連載小説
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95 雷迅の狙撃手と子供の戦場
「おい、聞いたか?メビウスさんも負けたって話…」
「あぁ…今回、もう既に俺達メガロス帝国の中でも屈指の実力者が負けて行ってるみたいだ…メビウスさんが負けたって事は、次に彼女達が通過するのは俺たちのいるここじゃないのか…?」

そうやって、兵士たちが話しているのを聞きながら、僕は自分の指揮している部隊…狙撃隊の全員のメンタル面を確認していた…
確かに、次の戦いは市街地戦になるうえに、相手はメビウスやテスタロスを倒してきた連中だから…僕がここで食い止めることは難しいかも知れない…
だけど、難しくても、ここで食い止めなければいけないんだ。
僕達狙撃隊よりも、下の方で戦っている隊の方が圧倒的に危険なんだから、僕達が難しいって結論を出してしまうのはダメだと思う。

「………みんな、準備は…大丈夫かい…?」

「いつでもいけます!!多分…ですけれど…」

「多分じゃダメだ…絶対に準備が出来たって思えるまで…各自…スナイパーライフルの整備を…してください…」

「了解です!!」
「なぁ…ザボルグ隊長って、結構慎重派だよなぁ…」
「あぁ、でも…その慎重さのおかげで、俺たちの部隊の生存率は100%なんだろ?慎重だったからこそ、俺たちは自分のペースで確実に敵が狙撃できるんじゃないか…」
「そうだ…俺たちはメガロス帝国の中の兵士連中の中では一番攻撃力が高い部隊だしね?さて、もう一度道具の確認と武器の整備でも…するかなぁ…」

兵士たちがそう言っている中、僕も自分の持っている【ライジングW−35】の整備をまた始めたんだ…
僕の持っているこのスナイパーライフルは、ケイが作ってくれた武器で…2kはなれた場所からでも狙撃が出来て、なおかつ…秒速9000kという恐ろしい速度で弾を打ち出すことが出来るんだ…
そして、そのような速度を実現しながらも、ライフルに作られた特殊な構造のへこみと、メガロス鉱石の相乗効果で、反動は一切ない…
そして、なんと消音装置までついているんだ…
この速度を実現することが出来たのは…ケイが作ったトールシステムっていうシステムのおかげで…自力で銃に内蔵されている発電システムを起動させることで、最高三発の弾を撃つことが出来るんだ…
まぁ、発電に少しの時間は…かかるんだけどね?
このトールシステム…本当は自動で発電してくれるようにケイが改造してくれた改良版もあるんだけど…僕はナッカーサーの誕生日プレゼントにプレゼントする銃に組み込んでくれってケイにお願いしたから…今はまだ組み込まれていないわけだけど…いずれは、僕の部隊全員に配備したいと思うんだ…
そのためにも、勝たないと…

「ホノカゲ…君が僕の部隊に入ってから初めての実戦だけど…大丈夫かい?」

「へへっ…長い間、性行為を行っている夫婦の方々を邪魔してきた小物な俺を、俺の長所を生かしてこんな部隊に入れてくれたこと、感謝してますよ…ザボルグさん?」

「……じゃあ、頑張ってくださいよ…?戦いが始まったら、狙撃隊は居場所を悟られてはいけないため、君がもしも敵に捕まってしまったりしても…無情だけど助けることが出来ない…だから、戦いが始まったら仲間がいるって思わず、一人で戦っていると思いながら戦ってくれ……いいね?」

「あぁ…わかりました…全く、メガロス帝国に流れてきて、これほど仲間思いの方の下につけたこと、うれしい限りですって!!この戦いが終わったら…王様のうどんでもご馳走して貰いに行きましょうよ?」

「……わかった、じゃあ、みんなで生き残ってうどんを食べに行こう…」

僕がそういうと、下にいる部隊の人が僕たちに向かって叫びだしたんだ…
敵が来たっていっているから…そろそろだな…

「みんな…建物の屋根や窓際に潜んでくれ…消音装置の確認をして、確実に狙い打つように…お願いするよ?」

「了解です!!」
「さぁ…今回も敵を眠らせて、早めに退場して貰おうぜ!!」
「おぉぉぉーーっ!!」

こうして、モンスターラグーンって言われる彼女達と僕たちの戦いが始まったわけだけど…
彼女達はいろいろな地区から、凄い勢いで僕たちの守っている地区に来ている…なるほど…僕たちの守っているこの地区と、それよりも奥にある…フォードコーポレーション…そして、メガロス城以外は陥落したって事なのかな…
数で表すと…300人の魔物娘たちが、微妙に興奮したような雰囲気をかもし出しながらこっちに向かってくるのは…男としてはうれしいシチュエーションかも知れないけれど…
その色気に惑わされて負けちゃったら、話にもならない…
確実に…頭を狙わせて貰うよ…?大丈夫…当たっても、寝てしまうだけだからさ?

