その2 堅い男はモテモテなのか?

パパ パパ

どうした?

あたしね、おっきくなったらパパのおよめさんになる。
それでね、おひめさまだっこしてもらって、
おはなばたけではなかんむりをつくってあげるの。

そいつは素敵だ。だが、もう少ししたらパパはママと遠くに行かなきゃいけない。
だからその気持ちは何時か出会う王子様のために取って置きなさい。

どこにいっちゃうの? いや、いかないでパパ、ママ。

わがままを言わないの、ママもそうやってパパを見つけた・・・
大丈夫、すぐに貴方をお姫様抱っこしてくれる王子様が現れるわ。



少女は走る。走りながら昔の両親との会話を思い出していた。

(うそつき・・・)

彼女は今まで幾人かの男に出会い、
そして本能に従い押し倒してきた。
普通なら其処で話はお終い、めでたしめでたし・・・
だが、彼女の場合そうはならなかった。

(どうしてうまくできないんだろう。
どうしてみんなをきずつけちゃうんだろう。)

彼女は涙で滲む視界の中、目の前の木々を避けながら這って進む。

(おねえちゃん。おこってるかな・・・)

彼女を助けたい、そう言って近づいてきた青白い綺麗な女性の事を思い出す。

(むずかしいびょうきだっていってた。
なおすにはうまれかわるしかないって・・・
うまれかわるっていたいのかな・・・くるしいのかな・・・)

突然怖くなって彼女は逃げ出してしまった。

(ばしゃのおじちゃんとおねえちゃんもおこってるよね。)

檻から逃げる際、彼女を運んでくれていた人達の商売道具である馬車を壊してしまい、
怒られるのが怖くて彼女は一目散にその場を離れてしまう。

そうやって道のりを引き返していたら、御腹が減ってしまったのだ。
彼女は森になる実や草、キノコの類を片っ端から食べていった。
傘の部分が人の顔みたいな模様のキノコだけは、
睨み付けられてるようで怖くて手が出なかったが、
それ以外の様々な自然の恵みで、彼女は腹と魔力を満たそうとしていた。

(おいしい! このきのことってもおいしい・・・あれ・・・なんだが・・・ねむい・・・)

だが・・・それらにマタンゴもどきというキノコが混じっていたのが問題だった。
その作用は魔物を催眠状態にし、とある思考で頭を満たしてしまうというものだ。

(きのこのこのこ きのこのこのこ おいしいきのこは・・・)

クンカクンカと鼻を膨らます彼女の鼻に・・・
進行方向の先より芳しい香りが漂ってくる。
それは手つかずのキノコの匂い、清純な証、愛しのDTスメル。

(あっち・・・おいしいきのこ・・・げんきのこ・・・むにゃ。)

彼女は半ば朦朧としたまま、進行方向へと猛然と突進を始めた。
一切の加減も遠慮もなく、大木をへし折り大岩を砕き、
それらを周囲に吹き飛ばしながら一直線に進み続ける。

森を抜けると辺りには一層漂うキノコのかほり、
そして見回すと新鮮手つかずなキノコが何本か確認できた。
その中で一番近いものに彼女は突進する。

「うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

目標の近くをうろついてた片方が引いていく。

(あのキノコくさい・・・だめ・・・こっち。)

「メッシャァアアアア!!」(訳キノコーーー。)

理性を失い、ワームという力の権化がリビドーのままに相手を押し倒そうとした。
だが、逃げるどころか彼女に対し一歩相手が踏み込んだことにより、
二人は思いっきり頭をゴッツンコさせることとなった。

(ギャン!!)

瞼の裏に星が飛び、そのショックで彼女は気絶しマタンゴもどきの催眠状態からは解放された。
そんな彼女の角をコンコン叩いて起こすものがいた。
起きた彼女の目には一人の浅黒い男の顔が映る。

「んきゅ? ・・・だあれ? おじさん。ここ・・・どこ?」
「お・・・おじ?! ・・・まったく、
打ち所が悪かったかショックが強すぎたか。
半分は自業自得ではありますが、
こっちもやりすぎたかもしれません。大丈夫ですか? お嬢ちゃん。」

そう言ってその男は彼女に手を差し伸べてきた。

周囲を見ると地面が砕けて大きく陥没している。
何となくだが、彼女はまた自分がやらかしてしまったのだと気付く。
なのに目の前の人は怒るどころか・・・
こんな自分を女の子として案じるてくれている。

(おじょうちゃん・・・おじょうちゃん・・・)
彼女は何だかとってもおかしかった、
体が熱いような寒いような不思議な感覚だ。
だが、心臓は早鐘のようにドキドキ鳴り始めてる。

(このかんじ・・・う〜〜、だめ! だめだよう。)
マタンゴもどきの後遺症なのか、彼の体臭がとても良い香りに感じられる。
食事の途中だったこともあり、腹5分目程だった体がもっとよこせと抗議の声を上げた。

(は! うう・・・きこえちゃったかなあ。)
彼女がそっと見上げると浅黒い男
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