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『ディアブロスの場合』

「・・・・(ガタガタガタ」
「・・・・(ガタガタガタ」
互いに背あわせになって及び腰。
しかも手に持つそれぞれの大剣と太刀の切っ先を見るに空に止まらずにプルプルと震えているあたりよほどの恐怖なのであろう。
一体その状態になってどれだけ経ったか、彼ら2人の足元には影が小さく点のようになって今が中天近辺ということは分かる。
しかしここには彼ら以外の影が一切無い。
遠くに見えるは陽炎に揺らぐ草原が見え、そこからは岩山も見える。
異なる方向を向けば遠くに煙を勢い良く噴出す火山も視界の端にとらえることが出来、また違う方を向けばどんよりとした黒き雲の下に白銀の世界が広がっていた。




では近くは何が見えると問えば・・・・















砂、砂、砂、砂。














彼らがいるのは砂漠地帯のど真ん中。
『とある竜の討伐依頼』の為にはるばる森林地帯を通り洞窟を抜け、草原を越え岩山を横切って来た二人は流した汗がすぐに蒸発するこの砂漠にてゆうに30分はこのままでいいた。
なぜならそれはずっと【砂の中】にいてずっとこちらの様子を窺っているからに他ならない。
依頼者曰く、

『そいつが来てからどんな生物も寄り付かなくなっちまったんだ。おかげで俺らはそこを迂回するしかなくなったが如何せん遠回りになっちまって・・・頼む! コイツをなんとかしてくれっ! この黒い竜をぉ!』

・・・と。

「・・・な、なぁ・・・もうそろそろクーラードリンク・・・飲んだほうが良くないか?」
「・・え、えぇ・・・そうね・・・そうしましょう・・・」
流石に長時間砂漠の真ん中にいても大丈夫なようにドリンクは欠かさなかったがもうすぐ効能が切れてしまうということで男は太刀を構える女に提案をする。
女のほうもこれは死活問題になるということで注意を周囲に向けつつ一度武器をしまってお互い背中合わせのままドリンクを飲m


ざばぁぁーーっ!!


「うあぁぁ!?」
「きゃぁぁ!?」
としたところで強襲を受けた。なんと下から。正真正銘足元を突き破るようにして現れたその巨大な黒角竜によって。

行き成りの強襲に対応が間に合わず、ハンターのペアはほぼ隣同士になる形で数m先に投げ出されて突っ伏してしまうのだがすぐに顔を上げて上体を戻して抜刀しながら後ろを向く。


だが!


「・・・っへぇ!?」
「っぇ!?」
黒角竜が尻尾をフルスイングしておりすでにもうハンター達のすぐ隣にまで来ていた。

・・・南無三。


ドゴッ!


「っぎゃぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・ァァァ・・・」
「っきゃぁぁ・・・・・・・・・・・・ィィァァァァ・・・」
残響を残して飛んでいくハンター達の放物線の落下予定地にはくしくも湖が出来ておりすぐそばには滝があった。
ハンター達は着水した後暫くその衝撃で動けないところに滝に巻き込まれて落下という不運な事故に見舞われてとてもクエストが出来る状況ではなかたのは言うまでもない。

ではハンターを飛ばした張本人はというと?

「ぐぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!」
(あたいのシマに勝手にはいってくんじゃねぇぇ!!!)

荒ぶっていた。
彼女、ディアブロス亜種はちょうどここを縄張りとし、黒角竜の名に恥じない黒くて太く大きく捻じ曲がった角を使い砂漠に住まう「あらゆる生き物」をすべて追い出していた。
まさに砂漠に降り立った暴姫だ。

(・・・む? 誰かまた着やがったな・・・・このヤローがっ!!)
どうやら彼女は砂の振動を敏感にキャッチしてその方向へ向き直り走り出したその時。

足元がフラッシュのように光り、彼女の影をなくしたかと思うと次の瞬間には・・・

彼女の走りかけた足跡だけがその場に残っていたがやがて吹いてきた熱風にその痕跡すら消されてしまいその場には何も残らなかった。

ついでに彼女が去った跡に何か小さな杖と動物のキバで作ったピッケルのようなものも落ちていたが、その持ち主はここにはいないようだ。



・・・・・・・・・

・・・・・

・・・



「ふぃ〜・・・いやぁ、パイア達が来てからというもの仕事が楽になって助かるのじゃ。」
「そうですか? 今まで大変だったんですね、トルネオさん。」
サバト支部の執務室にて書類処理をモフい手に羽ペンを持って書類にサインをしていく作業をするバフォメットのトルネオ。
その机には明らかに天井まで届きそうなほどの書類の山があり、そのすぐ傍に臨時にという感じで置かれた机の上で同じように羽ペンを持っているゴツゴツの桜色の鱗をスラスラと動かしてトルネオの書類処理を手伝う元リオレイア亜種のパイアが書類に視線を固定しながら話をする。

