聖夜のハロウィン

12月23日17:30頃
埼○県某所カフェにて
クリスマスツリーの様に電飾が飾られた木々が並ぶ町のある一角にある、小さなカフェ。
その店の隅で話す男性と女性。
二人が話しているのは、昨年のクリスマスデモ鎮圧隊の話だった。
「去年のデモ鎮圧隊、かなり多くの人が余っちゃったのよね」
「独身の子が?」
女性の言ったことに、男性がたずねる。
「そ。去年で3回目だからか、相手の方も段々来ることが分かってきたらしくて…去年なんかエアガンもって攻めてきた人なんかもいてさぁ…」
「ちなみに今その人は…?」
「ん?…ああ、今は亜梨子ちゃんと一緒に仲良く暮らしてるわ」
「ふーん………」
男性の方が考え込むかのように無言になる。
そんな男性を見て、相手の女性はそっと置かれていたアップルティーを口元に運ぶ。
「…なあ、ところでさ」
男性が口を開く
「どうしたの?」
「ハロウィンの時、どれぐらいの子がくっついたか分かるか?」
ハロウィン。
10月31日に行われるイベントの一つである。
今ではクリスマスよりも栄えており、各個人それぞれの仮装を借りてインスタグラムやツイッターに載せたりすることで、とてつもない経済効果のあるイベントとなっている。
実際、クリスマスほどではないといえども、その経済効果は目に見えて大きくなっている。
しかし、所詮はパーティーであり、カップルがいちゃつく空気はない。
そのためか、実際にくっつく例は数えるほどしかない。
「えっと…確か2、3人だったわ。なんでそんなことを?」
「いや、少し気になってね…」
そう言って今度は男性の方がコーヒーに口をつける。
「どうすればいいのかなぁ…」
「そうね…」
ともに考え込んでしまう二人。
しばらく黙り込んでいたのち、ふと男性がつぶやいた。
「クリスマスとハロウィンが逆だったらなぁ……」
「…!それよ!」
女性が大声を張り上げていった。

視点変更 一正side

「あーつかれた…」
「おつかれー」
「おつぁーす」
「お疲れ様でーす…」
やはりいつもの仕事だからだろう。
別段大変な仕事をこなしているわけではないが、やはりパソコンの前でずっと同じ体制はきつい。
「というか、今日お昼休みないのにみんな同じ時間に休むんだな」
「なんだかんだいつも通りなんですよね」
「それなー、ほんとそれ」
「…………(モグモグ)」
俺こと明田一正(めいだ いっせい)は、会社の同僚たちと話しながらコンビニ
弁当(唐揚げ海苔弁当。320円+税)を口に運ぶ。
ちなみに言葉だけでわかりづらいかもしれないが、先程のセリフ群の一番初めが俺、二番目は俺と気が合う呑み友達の利沢悠人(りざわ ゆうと)、3人目が会社内でチャラ男と呼ばれている倉石誠也(くらいし せいや)、そして最後が無口でオタク気味なのに彼女持ちの理島与太郎(りじま よたろう)である。
朝のうちに買っておいた弁当は昼休み時間(俺の会社は12:00からが昼休み)が始まった時点で給湯室の据え置き電子レンジで暖めておいてあるため、少なくとも冷たいということはない。
ただ、漬け物まで暖められているのが残念だが…
「にしてもまさか、今日この部署に4人も来るなんて思わなかったわ」
と俺が驚く表情をしながら話す。
「いや〜、俺も4人ぐらい来ると思ってましたよ」
そう言うのは誠也。
食べているのはコンビニのサンドイッチだが、それで足りるのだろうか。
「他の部署にも各2、3人来てたよ」
「まじっすか?でもやっぱ内の部署の人多くないっすか?」
「確かに」
悠人の情報に驚く誠也、いつも思うがオーバーリアクションじゃないか?
ちなみに悠人のお昼はコンビニの冷やし中華弁当、『冷たいものは寒い日に食うのがうまい』は悠人談。
「…………(ゴハンモグモグ)」
そして黙々と弁当を食べる与太郎。
与太郎はこの4人の中で唯一の彼女持ちだったりする。
そのためかお弁当も手作りだったりする、中身の彩りが鮮やかだからきっと作ったのは彼女さんだろう、いい彼女さんである。
「というか、今日与太郎が来るとは俺思ってなかったわ」
「…そうですか?」
「いや、だって今日みたいな休日、しかもイベント日にまさか彼女持ちのお前が会社来るなんて思いもよらなくてさ」
そう、今日は12月24日。クリスマスイブである。
しかも今年は月曜日、前の日の天皇誕生日の振替休日のため、多くの会社が休み、もしくは休日出勤である。
うちの会社は別段ブラックなわけではなく、ほどよい仕事量を単純にこなすだけの職場(といっても大変だが)で、休日出勤日が非常に多いことはない。
それでも出勤してくるのは、やはり独り身で予定がホワイトクリスマスだからだろう。
「まさか…彼女さんともめてるんすか!?」
俺の言葉に反応し、プライベートなことを与太郎に聞く誠也
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