またの御利用、お待ちしております
ん？店はもう閉まったぞ。残業で来るのが遅くなったと言われてもこちらにもキミと同じように時間というものがあるんだ。時間は無限じゃないぞ。そこをなんとか？馬鹿言ってはいかんよ。キミだって仕事が終われば帰って風呂に入ってゆっくり食事して朝まで眠りたいだろう？何、一日ぐらい起きてても平気だと？それはキミの話であってこちら側の意図は汲んでないな。さ、帰った帰った、物事には順序があるんだ。世界はキミの常識で動いてるんじゃない。･･･意地でもそこから動かない根性は認めるが、それはただの子供の我儘だ。キミだって家の前から一歩も離れようとしないセールスマンが居たら困るだろ？え？追い返すって？それじゃあ私も力尽くでキミを追い返すとしようか。･･･、わかったわかった、そんな泣きそうな顔でこっちを睨まないでくれ。これじゃあ私が悪者みたいじゃないか。･･、そこに細い路地があるだろう？そこに入ってすぐに右に抜けれる通路がある。そのまま進めば裏口だ・・。ありがとう？馬鹿言ってはいかん。私は店の前を綺麗にしただけだ。さ、行った行った。やれやれ、私もまだまだ甘い。
それでは、本日の営業時間は終了致しました。またの御来店を心よりお待ちしております。
〜糸吉ネ土氏の場合〜
はぁ〜、なんかよくわかんないけど疲れた。たまには甘い物食べたいなー。脳の活力源だし、甘いの多少好きだし。でも先に昼食食べたい。ん〜、どっちにしよ。両方食べれたら丁度いいんだけど、そんな都合のいいの無いだろうなー。でもまずは、作業終わらせてからの話。あー地味に長い作業って苦手。もうちょっと楽に考える方法無いか？う〜〜ん、無理かー。あー、やめやめ。これ以上考えても煮詰まるだけだし、気分転換に何か食べに行ってこよ。外で食事するの超久々だから美味しいの食べたい。出来れば可愛い子付きで。
「そういや、あまり外食しないから良い店知らない･･」
その辺を適当に歩けば大丈夫でしょ、たぶん。
「別に行きたい店とか見つからなかったし、やっぱり帰ろうかな」
あ、そうだ。外に出たついでだし資料買っていこ。決してアッチの資料じゃないから。いつもの本屋に寄ってこ。
「･･･見つからないなぁ、あれすっごい人気あるからすぐ売り切れるんだよなー・・『すぐに理解出来る異世界文字』」
あの本一冊あれば向こうに行って色々勉強出来るのに・・。一度でいいから向こうの世界に行って魔法使ってみたいんだよね。こう、手から炎出すやつとか厨ニ心をくすぐるような派手なやつとか空飛んだりとか決めポーズだけで爆発起こせるやつとか色々やってみたいんだよ。ま〜一番いいのは･･現地の人に教えてもらうのが一番早いんだけど。
「はぁ〜、誰かに色々と教わってみたいなあ」
此処ではない何処かで何か出来れば楽しいんだろうなー。あー、一度でいいから異世界行きてー。ぅ？んむ、そうだった。お腹空いてたんだ。しょうがない、そこの食堂で・・・人多っ！？これ何人並んでんの！見てるだけで帰りたくなってきた。良し、回れ右･･･
「最後尾ー、こちらー」
例え最後尾のプラカードを持ってるのがロリッ子狐火ちゃんだったとしても
「はーい、おにーさーんこっちー」
ふらふらと誘惑に負けて付いていくなど
「もうすぐ入れるよー」
男としてどうかと思うんだけどね！
「おにーさーん、前進んでー」
「あっはい」
いつのまにか並んでるし！？確かにさっき回れ右したはず！ち、違うんだ。こんなはずじゃあないんだ･･･。ああ、あの狐火ちゃんが最後尾に移動してしまう。はぁ〜、並んでしまったししょうがないか。
「次でお待ちのお客様〜」
ん、結構入れるんだな。これなら並んでもそんなに苦にならないかも。順調順調、もう後１１人待ちか。これなら悩まずにもっと早く並んでおけば良かったかも。
「次でお待ちのお客様〜」
よっしゃあ、並んで正解だった！さ〜て、どんな店かな〜。
「･･･むっちむちです。凄くむっちむちですやん」
むっちむちの稲荷さんとダークプリーストさんが手招きしてる･･･。
「炊き立ての御飯はいかがでしょうか〜」
「ふっくらもちもちの焼き立てパンどうですか〜」
何この恐ろしい二択。両方はダメっぽいのか。んーどうしよう･･･ん、パンが呼んでる！ような気がする。パンに決めた！
「焼き立てパンください！」
「は〜い、ありがとうございます♪」
ごめんなさい稲荷さん。パンが呼んでる気がしたんだ、そんなにがっかりしないで！ああ、このもっちもちのパン・・って５個もくれるの！？食べれるかなぁ。
「それでは奥の部屋へとお進みくださ〜い」
はいはーい、あのドアですなー。
「･･･此処に留学しようかな。うん、そうしよう・・」
そこらじゅう魔物娘だらけとか･･最高の環境じゃないの！あの本買わなくても此処で教えて貰えばいいんだ。
「は〜い〜、パンの方ですね〜。新鮮なミルク飲み放題ですぅ〜。どうぞ〜♪」
「あ、ありが・・トゥッ！？」
で、でかい。ホルスさんの何がとは言わないけどでかいよ。って、まさかこの牛乳って！？
「いやぁ〜〜ん♥困ります〜お客様〜。そんなにおっぱいばかり見ないで〜♪」