「全くじゃ、アヌビスであるラガは憲法、立法の担当。ワシは軍事担当。政治担当のエキドナのエレメント。・・・古代文献に載っていた【三権分立】なるものを実施して早50年。ぶっちゃけここまでデキるシステムとはおもわなんだ。」
「・・・なんか凄いですね・・・あ、ここはどうですか?」
この街の歴史を自慢げに、でも筆は止まらないトルネオの語りを聞きつつスラスラ進める作業の中トルネオの判断が必要なところをその都度聞くパイア。
2人の作業スピードはとても人間が行うような速さをとっくに凌駕している。
パッパッと終わらせる2人の横には査定済みの書類がほとんど秒単位でドンドン積み上げられていきあと少しで終わるというところで不意にドアからノックが聞こえる。

コンコン。

「(ガチャッ)おーい、お前ら。紅茶と菓子持ってきたから食って休め。」
「うむ? すまぬのじゃ。パイア、ちと休憩するかの?」
「ありがとうね姉さん。えぇ、そうしましょう。」
入ってきて行き成り厚顔無恥な態度をとる者に目を向ければなんとメイド服を着て片手にトレーを掲げる元・リオレウス亜種のインスがいるではないか。
フリルをふんだんに使ったその丈の極端に短くなった太ももが半分ほど見える黒基調のスカート、同じ素材で作ったであろう袖の無いシンプルさの中にクドくならない程度にフリルをばら撒いた上着、頭にはメイドの嗜みカチューシャをつけるのも忘れない。

その容姿のインスがトクトクとパイアらに近づいてその手に持ったトレーをスッと音も無くテーブルに置いた。

「・・・ププ・・・似合っておるな・・・。」
「・・・プッ・・・え、えぇ。」
「んぁ? これが【正装】なんだろ? 」
実はインス。サバト内ではコレをきるのが正装だとトルネオから教えられていた。
ちなみにレイアは本職である薄いピンクのナース服である。

GJ! トルネオ様っ!

「う、うむ。では茶でも飲むかのぅ。」
「はい。」
「おう。」
三人はそれぞれ席に着くとお茶を飲み始めた。
勿論酌むのはインスで。

「いやぁ、お主ら姉妹がマルチで助かるわい。」
「ナースに警備にメイドに哨戒に・・・ね。」
「まぁ所謂雑用ってやつじゃね?」
違いないっ! 等と暫く談笑に浸っていた3人だったがインスの放った何気ない一言でトルネオが凍った。

「そういや朝からアイツ・・・えぇっと・・・あ、そうそう! アスコットがいなかったぜ? アイツ茶入れるのうまいから教わろうと思ったんだが。」
「・・・・なんじゃと?」
「どうしました? トルネオさん?」
ソレを聞いたトルネオは茶を飲もうとしてティーカップを口先2cmに持ってきた状態で静止してしまい顔を真剣なものにしてインスを見つめる。
その代わりぶりにちょっと驚いた二人だったが続きを話す。

「あ、あぁ・・・なんでも置手紙があって【砂漠に旅行に行ってきます】って。・・・・まぁ、その周りが湿ってて酸っぱい匂いがしてたけど・・・」
「・・・・っ! いかん! アヤツまた召喚する気じゃっ! 2人ともっ、急ぎ砂漠へ行って召喚を止めてくるのじゃ!!!」
『ハ、ハイッ!! / お、おぅ!』
トルネオは酷く焦り始めて茶のまだ残ってるカップを荒々しく受け皿に戻して二人のドラゴンに緊急命令を発布し、インスとパイアは即座に応答。
服を脱いで図鑑通りの様相になってすぐに外に向かう、かと思いきや何時ぞやの支部の屋根に向かって走り出した。
やがて屋根に到着すると体をポゥッと光らせながら走り出して加速を勢い良くつけて屋根の端から飛び上がるとそこには立派な竜が二匹いるではないか。

『砂漠ってどっちだったっけ?』
『コッチよ姉さん。』
この世界で一度魔物化すると竜形態になっても人語のまま喋れるようで下にいた人々が「どこいくんだい?」「砂漠はコッチさね。」とアドバイスをしてくれている。
勢い良く羽ばたく蒼火竜と桜火竜は驚異的なスピードで砂漠に向けて出動したのであった。





対して砂漠の一角、砂と岩や岩山が混ざっている場所にいるのは【召喚スキルAA+(異世界のドラゴンに限り)】のスキルが備わった変態・魔女アスコットでありすでに召喚のための魔法陣が組みあがっていた後だった。

