幕間の2〜当代・狸頂上決戦2

与一の狙撃と義経の攻撃で足止めされ、弁慶の一撃を打ち込まれる。
この三者の息の合った攻撃をシュカは捌くことが出来ない。
何とか三者の連携を潰そうと、各個に撃破しようとするがそれもままならない。

狙撃が来ることを承知した上で強引に義経を潰そうとしたが、
距離を詰められると義経は神通力で瞬時に距離を取ってしまう。

「こんのぉー。」
「神足。」

捉えたと思った攻撃は空を切り、義経は間合いの外へ移動している。
ならば与一を潰そうと海上の船に飛び移ろうとするが、
船の上という狭い足場のうえに、その足場はウロブサの術で作られたものなのだ。
必要な足場を消されたり、飛び上がったところを与一の狙撃で体勢を崩され、
結局は周囲の船から矢の雨を浴びることとなってしまった。
シュカは歯噛みしながら水の中に逃れ、浜に歩いて上がることとなる。

「水も滴る良い女じゃのうwシュカよ。」
「うっさい婆!絶対吠え面かかしてやんぞ。」

ウロブサの冷笑を浴びシュカは空に向かって大きく吠える。

「まあ、そろそろお遊びもこの辺にしとかんかの?」
「へえ、あの二人に聞いてた?まだ先があるって。」
「いいや、大道芸を見に行くのに先に内容を聞くなんて野暮をワシはせんよ。
じゃがの、今のところ見せた芸当だけではあの二人には勝てんはずじゃ。」
「成る程、まあその通り。こっちも良いもの見せてもらったし、
そろそろお返しに一発、面白い芸を披露しないとな。」
「楽しみじゃの。」

シュカは両掌を合わせて目を閉じる。
すると瞬時にその姿を巨大な狸へと変貌させる。そのサイズはまるで恐竜並みだ。
しかもただの狸でなく胴体は茶釜になっている。
牙を剥いた化け狸は膝を曲げてためとつくると、
その巨大さを感じさせぬ身軽さで天高くその身を躍らせた。

「秘術、茶釜大回天(ちゃがまだいかいてん)。」
空で頭と尾、そして脚が茶釜に埋まっていき其処には巨大な茶釜だけが残る。
まるで空飛ぶ円盤の様なそれは、独楽の様に回転を始める。
その速度はしだいに上がっていき、微妙な風きり音を茶釜の周囲に発生させる。
ゆっくりと舞い降りてきた巨大な鉄独楽、釜の腹の部分が砂と接する。
するとまるで慣性を無視した動きで急加速し、高速で弁慶に突っ込んできた。
獲物のサイズが大きくなったからか、弁慶は背から大金槌をぞろりと出し。
彼の力を持ってすら重そうに振り上げたそれを、迷い無く大釜に振り下ろした。

激突した両者の間に火花が散り、かん高い金属音が響き渡る。
弁慶の大槌は高速の回転により勢いを逸らされ大きく弾かれる。
釜が弁慶を轢くかと見えた刹那。弁慶の後ろにいた義経が弁慶と共に跳んだ。

「外したか・・・本当に厄介な神通力だな。まあいい、それならこっちだ。」

茶釜は方向転換すると、与一の船めがけて真っ直ぐに疾走する。
その速度は海上に出ても一向に落ちず。
進路上の軍船の群れを粉砕しながら船の先頭に立っている与一を吹き飛ばした。
葉っぱへと戻る船団と与一。

「ぬう・・・」
「まず一人、どうする?この状態の私に傷をつけた奴はそういない。
あのでかいのも小さいのも、逃げる意外には出来ることが無いぞ?」
「やるのう。攻防一体の良い術じゃわ。」

縦横無尽に飛び回る巨大な鉄塊が海上の船団と、砂浜の兵士を無差別に粉砕していく。
ウロブサの化けた軍勢はその茶釜に為す術が無い。

「やっぱり無理よ。アレを攻略するなんて。」
ヤオノが半ばパ二クりながらランに叫ぶ。
「大丈夫・・・たぶん。」
「たぶんて何よたぶんって。」
「私もあの三人より強い武将を見たことは無いわ、でもね・・・
ウロブサ様の声よ、まだ本当に切羽詰ったそれではないわ。」

茶釜が飛び、逃げる義経と弁慶を追い詰める。
そんな中、空中にウロブサの声が響き始める。
「祇園精舎の鐘の音・・・」
「なんだいそりゃ?念仏かい?」
シュカも一応警戒し、回転はそのままにその動きを止める。
「諸行無常の響きあり・・・」

ヤオノも困惑した顔でランに尋ねる。
「何ですあれ?」
「確かあの歌は・・・平家の・・・まさか!」

「沙羅双樹の花の色・・・」
周囲の困惑をよそにウロブサの歌は続く。
「盛者必衰のことわりをあらわす・・・」
そこまで唱えたところで砂浜の一画が崩れ、そこから干からびたミイラのような手が突き出る。
その袂に今まで消えていたウロブサが現れ、懐から出した銭をその手に握らせる。
手は小さな穴を残す形で砂浜にズボッと消えてしまう。
その穴からはしわがれた声が聞こえてくる。
「ありがたや。」
それに応えるようにウロブサもカカと笑う。
「じごくのさたも銭しだい。」

あっけに取られていたのか手出しせずにいたシュカ、
しかし敵の本体が現れたなら好機とウロブサに突進する。
ウロブ
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