その6.5 魔物娘ウォッチ 新妻誕生の秘密

まるで切り立った崖の様な角、
それが艶やかな黒髪を分け生えている。
そんなミスマッチとも言える二つの感触を手で撫で感じながら。
男はそれらをのせた少女の顔を見る。
年のころは十代半ばと言ったところだろうか。

細められた目の奥の、濡れた瞳は真っすぐに男だけを映し、
紅潮した頬はまるで食べ頃リンゴの様だ。
少し勝気そうなその顔は、熱に浮かされたようで年頃に不釣り合いな色香を纏う。
頤(おとがい)から視線を下げると、瑞々しい弾ける様な肌が、
人間の年頃の娘と比べると、だいぶ豊満な肉付きの体を覆う。
更にその上からグラマーなボディを包む様に、
武骨な竜鱗と牙や角を思わせる有機的な錘が配されている。
その切れ目は丁度、茂みの無い綺麗な下腹部まで続いていた。

ともすればその姿は、姫君が怪物に食べられかけており、
その口腔から衣服も無い上半身だけを出して、
あられもない姿を晒している様にも見えた。

瑞々しい肌は汗でしっとりと濡れ、
その肩と豊かな胸は興奮から大きく上下している。
熱を帯びたその顔色と相まって、
男は何処か倒錯した色香をその姿に感じてしまう。

痴態を晒し食べられかけている姫、
その妄想は男の眠っていた保存本能に火をつけたのか、
急速に彼の意志とは関係なく血をある一点に集め始める。

だが勘違いしてはいけない。
食べられそうなのは目の前の少女ではなく、
それに興奮している自分の方なのだから。
そう男は自分自身に言い聞かす。

自分より一回りは年下の少女が放つ熱。
それに浮かされる様に、
彼は肉体の求めに従って頭を撫でていた手を下に下げる。
そして耳の位置から生えている鰭(ひれ)を軽く撫で上げる。
魚で言う鰭骨(きこつ)に当たる鰭に通った骨を、
ワイングラスの淵を撫で上げる様に軽やかにタッチする。

「ンンッ
hearts;
hearts;」
鼻から熱い風が抜け、
情熱的に男を上目づかいに見ていた少女の顔が緩み蕩ける。
茫洋とした瞳、力を失いだらしなく緩んだ頬、
キュッと上がっていた口の端は下がり、其処から透明な蜜をツゥと垂らす。

「ここ・・・良いんですか?」
男は鰭骨の先をピンピン弾きながら、
反対側では鰭の根本付近を愛おしげに撫でさすっていた。

「あゝん
hearts;」
肯定の代わりに嬌声が上がる。
少女は瞳を閉じて、口を大きく開けていた。
そのだらしない口元からは、
少女の口蜜に濡れた舌がテラテラと滑り、
彼を誘う様に時折ピクピクと震えている。

眉根も下がり焦点を失った瞳、
紅潮した頬と荒い息、
間欠泉の様に喉奥から時々漏れ出す甘い声。
そして彼を誘う様に震える舌と、
彼を迎え入れるピンクの貝の様な唇。

男は呑み込みかけた興奮を鼻から噴き出すと、
呻くようにしてその桃色の酒池に顔を突っ込んだ。
何より先に、突き出された舌が男の唇に触れた。
軽くそれを唇でつまんで味わう。

温かく心地よい弾力と、まみれた熱い唾液が男の口周りを濡らす。
蕩け脱力した顔はそのままに、舌がまるで別の生き物の様に男の唇に反応する。
ツプッと伸びて唇を割ると、一気に喉奥まで届きそうな勢いで男の口内を蹂躙する。

「んん?!」

その勢いに男は驚き、一瞬痙攣気味に頭を離しかけるが、
ピタリと絡められた舌と舌が、男のその動きを抑制する。
いっちゃだめ 少女の甘い瞳が、蠢く舌が暗にそう言っていた。

男も判ったと頷くことすら煩わしく、
少女の舌を甘い蜜ごと吸いながら、
頭どうしを近づけて口と口をピタリと合わせ、
行動で少女に応える。

互いに互いを貪るように口内の液体を循環させ飲み下し、
舌と舌を互いの根本や頬、歯茎に走らせ続ける。
鼻から抜ける嬌声とくぐもった水音が洞窟の内部でタップを踏む。

(アア・・・止まらない・・・止まれない・・・・・・いい・・・)
(おいしい・・・おじさん
hearts;・・・おじさんおじさんおじさんおじさんおじさん!!!)

永久に続くかと思われたその接吻だが、生まれ持った種族としての差が次第に出始める。
男は体が出す命令を、相手から与えられる無尽蔵の快楽で塗りつぶされていった。
舌も喉も時折震えるだけで、彼のいう事を効かなくなっていた。
というより、指令を出す頭がただピンクの水音に塗りつぶされていた。
(良い・・・いい・・・・・・イ・・・・・・・・・)

少女は貪欲に彼を飲みほしていた。
彼からの刺激が無くなっても一向に構わず止まらず。
ただ彼の頭蓋を滅茶苦茶にかき混ぜる。

そして少女は暫くして男の顔をしっかり見たくなってそれを辞めた。
ぐったりとしていつつも、男の下半身に巻き付いた少女の下半身が、
しっかりと熱と硬度を保ったとある感触で、男の感想を雄弁に伝えてくる。
熱に浮かされたように男を抱きしめる両手
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