「フフ・・・っぁ♪・・また失敗して・・・ぁん♪・・ご、ご主人様に・・・ぅん♪・・・お、オシオキを・・・」
すでに当初の目的は忘れかけているアスコットの股座には「ヴヴヴ・・・」と振動する棒が二本刺さっており動くたびに感じているようで見方によってはオナ(コンコーン♪)を我慢して振るえているようにも見えるが。
それは置いておき、組みあがった魔法陣の前に立ち詠唱を開始する。
詠唱中も口には熱っぽい微笑を絶やさず、股座からしとどに溢れ下着を濡らすのを気にも留めず、自身の下に出来かけた水溜りに尚も水をためながら続けたその結果。


ピカッ!!


「き、きたぁ♪っぁ、コッチもキタァァ♪・・・ンクゥゥゥ♪」
召喚は無事成功して嬉しさの余りイッてしまったようで、ガクガクと震える足は堪えきれずに折れてしまって地面に腰を落としてしまうがその拍子に奥まで入りきってなかった棒がズンッ!と深々と刺さって絶頂のあとの大波に為す術なく気絶してしまうアスコットであった。

では今回の召喚はというと?

黒い30m近い巨体が走り出している状態で召喚されており黒い影はその勢いのまま近くにあった岩山にこれまた太くて逞しい一対の角を刺してしまい動きが止まった。

(?? な、なんなんだ!? ここは!?・・・っく、抜けんっ!!)

深々と刺さった角を全身の稼動部を振り回してその勢いをつけて抜こうとしている。
・・・? いま猫の悲鳴のようなものがディアブロスの尻尾の先から聞こえたが・・・しかも2匹。
・・・気のせいだろう。

ディアブロスがあと少しで抜けるというところで街の方の空が蒼と桜色に一瞬光って次いで凄いスピードで何かが飛んでくる。
それはやっとの思いで到着したインスとパイアだった。

『ん? お、おいおい!? ディアブロスがいんぞ!?』
『しかも黒。・・・またとんでもないものを召喚したのね・・・』
二匹ともディアブロスの姿を確認すると急激に速度を落としていきディアブロスの手前でホバリングを行っていたが召喚されたモノをみて溜息をした。

『しかしまぁ・・・このままじゃ砂漠の交通網がだめになっちまうな・・・』
『火球でもあてる?』
『だめだ。・・・そうだ、岩を落として気絶させちまおう。』
元々ディアブロスがどんな生態か知っている二人はどうやってディアブロスを行動不能にするかという相談をしているとインスの目線の先にちょっと大きな岩があったので口にブレスを溜め込んでいるパイアを静止して岩のとこまで飛んでいき岩を器用に足で持って持ち上げるインス。

『ぐぁっ?! 中々おもいぞ・・・よいしょっ!』
『姉さんもうちょっと右・・・あ、いきすぎ・・・ちょっと手前に・・・そうそこ!』
想像以上に重くて驚いたが飛竜の意地でなんとか持ち上げてディアブロスの真上にゆっくりと飛ぶインスにクレーンゲームよろしく指示を飛ばして離すタイミングを的確に教えるあたり姉妹だな、と。

(・・・よし・・・あとすこs・・・ん? なんだ? この影?)
ふと下を見たディアブロスが気付く。
自分の影がすっかり別の影に覆われていることに。
それに気付いた瞬間。

ゴガンッ!!

(っあ゛・・・・・・・・)
鈍く重い衝撃がディアブロスの頭を襲い、くしくもインスの予想通りの結果になった。
ぐったりとなった拍子に岩から角が抜け地面に突っ伏すディアブロス。

『よし! ・・・・んじゃあオレはコイツを持って帰るぜ。』
『うん分かった。・・・あ、いたいた。私はアスコットさんを持って変えるわね。』
その後の行動はとても早くお互いが何をどうするか言うとそれぞれ行動を始めて今はもう空中にいる。

『しかしまぁ・・・なんでこんなに俺らの世界の竜ばっかり・・・』
『そういうスキル・・・だからじゃないの?』
『ん〜・・・・おっ?』
行きとは違って帰りはゆっくりと羽ばたきながら帰る二匹。
話題、というか愚痴がアスコットのことに変わると少し呆れ顔。

ちなみに前回ラガに願いを言った後本当にアスコットを殴りに行きました。二匹とも。(※『リオレウス&リオレイアの場合』参照)