ぁ、これ絶対にこの子のミルクだ。今確信した。服の上に染みが出来てるし。この場で飲むには勇気要るからちょっと移動しよ。
「は〜〜、凄いなぁ・・。こんなに一同に介してるなんて・・」
右を見ても左を見ても魔物娘だらけ、か。は！オークさんのベーコン美味そうじゃないか！あれをパンに挟んで！・・待て待て、まだ全部見てないんだ。慌てる時じゃない。くっ、あの厚切りベーコンは惜しいが他も回ろう。
「おにーさん、・・あ、パンだね♪どう？このハンバーグ挟んでみない？」
「よぉ、うちのヤキソバどうだ！？ヤキソバぱんはうめぇぞ〜」
「こちらの自家製のジャムどうかしら〜？色々お試し出来ますよ〜？」
「フォンデュはどうですか。チーズもチョコもありますよー」
あ、あかん。そこらじゅうにフラグが何本も立ってる。どうしたらいいんだろう。んーー･･･んーー･･･なかなか決められない。もう一周回ってこよ・・。優柔不断でごめんね。
「此処は天国なんだか地獄なんだか･･」
どこを選んでも幸せになれそうだけど、幸せすぎて逆に怖そう。と、とりあえず無難そうなのを探そう。例えるなら・・そう！そこの紫色のマントっぽいの着てる普通の・・！
「･･･何か用？」
あっ･･･目が合っちゃったよ。ここでスルーするのもなんだし何作ってるかだけでも覗きますかー。ん？手に持ってるボウルから甘い匂いがする･･。
「そのボウルには何が入ってるの？」
「これは･･･虜果実クリーム」
わっ・・薄紫っぽいクリームがたっぷり入ってる。それに、凄く甘い匂い。どんな味がするんだろ。気になる･･凄く気になる！一口だけでも舐めてみたい･･･。
「欲しい？」
「･･･」
ああ、舐めてみたい！舐めたい舐めたい！だけどここは我慢しないと！
「･･･そう・・興味ないみたいだから棄てる」
「ま、待って！棄てないで！もったいないから！」
「・・・・」
くっそーーーっ！！もう我慢なんて無理ぃぃー！
「パンにそのクリーム挟んでください!!」
「わかった･･･これぐらいでいい？」
･･･なんだか葡萄クリームっぽい？でも葡萄の匂いじゃないなあ？なんだろう、甘ったるい匂いなんだけど不快じゃない。では、いただきまっす。
「･･･ッ!?」
「口に合わなかった･･かも？」
うんめええええええ！何この味！？濃厚な甘さの中に隠れるようにして存在する酸味！舌の上に残る香り！ふんぬおおおおー！元気ハツラツゥ！
「栄養ドリンク･･･？」
ちょっ！？なんで心の中で思った事にツッコミ入れるの！
「私がリッチだから？」
種族とか関係無いから･･･ってリッチなの!?リッチと言えば･･･、頭脳明晰で冷静な判断力の持ち主であらゆる書物を保持してるという・・。
「そんなに褒めないで･･･」
「だから心の声にいちいち反応しないで！っていうか心読まないで！」
「さっきから口に出してるのに・・」
「嘘ん！？」
「嘘、心読んだ」
どうにも掴み所ないなー。表情で読むのが難しいし、かと言って私にゃそんな技能無いし。せめてニッコリ笑ってくれたらいいのに。
「・・・こう？･･･ニッコリ」
「口に出しても無表情だよ」
変な遣り取りしてないで食べよう。うん、凄く美味い。んっ・・牛乳も最高。柔らかい甘さが口一杯に拡がって････。
「･･･私も頑張る」
ちょ、ちょっと待って！パン全部にクリーム挟まないで！まだ他のも挟んで貰いたいんだから！
「・・・ん」
ん？向こう見ろって？何・・『おかずは一品まで』。そんなぁ〜、他のも食べてみたかったのに・・、あれ？
「･･･」
もしかして今拗ねてる？他のも食べたいって思ったから拗ねちゃったの？何この小動物みたいなリッチさん。うん？これってもしかして頬っぺた膨らんで・・
「はい、頬っぺたプスー」
「頬･･突付かないで」
拗ねてるよ拗ねちゃってるよ！無表情だと思ったのに頬っぺた膨らんでたよ。かわゆすかわゆす。もう一回だけ･･･
「･･･次突付いたら・・・」
「すんませんしたぁぁぁー！」
ここは男として謝っておかなければ後が怖い。だって相手はあのリッチさんだぞ、どんな事されるやらわからんし。今だって何か分厚い本片手に素振りして・・あ、そうだ！
「あの・・ちょっとだけ頼みたい事があるんだけど・・」
「・・ヤッ」
「あの、出来れば・・」
「・・イヤ」
まだ何も言ってないのに却下は酷い。せめて最後まで聞いてから断わってくれてもいいのに。
「言わなくてもわかる・・から」
あ、そうでした。心なんて簡単に読み取れるんだったなー。やっぱりそんな都合良く教えてくれるわけないよなあ。はぁ・・やっぱり次の出版まで待つしかないか。
「・・・」
「何？本出して・・こっ！これって!?」
「あげる・・・わからない所があったら聞きにくる・・」
こっここおっここれって・・欲しかった『すぐに理解出来る異世界文字』！しかも初版のやつじゃないか！
「何冊か在庫で持ってるから・・あげる」
在庫！？在庫ってもしかしてこの著者は！
「それ・・私の本」
うっひょおおおおおおおおい！御本人が目の前に居たよ！しかも手渡しだよ！わかる！？この気持ちわかる！？誰だって著者本人から直接貰ったらテンションメーター振り切れるよね！私は振り切れたぞ！
