連載小説
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94 氷罠者の潜む倉庫
『テスタロスが…やられちゃったんだよ!!みんな、悲しむかも知れないけど、今はとにかく…頑張ってくれ!』

私はデメトリオがそうやって通信してきた時、さっき感じた嫌な予感はコレだったんだなって直感した…
一応、この私が罠を仕掛けたこの地域の罠は、私が今持っているものを入れれば最後になるが……
私は一瞬だが、テスタロスとの最後の会話を思い出していたわけだ…
今となっては、確かにテスタロスは戻って来れないような台詞を言っていたと思ってしまいますから、複雑な心境です…

……さて、このクレイモアをここに仕掛けてっと…高いところから、侵入者でも迎え撃つとしましょうか…?
テスタロスの馬鹿は…きっと最後の一歩手前くらいまで、仲間のことを思っていたんだろうな…

こうして、私はこのカキサトレインの資材置き場の中で、一番高い場所…ではないところに身を潜めたんだ…
今の世の中、高いところに行きたがるのは馬鹿と煙だけって言うじゃないですか…ねぇ?
私はそんな狙われやすい場所じゃなく、あえてばれやすそうでばれない中腹辺りに潜みますよ…?
っと、そんな事を言っている間に、敵が来ましたね…
はっ…そろいもそろって、女性ばかりですか…
ですが、過去の偉人の中には、戦いには男も女も関係ないって言葉を残した人がいますしね…

関係ありすぎでしょうが…
どうしてこの世界に魔物という存在が生まれたのか…とか、その魔物という存在が、今の世で言われる魔物娘に変わったのかとか、多くの謎がある中で、人間のどれほど無力なことか…
まぁ、それを恐れて教団のように弾圧を繰り返してしまうところに、人間の弱さを感じますね…

私は、一人で…こんな薄暗いところで何を思っているんだか…
今、そんな事を思っても仕方が無いじゃないですか…それなのに、全く関係ないことが頭の中にポンポン出てくる…
ダメだダメだ!!今回、私が仕掛けた罠の中には私がこのショットガンで刺激を与えないと爆発しないものもありますからね…
戦いに集中しなくては…

ちなみに、私のこのショットガン…【ヘリアP-290】は、ショットガンと呼ぶにしては、少々…いや、大分異なった武器でして…
なんと、このショットガン、確かに弾は沢山撃てるし、拡散もしますが…問題はその拡散力です…
なんと、半径3cmしか拡散しないんですよ…
これでは、ショットガンというよりは、もう何発も弾がでるハンドガンといってしまったほうがいいかも知れませんね…
ですが、この武器の長所は、私の運動不足を補ってくれるのですよ…
まず、射程が長い、そして…軽い…そして、弾切れを起こさない…
そう、このショットガンは、以上に軽い上に、大きさもあまりない…だが、どれだけ撃ったとしても、弾切れがないんですよ…
これは、ケイが作った中でも、最高の出来だと私は思いますね…
このシステムが他に組み込まれているのは…ナッカーサーのガトリングぐらいのものです…

さて…そろそろこの資材置き場の中のスピーカーを使って話しかけてあげましょうかね?
敵である彼女達も、ここに敵がいるって知りたいはずですからね
まぁ、ここで無言を貫き通して、罠にはまってもらうのが一番いいと思われますが、それは卑怯だと…そう思いません?

私はそう思うと、すぐに手元にあるマイクで話し始めたのです…
この資材置き場を通過しなければ、彼女達はこの場所から先に進むことは出来ず、この資材置き場の中には約15台のスピーカーがついているから、私の場所がばれることはまず、ないかと思いますしね?

