく、平和のバランスが崩されることはなかったのだ。
しかし、戦争から70年過ぎた今尚、中立区にも魔物を嫌悪する者達はごく少数だがいるものである……
「えーい、じゃあくなまものめー」
「やっつけろー」
「しゅしんさまのせいぎのキチンシンクをくらえー」
「キャー、やめてやめて、ぶたないでー」
砂浜で数人の悪ガキどもが1体の魔物をいじめている最中であった。『しゅしんさま』と言ってることから主神教信奉者の子供であろう。
ところで、現在の魔物は基本的に人間に敵意を持つことがない。
まして相手は子供、魔物の力では手加減しても下手をすれば怪我をさせてしまうやもしれない。
それを知ってか知らずか、悪ガキどもは寄ってたかってうずくまっている魔物を足で小突いたり棒で突っついたりしていた。
そこに……
「こらっ、お前達!弱い者いじめをするんじゃない!」
「えー、なんでだよー」
「こいつまものだぜー?」
うずくまっている魔物の耳に、野太い男の声が割り込んできたのである。
「魔物だろうとなかろうと、大人数で一人を痛めつけるような真似をするならこっちが相手になるぞ!」
「わーにげろー」
「おまえらなんかしゅしんさまのラリアットでそらにとんじまえー」
よく分からない捨て台詞を吐いて悪ガキどもは逃げていった……
魔物は足音が遠ざかっていったのを聞いて安堵した。
親切な人が通りがかってくれてよかった、と彼女は思ったのだった。
「あ、ありがとうございました、私は海和尚の玄武(くろたけ)と……申、し……」
立ち上がって名を名乗ろうとする彼女であったが、その途中で絶句して宙ぶらりんになってしまった。
でかい。でかいのだ。
男気だけでなく、横幅も縦幅もとにかくでかい人だった。
だが、人を見た目で決めつけるわけにもいかなかった。
魔物である自分を躊躇なく助けてくれたのだから、決して悪人ではあるまい。
彼女は自分にそう言い聞かせることにした。
「あ、あの、よろしければ……その、お名前を……」
「ウス、播磨灘部屋在籍の力士で、四股名は『浦島 隆平』ス。今場所で前頭九枚目ス」
「え、と……ご立派な……体格でらっしゃいますね……」
「ウス、稽古とちゃんこで身体作りました。身長179センチ、体重143キロス」
まさかのまさかでRIKISHIさんのご登場であった。
ともあれ、この親切な男性には共に龍宮へと来ていただかなければ、と彼女は思った。
まあ助けてくれた相手がまさか体重3桁越えのスーパーヘビー級だったとは思ってもいなかったので、いささかの困惑は隠せなかったのだが。
「その…よろしければ、えっと…助けていただいたお礼に龍宮までご招待を……」
「ウス、すんません。午後から稽古の時間なんス」
「あ、それでしたら今日は見学だけという事でも構いませんけども……」
「ウス、それならちょっとお邪魔させていただくス」
第一関門の『龍宮へのお誘い』はどうやらクリアできた、と彼女は確信した。
これで龍宮に招待して好印象を持ってもらえれば、最終的には龍宮を気に入ってもらってそのまま永住、となることも難しくはあるまい。
ならば絶対にこの招待をトチるわけにはいかない。
妙な使命感を抱きつつ、玄武は浦島関の龍宮招待第二関門『龍宮ご招待ツアー』に取り掛かる事にした。
「では龍宮までご案内します。海の中を潜っていきますので、私におぶさってください」
「ウス、おぶさるんスか?」
浦島関はちょっと心配そうに尋ねてくる。
まあ、玄武の外見ははたから見れば若い女性だ。そう思うのも無理はあるまい。
「あ、ご心配なく。私たち魔物って見た目よりも力持ちなんですよー」
「ウス、それじゃあお言葉に甘えて失礼しまッス」
確かに魔物は力持ちだ。並の人間などよりも遥かに強い筋力を持っている。
勿論玄武も魔物であるので、その力は人間とは比較にならない。
「よっと」
掛け声一つで浦島関が玄武の後ろに飛びつき、玄武におぶさる格好となった。
この時玄武はとんでもない
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