「そんなに嬉しかった・・？」
「嬉しいも何もこの１ページ目なんて！・・・よ、読めないので教えてくだしい」
「次まで頑張る・・それでもわからなかったら聞きに来る･･･帰る」
え、ちょっと待って。もう帰っちゃうの？次まで頑張るって何！？
「･･･８日後、また来る。それまで予習する」
８日後、８日後・・良し、携帯にメモっておいたぞ。次に会う時までにばっちり挨拶程度の文章ぐらいは読めるようになっておくぞ。
「･･頑張って」
「本ありがとう！それじゃ８日後に！」
「･･･ぅん」
なんか急にしおらしくなったような？気のせいかな。さて、急いで帰って読めるようにマスターしなきゃ！会計会計っと。
「１３０円になりま〜す♪」
あ、うん・・１３０円ね。いつものとこだったら５倍ぐらい払ってそうなんだけど。ふひひひ・・帰って即解読作業だ。他にも作業残ってたような気もするけどそんな昔の事は忘れた。これで念願の異世界旅行に行けるぜ。そう、この本さえあれば・・・
『やっぱり読めないーー！！』
〜ネームレス氏の場合〜
ふぅ〜〜、さむぅー･･･。こんな寒い日には温かい物食べたいな。いつものラーメンじゃなくたまには豪勢に焼き肉とかがっつり食いたい。でも今はちょっと懐事情を考えると無理っぽい。時たま生活費＆予期せぬ出費＞収入って構図が出来上がるのが辛い。おかげで先月の貯金が微妙ながらも減ってしまったよ。思わぬ所への出費って懐だけじゃなく精神にも直接攻撃してくるから辛い。いや、辛いと言うより痛い！
「冠婚葬祭関係の出費って痛いなあ。一回だけならまだしも二回連続とかどうしろっての。回避不可能でしょ」
やっぱりいつものラーメン屋行って並に餃子でも付けるか。虚しい･･･。本当はもうちょっとお高い物食べたかった。
「･･･このままだと来月も厳しいか」
多少の貯蓄はあるけどこれは自分の未来への自己投資だから使えないし。家も欲しいし、彼女が出来た時の･･･ないな。断言出来るのが何より一番辛い。ぐだぐだ思っててもしょうがないしいつものラーメン屋に直行か。
「あ・・今日は休みだっけ」
ついてねぇー、近所で一番安くて満足出来る店なのにどうしろっての。このままだと今の懐に大打撃を与えてくれるスイーツ（笑）な店しか近所に無いだろ。くそっ、せめて喫茶店かパン屋でもあればなんとか我慢出来たのに。今日はなんとかしてワンコインで済ませたいんだが。今回だけは諦めてお札一枚サヨナラするしかないか。
「最近ついてないなあ、・・特に金銭面的な事ばかり集中してるし」
それもこれも揃いも揃って周りが結婚してくれやがりますから！連続したら一瞬で懐凍るんだぞ。凍るぐらいならいいけど、次の日から飯のランクが２段階は確実に下がってしまうんだぞ。ああ、また節約自炊生活が始まってしまう。こんな時、誰かが・・こう、愛情篭った手料理なんかを用意して帰りを待ってくれてて。
「妄想しただけで不覚にも涙出そうになった」
どうせそんな相手居ないっつうの。居たら此処で愚痴溢さずに素直に家に帰ってる。とりあえず何処で食うかだけでも先に決めておくか･･･。あんまりお金無いけど。
「スイーツ（笑）･･絶対無理！高い！量が少ない！駅前のファミレスは･･入った事無いから好みに合うかわからない。やっぱり今からでも帰って少し遅めの昼飯を適当に食うかな」
「そこのおにーさん、おなかすいた？」
「んぇ？なんだ狐火ちゃんか･･･こんな所で何してんの？」
「おにーさん、さっきからずっとおなかすいたっていってたから」
「言ってたから？」
「おみせによぶー」
気持ちは嬉しいけど今から帰って食う予定だからなー。この子には悪いけどここは心を鬼にして・・お財布事情が寂しいのもあるけど
「悪いけど今日のところは帰るよ、また今度誘ってくれよな」
「こないの･･･？」
うっ･･その幼女独特の純真な眼差しはヤメテ。お兄さん罪悪感出てきちゃうから。行きたいのはヤマヤマだけどお金辛いのよ。今月は氷河期なの。だから今回だけは見逃して。
「やすくておいしいのに・・」
安いと言われても子供の考える安いって基準がいまいちわからないんだけどなー。お小遣いの範囲なのかパパやママに連れていってもらう範囲の値段なのか。
「ほんとぅに・・・おいしいのぃ・・グスッ・・」
「あああっ！ちょっとまって！こんな所で泣かないで！お兄さん悪者になっちゃうから！」
「きて・・・くれるの・・？」
「わかったからわかったから！だから泣き止んで・・ね」
「わーい♪」
･･･やられた。サヨナラ・・・お札さん。
「ここー、このおみせー♪」
「･･･食堂か、確かに食堂なら上手く注文すれば単品で安上がりに抑えれる可能性も・・ま、騙されたと思って入るか」
「「いらっしゃいませー♪」」
「ぷぁらだぁいしゅ!!」
お、おおう・・パラダイスと言うつもりが呂律回らなかったよ。稲荷さんとダークプリーストさんに迎えられるなんて・・・良し、これは夢だ。夢だから稲荷さんの尻尾モフってもいいよ・・んなぁぁっ！！！
「いたたたたーーーっ！菜箸で手摘まむのヤメテーー！」