「ようこそ…私の担当したエリアに…私の名前はメビウス、以後お見知りおきを…一方的な押し付けのようになってしまうところすまないが、君達の入ってきたその部屋…大量に罠が仕掛けられています…まぁ、罠にかかっても死ぬことはありませんので、遊び感覚でお楽しみください…でも、ここの罠は強力ですので、どれだけ睡眠耐性があったとしても、絶対に4時間…眠れることを保障しますよ?果たして、この建物の中にいる私を見つけることは出来るのでしょうかねぇ?」

「ったく、罠なんて、めんどくさいねぇ…そう思わないかい?ミリエラ…」
「でも、安全に行動するためには、注意しないといけませんよ?フランチェスカはいつも無謀に行動するから…」
「はいはい…そうですねっと!!」
「あっ…もう…これだから…ちょっと、待ちなさい!!」

さて…私は監視カメラで早速監視を…っと、いきなり無謀に突っ込んでくる…
まったく、彼女は私の罠の威力を甘く見ているようですねぇ…
引っかかった時に、後悔するのはあなたですよ?
まぁ…引っかかったら寝ている訳ですけど…

「はっはっはっ…罠なんてないじゃないか…これだったら余裕で探せるなぁ!」
「フランチェスカ!!いきなり敵がどこにいるかも分からない場所に、他の魔物娘に比べて足が2本多い私達が突進してどうするんですか!!罠が地面に仕掛けられていたら……」

カチッ…

「「あっ……」」

ふっふっふっ…勘はいいようですが、一緒に走っていれば、そりゃあ引っかかるでしょう…
まずは、【オルトロス・XON】の威力、味わいなさい!!

オルトロス・XON…別名、高圧電磁檻催眠ガス発生装置後継機…
この罠は、一度引っかかると簡単に脱出することはまず不可能…そして、この罠からは高濃度の催眠ガスが発生する!!
電磁界の中でのみ行き来する高濃度の催眠ガス…その中に長時間いれば、眠ってしまうのは自然界の摂理でしょう?
ですが…この罠だけでは確実性がない…
なので、私はオルトロス・XONの近くに、ある罠を仕掛けることにしているんですよ…

「ちょっと…出られないじゃないの…」
「ミリエラが無茶するからですよ…」
「私のせいだっていいたいの!?って、な、なに…?あれ…」
「このガスに加えて…よく分からない装置…?」

くっ…よく分からないとは失礼な…
その装置は【STR・ウォーマー】といって、その装置は電磁波によって作動し、近くにいる生体に対し、物凄い数の催眠弾を連射するのです!
しかも、この催眠弾の弾を覆っている部分にはある特殊な装置がついており、電磁波を遮断できる!!
一発の威力は弱いですが、電磁波の檻から獲物を出さず、いくらでも催眠弾を撃てるこの罠は、このオルトロス・XONと相性がいいんですよ…
そして、私は罠を常に三重に仕掛けることにしていますので…最後の罠はこれです…
【大型火力催眠手投げ弾】…テスタロスも多用していた爆弾ですね…
これに、STR・ウォーマーにつけてある装置を取り付け、オルトロス・XONの仕掛けてある場所の天井部分にでも紐でくくりつけておけば…
私の手元のボタン一つで、その紐が焼き切られ…私の罠は完成するのです!
まぁ、この罠は後、二つだけ配備されているわけですけれど…ね?
爆風がオルトロス・XONの外に逃げず、軽いやけどを負ってしまう可能性はありますが、死なないですし…大目に見て頂きたいですね…
大丈夫です…恐らく、STR・ウォーマーの弾を防ぐ為に、手を顔の前に出して攻撃を防いでいるはずですので、可愛らしいその顔にはダメージはありませんよ?

カチッ……ドゴォォォォォォッ!!

まずは二人…私の罠は後350個残っていますから…単純に考えても私の負けはありませんよ…ふっふっふ…

この場所で、敵を食い止めるのが私の仕事です…
恐らく、テスタロスもそれを願っているはずですよ?
私だって、仲間意識がないわけではないので、ここから先へは行かせませんね…

私はそう思いながら、あることを考えていたのです…
テスタロスと少々喧嘩して、私一人だけが逃げればいいとテスタロスが言った時、私は初めの間はテスタロスを見捨てて逃げるつもりだったんですよ?
正直、私は仲間意識はあっても、その仲間意識よりも戦いに勝ち…これから先のことを考えて行動するほうがいいと今でも思っていますからね?
ですが…私はその時、どうしてテスタロスがあそこまで仲間に執着したのか…
それを自分なりに考えていたんですよ…
テスタロスは私に何と言われても仲間を助けに行くって選択肢を取り、私は初め、やはり馬鹿はいつまで経っても馬鹿だって思いました…
ですが…テスタロスの行動を全面的に否定出来たかって言われると…
無理だったわけですねぇ…

結局、私もこんな感じで考えていて、結果的にテスタロスを助けるって勝率の少ない方法を取ったんですけどね?

