読切小説
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溺愛ライフ
 仕事を終えて自宅へ帰ってくると、出迎えてくれる人がある。
 ただそれだけのことで人間はずいぶん癒やされるものだと俺はずいぶん長い間忘れてしまっていた。

「おかえりなさいませ、旦那様。お風呂になさいますか、それともお夕飯をお先に?」

 床まで届くほどの長い髪が印象的な美女、翠さんがこうして毎日出迎えてくれるようになって、俺の生活は人間として必要な潤いを取り戻したのだ。

 ある日、家の前に和服をはだけた見知らぬ豊満美女が倒れているのを見かけた時には、まさかその女と一緒に暮らすことになるとは思わなかったものだ。
 失神しているようだったので救急車を呼ぼうかとも思ったが、艷やかで滑らかでサテンのように手触りが良くて、さながら宝石のように輝く黒髪を見て触れてしまうと、その芸術品を他人に見せるのがどうにも惜しく、つい家に連れ込んでしまったのだ。
 少し介抱してやるとすぐに意識を取り戻し、まず名前を名乗り助けてくれたことへの礼を述べ、次に、行き場がないのでしばらくこの家においてくれないかと、遠慮がちに切り出してきた。
 そこで断るようならそもそも家に入れたりせず、どこかに通報していたはずだろう。俺は大して悩みもせず彼女を受け入れ、それ以来彼女と新婚夫婦のような生活をずっと続けているのだ。
 どうも普通の人間ではないらしい翠さんのことは、他の誰にも秘密にしている。そのせいで、こうして毎日できるだけ早く帰宅するための言い訳がしにくく、要らない所で骨が折れて仕方ない。疲労のあまり、俺は彼女の胸元に倒れこんだ。

「あらあら、お疲れですか。じゃあ、ご飯より先に……私です、ね?」
「ああ……もうこの仕事やだよ。もっと早く帰ってきたいのに……」
「はいはい。大丈夫ですからね。私と一緒に、ベッドへ行きましょうね」

 誘われるがまま、俺はベッドへ寝かされる。頭の下には程よく肉がついて心地よい弾力の、翠さんの太腿がある。まるで耳かきをする時のように、正座で膝枕をしてくれているのだ。

「ふふ。じゃあ旦那様の大好きな、おっぱいをあげましょうね。いっぱい癒して差し上げますから、たくさん飲んで、元気になってくださいね」

 そう言って、身体を倒してくる。普段から両肩を露出している翠さんは俺が求めればいつでもこうして胸を出して吸わせてくれる。
 大きさの割にそれほど垂れ下がってこない大きなおっぱいが視界を専有して、余計なことは何も考えられなくなる。
 小さめながらしっかり硬くなった赤い乳首を無心で口に含んだ。

「んっ……そうそう、もっとちゅぅって吸って、下さい……!」

 いくら乳がでかいといっても妊娠してはいないので、どれだけ熱心に吸ってみても母乳は出てこない。
 しかし、だからといって翠さんの授乳はその魅力をいささかも減じない。
 現実世界の辛いことを綺麗さっぱり忘れて、俺はただ彼女の母性溢れるおっぱいに夢中になる。
 こんなに大きくて若々しくて、母性と愛情がいっぱいに詰まっているおっぱいからミルクが出ないのが、なんだか不条理にすら感じられる。
 吸うだけでは刺激が足りないのだろうかと、俺は右手を伸ばして今まさに吸っているムネを掴んでみる。
 手に力を込めると柔らかい肉に指が沈み込んで、たっぷりした乳脂肪と、その下のしっかりした乳腺の存在が感じられた。