「ふふっ…こんなに大勢の男性の中から、私の将来の夫が見つかると思うと…興奮するわ…」
「わ、私だって…ここで未来の夫を獲得しますよ!!」
「私も…家事に洗濯に育児…全てをやって貰うために…頑張るわよ!!」

「……残念、僕たちがいる間、そう簡単には思うようにいかないよ?」

「ふみゅっ!?ふわぁぁっ…」
「な、なにっ!?なにがあったの…!?」

「よしっ!!彼女達は動揺している…突撃だぁーーーっ!!」
「俺達も…彼女達に攻撃を仕掛けて…彼女達にはご退場して貰おう!!
「市街地戦で…食い止めて見せる!!」

「くぅっ…負けないわ…ここまで長い間、未婚でいたのよ…絶対、結婚して私も魔物娘としての自信を取り戻したいのよ!!行くわよ!!」
「ま、負けませんよぉーー!!うおぉっ!!」
「きゃぁっ!!危ないです…」
「あうっ…」

よし…今のところは、僕たちの支援も重なっているから…いい調子だな…
このままで行きたいけど……そう上手くいくか…?

「ふみゅう…」
「むむむ…催眠弾のようだね…でも…数で押すよ!!」
「きゃあっ!!でも…攻撃が激しくて…」

僕たちは確実に彼女達を眠らせていき…20人くらい眠ったのを確認した時だった…
いきなり遠くの方から、子供の魔物娘まで戦場にやってきたんだよ…
まさか…子供も参加しているのか…?
いや、戦いに子供も大人も関係ないな…
僕はそう判断すると、スナイパーで彼女たちを攻撃していく…
一撃必殺とはまさに僕のことだって言いたくなる気分だね…

カチッ…カチッ…

あれ…?弾切れか…仕方がないなぁ…

「……うおぉぉぉぉっ……」

キィ…キィ…キィ…

ぜぇ…ぜぇ…リロードするのに…物凄い体力を使うのが…弱点だよ…
さて、また三発…大切に使うとしようかな…?
それに…そろそろ消音装置が壊れる頃合だから…気をつけないと…

僕がそう思いながら狙いを定めていると…
なんだ…?あのマンティスの少女…!?地上部隊の攻撃をあんなに避ける…だとっ!?

「むぅっ…敵の勢いが…強いです…」
「セムちゃん…そんなことを言って〜…あまり、そうは思ってないみたいだよ〜?」
「キュラスちゃんも、手加減しているようですけど…」
「えへへ〜…まぁ、今は気に入った奴隷候補がいないからね〜…やっぱり、デメトリオが一番かなぁ〜」
「デメさんは絶対に渡しません!!たとえキュラスちゃんでも…デメさんは私のお婿さんに来てもらうんですから!!」

何を言っているんだ?彼女達は…
ここからだと、あまり聞き取れないな…まぁ、別に僕には関係ない話なんだろうからいいんだけど…

「……子供か!?なぜ、子供が戦場に…」
「…これが、戦争って奴だというのか…?無情だな…」
「あぁ、そうだな…子供まで戦場にくるような時代になっちまったのか…」

「うんうん…そうだよねぇ〜…私もそう思うよ〜」

「だろ…?どうして、あんな小さな女の子達が、催眠ガスが充満しているこんな戦場に来ることになってしまったのか…それを考えると、複雑な気分だよ…」
「そうそう…ところで…あんた誰だ…?」