そんなテスタロスも、結局は敗れてしまった…そう思うと、なぜか心に穴が開いたような気分になります…
結局、私はなんだかんだ言いながらも、テスタロスのことがお気に入りだったわけですねぇ…
っと、こんな気分に浸っている場合ではありません…
果たして、敵は次にどんな無謀な考えで挑んでくるのか…

「…面倒ですね、魔法具の力と私の魔力で…この倉庫全体を覆います…」
「クレオ…それ、敵が誰だか分からないけど、凄く酷いことですよ?」
「いいわ…そもそも、魔物娘と結婚せずに独り身でいることが罪なのだから…さて、エシュタール、ソフラン…しばらく、敵の注意をひきつけてください」
「わかったわ…菊太郎、行くわよ…?あなたの体にセットされたアーマーの凄さを見せてあげなさい!!」
「了解です…マスターエシュタール…」

おや…?彼は…妙な身なりをしていますねぇ…
ですが、そういった人物のほうが、賢かったりするので…ここは下手に出ず、様子を見たほうがよさそうです…

「ターゲット…ロック…狙撃する!!」

パスッ…ドゴォーンッ!!

な…にぃっ!?そんな馬鹿な…!?
私の…私の罠の一つ…【ローレン・POD】が打ち抜かれた…!?
馬鹿な…さっきのまぐれです…きっとそうに違いありません…
たったの一つ、罠が打ち抜かれたといって…動揺するなど…
それに、彼は天井に仕掛けた罠しか今のところ狙っていませんし…それに、この倉庫には、意外なところにも罠が仕掛けられていたりしますからねぇ…?

だが、そう思っていた次の瞬間、私は思わず嘘だ!!と叫んで、自分の潜んでいる居場所をばらしてしまうところでした…
なんと、彼女達のうちの一人…青い花を咲かせたアルラウネの女性が倉庫の床に自分の蔓を…!?
い、一体…何をするつもりなんですか…!?

「………(ニタァッ…)」

し、しかも…なんですか…!?彼女…!?
謎だ…この私には理解できないタイプの方だ……
彼女は一体何を確信してあの笑みを…

しゅるっ…
ボーンッ!!ジジッ…ザァァァァッ…
ドゴゴゴゴゴゴゴゴォッ!!

ば、馬鹿な!?私の…私の仕掛けた罠が…地雷系の罠が全て看破された!?
くっ…ここまであっさりと罠を潰してきますか…
いいでしょう…私の取って置きは…まだあるんですよ?

私はそういうと、自分のショットガンを隠れている場所からそっと…ある場所を狙って撃ったのですよ…
そう、そのある場所…それは、天井を狙っている彼…のはるか右端にあるドラム缶です!!
あのドラム缶を狙った場合、角度27.3度の角度で弾を当てた場合のみ、跳弾するんです!!
そして、その時、跳弾した玉が飛んでいく可能性がある場所は42箇所…
そのうち、彼のすぐ真横にあるコンテナに設置された、私のお気に入りの罠…
ステルス機能が搭載された、【私、大きくなったらお父さんのお嫁さんn(ry】に当たる可能性は26%…
そして、彼にもしも罠が当たらなかった場合、音がして彼はドラム缶の方に移動するはずですので、ドラム缶の下部についているコルクに弾を当て…高濃縮の催眠ガスを食らえばひとたまりもないはずです…
さらに、私の潜むこの資材置き場にある催眠ガスは特殊でして、私達メガロス帝国民でも、催眠ガス取り扱い1級の試験を取っているものしか扱えないものなのですよ…
皮膚からも催眠ガスが染みこみますし…いかなる衣服でも防ぐことは出来ません…
つまり、その試験の免許を持っており、武器に唯一そのガスが使われている私の罠は最高だということです!!