「御客様、オイタはいけませんわ♪」
「ずみまぜんでぢだーーー！」
んのおおお・・・いってぇ〜〜、これ夢じゃないんだな。
「「それでは御客様。お好みの方を御選びくださいませ♥」」
パンか御飯どちらかを選ぶのか･･。ならば御飯を選ぶ！決して先程馬鹿な事をしたお詫びじゃない。そう、目の前に居る稲荷様から目に見えない怒りのオーラが漂ってきて怖くて選んだんじゃない！･･怖かったです、ハイ。
「ありがとうございます〜♪それでは奥の部屋へどうぞー」
ううっ・・ちょっとだけ怖かった。早く奥へ移動しよ。
「･･････」
嘘だよな。これって死後の世界じゃないよな。なんでこんなに多種族の魔物娘達が・・。
「おうそこの！今日は焼き肉だぜ！どうだ、いっちょ食っていくか？うめぇぞー」
「鰤の照焼きどう〜？美味しいよー？」
「こっちは鰆だよー」
入って早々に誘惑オンパレードゥ!!そこらじゅうの美女から声を掛けられるのって癖になりそうな優越感。嗚呼・・快感。もっともっと誘って〜・・・ん？
『おかずはお一人様一品限り』
･･･。ンノオオオオオオオーーーー!!一品限りってどういう事よ!?これだけ美味そうなおかずがあるのに一品って何!?食い盛りなんだからニ品三品ぐらい・・・あっ。
「･･･（やっと意味わかった･･･全員どう考えてもおかずを作るのは口実で御飯よりこっちの体の隅々まで眺めてきてる）」
よし、別の場所行こう。このまま此処に居続けたら御飯より先にこっちが食べられそうだし。えっと、御飯に合うおかずブースでうろつけばいいんだよな？･･･うひっ、ステーキ焼いてるよ。すっごい値段高そうな雰囲気。流石にこれは避けよう。お金あんまり持ってないし・・って、値段書いてないじゃないか！やばいやばいぞ・・これは間違い無くやばい。食い終わった後に会計でぼったくられて足りない分は・・・誰かに搾られる・・とか。ど、・・どうしよう。そうだ、どう考えてもお札分超えないのを見つければなんとかなるかも。
「肉類は諦めよう･･食いたかったけどなぁ」
焼き魚･･うん、大丈夫そうだな。精進料理･･･は辞めておこう。郷土漬物・・はぎりぎりかな？見た感じ結構ぎりぎり感漂ってるなー。
-ﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝ･･･-
「ん・・・んなっ！？サハギンちゃんが蕎麦を切ってる・・だと！」
「･･･」
どうするどうする？切った後に湯掻くみたいだが・・ざる蕎麦を作るみたいだな。だが御飯に合うかどうかと言われたら微妙感があるんだが。だがここはサハギンちゃんに賭ける！
「ざる蕎麦ください！」
「･････」
あ、あるぇ〜〜？反応ナッシング？
「そこで･････待ってて。すぐ作る・・・」
良かった、反応してくれたよ。無表情だけど料理してるサハギンちゃんいいなぁ。蕎麦を湯掻いて・・水に晒して引き締めて、うんうん。やっぱりざる蕎麦はこうじゃないと。最後に海老天をちょこんと・・。
「････おまちどう」
「シンプルだけど美味そう・・でも御飯どうすっかな」
「御飯・・・こっちに」
「あ・・はい」
「･･･････じゃーん・・・海老天２つ」
あ、まだ海老天あったんだ。
「御飯に乗せる・・・・ツユ・・・掛ける。おいしい」
天丼か。なるほど、天丼なら蕎麦に合うな。では、いただきま・・
「･･･美味しい？」
「ちょっと待って！まだ食べて無いから!!」
うわ・・すっごいこっち見てるよ。一口目食べるだけで凄いプレッシャー受けるとは思わなかった。まずは蕎麦から･･･
「・・・んっ！これはなかなか・・。この歯応え、僅かなざらつき感・・それに皮・・もしかして十割なのか！」
「･･･わからない。この本の通りに作った・・」
げ、月刊・蕎麦の路って・・一流のプロばかりが集まって究極の蕎麦を作るって内容のやつだ。毎月毎月、思考錯誤しながら蕎麦道を極めていく企画誌のはず。
「・・・美味しい？」
「美味い！」
蕎麦でこの美味さなら天丼は・・・んむっ！これまた美味い！ソバツユだったから味が濃くなると思ってたけど案外薄めの味付けでさっぱりしっとりと喉を通っていく。いくらでも胃に掻き込んでやる。
「美味い！美味いが！････（やばい・・どうしよう。これ絶対にお札一枚じゃ足りないかも）」
「どうしたの･･？」
「なんでもないよ！」
大丈夫だ・・うん、大丈夫。明日からちょっとだけハードな節約生活が始まるだけだから。今は美味いもん食ってるんだから明日の事なんか忘れてひたすら食おう。美味い美味い。
「美味しい･･･？」
「もちろん美味いよ！毎日でも食いたいぐらいだ」
「････そうなんだ・・わかった」
へ？なんで帰り支度してるの？本当に片付けちゃうの？
「次の水曜までには・・・獲って来る。それまで待ってて」
････本当に帰っちゃった。次の水曜までにはって言ってたけどもしかしてこれって誘われてるのかな？まぁ食おう･･･うん、美味い。
「ごちそうさまでした」
はぁ・・・あんなに美味しいもん食べたのに心は憂鬱だよ。一体どれぐらい請求されるやら。覚悟決めて会計するか。