「えっ…?やだなぁ〜…チェルシーちゃんに決まってるじゃないですか〜?」

「おい!!敵の女性とトークしているんじゃない!!すぐにそこから離れるんだ!!」
「う、うひゃあっ!?ちっ…全然気がつかなかったぜ…」
「くそっ!!眠れ!!」

「んっ?攻撃を仕掛けてくるのかなぁ?だったら…反撃だよねぇ〜?」

「ど、どこに行った!?うぐぅっ!?」
「おい…大丈夫か!?ぐぉっ…」
「ど、どこから…一体どこから攻撃を仕掛けてきているんだよ…!?」

「それはぁ〜…後ろなんだよ〜?ふふっ…」

「ひぃっ…!?」

彼女…かなりの強さだな…
まさか、一瞬のうちに兵士三人の後ろに移動して…一撃で眠らせるなんて…
彼女、この場所の戦いでも…かなり厄介な相手だな…
どうする?僕は強敵は早めに倒したいと思っているけど…まだ様子を見たほうが…

僕がそう考えていると、隣の窓にいる仲間が彼女を狙い始めたんだよ…
まさか…僕が教えた戦闘の心得の一つ…相手の力量を見極めてから射撃を行うって事を…忘れているんじゃないだろうか…?
でも、今から声を出して…彼に注意することなんて出来ない…
生存率100%が…ここに潰えたか…
僕はそう思うと、彼女をスコープに捕らえなおしたんだ…
せめて、彼の犠牲を足がかりに彼女の力量を…見極めさせて貰うよ…

「くぅっ……これだけ遠くから撃てば…さすがに彼女も眠ってくれるはずだ!」

パスッ…

「……んっ!?危ないなぁっ…よっと…」

「うっ…ふわあぁぁぁぁっ…」
「しまった!?よ、避けたのか…!?ライフルの弾を…!?」

「…狙撃かなぁ?いやぁ…いるとは思ったんだよ〜?ちょっと…銃借りるねぇ〜?」

彼女は何かを言うと、眠っている兵士の手に持っている銃を取って、こっち側に向けて来たんだよ…
まさか…あの場所からこっちを狙撃するつもりなのか…?
そんなことできるわけが…いや…確実できないことって世の中にはないからなぁ…
油断、しないようにしないと…

「な、何のつもりだ?彼女…」

「パーンってねぇ〜?」

「まさか…こっちを狙撃するってのか!?スナイパーでもない…普通の銃で…!?うぐっ…!?」

「一人倒したよ〜?さぁて…のんびりと行こうかなぁ〜?って、あれ?リバティーさんじゃないですかぁ…どうしたんですか?」
「はぁっ…聞いてよチェルシー…メリィが、私もぐうたらしてないで、早く侵攻に行きなさいって言って、私ののんびりとした時間を奪うのよ!私は…働きたくないのに…酷いと思わない?」
「それは…酷いねぇ〜…でも、まぁ…いいんじゃないかな?この機会に、夫でも見つければ…ねぇ?」
「でも…私は戦闘なんて野蛮なことをしたいわけじゃないし…ってか、正直動きたくないし…ねぇねぇ…何もしないで…メガロス帝国が陥落したりしないかなぁ…?」
「う〜ん…あるかも知れないし、ないかも知れないかなぁ〜?」

「くそっ!!意味分からない会話をしているんじゃねぇっ!!おらぁっ!!」
「五人で女性二人に攻撃を仕掛けているところに、俺たちの卑怯さを感じるが…それでも、戦いだからな…仕方がない!!」
「行くぞぉっ!!」

「邪魔だよ!!あんたら!!」

「なにっ!?ぐほぁっ!?」
「おいっ!!くそっ…一体誰だ!?」

「へっ…あたしの名前はペギー…覚えておくん…」

「畜生!!ここはひとまず後退だ!!退くぞ!!」
「了解です!!」

「ちょっと…話は最後まで聞けって…もぅっ!!」

まさか……後から来る部隊に押されて…下で戦っている部隊が後退するなんて…この場合、僕たちは完全に孤立してしまったって事になるなぁ…
下手に動けば確実にばれてしまう…だが、動かなくてはいずれは捕まる…
どう転んでも…全滅してしまう可能性が高い…かぁ…
敵の戦力が予想より…大分強いな…

「……やるしかない…僕達で、一人でも多く…彼女たちを優しい眠りに落さなくては…そうと決まれば…」

パシュッ…ギキィンッ!!バキィッ…

……こう、運が悪いと連続で不幸な出来事が起こるんだなぁ…
まさか、このタイミングで消音装置が壊れるなんて…
しかも、さっきの音…確実に彼女達に聞かれたと考えたら…非常にまずいな…
僕のミスで仲間全員を危険にさらしてしまったじゃないか…
くっ…くそぉっ…仕方がない…
僕はすぐに横においてあった閃光弾を手に取り、ライフルに設置、空中に打ち出したんだよ…
赤色の閃光弾は…『リーダーを残して全員撤退』の合図だからね…
そう…僕は自分のミスで消音装置が壊れた時、居場所がばれたことも考え、仲間を全員逃がす選択をとったんだ…
撤退して、別の場所で頑張ってくれればそれでいい…だろ?