さぁ…私の知略に…敗北しなさい!!

ドォンッ…!!
キィンッ!

「んっ…?この音は…?」

……おっ?これは…私の罠が発動しそうです!!ふふっ…
はっはっはっはっ!!

私のこの罠は…催眠ガスを二種類使用していますので…普通の罠より悪質ですよ…?
なんと、この罠は…ネーミングにはちょっとアレな感じがしますが、相手の脳に嘘をつき、相手の視覚をだますことが出来るのです…
そして…確実に相手に安らかなる眠りを与える…派手でもなく、確実性を重視した罠なのですよ!!

プシューーッ…

「これは…ガスかっ!?だが、このアーマーをつけている私には…」
「菊太郎……」
「ま、マスターエシュタール!?ど、どうしたのですか…!?まだ、ミッションコンプリートしていないはずでは…」
「いいのよ…私、今はとにかくあなたとイチャイチャしたいわ…」
「い、いけません!!私は今…任務中で…!?」
「そんなつれないことを言わないで……楽しみましょう?」
「……ふわぁっ…ね、眠く…なって来た…です…」

くっくっく…本人が一番願っている幻覚が見えるので、抗いにくく…その幻覚に溺れている間に催眠ガスを口から入れる…
確実性のあるいい技ですよねぇ…?
……まぁ、この罠はメガロス帝国のメンバーにはなぜか不評で、この一つしか作られなかったのですが…
罠というのは使うものです…使い惜しみをして、負けるのはただの馬鹿ですからね…
ちなみに、私がデモンストレーションを行ったとき、私は無数の少女にもみくちゃにされました…
まぁ…ロリコンだったといわざるをえない結果を体感したわけですね…
ですが、私は他のロリコンとは違い、現実を分かっていますから、大丈夫です!
って、私は何の話を…
今は、この戦いに集中し、これ以上先に進ませないのが目的だというのに…
一度話がそれると、無駄に話し込んでしまうのは…私の悪い癖ですね…

まぁ、一人はこれで眠らせました…
まだまだ…罠はありますからね?どうか、楽しんでいってくださいよ?
といっても、彼女達からしたら、楽しむ余裕なんてないんでしょうが…
大丈夫です…眠るだけですから…ね?
全員眠らせたら、この倉庫のすぐ近くにある仮眠室に運んであげますよ…
まぁ、その間に罠を仕掛けなおしますけどね?

「菊太郎…どうやら、任務は失敗のようね…でも、よく頑張ったわ」
「……よし、準備が出来た…魔法具【許しの箱庭】の準備が出来たわ…これで、こそこそ隠れている敵も終わり…ここからは、リカとメロンの仕事よ?」

……何を言っているんでしょうか…?魔法具…?
そんなものは聞いた事も、見たことも無いのですが…彼女の言い方から察するに、とてつもなく恐ろしい道具なのでしょう…
ですが、隠れている敵も終わりって言いましたが、私の場所を特定する魔法具だったりしたら、私に負けはありませんよ?
私の場所を分かったとしても、そこにたどり着くためには物凄い数の罠を超えなくてはなりませんからね…
私の仕掛けた罠が、そう簡単に看破されることも…おそらくもうないと思いますし…
だって、ステルス性能が非常に強い罠もあるんですよ?魔法…って技術がどうなのかはわかりませんが、私の罠のステルス性を見破ることなど…

私はここであることに気がついたのです…
足元にいきなり、謎の魔方陣が現れたんですよ!!
よく見ると…この魔方陣はこのカキサトレイン資材置き場全部を覆っているようにも見えます…
まさか…建物ごと攻撃するつもりだというのですか…!?
………冗談じゃありませんよ…せっかくあれほど時間をかけて罠を仕掛けたというのに…建物ごと攻撃するつもりですか…
だったら、私が取れる手段は一つだけですねぇ…
情けないですが…仕掛けた罠にこだわってこの建物で戦うよりは、一度退いて、また仕切りなおした方がよさそうです…
私はそう思い、そっとその場を後に…って、この魔方陣…
テレポーテーションシステムで転送されている時と同じ雰囲気を感じる!?
まさか…転送系だと…!?
こ、こうしてはいられません…逃げますよ…!!