「210円になりまーす♪･･･お客さん？210円お願いしまーす」
「･･えっ・・ぁ、はい」
「ありがとうございました〜♪またの御越しを〜」
あれ？普通に店から出てこれたぞ？210円って冗談だよな。それに次の水曜って・・、また食いに来いって事なのか？
「･･･ちょっとだけ節約すれば大丈夫そうかな」
よおっし！約束通りに次の水曜も絶対に来るからな！
それでは皆さん･･･またの御越しをお待ちしております
それでは、本日の営業時間は終了致しました。またの御来店を心よりお待ちしております。
〜糸吉ネ土氏の場合〜
はぁ〜、なんかよくわかんないけど疲れた。たまには甘い物食べたいなー。脳の活力源だし、甘いの多少好きだし。でも先に昼食食べたい。ん〜、どっちにしよ。両方食べれたら丁度いいんだけど、そんな都合のいいの無いだろうなー。でもまずは、作業終わらせてからの話。あー地味に長い作業って苦手。もうちょっと楽に考える方法無いか？う〜〜ん、無理かー。あー、やめやめ。これ以上考えても煮詰まるだけだし、気分転換に何か食べに行ってこよ。外で食事するの超久々だから美味しいの食べたい。出来れば可愛い子付きで。
「そういや、あまり外食しないから良い店知らない･･」
その辺を適当に歩けば大丈夫でしょ、たぶん。
「別に行きたい店とか見つからなかったし、やっぱり帰ろうかな」
あ、そうだ。外に出たついでだし資料買っていこ。決してアッチの資料じゃないから。いつもの本屋に寄ってこ。
「･･･見つからないなぁ、あれすっごい人気あるからすぐ売り切れるんだよなー・・『すぐに理解出来る異世界文字』」
あの本一冊あれば向こうに行って色々勉強出来るのに・・。一度でいいから向こうの世界に行って魔法使ってみたいんだよね。こう、手から炎出すやつとか厨ニ心をくすぐるような派手なやつとか空飛んだりとか決めポーズだけで爆発起こせるやつとか色々やってみたいんだよ。ま〜一番いいのは･･現地の人に教えてもらうのが一番早いんだけど。
「はぁ〜、誰かに色々と教わってみたいなあ」
此処ではない何処かで何か出来れば楽しいんだろうなー。あー、一度でいいから異世界行きてー。ぅ？んむ、そうだった。お腹空いてたんだ。しょうがない、そこの食堂で・・・人多っ！？これ何人並んでんの！見てるだけで帰りたくなってきた。良し、回れ右･･･
「最後尾ー、こちらー」
例え最後尾のプラカードを持ってるのがロリッ子狐火ちゃんだったとしても
「はーい、おにーさーんこっちー」
ふらふらと誘惑に負けて付いていくなど
「もうすぐ入れるよー」
男としてどうかと思うんだけどね！
「おにーさーん、前進んでー」
「あっはい」
いつのまにか並んでるし！？確かにさっき回れ右したはず！ち、違うんだ。こんなはずじゃあないんだ･･･。ああ、あの狐火ちゃんが最後尾に移動してしまう。はぁ〜、並んでしまったししょうがないか。
「次でお待ちのお客様〜」
ん、結構入れるんだな。これなら並んでもそんなに苦にならないかも。順調順調、もう後１１人待ちか。これなら悩まずにもっと早く並んでおけば良かったかも。
「次でお待ちのお客様〜」
よっしゃあ、並んで正解だった！さ〜て、どんな店かな〜。
「･･･むっちむちです。凄くむっちむちですやん」
むっちむちの稲荷さんとダークプリーストさんが手招きしてる･･･。
「炊き立ての御飯はいかがでしょうか〜」
「ふっくらもちもちの焼き立てパンどうですか〜」
何この恐ろしい二択。両方はダメっぽいのか。んーどうしよう･･･ん、パンが呼んでる！ような気がする。パンに決めた！
「焼き立てパンください！」
「は〜い、ありがとうございます♪」
ごめんなさい稲荷さん。パンが呼んでる気がしたんだ、そんなにがっかりしないで！ああ、このもっちもちのパン・・って５個もくれるの！？食べれるかなぁ。
「それでは奥の部屋へとお進みくださ〜い」
はいはーい、あのドアですなー。
「･･･此処に留学しようかな。うん、そうしよう・・」
そこらじゅう魔物娘だらけとか･･最高の環境じゃないの！あの本買わなくても此処で教えて貰えばいいんだ。
「は〜い〜、パンの方ですね〜。新鮮なミルク飲み放題ですぅ〜。どうぞ〜♪」
「あ、ありが・・トゥッ！？」
で、でかい。ホルスさんの何がとは言わないけどでかいよ。って、まさかこの牛乳って！？
「いやぁ〜〜ん♥困ります〜お客様〜。そんなにおっぱいばかり見ないで〜♪」
ぁ、これ絶対にこの子のミルクだ。今確信した。服の上に染みが出来てるし。この場で飲むには勇気要るからちょっと移動しよ。
「は〜〜、凄いなぁ・・。こんなに一同に介してるなんて・・」
右を見ても左を見ても魔物娘だらけ、か。は！オークさんのベーコン美味そうじゃないか！あれをパンに挟んで！・・待て待て、まだ全部見てないんだ。慌てる時じゃない。くっ、あの厚切りベーコンは惜しいが他も回ろう。
「おにーさん、・・あ、パンだね♪どう？このハンバーグ挟んでみない？」
「よぉ、うちのヤキソバどうだ！？ヤキソバぱんはうめぇぞ〜」
「こちらの自家製のジャムどうかしら〜？色々お試し出来ますよ〜？」