ひゅるるるるる〜…ドカッ!

「あの閃光は…まさか隊長…そんな無謀な作戦を!?認めない…俺は認めないぞ!」
「おい…隊長の心境も考えて、隊長の言うとおり、撤退しなきゃいけないんじゃないのか?ザボルグ隊長が撤退命令を出すって事は、それだけ深刻な事態なんだよ…まぁ、最近入ったホノカゲにはわからねぇと思うけどさ?」
「それでも…この町に来て、俺は仲間を思いやる連中と、友情の重さを知ったんだ…だが、それを知ってしまった以上、俺は隊長を見捨てることなんて…ここで隊長を見捨てたら…昔のまま…器の小さな男に戻ってしまうじゃねぇか!」
「馬鹿野郎がっ!!」
「ぐほぁっ!?」
「俺達だって…ザボルグ隊長を見捨てたくなんてねぇよ!!だがな…隊長を信じているからこそ…それがどんな無謀な作戦でも、俺たちは隊長の言ったとおりに動くんだ!!それが、信頼ってものだろ!!」
「…っ!?そ、そうだな…わかった、隊長を信じて…今は退こう!」

……みんな、退いたようだな…
幸い、僕のライフルの消音装置が壊れた音は彼女達に聞かれていなかったようで、仲間は無事にこの場所から後退することが出来たし…
さて…最低でも30人は眠らせようか…?

ダーンッ…

「うっ…やられたぁっ…がくっ」
「…狙撃!?全員退いたと思っていたのに、まだ残っていたのね…」
「でも…どこにいるのかしら…?さっきの音が聞こえるよりも先に彼女は撃たれたようにも見えたけど…きゃっ!?」

ふぅっ…このライフルの性能が無かったら、僕は確実に彼女達に見つかっているな…そのことを考えたら、ケイには本当に感謝だよ…
僕はそう思いながら彼女を撃つと、またリロードを始めたんだ
彼女達が僕の居場所を特定するまで…僕は一体何人眠らせることが出来るだろうか?
いや…そんな後ろ向きな考えじゃダメだ…こういった時こそ、前向きな考え方で行かなきゃ…

「あら…?狙撃がぴたりとやみましたわね…?」
「そうだね…この静けさ…逆に不気味な気がするけど…はっ!?ふみゅぅ…」
「どうしましたの!?ま、まさか…」

ダーンッ!!

「まだ…狙撃は終わっていませんでしたの!?あわわわっ…きゃっ!?」

ダーンッ…

……はずした?この僕が…どうやら彼女は物凄く運がいいようだな…
運がいい相手にいくら狙撃を行っても、おそらく当たらないだろうからな…
彼女は後回しでいいか……
僕のライフルの狙撃は、どうやら相手に気付かれても避けようがないみたいで、何人か僕の狙撃に気がつく、勘のいい魔物娘たちがいるんだ。
多分、普通のライフルとかだったら、避けられているかも知れない…
そう思うと、怖いよな…

「でも、僕のライフルは…普通のライフルじゃ…ないからね…」

僕は一人…小さな声でそうぼやくと、また狙いを付け直したんだよ…
相手は僕一人だって言うのに…あんなに慌てている姿を見ていると、おかしな気分になってくるんだよね…
さて…お次の相手は、季節感漂う服装をしているインプの彼女だ…
のんきに空中で飛んでいては、格好の獲物ですよ…?狙われたくないなら…
地面の近くにいなきゃ……ねぇ?

