連載小説
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第一話 アルバイト
「そんじゃ、また明日なぁ〜!」

「あぁ、それじゃ!」
こうして、僕の一日はまた終わりを迎えた。
後は家に戻って家事を終わらせたら宿題をして、それからお風呂も入って・・あとなんだっけ・・

「ハックション!うぅ〜・・・」
風邪でもひいたかな?
何だか誰かに噂されてるような気もするけど。
その時だった。
僕の人生を大きく変える出来ごとに出会ったのは。

「アルバイト、やってみませんか?!」
なんだろう、この子。
アルバイトごっこか何かか?
確実に仕事してるような歳じゃないよな。
それにここは雪も積もって寒いと言うのに彼女はなんだか顔が赤い。

「いや、アルバイトはちょっと…」

「……どうしても…?」
何故泣きだす!
それにしても可愛い。
なんでこんな小学生が僕なんかに声を掛けてくるのやら。
それにしても可愛い。

「だから、無理だって…」
どうだこの毅然とした態度。
親はこんな態度をしているか?

「…ヒクッ…エグッ…」
あっれ〜?
僕何か貴女が悲しくなるような事したっけ〜?
あぁ〜、アルバイト断ったことしか思い出せない。

「あぁ、もう分かったよ。するよ、アルバイト。」

「やったぁ!新入り君捕まえた〜!」
なんだよ新入り君って。
そんなこんなで、僕の人生は大きく変わって行くのだった。

――――――――――――――――――――――――――

「てんちょー!新入り君連れて来ました〜!」
来たのは意外や意外、本物のレストランじゃないか。
客もそこそこ居るし、何よりウェイターが女性しかいないのもどうかと思う。
まぁ、そう言う事に僕が精通している訳でもないが。

「でかしたチビっ子」

「ちっちゃくないもんっ!」
なんだこのコント。
それにしても可愛い。

「お前が新入り希望者か。まぁ、精々頑張れよ?」
希望はしてないんですけどねぇ!?
というかなんだこの人。
店長とか呼ばれてたけど、実際はどうなんだ?

「それじゃ〜ね?まずは自己紹介からして?」
それにしても可愛い。

「あ、えっと…爲葉 光定って言います…」

「よろしく」

「よろしくね、光定くん?」

「よろしく!えぇと、えぇと…」

「爲葉です。」

「えとえと……ダメ破君!」
何か間違っている。
でも可愛いから許す。

「それじゃ、まずはそこのチビ…」

「ちっちゃくないもんっ!」

「……仁賀の仕事見て覚えろ。」

「は、はぁ…」
それにしてもこの店長、どう言う事だ?耳は尖ってるし冬場なのに日焼けしたみたいに肌は黒いし。
確か授業で受けたっけ、その特徴を持つのはダークエルフと呼ばれる種族だって。
て言うか確か僕の通ってる学校の教頭もダークエルフだったよな?

「あ、美弥ちゃーん!何が欲しい?パフェでも作ろうか?」
今度はさっきも挨拶してくれた人だ。
今度は普通の人だ、よかっt…なっ!?

カチャカチャ・・・・

アレ絶対刀だよね!?
しかも音からして本物っぽい?!
まぁ、本物の音なんか聞いた事無いけど。
しかも衝撃の事実!
彼女、良く見たら普通の人じゃない、店長と同じで耳が尖ってる!
あれ?でも、別に肌が小麦色な訳でも無い。
授業で聞いたっけ、あれはダークエルフに良く似た種族のエルフだって。
そういや僕のクラスの担任もエルフだったっけ。

「あぁ、琴音か。そうだな、パフェ作ってくれ。」

「はぁい!美弥ちゃんの為なら喜んで〜!」
あれでいいのかよ店長。
ともあれ、アルバイトの勉強でもするか。

「えっとね?このコップはスープ用のだからね?これは上の方に…上の方に…んぅ〜!」
背伸びしても一番上は愚かその下の段にも届かないとは。
こうして困っている仁賀ちゃんは可愛い。

「おーい、仁賀コレ4番テーブルに持って行けー?」
おっ?こっちの人は男の様だ。
ただ、なんか目つき悪いなこの人。

「あん?新入り、何か言ったか?」

「いえ、別に何も…」

「あっ、皇さん手伝って〜!」
あっ、足滑らせた。

「よっと…」
なんてスピードだ。
一度扉を開閉してから仁賀ちゃんを受け取るまでに全く隙が無い。

「あ、ありがとう皇さん…」

「さっさと運べよ?冷めちまうだろうが」
あぁ、そういう意味で助けたのか。

「は、はい!」
慌てて走って行く仁賀ちゃんも可愛い。

「おい新入り、お前気付いてるのか?」

「えっ?何にですか?」

「餌場に放り込まれたんだぞ?俺も、お前も!」
そう言えばなんだかココってウェイターも店長も他の人も魔物娘ばっかり…
あれ?男の人って僕とこの人だけ?
あれ?なんかヤバくない?ていうか僕ら絞られる運命にあるの?

「まぁ、俺は友人関係の事もあって、絞られたり喰われたりはないけどな?」
つまり遠まわしに「ようこそ注文の○い料理店へ」って言ってますよねぇ!

「や、やっぱりバイトやめm…」

「おぉい新入り、喜べ〜。今日からシフト入れるぞ〜?」
あんまりだぁぁー!
絞られる!仕事終わって家に帰る前とかに絞られちゃう!僕の貞操大ピンチー!

「まぁ、諦めたと思え。な?」
なっ?ってなんだよ!