「フォンデュはどうですか。チーズもチョコもありますよー」
あ、あかん。そこらじゅうにフラグが何本も立ってる。どうしたらいいんだろう。んーー･･･んーー･･･なかなか決められない。もう一周回ってこよ・・。優柔不断でごめんね。
「此処は天国なんだか地獄なんだか･･」
どこを選んでも幸せになれそうだけど、幸せすぎて逆に怖そう。と、とりあえず無難そうなのを探そう。例えるなら・・そう！そこの紫色のマントっぽいの着てる普通の・・！
「･･･何か用？」
あっ･･･目が合っちゃったよ。ここでスルーするのもなんだし何作ってるかだけでも覗きますかー。ん？手に持ってるボウルから甘い匂いがする･･。
「そのボウルには何が入ってるの？」
「これは･･･虜果実クリーム」
わっ・・薄紫っぽいクリームがたっぷり入ってる。それに、凄く甘い匂い。どんな味がするんだろ。気になる･･凄く気になる！一口だけでも舐めてみたい･･･。
「欲しい？」
「･･･」
ああ、舐めてみたい！舐めたい舐めたい！だけどここは我慢しないと！
「･･･そう・・興味ないみたいだから棄てる」
「ま、待って！棄てないで！もったいないから！」
「・・・・」
くっそーーーっ！！もう我慢なんて無理ぃぃー！
「パンにそのクリーム挟んでください!!」
「わかった･･･これぐらいでいい？」
･･･なんだか葡萄クリームっぽい？でも葡萄の匂いじゃないなあ？なんだろう、甘ったるい匂いなんだけど不快じゃない。では、いただきまっす。
「･･･ッ!?」
「口に合わなかった･･かも？」
うんめええええええ！何この味！？濃厚な甘さの中に隠れるようにして存在する酸味！舌の上に残る香り！ふんぬおおおおー！元気ハツラツゥ！
「栄養ドリンク･･･？」
ちょっ！？なんで心の中で思った事にツッコミ入れるの！
「私がリッチだから？」
種族とか関係無いから･･･ってリッチなの!?リッチと言えば･･･、頭脳明晰で冷静な判断力の持ち主であらゆる書物を保持してるという・・。
「そんなに褒めないで･･･」
「だから心の声にいちいち反応しないで！っていうか心読まないで！」
「さっきから口に出してるのに・・」
「嘘ん！？」
「嘘、心読んだ」
どうにも掴み所ないなー。表情で読むのが難しいし、かと言って私にゃそんな技能無いし。せめてニッコリ笑ってくれたらいいのに。
「・・・こう？･･･ニッコリ」
「口に出しても無表情だよ」
変な遣り取りしてないで食べよう。うん、凄く美味い。んっ・・牛乳も最高。柔らかい甘さが口一杯に拡がって････。
「･･･私も頑張る」
ちょ、ちょっと待って！パン全部にクリーム挟まないで！まだ他のも挟んで貰いたいんだから！
「・・・ん」
ん？向こう見ろって？何・・『おかずは一品まで』。そんなぁ〜、他のも食べてみたかったのに・・、あれ？
「･･･」
もしかして今拗ねてる？他のも食べたいって思ったから拗ねちゃったの？何この小動物みたいなリッチさん。うん？これってもしかして頬っぺた膨らんで・・
「はい、頬っぺたプスー」
「頬･･突付かないで」
拗ねてるよ拗ねちゃってるよ！無表情だと思ったのに頬っぺた膨らんでたよ。かわゆすかわゆす。もう一回だけ･･･
「･･･次突付いたら・・・」
「すんませんしたぁぁぁー！」
ここは男として謝っておかなければ後が怖い。だって相手はあのリッチさんだぞ、どんな事されるやらわからんし。今だって何か分厚い本片手に素振りして・・あ、そうだ！
「あの・・ちょっとだけ頼みたい事があるんだけど・・」
「・・ヤッ」
「あの、出来れば・・」
「・・イヤ」
まだ何も言ってないのに却下は酷い。せめて最後まで聞いてから断わってくれてもいいのに。
「言わなくてもわかる・・から」
あ、そうでした。心なんて簡単に読み取れるんだったなー。やっぱりそんな都合良く教えてくれるわけないよなあ。はぁ・・やっぱり次の出版まで待つしかないか。
「・・・」
「何？本出して・・こっ！これって!?」
「あげる・・・わからない所があったら聞きにくる・・」
こっここおっここれって・・欲しかった『すぐに理解出来る異世界文字』！しかも初版のやつじゃないか！
「何冊か在庫で持ってるから・・あげる」
在庫！？在庫ってもしかしてこの著者は！
「それ・・私の本」
うっひょおおおおおおおおい！御本人が目の前に居たよ！しかも手渡しだよ！わかる！？この気持ちわかる！？誰だって著者本人から直接貰ったらテンションメーター振り切れるよね！私は振り切れたぞ！
「そんなに嬉しかった・・？」
「嬉しいも何もこの１ページ目なんて！・・・よ、読めないので教えてくだしい」
「次まで頑張る・・それでもわからなかったら聞きに来る･･･帰る」
え、ちょっと待って。もう帰っちゃうの？次まで頑張るって何！？
「･･･８日後、また来る。それまで予習する」
８日後、８日後・・良し、携帯にメモっておいたぞ。次に会う時までにばっちり挨拶程度の文章ぐらいは読めるようになっておくぞ。
「･･頑張って」
「本ありがとう！それじゃ８日後に！」
「･･･ぅん」