ですが、私の逃亡は、一瞬の判断の遅れが原因で遅れてしまい、私は今…よく分からない場所に一人、立っていたんですよ…
ここは…どこです?体が重く感じますし、空気もメガロス帝国に比べると綺麗ですが、なにか居心地が悪いですね…
しかも…この霧…あまりここにいるのは…得策ではないと思いますが…

しかし、いくら前に足を進めても、濃い霧のためか、一向に前に進んでいる気もしないんですよ…
まずは…この空間の秘密を探らなくては…
私がそう思い、自分の愛用している手帳に現在の状況を書き込んでいた時だった…

「ふふっ…また一人…許しの箱庭に送られた罪人がやってきたわ…さぁ、あなたの罪を心の中で数えなさい?それを…この私、リカ・ブライトマンが裁いてあげますから…」

「罪…ですか?あいにく、私にはそのような覚え、無いのですけどね…」

「まずは…自分に対するその自信が罪ね…そして、あなたから発せられる匂いを判断すると、未婚者…最も世界で愛するべき魔物娘を愛しきれていない…これが重罪となるわね…?中々…重い罪を背負っているじゃないの…」

……これは、戦いの予感ですが…私は罠がないと、実力の半分くらいしか能力を発揮することが…出来ないのですよ…
この空間には、私の仕掛けた罠など、あるわけもありませんからね…
となると、頼れるのは私の判断力と、このショットガンだけ…
仕方がありません……出来うる限りの戦闘は行います…
ですが、ここから脱出する方法が分かり次第、戦闘を放棄してこの場所から脱出する…
この作戦でいきましょう…作戦と呼ぶには、ずいぶんお粗末なものですが…

「戦うつもりですか…?私はあまり戦闘は得意なほうではないのですが…いいでしょう!!この怪しい空間と怪しい人物から離れるためにも…倒させていただきます!」

まず…初手は…やはり、この霧を利用して姿をくらませるべきでしょうか?
彼女から少しでも距離をとって戦わなくては、危険な部分もありますし…
それに、敵の足音や気配を察して戦えばいいですし…
私の作戦に…一寸の隙もありません!!
ってわけで…早速…

そうして、私はこの霧に隠れ…相手の気配を探りながら戦闘を行うことにしたのですが…か、彼女の気配が…分からない…!?
馬鹿な…生きているものは皆、生命反応を維持するために呼吸を行ったりするはずです!!そして、これだけの霧があれば…少しでも呼吸をした時、霧が微妙に振動するはずです!!
そ、それなのに…3分たってもそれが起こらない!?
……魔物娘の身体メカニズムは人間とは違うものなのでしょうか…?
肺で呼吸を行わなくとも、死ぬことは無いと…?そんな馬鹿なことが?
しかし、それ以外では考えられません……
これは、策が裏目に出ましたね…

私がそう思い、ちょっと困惑していると…いきなり後ろからスライム状の何かにつかまれたんですよ!!
こ、これは…!?

「さぁ…捕まえましたよ?驚いているようだから教えて差し上げますが…私は、気配を完全に消す力を持っているのです…つまり、この空間では誰も私を捕らえられないわけです…」

「……何っ…?」

「それに…そろそろ、効果も出始める頃かと…」

……効果…だと?だが、私の体には何の変化も見られない…
彼女は相変わらずちょっとだけ豊かな胸を私の背中に押し付け、私を羽交い絞めにしようとしているだけですし…この程度の力ならば、振りほどくことは容易…
まぁ……胸が背中にむにゅむにゅ当たっていれば判断力は少々薄れ…
…まて、私は今さっき…何と思った?私は普通の女性に近づかれても、性的興奮はしない…クールタイプの男だったはずだ…
その私が…胸が少々当たって気持ちよく、判断力が薄れ始めているなって思うだと?
おかしい!!この今の状態…おかしい!!

