読切小説
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ぱっちわーく
「前々から思ってたんだけどさ、お前の服装センスって独特だよな」

自分の膝の上で鉤爪のような手を器用に使い、黙々と編み物をしている幼馴染に問いかける。

「んー……そうかな?ボクとしては好きなもん着てるだけだからあんまり気にしたことなかった」
「どこで買ってくるんだ?そんなパッチワークの服って」
「いや、ボクの手作りだからね。ボクみたいな引きこもりが服を買いに事なんて出来る訳がないでしょ」
「マジかよ、編み物とか裁縫が好きなことは知ってたけど服を作れるレベルだったんか」
「と言うかだな、そもそもボクの服の材料ってキミの古着だぞ」
「何それ。初耳だし、幼馴染とはいえども女の子が見知った男の古着で作った服を着てるってどうなんだよ。そもそもどうやって手に入れた!?」
「普通にキミのお義母さんに言ったらくれたぞ」

母さん何やってんだよ。古着をあげるならせめて男物混ぜるなよ。

「お前もさぁ、古着を貰ったなら女物あっただろ?」
「えっキミはそういう趣味が合ったの?」
「なんでだよ!!」
「だってボクが貰ったのはキミの古着だけだし女物があったって言われたらそう思うに決まってるだろ!?」
「えっなんで俺の古着だけ?」
「……それは本気で言ってるのかい?」

あ、駄目だ。これはマジでお怒りなやつだ。

「だって、お前色気より食い気なタイプだし。そういうのは興味ないと思ってたし」
「まぁ、確かに今まではそうだったのは認めるけどさ。そうだとしてもボクだって魔物なんだよ?全く色恋沙汰に興味ないわけじゃないし、普通はこんなにくっつく訳ないじゃないか。大体ボクがキミの古着で作る理由だってキミの匂いが染み付いていて安心するからなんだぞ!!」
「うぅ、乙女心わからなくてスマン」
「まぁ別に良いよ、どうせ鈍感だろうなとは思っていたし。これからよく知ってもらえれば十分だからね」

優しく微笑む彼女に何か違和感を覚える。
こんなにも艶っぽく笑う女の子……女性だったっけ?
いや、どちらかと言えば子供ぽかったはずだ。

「あのさ、変わった?」
「まだ違うよ、これから変わるんだよ。キミと一緒にね♥」

ゆっくりと唇が重ねられる。普段とは違う彼女の姿に俺は虜になって身動きもとれずになすがままになってしまっていた。

「これからはボクの事をしっかり支えて貰うからね」

気がつけば、さっきまで彼女が編んでいたマフラーが離れてしまわないように俺と彼女の首をつなぐようにして巻かれていた。

「大好きだよ♥ボクはキミ好みになって見せるから二人で一緒に大人になろうね♥」

二人だけの世界で愛を囁きながら、そのまま彼女は俺を包み込んで蛹へと変わっていった。
18/02/25 05:35更新 / アンノウン

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