なんか急にしおらしくなったような？気のせいかな。さて、急いで帰って読めるようにマスターしなきゃ！会計会計っと。
「１３０円になりま〜す♪」
あ、うん・・１３０円ね。いつものとこだったら５倍ぐらい払ってそうなんだけど。ふひひひ・・帰って即解読作業だ。他にも作業残ってたような気もするけどそんな昔の事は忘れた。これで念願の異世界旅行に行けるぜ。そう、この本さえあれば・・・
『やっぱり読めないーー！！』
〜ネームレス氏の場合〜
ふぅ〜〜、さむぅー･･･。こんな寒い日には温かい物食べたいな。いつものラーメンじゃなくたまには豪勢に焼き肉とかがっつり食いたい。でも今はちょっと懐事情を考えると無理っぽい。時たま生活費＆予期せぬ出費＞収入って構図が出来上がるのが辛い。おかげで先月の貯金が微妙ながらも減ってしまったよ。思わぬ所への出費って懐だけじゃなく精神にも直接攻撃してくるから辛い。いや、辛いと言うより痛い！
「冠婚葬祭関係の出費って痛いなあ。一回だけならまだしも二回連続とかどうしろっての。回避不可能でしょ」
やっぱりいつものラーメン屋行って並に餃子でも付けるか。虚しい･･･。本当はもうちょっとお高い物食べたかった。
「･･･このままだと来月も厳しいか」
多少の貯蓄はあるけどこれは自分の未来への自己投資だから使えないし。家も欲しいし、彼女が出来た時の･･･ないな。断言出来るのが何より一番辛い。ぐだぐだ思っててもしょうがないしいつものラーメン屋に直行か。
「あ・・今日は休みだっけ」
ついてねぇー、近所で一番安くて満足出来る店なのにどうしろっての。このままだと今の懐に大打撃を与えてくれるスイーツ（笑）な店しか近所に無いだろ。くそっ、せめて喫茶店かパン屋でもあればなんとか我慢出来たのに。今日はなんとかしてワンコインで済ませたいんだが。今回だけは諦めてお札一枚サヨナラするしかないか。
「最近ついてないなあ、・・特に金銭面的な事ばかり集中してるし」
それもこれも揃いも揃って周りが結婚してくれやがりますから！連続したら一瞬で懐凍るんだぞ。凍るぐらいならいいけど、次の日から飯のランクが２段階は確実に下がってしまうんだぞ。ああ、また節約自炊生活が始まってしまう。こんな時、誰かが・・こう、愛情篭った手料理なんかを用意して帰りを待ってくれてて。
「妄想しただけで不覚にも涙出そうになった」
どうせそんな相手居ないっつうの。居たら此処で愚痴溢さずに素直に家に帰ってる。とりあえず何処で食うかだけでも先に決めておくか･･･。あんまりお金無いけど。
「スイーツ（笑）･･絶対無理！高い！量が少ない！駅前のファミレスは･･入った事無いから好みに合うかわからない。やっぱり今からでも帰って少し遅めの昼飯を適当に食うかな」
「そこのおにーさん、おなかすいた？」
「んぇ？なんだ狐火ちゃんか･･･こんな所で何してんの？」
「おにーさん、さっきからずっとおなかすいたっていってたから」
「言ってたから？」
「おみせによぶー」
気持ちは嬉しいけど今から帰って食う予定だからなー。この子には悪いけどここは心を鬼にして・・お財布事情が寂しいのもあるけど
「悪いけど今日のところは帰るよ、また今度誘ってくれよな」
「こないの･･･？」
うっ･･その幼女独特の純真な眼差しはヤメテ。お兄さん罪悪感出てきちゃうから。行きたいのはヤマヤマだけどお金辛いのよ。今月は氷河期なの。だから今回だけは見逃して。
「やすくておいしいのに・・」
安いと言われても子供の考える安いって基準がいまいちわからないんだけどなー。お小遣いの範囲なのかパパやママに連れていってもらう範囲の値段なのか。
「ほんとぅに・・・おいしいのぃ・・グスッ・・」
「あああっ！ちょっとまって！こんな所で泣かないで！お兄さん悪者になっちゃうから！」
「きて・・・くれるの・・？」
「わかったからわかったから！だから泣き止んで・・ね」
「わーい♪」
･･･やられた。サヨナラ・・・お札さん。
「ここー、このおみせー♪」
「･･･食堂か、確かに食堂なら上手く注文すれば単品で安上がりに抑えれる可能性も・・ま、騙されたと思って入るか」
「「いらっしゃいませー♪」」
「ぷぁらだぁいしゅ!!」
お、おおう・・パラダイスと言うつもりが呂律回らなかったよ。稲荷さんとダークプリーストさんに迎えられるなんて・・・良し、これは夢だ。夢だから稲荷さんの尻尾モフってもいいよ・・んなぁぁっ！！！
「いたたたたーーーっ！菜箸で手摘まむのヤメテーー！」
「御客様、オイタはいけませんわ♪」
「ずみまぜんでぢだーーー！」
んのおおお・・・いってぇ〜〜、これ夢じゃないんだな。
「「それでは御客様。お好みの方を御選びくださいませ♥」」
パンか御飯どちらかを選ぶのか･･。ならば御飯を選ぶ！決して先程馬鹿な事をしたお詫びじゃない。そう、目の前に居る稲荷様から目に見えない怒りのオーラが漂ってきて怖くて選んだんじゃない！･･怖かったです、ハイ。
「ありがとうございます〜♪それでは奥の部屋へどうぞー」
ううっ・・ちょっとだけ怖かった。早く奥へ移動しよ。
「･･････」
嘘だよな。これって死後の世界じゃないよな。なんでこんなに多種族の魔物娘達が・・。