「あ、いいですよ、もっと揉んで……私のおっぱい、好きにして下さい。これは旦那様のものなんですから……ね?」

 優しく微笑みかけてくれる翠さんの表情はまさしく慈母の如きで、俺の心から一切の不純物を流し去ってくれる。長い髪の奥、漆黒の瞳が穏やかな光を湛えている。
 その美しい髪が、ひとりでに動き出した。
 と言っても、驚くには値しない。翠さんは人間ではない、毛娼妓なのだから。
 初めて見た時には肝をつぶしたが、しかし勝手に動くからといって彼女の極上の黒髪が美しなくなるというわけではない。
 シャンプーのCMに出てくるようなのとは比べ物にならない艶は人外の力ゆえかと、むしろ気持ちよく納得できたくらいだ。
 妖怪の証を見ても俺が怖がらなかったことで、翠さんは妻としてますます献身的に尽くしてくれるようになった。
 現に今も、そのベルベットより高貴で繊細な髪で俺を愛してくれている。
 細く長く繊細な髪が、授乳の快感で勃起しきった俺の男性器に巻きついているのだ。
 丁度自慰の時に竿を握る手のように、髪は優しく巻きついて根本から先端までをしっかり撫でてくれる。
 一体いかなる技によるものか、髪同士はどんなにうねっても互いに絡まりあわず、滑らかなままでいる。 
 もちろんその気持ちよさは手淫とは比べ物にならない。
 嫋やかな髪が、触れるか触れないかのところでカリを責め竿はしっかり擦り、と緩急をつけて髪コキされると頭を太腿とおっぱいに柔らかく挟み込まれているという体勢も相まって全く抵抗ができなくなる。
 昨晩もこうしてさんざん搾ってもらったはずなのだが、翠さんのおっぱいが美味しすぎるのと髪が美しすぎるのとで余りにもあっさりと我慢汁が漏れだす。
 束ねた髪の間で透明な粘液をヌチャヌチャ言わせて、一層熱烈に髪で愛してくれる。

「ふふ。もう透明なのが出ちゃってます……いいですよ。私の髪に射精して下さい。全部受け止めますから、ね」

 そう言われると、まるで何日も抜いていなかった時のような焦燥感が生まれ、髪での搾精に抵抗できなくなる。
 髪同士が擦れ合う音すら艶かしく、俺は今日帰ってきてから最初の精液を求められるがままに捧げた。
 勢い良く白濁液が噴き出て、翠さんの髪に降り注ぐ。
 真っ黒な髪に白い汚液のコントラストが鮮烈で、見ているだけでも精巣でザーメンが増産されそうな気分。

「あはぁ……いっぱい、出てますね。いいこいいこ。
 溜まってるの、全部出して下さい。その分気持よくして差し上げますから、ね」

 乳首を吸わせながら、翠さんは更に頭を撫でてくれた。
 もう完全に翠さんの子供にされてしまったような気分で、俺は四肢の力を抜く。
 射精してまだ萎え切らない男性器を、翠さんの髪は離してくれない。

「まだできますよね。おちんちん、柔らかくなってませんし。……ほら、もう少しがんばってくださいね」

 俺のスペルマを吸収して一層ツヤを増した髪が、ベトベトの竿を抱きしめる。
 一度絶頂して間髪入れずにまたしごかれるのは少し辛いが、視界を独占するおっぱいと後頭部を優しく支える太腿とに思考力を奪われ、されるがままになってしまう。

「……あ、ちゃんと勃起できましたね。えらいえらい。この調子でもう一回、射精しましょうねぇ」

 翠さんに「えらい」とか「いいこ」とか「がんばれ」とか言われると心が暖かくなって、とても安らぐ。
 こんなに穏やかな心持ちで射精できる自分は世界一幸せだという確信を新たにする。
 愛されたいという本能に従って硬くなった男性器を、翠さんが有り余る母性と愛情でもって慰めてくれる。
 目の前のおっぱいに餌付けされながらこうして愛されるために、俺はきっと生まれてきたのだろう。

「……かわいい。かわいいですよ旦那様。おっぱい吸いながら、こんなにおちんちんガチガチにして。
 もっと甘えて下さい。ほら、もっと……」

 ずっと吸い続けていた方の乳首から口を離し、もう一方のおっぱいに吸い付いてみる。
 どちらも同じような感触だが、しばらく触れられていなかった分こちらのほうが少し感度がいいようだ。
 軽く甘噛みしてみると、翠さんの身体がびくんと跳ねた。