そんな話題の中、不意にインスが汗を垂らして掴んでいるディアブロスが光りだして徐々に体が小さくなっていく上軽くなって行った。

光が消えたディアブロスの姿はというと。
ぼさぼさの黒髪を膝裏まで伸ばして、鱗の部分が艶のない黒一色。
尻尾がハンマーのような先端を持ちインス達が魔物娘化しているときよりも遥かに太くて長い。
手はゴツゴツした硬い鱗に覆われており爪のない大きな指が4本ある。
腕にはアリアのような翼がくっついていたがその大きさから察するに自力では飛べそうに無かった。
最も特徴的なのが角。黒く大きく太く捻じれたその角は並みのサキュバス以上に大きい。
そして・・・


ぽよ〜ん♪ ぽよ〜ん♪


・・・とてもとても大きなおっぱい。


『・・・・ちくしょうっ、チクショウっっ! くやしくなんかねぇぇぞっ!!!』
『えっ!? な、なにっ!? 姉さん???』
このとき下にいた商人たちは思わぬ拾い物をゲットした。


その名も【竜の大粒のナミダ】。


さて、話を戻してココはいつもの宿屋である。
ベッドに寝かされたディアブロスを囲うように元フルフルのシィアズィー、インス、パイア、トルネオ。
元・ナルガのアリアは育児休暇中である。
「ぅ〜ん」と一度唸ったディアブロスはゆっくりと目を開けると一度周囲を見回す。

「あら? 目が覚めた? 久しぶりねディアブロス。」
「ほぅ? シィアズィーとは知り合いかのう?」
声をかけるシィアズィーに一気に目が覚めたディアブロスはというと・・・

「っ! がぁぁぁぁぁぁぁ!! ここはどこだぁぁ! 」
起き上がりざまに近くにいたパイアへと攻撃しようと尻尾をブンッと振るもパイアは何とか後ろに下がってよける。振った尻尾が勢い良く空を切るとその先にあった花瓶が粉々に砕けて今度は逆方向へ尻尾を振るとインスがいた椅子にヒットして木で出来た椅子をこれまた粉々にした。腕を思い切り振り下ろしてベットを真ん中から真っ二つにし、尚も彼女は勢いを止めない。

「お、落ち着いて! ディアブロス! 」
「そうじゃ、落ち着くのじゃ!」
「うるせぇ! 【ババァ】共っ!!」




プチンっ




『・・・あ』
何かが切れた音がした気がしたリオ姉妹とその近くにいた関係者は皆一斉に退室を始めた。


「ほほぅ・・・バ・バ・ァ・・・とな?」
「・・・ふ、フフ・・・バ・バ・ァ・・・」
「・・・な、なんだよ?」
2人の纏う雰囲気ががらりと変わったことに戸惑い暴れん坊は動きを止める。
しかし2人とも凄くイイ笑顔で徐々にディアブロスへ近づいていくと、ディアブロスは何かえもいえぬ様な恐怖を感じて後ずさる。
が、やがて壁に突き当たり一瞬だけ後ろを見てすぐ前を見直す。

パチパチと帯電しているシィアズィーに手に同じようにバチバチと魔力溜まりを握り拳に作るトルネオ。

『・・・オシオキ♪』
「えっ? あ、あぁ・・・・」











バリバリバリィィーー!!









「・・・禁句だな。」
「ね。」
宿屋を見下ろすリオ姉妹はそう呟いたという。
その日宿屋に局所的な強力な落雷が30分も続いたそうです。




「さて、十分大人しくなったとこでこの世界の説明をするわ。」
「・・・お、お願いします。」
30分後宿屋に戻ると正座をさせられているディアブロスに仁王立ちするトルネオとシィアズィーを発見したリオ姉妹はそこへゆっくりと近づいていった。
すっかり敬語を使うようになったディアブロスは火傷が酷く、ドラゴンじゃなかったらヤバイレベルだったので二人は急ぎ応急セットと夫のセイヴを呼んで即座に治療した。
その治療が終わり、シィアズィーは相変わらず仁王立ちのままディアブロスにこの世界の仕組みと一般教養を教える。トルネオも同じで仁王立ちのままその説明の補足を言う。
暫くして・・・。

「じゃ、じゃぁ・・・アレか? もうあたいのシマは無いって・・・ことか?」
「あぁ、そうなるな。」
「・・・うぉぉ! 暴れられないじゃないか!!」
説明の後真っ先に自分の縄張りを心配したがここにはそんなもの存在しないというと行き成り雄叫びを上げて暴れたいといい始める。

「なんでだよっ!?」
「あたいらディアブロスはな強い雄にしか興味がでないんだよっ! あたいと戦って勝てるような雄じゃないと子孫が残せねぇんだよっ!」
「そんなこといっても・・・ここには闘技場があるわけでも・・・」
空かさずツッコミを入れるインスにディアブロスは己の種が如何に戦闘主義かを解く。
それを聞いたパイアがここでそんなに暴れられる場所がないということを言おうとした瞬間。

