その3 再開は閃光のように!


とある学者の未公開手記。
第13聖都所蔵の押収品、閲覧禁止文献より・・・


かつて世界はおおらか且つ苛烈で混沌としていた。
神と悪魔、鬼と妖、それらの境は非常に曖昧模糊。
秩序などというものは、
極狭いコミュニティの中でそれぞれが独自に築いているだけ。

一山も越えれば言葉も文化も法律も、
種族すら違う者達が日々を過ごし、
時に奪い合い、滅ぼしあってはまた生まれる。

強力な力を擁した神々を中心とした集団が、
それぞれに台頭し拮抗しあう世界。
そんなドロドロの流動するマントルの様な時代があった。

其処に勝利して確たる秩序をもたらしたのが現在主神と呼ばれる存在、
その初代ともいうべき神とその眷属、そしてその信徒達であった。

彼らが勝利した要因、それはとある生物兵器とその管理システムの創造による。
現在魔物と呼ばれるそれと、下した他所の神々をも魔物としてシステムに取り込み、
魔王という管理者によって操るその戦術によるところが大きい。
下した神々の中で彼らのメガネに叶う者は同朋として迎え入れられたが、
主に容姿が純粋な人型でない神々や醜い者は悪魔や魔物として、
そのシステムに取り込まれ主神の先兵とさせられた。
サイクロプスなどの元巨人神族は一部の例外を除けばほぼこうなっている。

また主神は取り込んだ異教の神々をベースとし、
敵対者に対抗するために独自の魔物を新たに創造もした。
太陽神とその代理たるファラオを中心とする砂漠地方に栄えていた古代文明は、
太陽神と敵対していたとある神をベースに創まれたアポピスの投入により、
大量のファラオの死がもたらされ各地は王の不在により弱体化を招き、
結局教団の侵略を防げなくなり滅びた。
魔物としてシステムに取り込まれながらも、
一部の王達は王を守護する墓や部下達と共に、
太陽神の与えた力により、再起を図り深く長い眠りにつくこととなる。

そうして主たる文明や神々を平定、
または取り込み教団は世界を牛耳る存在になっていった。
この神々が闊歩していた神話の時代と、
魔王時代と呼ばれる世界が新たな秩序に突き動かされる時代、
その厳密な移り変わりの時期と様相は、当事者たちのみぞ知るところだ。
教団にとっては古き混沌の時代など必要なく。
勝者によって歴史は書かれるものだからして、
その頃の詳細な情報はもう世界にはほぼ存在していないのだ。

古代文明の残された文献や、その時代から生きる神々に聞けば断片的情報は得られるだろうが、
それらのパズルピースを組み合わせて全体像を描き出したり、
また真偽を検証するのは膨大にして難し過ぎる作業である。
そのような意思と力を両方持ち合わせた奇特な存在は今の所おらず。
そこら辺はふわふわと曖昧なままだ。

ただこの経緯から判るように魔物にも色々な出自のものがいる。
最初から人間管理に作られた敵対的種族、
異教の神や種族が取り込まれたもの、
他の神々との戦いのために創り出されたもの、
魔力の影響で意図せず自然発生したものなど様々だ。

考えてもみれば、
ただの人間を殺しその数と繁栄を管理するためだけならば、
一部の魔物は明らかにオーバースペックであると言える。
そのオーバースペックな魔物達を管理する魔王と、
逆に魔物が栄えすぎて寝首を掻かれぬよう魔王の対としてうまれた勇者、
この二者がただの世界秩序を守るために作られた存在、
滅亡と繁栄の調整役である滅びの振子としては、
明らかに強すぎたのもこの経緯あったればこそであろう。

二対一とはいえ仮にも世界の管理者たる主神が遅れをとる程彼らが強いのは、
彼らの成り立ちを考えればある意味当然ともいえるのだ。

主神は結局のところ魔王と魔物というシステムによって、
神々を総べ世界を治めることに成功したが、
そのシステムによって足元をすくわれたともいえる。
正に塞翁が馬、禍福は糾える縄の如しである。

さて、教団は世界そのほとんどを掌握したが、
それでも世界は広い、主神の秩序は世界の全てではない。

旧魔王時代もジパングの妖怪達は、
魔王の影響を受けつつも人を殺すだけの存在には身を落とさず。
怪異や災害、時に神として人と独自の共生路線を取ることに成功していたし、

砂漠地帯の魔物達もそれは同様だ。
今に比べれば遥かに狂暴で過激ではあったが、
スフィンクスは謎々の正解者を殺しはしなかったり、
必ずしも魔物としての本分を果たしてはいなかった。
彼らが人を襲う理由の大半は、
眠りにつく王とその所有物の宝を守るためであった。

精霊信仰や蛇神信仰などを始め、
マイナーな土着信仰は依然として残っていたり、
エルフやドワーフなどの種族は、
依然として自分達のコミュニティを維持していた。

それをもって教団が存外に寛容だ。などと結論付けるものはい
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