「ひゃ……! ん、ふふ、もう、しょうがない子……」

 乳首を責められて顔を真っ赤にしながらも、優しい表情と責める髪の蠢きに揺るぎはない。
 二回目の射精に向けて、またゆっくりと性感を昂らせてくれている。

「あ……あ、もう、出ますね。しっかり下さいね、旦那様の大事な精液……」

 細い髪が亀頭を撫でて先端が鈴口を突くと、その刺激が限界だった。
 一回目と同じくらい多量の精液が髪に撒き散らされる。
 降り注ぐ慈雨に長い長い髪が悦んでいるかのよう。思うがままに男を射精させられて、翠さんも満足げ。

「やった。たくさん出せましたね。えらいですよぉ……
 まだ頑張れますよね? 次は、私のナカに……ね?」

 どろどろの子種汁を吸い取って、黒髪が妖しく輝く。
 竿に絡みついていたものの一部が名残惜しげに離れ、俺の両手両足を捉えに来る。
 何十本かの髪で手首と足首を拘束し、翠さんはそっと立ち上がった。
 俺の頭を優しくベッドに横たえ、身体を跨いで膝立ちになる。
 腰の帯は緩められ、和服の裾はしどけなく開かれ先ほどまで俺の後頭部に触れていた魅惑の太腿を惜しげも無く魅せつける。
 俺を見下ろす黒い瞳の中で、母性と欲望がない混ぜになっている。
 口数少なく、喋るのももどかしそうに翠さんは股を露出し、潤みきった女性器を近づけてくる。
 髪の毛で竿をクイッと引っ張られ、鋭い刺激に身体を跳ねさせかけた瞬間、亀頭が膣に飲み込まれた。
 両膝と手のひらをベッドについて、ちょうど押し倒すような姿勢をとって翠さんはゆっくり騎乗位で搾精しはじめる。
 男性器には髪が巻き付いたままで、膣壁と竿とが擦れるたびに微細な刺激を付け加え、新婚セックスをより逃れがたいものにしている。
 どうも、女性器内に挿入した状態でも髪の操作は可能らしく、腰を上下させながらも時折髪を引っ張り、敏感な部分にちょっと体重がかかるよう位置を調整してみたり、逆に、Gスポットというのだったか、翠さんの感じやすい膣内でも特に弱い部分に俺の亀頭がぴったり当たるようにしてみたりと、やはり毛娼妓とのセックスは普通のものとは一線を画す。
 髪のことを抜きにしても、さんざん胸を吸われて和服にシミが出来るくらい濡れた肉筒は熱く昂ぶり、三度目の射精を求めて男根をきゅうきゅう締める。
 胸の大きさとは裏腹に、体格の割にやや小さめな膣道は俺のもので押し広げられ、元に戻ろうとして強く収縮する。
 何度ハメても緩くならない、どころかだんだん俺のに合わせて変形してきているようにも思える膣が、髪と同じくらい気持ちいい。
 屈服の予兆を感じ取ったか、翠さんが俺の耳元に口を近づけ、濡れた吐息とともに囁いてきた。

「もう……いきそう、でしょう? き、ひっ、きょうもそのまま、ナカに、お願いします……私のしきゅ、子宮、旦那様の濃い精液でどろどろに汚して、ください、ね」

 翠さん自身もかなり余裕が無くなってきているようで、切れ切れな言葉はほとんど喘ぎ声と区別がつかない。
 髪と膣とで愛され、トドメにそんないやらしいおねだりをされては我慢できるはずなど無い。
 夫の当然の義務として、俺は翠さんに生中出しした。
 女を孕ませるという本来の役割を果たすため、精液が胎内にどくどくと注がれる。
 二度、三度とひくつく男性器を髪が優しく拘束する。翠さんは動きを止めて、焦点の合わない虚ろな目から涙を零している。
 断続的な射精に合わせて、はっ、はっと短く呼吸していた。
 肩で息をしながら、俺の方を見下ろし、今度は上体を起こした体勢で腰を上下させ始めた。