「あるぞ? まぁ、まだ暫くは先だがな。」
『へ?』
部屋の入り口から声がして皆が振り向くとそこには良く見慣れたアヌビスのラガとあまり見かけないラミア(?)の女性がいた。

「おぉエレメント! まさか闘技場は・・・」
「うむ、通ったよ。まぁ、武力を高める為にも必要だといったら議会は渋々一致したよ。」
「というわけでディアブロスというものよ。暴れられるぞ?」
「なにっ! やったっ!」
暴れられるということをラガから聞いてとても嬉しそうにするディアブロスは子供のように喜んでいた。

「だがそれまで最低でも半年は待ってくれ。」
「半年っ!? ・・・よし、あたいも手伝う。」
そういうとスクッと立ち上がり扉の前まで歩いていき扉にいたエレメントとラガに目を合わせてお願いをするデイアブロスは想像以上に背が高くその気が無いのに見下すような感じになっていた。
その身長、凡そ190。ちなみに他の登場人物それぞれの身長はあとがきにて。

「ふむ・・・あいわかった。してお主、名は?」
「名前なんてないよ。」
「そうか・・・ならスパイクと今日から名乗るが良い。」
エレメントは髪の二匹の蛇を弄りながら体を反転させて部屋を出る際にディアブロスに名を授けた。
貰ったディアブロス改めスパイクは「・・・へへっ。」とはにかんでいたそうな。

「何をしているスパイク。手伝うのだろう?」
「おっとそうだった! ・・・へへっ。」
「・・・あやつ嬉しそうじゃのぅ。」
ズリズリと早めに体を引きづるエレメントを追いかけるスパイクにそこにいた皆は笑顔で見送ったのであった。
廊下を進む二人だったが不意にエレメントが止まる。

「あ、そうそう。いいわすれていたな。」
「?」




「ようこそ、この世界へ、この街へ。望もうが望まざろうがな。ここにいる限りはこちらのルールに絶対厳守でな。あと私にも絶対服従な?」




・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

半年後。

なんとも立派な闘技場が街の中でも特に砂漠近くへと建設された。
その記念すべき日にトルネオは一人で呼ばれていった。
そう、一人で。

やがて闘技場につくとお祭りのような賑わいの中天幕が所々に飾られていた。

「ん? ・・・・゛ドラゴンを倒した者に賞金を出す。挑戦者よ来られたしっ! ゛・・・いやはや、何とも挑戦的な文句じゃて。」
右手に持った林檎飴を頬張りながらトルネオは闘技場に向かって歩いていくとその闘技場の前には2種類の長蛇の列があり片や完全武装をしている集団の列。
片や丸腰の列。
勿論悩まずしてトルネオは丸腰の列に並ぶ。
すると見知った顔がやってきてトルネオに声をかけた。

「おぅ、オメーはVIPなんだから並ばなくてイイんだよ。」
「おぉインス。おぬしは参加者かいの?」
「・・・ほら。」
インスがトルネオの手を取り列から出して案内を開始するとトルネオの質問に対して腕に巻いてある腕章を見せる。
そこには【案内 & ストッパー】と書かれている。

「・・・ストッパー??」
「まぁアレを見たら納得すんじゃないか?」
人通りも少なくなった廊下を歩く2人のうちインスがスッと右手で闘技場の中央が見える窓を指差してトルネオをそこから覗かせる。

トルネオが見た風景、それは・・・

『はっはっはぁ! 弱いっ! もっと鍛えて来いっ!』
「ひっ! たすけt・・・グワラバッ!?」

「・・・う、うむ。納得したぞぃ。」
竜形態になって場内を大暴れするスパイクと哀れにもスパイクのホームランを食らって場外に吹き飛ばされた挑戦者の姿だった。

「・・・のぅ? あの挑戦者は大丈夫なのか?」
「あぁ、ウチのセイヴが常駐してるしアリアもいるそれに・・・ほら。」
といわれもう一度見ると竜形態になっているパイアがうまい具合に空中でチャレンジャーをキャッチしていた。
そしてすぐに降下してスタンバっていた魔物と人間混在のナース達に担架で運ばれていった。
良く見るとパイアの足にも腕章があり【キャッチ&リリース 】と書かれていた。

「・・・あれはどうかと思うぞ。」
「いうな・・・シィアズィーの案だから文句がいえねぇんだよ・・・」
それを聞いたトルネオはインス共々遠い目をしたのだった。

やがて歩き出した二人はVIP用の扉の前まで来るとコンコンとノックをして入る。
そこではすでにエレメントとラガ夫妻、アリアの夫のインテグラル、シィアズィーの夫のシィアルヴィーが座ってガラス越しに会場を眺めているところだった。

