王魔界の広大な大地と山々、それを揺るがす巨大な影達が交差する。
「ィィィィィヤアッ!」
「ッゴオゥ!?」
タロスの巨体が宙を舞い、そのまま岩山の岸壁に叩き付けられる。
ビッグシルバーの正拳突きで一気に吹き飛ばされたのだ。
その一撃は、ただの大質量攻撃というだけでなく、
インパクトの瞬間に魔力を腕にエンチャントする事で破壊力を上げていた。
「ふん、文献通りだな。彼は攻撃と防御の際、
魔力で腕をコーティングしている。人間や魔物にも同じような運用をするものはいるが、
あのサイズでそんな小細工までするかよ。」
「劣勢なのにうれしそうですね。マスター。」
「劣勢? まだまだこれからだよエンブリオ。タロス、翼を出せ。」
タロスは青銅色の巨体を震わせ立ち上がると、
肩と背中のアーマーを展開し、機械的な翼を出現させる。
翼にはびっしりと風のルーンが記され、
また内部機関は周囲の魔力を風と共に取り込むことで、
半無尽蔵に燃焼物質を生成、動力として噴出する魔術式が組まれていた。
爆風と爆音を響かせながら、タロスはその巨体で大空を舞う。
「爆撃しろタロス。灼岩の青銅(カルコス・ラヴァ)」
タロスの胸部が開き、そこから燃え盛る巨大な金属片が次々に打ち出される。
それは飛行のために作られた燃焼物質の残りかすであり、
高い硬度と不安定で爆発するという特性を持った未現物質である。
タロスはそれを体内で生成し、貯蔵することで炸裂弾へと転用できるのである。
上空からの灼岩弾に対し、ビッグシルバーは人差し指と中指を立て。
そのまま腕を上空へと突き出した。
すると指先から青白いスパークが走り、そこから細短いビームが発射される。
細いといってもサイズは巨人のそれ、直系は1mにもいたろうという大口径のビームだ。
そのビームはタロスの灼岩弾二・三発を巻き込み相殺する。
ビッグシルバーはそのビームを腕を交互に前に突き出す形で連射した。
射線上の灼岩弾は空中で全て爆砕され、ビッグシルバーの周囲にのみ降り注いだ。
「魔術式もへったくれもない。ただ魔力を純粋にエネルギーとして打ち出す。
原始的極まりない。だがやはりあのサイズでやられると兵器だな。
ふふふ、ぞくぞくするなあ。やはり貴殿は最高だぞジャック。
タロス、ロードス機関始動だ。出し惜しむな!!」
「ヴァッ。」
シェムハの指令にタロスが吠える。
空中で静止したタロスは突如その体を赤く光らせる。
そして姿がじりじりとぼやけ始めた。
それは陽炎、タロスの発する高温が大気を歪めているのだ。
「この状態では長くもたん。一気に決めるぞ。」
「ゴオゥ。」
タロスは太陽のように光と高温を纏い、周囲を焼き照らす。
「赤き陽神(ヘリオス・エリュトロン)モード発動、突っ込めタロス。」
Drは何時の間にか宇宙服のような耐熱服を着込み、
その内側から魔術無線でがなり立てる。
タロスは両腕から内部の熱を解放し、レーザーのような熱線として撃ち出した。
初弾、ビッグシルバーはその巨体を感じさせぬ軽やかさで宙返りしやり過ごす。
次弾、弧を描くように右腕を回し受けて弾き飛ばす。
三・四 左腕でも同様に弾き、さらに続く熱線を両掌で真下に叩き落した。
弾かれた弾は周囲を吹き飛ばし、燃え上がらせる。
空手の受けの演武を思わせる動作でことごとくタロスの熱線を弾いていく。
シェムハは爆風で吹き飛びそうなところを、
がっちりエンブリオに抱えられて固定されていた。
だが、弾かれながらも間合いを詰めたタロスは、
身を傾け滑空して突っ込んできた。
一気に加速してタックルを仕掛ける。
落下を利用したそのスピードにビッグシルバーも対応が遅れる。
二体の巨体が交差し周囲に地響きを打ち鳴らす。
「ヘアッ!!」
「ゴオオオオッ。」
「捕らえたぞ。そのまま焼き尽してしまえ。」
タロスに捕まり、そのまま鯖折のように抱えられるビッグシルバー。
溶鉱炉のようなその超高体温はビッグシルバーといえど無事ではすまない。
体を引き抜こうと掴みかかるが、その高温ゆえまともに掴む事も出来ない。
「ジャッ!!」
独特の叫びをあげ身をよじるビッグシルバー、
タロスはその両手を彼の背の後ろでがっちりロックしますます力を込める。
一方、遥か前方
其処では巨人が一人でダンスをしている。
いや、一人ではない。相手が小さいのでそう見えるだけだ。
まるで生きた砲弾のように突っ込みその巨体を揺らがせるシュテン。
だが負けじとゴリアテも怪力と正確さを合わせた一撃を叩き込み、
シュテンを砲弾のようにふっ飛ばし返す。
すっ飛んで岩山と大地を砕き砕き、狭く深い溝を形成してようやく止まるシュテンの体。
埃っぽい体を叩いて立ち上がると、プッと赤い血の混じった唾を吐いて一息つく。
「やれ
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