私は慌てて自分の左手をちょっと動かし、右手の動脈を確認してみたが…
やはり、間違いありませんね…
私は今、なぜか興奮状態にあるようです…
しかし、私はここに来て、別に何も攻撃を受けたわけでも…
はっ…この霧に…淫欲効果が含まれているとしたら…!?
私は先ほど、馬鹿みたいに会話をしていましたが、その会話自体が敵の罠だったとしたら…?
くぅっ…メガロス帝国の中で一番の罠師と兵士達の間で有名なこの私が…このような罠に気付かぬとは……この状況を経験したことがないため、特効薬を投与することも不可能…
まずい状況ですねぇ…非常にまずい…
とりあえず、私は今は臨時的に、この状況をどうにかしないといけませんね…
パルス安定剤でも…投与させていただきましょう…

私はそっと腰にあるボタンの一つを押し、自分の体に注射が刺さり、パルス安定剤が投与されていくのを感じましたが…
このパルス安定剤で体をごまかすことが出来たとしても…それは恐らく10分ほどでしょうから…
まさか、このタイミングで時間まで敵になるとは思っていませんでした…

「あら…?まだ、効いていなかったようですね…?」

「いえいえ…この罠…中々、周到に仕組まれていましたが、メガロス帝国一の罠師には見破られたようですね…まぁ、罠師といっても、ここに転送される前の場所で全て使ってしまったのですが…」

「そうですか…だから、私達がいるこの場所の周りにはこんなにも沢山の罠が…あるんですね?」

「……えっ?」

「メロン!!霧を解除していいですよ!!では…私は少々、あなたが自分の罪に沈むところを見させていただきます…最後に、いい事を教えてあげましょう…教えて欲しければ、私の胸に飛び込んできてもいいんですよ?」

「だ、誰が行くものか!!私は敵で…メガロス帝国のミカルドの一員なんだ!私にも、私なりのプライドがある!!馬鹿にしないでいただきたい!」

「そう…まぁ、教えてあげます…クレオが発動したこの許しの箱庭内部…外にあった別のものも吸い込んでしまうんです…そして、吸い込んだもののすぐ近くに吸い込んだものがばら撒かれるシステムなのですが…あなたの仕掛けたっていう罠…全部吸い込まれてきてますよ?メロンの霧で作動せずにすんでいましたが…霧が晴れたらどうなってしまうんでしょうかねぇ?では…懺悔の時間ですよ?ですが、この懺悔の時間が終わった時、あなたは確実に救われることでしょう…ふふっ…」

彼女はそういうと、いきなり地面に染みこみ、いなくなったんですよ!!
そして…すぐに霧が晴れていくのですが……彼女が言った台詞が本当だったとしたら、私は今…非常にまずい状況に…

そして、霧が晴れた瞬間、私は彼女が言っていたことが真実だと知ってしまったのです…
自分の周りに転がっている、私のお気に入りの罠たちが一斉に起動音を立て始めれば、嫌でも察してしまいますけれどね?

「……そ…んな…!?私は…私の作戦とプランの中には、このような…自滅してしまう可能性がある計画など入っていなかった!!それが…なぜこのようなことに!?これは夢ではないのか…!?だが…これが現実だ…」

そして、私の足に、一度引っ付いたら長時間離れない【粘着スタン】が張り付き、私は背中に当たってきた【コロブトラン・V4】に押され、その場に倒れこんでしまった…
こ、この二つのコンボが発動した…ということは…!?
間違いない…【デススリーパー・オーバーコールド】が…作動する!!
だが…今の状況はただそれだけでは済みそうに無い…
全ての罠が私の周りにあるというのなら…【天国と地獄の催眠】という名前の罠もここにあるはずだ!!あれが…対象を必ず殺さず、爆風で天に打ち上げ…地にたたき落す…非殺傷武器…にするのに失敗してしまい、相手に大怪我を負わせてしまう可能性のある、私の究極の大技として使うつもりだった罠が!?
確実に…私は片腕を折ってしまう…
くぅっ…だが、冷却系の罠もあるはずだ…もしかすれば…
いや…もしかしれば…は無いな…