「いやぁ・・・つよいですね彼女。」
「・・・す、すごい・・・」
とりわけドラゴンの夫二人は額に汗をかきながらその様子を観察していた。

「やぁ、トルネオ。おそかったじゃないか。」
「ほら、ココに座れ。」
エレメントがそう言うとラガがエレメントとラガの間の席をポフポフとその柔らかい肉球で叩いて示した。

「よいしょっと・・・んで今【何人目】じゃ?」
「今ので180人目だよ。」
と、これまた綺麗にホームランされた挑戦者を指差してエレメントは応えた。

「・・・ちょっと待てい。なんでそんなに多いのに今だ外にならんでおるのじゃ?」
「さぁ? 賞金が目当てじゃないのか?」
「・・・いったい、いくらじゃよ・・・」
とトルネオが呟いたことに対して「このくらい。」と金額を提示したエレメントに呆れ顔でトルネオが声を少し荒げて応える。

「おぬしはバカかっ!? 街の予算の半分を掲示するなど・・・」
「まぁそのうち8割は挑戦者の参加費でまかなえるけどね。」
・・・エレメントは腹黒かった!

やがて挑戦者がドンドン倒されていき次でとうとう最後の挑戦者になってしまった。

「今日はコレで最後だ。」
と案内役のインスがエレメントに伝えると部屋を出て行く。

「インスも忙しそうじゃのう。」
「まぁ本職が看護婦だもの。夫の手助けにいったんじゃない?」
「ストッパーは今アリアがやっとるの。審判は・・・シィアズィー?・・・ハハッ、至れり尽くせりじゃのぅ。」
ドラゴンの対戦にドラゴンの審判、ドラゴンの押さえ役。これだけドラゴン尽くしになるのは古今東西この街だけだろう。

では最後の試合は会場の様子を見ることにしましょう。




「続きまして本日最後のチャレンジャー、シラックスさんです。皆さん盛大な拍手を!」

『『ワァァーーーー!!!』』

鼓膜を破かんばかりの声に会場の熱気が如何ほどかおわかりになれるだろう。

「今回の審判は私シィアズィーが。いざという時のストッパーはあちらにいるアリアさんが。」
『よろしくね。』
竜形態のままアリアは挑戦者に向かって挨拶をする。

『あんたが最後か、なんだい・・・もっとゴツイのがくると思ったんだが?』
「いってろ。すぐに黙らせてやるよ。」
シラックスはスッと動いて自身の身長の半分はある金属部がついた大振りのハンマーを肩にズンッと担ぎ直す。さらには挑発的に手をこまねいている。
その様子からとても自信があるのが見受けられ、スパイクは胸が少し高鳴った。

『いいね、いいねぇ! その心意気気に入った! あたいを満足させてくれよ?』
「こっちこそ肩透かしは勘弁な。」
「それでは両者準備は宜しいですか?」
シラックスとスパイクはお互いの目ににらみ合いをしながら【おぅ!】と短く応える。

「それでは・・・はじめっ!」
【審判】の腕章をつけたシィアズィーが開始を合図し少し距離を置いた瞬間スパイクは屈みこんで突進を繰り出さんとしていた。
対してシラックスはハンマーを体を捻りながら後ろに持っていき筋肉を引き絞って今か今かとタイミングを窺っていた。

「スパイクの突進って・・・観客は大丈夫なのか?」と思われた方。
大丈夫です。何故なら会場自体がモンハンの大闘技場並みの広さを持ち壁にいたっては何度もスパイク自身が衝突実験(!?)を繰り返しお墨付きをもらったものだけを厳選してしようしているという徹底振り。

さて話を戻して。

『このあたいの突き、受けるかい?』
「いいぜ。きなッ!」
ザッザッと足で地面を掻き次の瞬間には超重量のスパイクが一気に駆け出してシラックスを大空へ打ち上げんと襲い掛かる。
ドドドッととても重々しい足音は確実にシラックスへの元へと近づいていき、対するシラックスも徐々に両腕を引き絞っていく。