「は、はあ、もっと、もっろしましょ……だんなさまの、おしごとのころなんか、ぜんぶ、ワスれさせてあげますから、ぁっ……!」

 涎が一筋、胸に垂れてくる。口も心も緩みきった淫らな嫁に、抗う理由などひとつも無かった。

 そして翌朝。一段落つきかけるとまた半強制的に甘えさせられ勃起させられ、あやすように射精まで導かれてというのを結局一晩中続けてしまった。
 いくら翠さんが美人で巨乳でスタイルが良くて黒髪が綺麗で優しくて淫乱な理想的な奥さんだったとしても、ろくに食事を摂らず何時間もセックスし続けるのはおかしい、という自覚はある。
 が、だからといってどうということもない。
 手足と首と胴、体中いたるところに絡みつく翠さんの髪の感触が気持ちよすぎる。
 ちょうど冬の朝に布団から抜けられない時のように、俺は髪に溺れ切っていた。

「……旦那様の顔。私の髪を触ってる時、本当に気持ちよさそうですね」
「ああ。これ……最高だよ。色艶も、手触りも……完璧だ。翠さん以上の女はこの世にいないよ」
「ありがとうございます。それなら、お気の済むまでずっと、ずぅっと堪能してくださいね。私はどこにも行きませんから……いつまでも一緒に、いましょうね」

 促されるまま、再び髪に耽溺しようとした時。ふと仕事の事を思い出した。
 顔にも髪がかかっているせいで時計がよく見えないが、もうそろそろ朝食を済ませて出かける準備をしなければならないはずだ。

「でも、もう出勤しないといけないんだよなぁ……翠さんを会社に連れて行くわけには、いかんよなぁ」
「旦那様は、私よりお仕事の方が大事ですか?」
「そんなわけないだろ。会社なんて、行きたくない。翠さんとずっとこうしていたいよ」
「あら。それなら、いいじゃありませんか。私以外の誰も、ほんとうの意味では旦那様を必要とはしていないんです。貴方無しで生きていけないのは、私だけなんですから。
 それとも、まだそこまで割りきれませんか? 責任、感じてしまいますか?」

 そこまで大層な仕事を任されていたわけではないが、平々凡々な人生を送ってきた俺にとって、確たる理由なく仕事を無断欠勤するのはまだ少し抵抗があった。
 学校の授業をサボることすら、ほとんど無かったのだから。

「そうですか。なら、こう考えてはいかがですか?
 今、旦那様が可愛がってくださている私の髪……髪に捕まっているから、動くことができない。本当なら出勤したいけど、毛娼妓に捉えられているから行きたくてもいけない、って。
 もちろん、私の髪を引きちぎってでも会社へ行くと仰るのでしたら、止めは致しませんが」

 ちぎるだなんてとんでもない。
 金糸よりもまばゆい極上の髪を傷つけるくらいなら、俺は自分の頸動脈を切る。
 鎖でも手錠でもない、全く丈夫でないただ最高に美しいだけの髪が、最もよく人間を拘束する。
 暴力でもって肉体を侵害すれば抵抗する気概が生まれる。美は精神を支配するがゆえ、これに抗うことは決してできない。
 鼻に髪を寄せると、微かに扇情的な匂いがする。俺の精神も肉体も翠さんのものだ。美より強い力はこの世に無いのだから。

「……ふふふ。いいこ、いいこ。私の髪を、大事にしてくれるんですね。嬉しいです。
 もっともっと、愛して下さい。旦那様が愛してくださった分だけ、私もご奉仕致しますからね」

 美女の繊手のように、毛先が俺の頬を撫でる。給料でもなく労働でもなく、その感触こそ俺にとって最も尊いものだった。
14/08/27 22:59更新 / ナシ・アジフ

■作者メッセージ
最初、みんなだいすき某ライフ先生のパロディとして書き始めてたんですが、書き進めるうちになんかいつもと同じようなノリになってきたので、いつもと同じような感じに仕上げました。

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