「コニー…どこかから狙撃しているようだけどさぁ…全然いないじゃない」
「ふわぁぁっ…知らないわよ…私だって、本当は夜型なのに戦っているんだから、黙って探しなさいよ…」
「……別に、いいけどさぁ?でも…っ!?ちょっとコニーごめんっ!!」
「えっ…!?ペギー…何を…きゃうっ!?ふみゃあ…ね…むっ…」

……仲間を犠牲にした?何度も使える手では無いと思うけど…それでも、上手く狙撃をかわしたのは褒めてもいいかな…
でも、その場合、君だけを眠らさずに逃がしてやるわけにはいかなくなる…
すまないが…せめて、いい夢を見てくれると…僕もうれしい

「みんなっ!!向こうだ!!向こうに狙撃手がいるっ…きゃっ!?」

ダーンッ…

三発目…今からリロードを開始するけど…
彼女がとった行動は、非常に賢い行動だって思うよ?
狙撃手はどこから撃ってきたかを敵に悟られると、ほとんど生存率はないと思ったほうがいいから…ね?
さて、いよいよ…僕の最後が近づいてきたか…
ホノカゲたちは…無事に逃げたかな…?

僕はそう思って、ちょっとだけ後ろを振り向いたが、その後…リロードが終了したライフルを持ち直したんだ…
まだまだ…まだ僕でもいけるはずだ!!

「はぁっ…終わったと思って拠点に帰ろうとしていたのに…」
「そんなリバティーちゃんに取って置きの話があるんだ〜…聞くぅ?」
「えっ…?なになに…私にとってプラスな話?」
「違うよ〜?私にとってプラスな話なんだけど…リバティーちゃん、今…障害物のないところを歩いているから…格好の的だよぉ?私はリバティーちゃんがいるから大丈夫なんだけど…ね?」
「えっ…それって…」

ダーンッ!!

「そう…リバティーちゃんが盾になってるってことだよ〜?盾になってくれてありがとね?後で…欲しがってた同人誌プレゼントするから…許してね?それにしても…なるほどねぇ…あの建物の…三階かぁ…って、おや?あんなところに子供達がいるではないですかぁ〜…サササっと手紙を書いて…ナイフに刺して…とりゃあ〜!!」

……なんだ?さっき、僕が狙撃したアントアラクネの彼女の後ろから…何か光るものが飛んできたような…気のせいかな?
それにしても…ここまで狙撃されていると、彼女達も慎重になっているのかな?思ったよりは、攻めて来ないなぁ…
まぁ、狙撃手としてはそっちの方がありがたいんだけどね?
さぁて…今度は上手く隠れているつもりだろうけど、肩が物陰から出ている彼女を狙い打つかな?

「デメさんは絶対、ぜ〜ったいに渡しません!!」
「わたしだってっ!!せっかくのちょーきょー奴隷なんだから…逃がさないもーんだ!!」
「むむむむっ…」
「うむむむむむぅっ…」

トスッ…

「うひゃあっ!?な、なんですか!?これは…」
「何か…手紙がついてるよ〜?」
「どれどれ……」
「あっ…自分だけ手紙が読めるとかじまんしたいんだろうけど…そうはさせないもんね!!私が読むんだから!!」
「…読めるの?キュラスちゃん、私より年下なのに…」
「読めるもん!!えっと…そのののにがいるからしてくれるとうれしいにゃ〜? チェルシーより だって」
「えっ…?そのののに…?何それ…?ちょっと貸して?」

『その場所の隣の3階に狙撃手がいるから倒してくれるとうれしいにゃ〜?
    チェルシーより』

「キュラスちゃん…漢字まだ…読めないんだ…」
「い、今は読めなくてもいつかは読めるようになるもん!!」
「とにかく、今はその狙撃手さんを倒しに行きましょうか…?キャラスちゃん?」
「むぅーっ!!そんな哀れなものを見るような目で私をみるなぁーー!!」

ふぅっ…彼女達を確実に眠らせてはいるんだけど…正直、疲れてきたなぁ…
思えば、昔の僕はこんな苦労もすることなく…のんびり過ごしていたなぁ…
散々、仕事場でチビだの暗い奴だのって苛められたけどさ?
でも…この国のみんなはそんな事絶対に行ってこなかったし…仲間思い…
確かに、のんびりと人生を過ごす事はできなくなったけど…僕は…メガロス帝国に来てよかったよな?
いや…よかった!!僕は…ここに来てよかったんだよ!!
迷いは消えた…本当は、微妙に僕も退くかどうか悩んでいたんだけど…
退かない…僕は絶対に…退かないぞ!!最後まで…戦ってやる!!

僕はそう心の中で思うと、即座に彼女達を二人狙撃…凄い速度でリロードを始めたんだ…
さて…今度は…どうするかな?