『さぁ・・・・大空へぶっとびなっ!』
下から思い切り掬い上げるようにして出される巨大な暴力という名の突きをシラックスは・・・

「まってたぜ! ・・・そぉぉぉいぃ!!」
といままで限界近くまで絞っていたハンマーを思い切り打ち上げる。

筈かにスパイクのほうが先に上がっていたがそれ以上のスピードでシラックスのハンマーはスパイクへカウンター気味に入る。

『っがぁ!? ・・・へっ、やるじゃねぇか!』
「ひゅ〜♪ あれでまだ倒れねぇか・・・なら何度でもっ!」
スパイクはその致命傷になりうるかもしれない顎への攻撃を避けるべく無理に体を後退させて難をしのいだが代わりに左の角にクリーンヒットしてしまい角が中ほどからへし折れてしまった。
再び屈んで突進のスタイルをとるスパイクに対してまたシラックスも同じようにハンマーを後ろへ引き絞る。
暫くの静寂の中先に動いたのはやはりスパイクだった。

『いくぜ・・・おらおらおらぁぁ!』
先ほどと全く変わらないスピードで突っ込んでくるスパイクにシラックスはしめたとでもいわんばかりの顔になりその顔には笑顔があった。

「はん! 同じ攻撃かよ! ならこれでチェックメイト・・・」
『だれが同じって言った? クゥゥッ!』
引き絞ったままのシラックスはスパイクの行動を見て「しまったっ!」と後悔の念をだした。
なぜなら彼女は体を大きく横にして急停止してきたのだ。
これによりタイミングと打点をおおきくずらされたシラックスは武器を戻して急いでスパイクの進行線上から離脱する為横に走り出す。

「っぁ!・・・・ふぃ・・・あぶねぇ・・・」
『中々いい反射神経しているじゃないか!』
「そいつぁどうも!」
顔だけをコッチに向けてスパイクは皮肉たっぷりに褒めた。シラックスはムッとするも次の攻撃に対処すべくすぐさま顔を戻した。

「・・・」
『どうした? こないのか?』
スパイクは彼に全体を向けなおし尻尾をゆらりと揺らすと再び挑発的な声をかける。

『んじゃぁ、またあたいから・・・これでどうかな?』
「っな!? もぐった!?」
ガシガシと自身の前足を使って瞬く間に潜ったスパイクは息を潜めて彼の行動を見やる。

「・・・くそぅ、地中じゃ手も足もでねぇ・・・」
『じゃあ出てやるよ!』
「なにっ!?・・・・真下かっ!!!」
地上でシラックスは周りを警戒するも地中にいるモノにたいしてはどうしようもなかった。
そんな弱気な彼を嘲笑うかのように彼女は彼の真下からドルフィンジャンプをして地上に出てきた。
彼はギリギリのところで避けて距離をとると先ほどまで彼がいた所に重々しい音を立てて彼女が着地をした。

『へぇ、あれをかわすのかい?!・・・いいねぇ、なんか燃えてきたよ!』
「こっちは精一杯だっつぅの。」
思いのほかできるシラックスに益々熱を上げていくスパイクに対してふぅ、と溜息一つ漏らす彼の顔にもほんのり笑みがあった。

『いいね! その顔。・・・よしあたいも本気を出すよっ!』
「・・・マジかよ・・・」
そういうと再び地中に潜り始めたスパイクにシラックスは為すすべなく眺めるだけだった。
そして再び静寂が訪れる。

「(・・・・勝負は一瞬か・・・)」
耳をすませてあたりを探るシラックス。

そして・・・

『残念だが・・・これで終わりさねっ!!!』
彼の真下から再び急上昇したスパイクは先ほどよりも高く上がった。
対して彼は・・・

「おぉぉ! 高いなぁ・・・堕ちたら唯じゃすまないな♪」
なんとスパイクよりも数M先に高く飛んでいるではないか。

『あっはっは! このままホームランして場外にしてやんよ!』
「そうはさせないっての!」
彼はわざと打ち上げられていたのだがそれに気付かぬスパイクは討ち取ったりっといわんばかりの勝利宣言をする。
スパイクは先に着地して尻尾を大きく撓らせて彼の落下予測地点に狙いを定めてまさに振りかぶらんとする態勢のままとまっていた。

『そうら! 場外・・・』
「そぃやぁ!」
彼は落下しながらも器用に重心をずらしながらハンマーをグルグルと縦に回転させるとちょうど彼を打ちに来ていた尻尾を弾く。
その反動で少し上に浮いて再び落下してなんとか着地する。

『ぐぅ?! 中々やるな!・・・ん? どこだ!?』
「ここだ・・・よっ!!」
着地地点がスパイクの死角になっていてそれを利用していまだにバランスを取れなかったスパイクに走りよるとハンマーを走りながら大きく振り絞り彼女の足めがけてダルマお年の要領で水平に強く打ち抜く。
勿論彼女の足は二本しかないので・・・

『うをっ!?』
少し間の抜けた声を上げて転倒する。

「っしぁあ! もらったぁぁ!」
こうなるとあらかじめ予想していた彼は急いで彼女の下から離れてすぐに頭へ向かい彼女の頭の落下地点に回りこんでハンマーを大きく打ち上げた。

『ぁがっ!?・・・・っぁぉ・・・?!!』
彼の放った打撃は見事にヒットしてしかも落下と自分の体重が乗って彼女へのダメージは彼の想像以上に働いた。

コレを逃す機はない!