「おうそこの！今日は焼き肉だぜ！どうだ、いっちょ食っていくか？うめぇぞー」
「鰤の照焼きどう〜？美味しいよー？」
「こっちは鰆だよー」
入って早々に誘惑オンパレードゥ!!そこらじゅうの美女から声を掛けられるのって癖になりそうな優越感。嗚呼・・快感。もっともっと誘って〜・・・ん？
『おかずはお一人様一品限り』
･･･。ンノオオオオオオオーーーー!!一品限りってどういう事よ!?これだけ美味そうなおかずがあるのに一品って何!?食い盛りなんだからニ品三品ぐらい・・・あっ。
「･･･（やっと意味わかった･･･全員どう考えてもおかずを作るのは口実で御飯よりこっちの体の隅々まで眺めてきてる）」
よし、別の場所行こう。このまま此処に居続けたら御飯より先にこっちが食べられそうだし。えっと、御飯に合うおかずブースでうろつけばいいんだよな？･･･うひっ、ステーキ焼いてるよ。すっごい値段高そうな雰囲気。流石にこれは避けよう。お金あんまり持ってないし・・って、値段書いてないじゃないか！やばいやばいぞ・・これは間違い無くやばい。食い終わった後に会計でぼったくられて足りない分は・・・誰かに搾られる・・とか。ど、・・どうしよう。そうだ、どう考えてもお札分超えないのを見つければなんとかなるかも。
「肉類は諦めよう･･食いたかったけどなぁ」
焼き魚･･うん、大丈夫そうだな。精進料理･･･は辞めておこう。郷土漬物・・はぎりぎりかな？見た感じ結構ぎりぎり感漂ってるなー。
-ﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝﾄﾝ･･･-
「ん・・・んなっ！？サハギンちゃんが蕎麦を切ってる・・だと！」
「･･･」
どうするどうする？切った後に湯掻くみたいだが・・ざる蕎麦を作るみたいだな。だが御飯に合うかどうかと言われたら微妙感があるんだが。だがここはサハギンちゃんに賭ける！
「ざる蕎麦ください！」
「･････」
あ、あるぇ〜〜？反応ナッシング？
「そこで･････待ってて。すぐ作る・・・」
良かった、反応してくれたよ。無表情だけど料理してるサハギンちゃんいいなぁ。蕎麦を湯掻いて・・水に晒して引き締めて、うんうん。やっぱりざる蕎麦はこうじゃないと。最後に海老天をちょこんと・・。
「････おまちどう」
「シンプルだけど美味そう・・でも御飯どうすっかな」
「御飯・・・こっちに」
「あ・・はい」
「･･･････じゃーん・・・海老天２つ」
あ、まだ海老天あったんだ。
「御飯に乗せる・・・・ツユ・・・掛ける。おいしい」
天丼か。なるほど、天丼なら蕎麦に合うな。では、いただきま・・
「･･･美味しい？」
「ちょっと待って！まだ食べて無いから!!」
うわ・・すっごいこっち見てるよ。一口目食べるだけで凄いプレッシャー受けるとは思わなかった。まずは蕎麦から･･･
「・・・んっ！これはなかなか・・。この歯応え、僅かなざらつき感・・それに皮・・もしかして十割なのか！」
「･･･わからない。この本の通りに作った・・」
げ、月刊・蕎麦の路って・・一流のプロばかりが集まって究極の蕎麦を作るって内容のやつだ。毎月毎月、思考錯誤しながら蕎麦道を極めていく企画誌のはず。
「・・・美味しい？」
「美味い！」
蕎麦でこの美味さなら天丼は・・・んむっ！これまた美味い！ソバツユだったから味が濃くなると思ってたけど案外薄めの味付けでさっぱりしっとりと喉を通っていく。いくらでも胃に掻き込んでやる。
「美味い！美味いが！････（やばい・・どうしよう。これ絶対にお札一枚じゃ足りないかも）」
「どうしたの･･？」
「なんでもないよ！」
大丈夫だ・・うん、大丈夫。明日からちょっとだけハードな節約生活が始まるだけだから。今は美味いもん食ってるんだから明日の事なんか忘れてひたすら食おう。美味い美味い。
「美味しい･･･？」
「もちろん美味いよ！毎日でも食いたいぐらいだ」
「････そうなんだ・・わかった」
へ？なんで帰り支度してるの？本当に片付けちゃうの？
「次の水曜までには・・・獲って来る。それまで待ってて」
････本当に帰っちゃった。次の水曜までにはって言ってたけどもしかしてこれって誘われてるのかな？まぁ食おう･･･うん、美味い。
「ごちそうさまでした」
はぁ・・・あんなに美味しいもん食べたのに心は憂鬱だよ。一体どれぐらい請求されるやら。覚悟決めて会計するか。
「210円になりまーす♪･･･お客さん？210円お願いしまーす」
「･･えっ・・ぁ、はい」
「ありがとうございました〜♪またの御越しを〜」
あれ？普通に店から出てこれたぞ？210円って冗談だよな。それに次の水曜って・・、また食いに来いって事なのか？
「･･･ちょっとだけ節約すれば大丈夫そうかな」
よおっし！約束通りに次の水曜も絶対に来るからな！
それでは皆さん･･･またの御越しをお待ちしております
16/02/04 23:12更新 / ぷいぷい
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