砂浜に響き渡る勝利の哄笑。
一通り笑うとシュカは得意満面でウロブサを見下した。
先程から黙って顔をうつ伏せているウロブサ、その肩は心なしか震えている。
「くやしいか?だがあんたはよくやったよ。当代最強の名は返上してもら・・・」
「ぶふぉっ・・・ぶは・・ぶふ〜〜〜〜〜・・・」
シュカが言い切る前にウロブサの肩がいっそう大きく震え、
口元に手をやっているがそれでも吹き出すのを抑えていられぬようである。
「いかんいかん・・・もうちょっと我慢しとるつもりだったんじゃが、
御主があまりに滑稽での。思わず吹いてしもうたわ。」
「・・・」
シュカは事態を飲み込めぬが、それでも自分が嘲られていることくらいは解る。
ウロブサを説明しろと言わんばかりに睨み付ける。
そんなシュカの視線を涼しげに受け止めているウロブサも、
相手の意図を察して咳払い一つした後に語り始める。
「相手がまいったしとらんうちから勝利宣言とは片腹痛い。
御主にも解り易くはっきり言おう、この勝負、ワシの勝ちじゃ。」
「呆けたか婆さん?それに言葉をそっくり返すぜ。
私はまだ、負けちゃいない。負けたのはあんただ。」
「与一は倒れ、弁慶は瀕死、義経も捕らえられ、浜の兵もほぼ全滅。
手札は海上の船団の残りと景清のみ、そして草薙の剣が砂鉄の海を破れない以上、
自分を倒せる術は無い。だから自分の勝ち、そう思う取るんじゃろ?」
「違うとでも?まさかさっきの鏡を使って閉じこもるつもりか?
それでお互い決め手が無いから引き分けなどというんじゃあるまいな。」
「まさかまさか、元々この術比べは御主の放蕩をいさめるためのものじゃ。
引き分け、判定の余地を残すようなやり方では御主を説得できまいて。」
「それでもなお勝つ術があると?面白い!とことんやってやるよ。」
シュカは腕を振り上げるとそれを思い切り景清とウロブサに向かって振り下ろした。
上空の砂鉄の塊から、連続して押し固められた砂鉄が隕石のように降り注ぐ。
ウロブサは腕を組み再びどろんと中空に消える。
その場には景清のみが残され、景清は隕石郡を飛んでくる端から叩き切る。
しかし、斬り飛ばされて彼の後方へ散った砂鉄が再び動き出している。
前門からの隕石と後門から伸びる砂鉄の腕、横に跳び退って挟み撃ちを回避するが、
シュカは攻撃の手を休めない。さながら大砲の雨のように隕石を降らせ続ける。
撃たれた砂鉄は自分で動いて上空に再び回収され、いくら撃っても弾が尽きる気配はない。
景清は浜をぐるりと回りこむようにして攻撃の手をかわし続ける。
シュカは景清が走る先に、砂鉄で浜一面を塞ぐ壁を用意していた。
景清が近づくと壁は針山のようにその身を尖らせ、景清を串刺しにしようとする。
景清は自分に迫る無数の鋭い針に対し、体幹をほとんど動かさず腕だけを高速で動かした。
手元が消え、彼の前面には光る剣のつくる斬撃の軌道だけが僅かに確認できる。
それはまるで夜に花火を振り回して出来る残像のようであり、
昼間だというのに確認できる光の帯がしだいに重なり半円を形成する。
数多の剣閃がつくる物理結界が彼の前面から迫る全てを微塵に粉砕する。
砂鉄が再びシュカのコントロールで彼を襲う前に、
景清は壁を突破し再び隕石から逃走を開始する。
「よく逃げる。実際たいしたもんだが、逃げてばっかじゃ勝てねえぞっと。」
シュカは隕石での攻撃を諦め、全ての砂鉄を一度上空に集める。
最初にやったように圧倒的質量による全面攻撃を行い捉えるつもりなのである。
だが、シュカがそれを実行する前に海上からの矢が彼女を襲う。
「見えてんだよ。奇襲は通じないっつうの。」
矢は空中で砂鉄に捕まりその勢いを殺される。
だがこりずに引き絞られる無数の弓、それを感知したシュカはポリポリと頭をかいた。
「めんどくせえ。無駄だって。」
めんどうになったのか、シュカは砂鉄で海と砂浜の間にドーム状の壁をつくり、
何本矢が飛んでこようが浜には届かないようにしてしまう。
直後に飛んできた無数の矢が、作られた砂鉄の壁に刺さり、
黒い卵の半分のようだったそれをハリネズミのような面持ちに変えてしまう。
「おやおや?どうした。ただの矢程度、御主ならわざわざ砂鉄を使うまでもないはずじゃが?」
空中から響くウロブサの声、だがそれに対しシュカは応えない。
その顔はどこか忌々しそうに歪んでいる。
「御主の体を鋼と化す術、早さといい硬さといい申し分ない。
あれはただの変化ではなく、先程の精霊からもらっている大地の力を利用したものじゃろ?
それ故、同系統の鉄大瀑布に大地の力を全て割いておる現状では、
体を鋼に変ずることができんのじゃ。違うかの。」
「年の功って奴か?良い洞察だ。だがそれがどうした。
この術は攻撃も防御も感知も全てそれだ
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