彼は更に力を篭めてハンマーを振り下ろしつつ彼女の額めがけて飛んだ。

『な、舐めるなよっ!』
未だ軽い脳震盪が続いているのだろうか体を動かすことのできない彼女は唯一動かせる尻尾で反撃の為彼を横から払うようにして振るう!

「っらぁぁ!」
『っおぉぉ!』

刹那!



メキッ・・・・・・・・・・ガンッ


僅かに早く決まったのは彼の打撃であった。しかし振りの速度が沿う簡単に落ちる事もなく、あえなく横から強かに打ち込まれた彼はきりもみ回転しながら宙を舞い壁に越えも上げず打ち付けられて気絶した。

『・・・見事・・・だ・・・・』
対して彼女もその言葉を言い終えた瞬間、力の抜けた尻尾が地面を強く打ちつけ彼女も気絶してしまった。
その拍子に竜形態から魔物娘形態になった彼女。
二人はすぐさま駆けつけたナース達に医務室に運ばれていったのはいうまでもない。

「・・・はっ!? こ、この勝負・・・引き分けになります!!」
あまりの好勝負に審判の職務を忘れて見入っていたシィアズィーだったが我に戻って両者気絶により勝敗なしと判断されてこの試合はドローとなったが観客や他の挑戦者は誰一人として不満を漏らさず寧ろ大歓声を上げて二人の戦いを心から祝っていた。



対して担架で運ばれた二人はというと?




「・・・っいって・・・・あれ? ここは?」
「ここは医務室だよ。」
純白のシーツのかかったベッドから上半身を無理やり起こして呟くと横から思いもよらぬ返答があってびっくりしたシラックスは顔を横へ向けるととても綺麗な顔の女性が額に包帯を巻いて椅子に腰掛けてコッチを見ていた。

「えっと・・・どなた?」
「ん? あれだけ激しく打ち合ったのに・・・あぁ、この姿じゃまだ初めましてだった。」
「・・・え、ま、まさか・・・?!」
その声を発した女性は席を立って変わりにシラックスのベッドの上に肩膝を乗せてシラックスの顔へと自分の顔を寄せていく。

「そうさ、あたいがドラゴンさね。」
「・・・こんなに綺麗な人が?」
「・・・っ、お、お世辞でもうれしいね・・・」
尻尾がブンブン振れているのを見るととても嬉しそうだ。

「じゃあそのドラゴンさんがオレに何のよう?」
「・・・あたいの番になれっ!」
「・・・へっ? 」
行き成り組み敷かれた彼はわけがわからなかった。

「ハァハァ・・・あたいをアツくさせたんだ・・・ハァハァ・・・」
「・・・オレでいいのかい?」
「勿論だっ!」
だがすぐに悟った彼は確認を取るも二つ返事で返される。
それに彼は笑顔になってこう返す。


『じゃあもっと激しくどつきあうか?』
『望むところだ♪』


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

一年後。

彼女はこの闘技場のオーナー兼選手として働いている。
そんな彼女の楽しみは夫であるシラックスと過ごす時間である。

この日も彼女達は闘技場の廊下にて風に当たっていた。

「・・・なぁシラックス。」
「なんだい? スパイク。」

『・・・幸せだ♪』
『・・・あぁ♪』

言葉少ない会話でも思いが通じるのはきっと体で語り合った結果なのだろう。
スパイクが少しだけ大ききなったお腹を摩りながら幸せを確認しあった彼女達3人は今とても幸せだ♪


【完】

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今回はディアブロス!
さてさて・・・伏線があったのに気づかれた方もいるかもしれませんが次回はあの二匹がjackryの妄想力で○○と○○になりますww

では作中に出た身長のお話を・・・
200・・・シラックス(ディア夫)

190・・・アリア(ナルガ)、スパイク(ディア)

185・・・隊長(アヌビス夫)

180・・・セイヴ(リオ姉妹夫)、エレメント(エキドナ)

170・・・インテグラル(ナルガ夫)、シィアズィー(フルフル)、ラガ(アヌビス)、インス(リオレウス)

165・・・パイア(リオレイア)

160・・・シィアルヴィー(フルフル夫)

150・・・トルネオ(バフォメット)、魔女's(アスコットら。)

・・・という感じです。

いかがでしたか?(´・ω・)




11/11/11 20:46 じゃっくりー

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