私はそう察した次の瞬間、自分の罠によって…宙に吹き飛ばされていたのですからね…
くっ…罠師…罠に溺れるといったところでしょうか…?
ははっ…結局、私も負けたんですねぇ…
テスタロスが負けたのも、分かる気がします…
初めから…勝機が無かったとは思いませんが……ね?

「メガロス帝国の皆…そして、テスタロス…すみません…ねぇ…」

キィンッ!!

〜〜〜デメトリオの視点に移動します!!〜〜〜

な、なんだっ!?一体…なにが起こったんだ!?
そう…俺はメビウスに勝って欲しかったから、この戦いはちゃんと見てた…
けどさ…いきなりメビウスが魔方陣に飲み込まれたかと思ったら…建物が全て物凄い勢いで吹き飛んで、中央の場所に…氷漬けになったメビウスがいたんだよ!!
まさか…負けたっていうのか…!?
いや…この状況を見た場合、負けたって答えしか出てこないけど…
こんなに早くミカルドのメンバーが…ガイウスとテスタロスとメビウス…
三人も消えた!?ダメだ…勝てる気がしない…
に、に、逃げたほうがいいんじゃないか?これ以上戦いを見ていても…
俺の身に降りかかる危険がさらにLVアップするだけだし…
メガロス帝国の連中には悪いけど…ここでひとまず、逃げるってのがいいと思うんだけどなぁ…

「……逃げる準備…始めようかなぁ…」
「それはまだ、早いと思うよ?デメトリオ…」
「ぬおぉっ!?け、ケイ…聞いたの?」
「あぁ…ばっちりな?デメトリオ…逃げるなんていうなよ…ミカルドのみんなは絶対に仲間を見捨てない…その意志を考えて…君ももう少し粘ってみるんだ…いいかい?」
「で、でもさ?本当にここまで攻め込まれたら…どうするんだ!?俺の身の安全はどうなる…!?きっと敵のリーダーのメリィに捕まって…裏切ったからって酷い目に会わされるにきまっているんだ!!だったら…今逃げたほうが確実に…いいに決まってるよ!!そうだろ?読者のみんなだって、そう思っているに違いないんだ!!」
「ここから逃げるべきだと僕が判断したら安全に逃がせてやる!!だから…まずはここを守ってくれるメガロス帝国の兵士やミカルドの仲間を信じるんだ!いいな!?」

け、ケイがここまで本気になるの…初めて見たなぁ…
確かに…確かにメガロス帝国のみんなは仲間意識は強い…それは、俺も思うよ?
それに…ケイがここまで強気で言うなんて……
OK…もう少しだけなら…ここにいてもいいよ…?

「本当に…危険になったら逃がせてくれるんだよな?なぁっ!?」
「あぁ…約束するよ…一人の男としてね?」

そして、俺はケイを約束すると…落ち着くために干し肉をかみ始めたんだ…
果たして…次はミカルドの誰が…戦うんだ…?
本当に…俺は大丈夫なんだろうか?凄く、酷い目に会わされる気がして…ならないんだけどなぁ…
いや…俺は…ケイを信じるよ…!!
大丈夫…きっと大丈夫なはずだ!!
12/10/12 21:26更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
どうも!!

さぁ…凄い勢いでミカルドのメンバーが減っているなか…
次のバトルフィールドは市街地です!!
この市街地に潜むメガロス帝国の狙撃手の攻撃を…モンスターラグーンのメンバーはかわすことができるのか!?

そして…デメトリオは勇気を出して、まだメガロス帝国に残る決断をしましたが…デメトリオはどうなってしまうのか!?
答えは…のちのち分かってくると思います!!

これからも…のんびりと見ていただけるとうれしいです!!
ありがとうございましたー!!

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