「そろそろかなぁ?みんな…敵はこの攻撃頻度から考えても一人…ここは一か八か…全員で突撃しましょう!!」
「えっ…で、でも…」
「大丈夫ですよぉ〜…私が一番先に行きますから…ね?」
「だったら…みんな!!行こう!!」

なっ…!?このタイミングで全軍突撃だって…!?
くっ…今日の僕は…運がないなぁ…本当に、運がなさすぎだよ…
よし、こうなったら…一人でも多く…彼女達を眠りの世界に引き入れてやる!
覚悟するんだなぁっ!!

ダーンッ…ダーンッ…

「さて…二人眠らせたから…次に、先陣を走っている勇敢な彼女に…催眠弾のプレゼントだ…っと、なんだ…?彼女、ナイフで日光を反射させてくるだと?残念だけど…僕のライフルはそういった邪魔な光を遮断し…」

僕はここで、黙り込んでしまったんだ…
さっきの彼女がやって来た行為…あの日光を反射させてきた時の光の点滅が…よく狙撃手が使う暗号にそっくりだったんだ…
えっと、暗号を解読すると…

USHIRODAYO OYASUMINASAI

後ろだよ おやすみなさい…?
これは…一体何の暗号だ…!?くそっ…はっ!?
ま、まさか…

僕はここで気がつき、慌てて後ろを振り向いたんだけど…
そう、僕はここで、マンティスとダークエルフの女の子二人組みに近づかれていたんだよ!!
くっ…何時の間に…!?
仕方がない…撃つか…
僕はそう思い、持っていた普通の兵士用の銃を構えたが…

「どうしたんですか?お兄さん?」
「あはっ…何?それ〜…」

くっ…撃たないとダメだ…撃たないと…撃たないと…

僕は心の中でそう強く思ってはいるけど…どうしても引き金を引くことが出来なかったんだ…
僕には撃てない…いくら催眠弾だとはいっても、武器も持たない小さな子供を撃つなんてこと…僕にはとても出来そうに無い…
どうすれば…どうすればいいんだ!?僕はっ!?

「あぁっ!!よく見たら、こっちのほうが私の奴隷にふさわしい顔してる〜!」
「だったら、彼を自分のものにして、デメさんを諦めてください!!いいですか?」
「いいよ〜?じゃあ…さっそく…お兄さん?」

「な、な、な、な、な、なな、ななな、何だ?」

「お兄さん、もう私の奴隷決定だよ〜?だーかーらー…ママに言われたとおり、拘束したいからぁ…ちょっと眠っててぇ〜?ほら…これでぇ…ね?」

「そ、それは…他の兵士が持っていた催眠手投げ弾!?落ち着け!!それは君のような子供が持っていていいものでは…」

そして、小さなダークエルフの少女が催眠手投げ弾を投げてきた時…
僕は相手が子供だからって事で油断した事と、少しでも戦場で、敵の動きから目を放した事を後悔して眠りについたのだった…
みんな…やはり、無事に追いつけなさそうだ…すまない…なぁ…

〜〜〜デメトリオの視点に変更します〜〜〜

ザボルグ…ザボルグまで…
どうしてだ…!?どうしてザボルグはあのタイミングで逃げなかったんだ!?
逃げるチャンスはいくらでもあったはずだろ!?俺だったら確実に逃げてたシチュエーションだぞ…!?
くっ…しかし、ザボルグも負けてしまったって事は、俺の身に迫る危険がさらに大きくなったんじゃ…!?
の、のんびりとお菓子を食っている場合じゃない!!
こうなったら…画面の向こうから必死で応援しないと…ミカルドのメンバーももう4人もやられてしまったからなぁ…
ま、まぁ…俺の場合は本当に危ない時はケイが逃がしてくれるからな…
とにかく今は…俺の身の安全も大切だけど…ミカルドの捕まった連中が無事であることを祈るのが先だよな…?

俺はそう思うと、ザボルグが敵に倒されたことを報告し、ケイと一緒にモニターの向こうでミカルドや他の兵士の連中を見守ることにしたのだった…
12/10/16 20:10更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

さて…ザボルグも負けてしまいました…
一話おきに、ミカルドの皆が負けていっていますが…
それでも、彼らは自分の意志を貫きとおしたって事は心に入れて置いてください!

そして……次回ものんびりと見ていただけるとうれしいです!!
ありがとうございましたーー!!

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