―――――――――

「いらっしゃいませ〜…」
結局アルバイトはすることになってしまった。
というか、ここ結構有名なのか?
結構男女問わず客来るんだけど。

「ダメ破くーん!持ち切れないからこれ半分持って行ってー?」
なんと、ラーメン3つにオムライス4つ。
多分大所帯の13番テーブルだろう。
他の人が運ぼうとしてたら無視するが、仁賀ちゃんの頼みとあれば♪

「お待たせしました、ラーメン3つとオムライス4つになります」

「わぁ!新しい子?ねぇ、ちょっとお喋りしよう〜?」
ここはホストクラブじゃない!

「ねぇねぇ、今いくつなの〜?」
まだまだ16歳です…って客に言うか!

「こっちで一緒に食べよ〜?」
お断りします。

「ほらほら、そんな所に立ってないで、さ?」
見れば皆が皆、豚みたいな小さな耳がある。
そういえば、クラスの隣の女の子もオークだったっけなぁ。

「おにいちゃん!一緒に食べよ?」

「喜んで!」
救いの女神(ロリッ子)はキチンと微笑んで、いや眩しい笑顔を向けてくれているに違いない!

「あぁ、失礼しますお客様…」
あれ?店長?なんで前振りもなしに蹴飛ばすんですか?お陰で周りのお客ドン引きじゃないですか。
え?原因は僕?やだなぁ、そんなことある訳ないじゃないですかー。

「お前、ちょっとこっち来い…」
なんで裏に引きずっていくんです?
普通に歩けますって、ホラ。

「さっきから反応を見ていたが、お前……ロリコンだろ。」

「失礼な!確かに小さい女の子は大好きですよ!でも、あえて言うなら僕は小さい物全てを愛しているんです。」
そう、例えるなら猫が自分の子猫を銜えて運ぶように、子供が小さなおもちゃを使って遊ぶように、僕もそう言うのが大好きなだけなんです!

「結局のところ、ロリk…」

「美弥ちゃーん?何か欲しくないー?アイスでもいるー?」

「琴音か…ん、頼む。」

「美弥ちゃんの為なら喜んでー♪」
なんだろう、物凄く助かったようで実は「落とす直前に一度止めてから落とす」ような感じ。

「店長!まぁた冷蔵庫の中身使っただろう!」

「使ったのは琴音だ。文句なら琴音に言えよ。」

「くっ……」
なんだ?皇さんって琴音さんの事が好きなんだろうか。

「っ!新入り!何ボーッと突っ立ってる?ホレ、出来たから早く運べ!」
どうやら照れ隠しの様だ、バレバレですよ?皇さん?
とはいえ、客を待たせるのはいけない。
このチャーハンは……9番テーブルか。

「お待たせしました、炒飯になります。」
どうやらこの席の客はサハギンらしい。
コップ片手にジッとして動かない。
少し離れて見ると、やっと注文の品が来たことに気付いたのか無言でモグモグと食べ始めた。
にしても、この客もなかなかに可愛い。
あの雨合羽の中にスク水を着ていると思うともっと可愛く感じる。

「あれ?店長?なんですか?」
ん?これってもしかして無限ループ?

―――――――――――――

そんなこんなで、僕のバイトは夜の中ごろまで続いた。
今は客足も少なくなっている。

「店長、今日働いてみて分かった事聞いていいですか?」

「なんだ?」
またパフェ食ってるよこの人。
これで、僕が見た限りだと6つ目だ。
よくお腹を壊さない物である。

「店長って、若そうですけどいま何歳なんです?」

「っ………29…」

「へぇ、結構歳なんですね。」
悪気はない、ホントだよ?

「っ!?」
痛い、流石に不意打ちで鳩尾は痛いですよ店長。
しかもなんかメチャ不機嫌だし。
あれ?これって僕が悪いの?もしかしてこのまま絞られちゃうの?

「あー……なんだ、大丈夫か、新入り?」

「は……はぁ、なんとか…」
正直意識がぶっ飛びかけた。
あんな威力、初めてなんじゃないかな。
まるで車に衝突されたような痛みだし。
まぁ、車に衝突された事なんて無いけど。

「ダメだよダメ破君!あれ?ダメ、ダメ破で・・・あれれ?」
あぁ、困惑してる仁賀ちゃんも可愛い。

「あぁ、そうだ新入り。良い事教えてやる。」

「はい?」
実は仁賀ちゃんは男とかってオチだけはやめて下さいよ?

「実は仁賀はな…」
え?ホントに?マジで男の子なの?

「俺より年上だ」
驚愕の事実ここに発覚!
だが僕は認めない!絶対に認めはしない!
明らかに大人である皇さんより年上だなんて僕は信じない。

「そだよー?私、ダメ破君より年上なんだから〜♪」
威張ってる仁賀ちゃん、いや仁賀さんも可愛い♪
しかし、こんな女の子が僕より年上だなんて考えたくも無い。

「ち、因みに皇さんはいくつなんですか?」

「23」
そのまんま読みして「ニーサン」じゃダメですか?

「そ、それじゃ仁賀さんの歳は…」

「69だ」
はぁ!?ちょ!嘘ですよね!嘘だと言ってよ○○ニィ

「ちょ!皇さん何言ってるんですかぁ!私まだまだ24だよぉ!」
………僕の夢は、音を立てて崩れ落ちた。

「そうだな、アンタまだ24だっけな」
とかいいつつ仁賀ちゃんのフサフサのツインテールいじってるよこの人。
あっ、どさくさまぎれに触れそう。

「ふえぇ!二人してやめてよぉ!」
おぉ、この柔らかでいて艶のある触り心地。
なんだか、年齢がどうとかどうでもよくなってきたなぁ。

「おい、閉店時間だ。閉めるぞ?」
もうそんな時間だったのか。
まぁ、そんなこんなで僕のアルバイト生活は始まった。

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11/10/07 18:02更新 / 兎と兎
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