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『リオレウス&リオレイアの場合』


フルフルが別世界へ旅立って2年後のこと。

最寄のギルドから密林を経由して洞窟を越えてたどり着くは天高く聳える岩山と緑の草原地帯。
アプトノスの親子がのっそりとした足取りで水のみ場に水を飲みにきておりマッタリとした時間が過ぎている中、岩山から女性の甲高い悲鳴が当たりに響き渡りかの場所に集まっていた小動物たちはそれに驚き散り散りになっていった。

「いやぁぁーーー!! 来ないでぇぇぇぇぇ!!!」
涙やら鼻水やらで顔をグシャグシャにした女ハンターが一人、踝丈の草が一面に広がる草原を眼下に見下ろす事ができる足場の不安定な岩山を必死に走っている。
ただし彼女の後ろにオマケが2つほど憑いているが。

「もぅ!! な、なんでキノコの回収でぇぇ・・・((ギャァァーーー!!))っ!? ひぃぃ!!!?」
どうやら今回はキノコの回収がメインだったようだ。
確かに必死になって走っている彼女の手の中にはキノコが確りと握られているのできっとクエ自体は達成したようだが後ろの2つのソレを見るからに決して手放しで喜べるものではない。
その2つは己らの怒りをあらわすかの様に大きく叫びそれに恐怖感が更に増した女ハンターはその足運びを更に速くしてその2つから距離をとろうとするもその2つはそれを許さない。
もっと詳しく言うなら後ろの空中にいる2つのうちひとつの『桜色』のほうが今まさに口の中に灼熱の炎を溜めているところということと、対してもうひとつの『蒼色』は急降下して後ろから女ハンターを強襲するために足の鋭く尖った爪を前へと突き出しているということだ。

「いゃゃぁぁ・・・っへ?・・・・・・・・あ゛あ゛ぁぁーーー・・・・・」
逃げることだけ考えていた為に視野狭窄に陥っていた彼女は岩だらけの足場が不安定な先が見えない上り坂の頂上まで上る勢いそのままで速度を殺さずに走り抜けようと一歩を踏み出す。
しかし、その一歩は決して出してはならない一歩である。
その結果、彼女は前のめりになる形で崖から落ちていってしまったからだ。

追撃体勢をとっていたその2つも彼女の姿が崖下に消えていくのを見て追撃を中断するして空中で停滞しつつ追撃中断の意思を互いに確認しあって今来た道を戻っていった。

(ったく・・・なんで母さんの留守中にきやがるんだよ・・・)
(まぁまぁ『リオレウス』兄さん、そんなに気を立てないで?)
(つってもな『リオレイア』。・・・・)

【桜火竜】と【蒼火竜】の二匹はどうやら兄妹のようで竜にしか分からない発音で飛びながら会話をつつ帰路についていたのだが、蒼火竜がやるせない気持ちを桜火竜に対して愚痴を零していると突然目の前に閃光玉以上の強い発光が飛んでいた二匹の前で起こり目を瞑る暇もなく展開された光に二匹の体が完全に包まれ次の瞬間。

二匹を包んだ光が刹那に光の残滓を雪のように降らして飛行していた二匹共々消えてしまった・・・


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

ここは毎度お馴染み大陸南部のサバトのある街。
その街から離れた前回フルフルを誤召喚した洞窟の岩山の中腹付近。
そこは周りを50m以上の岩壁に囲まれた空の見える竪穴の空間。
その空間に不釣合いな紅い帽子を被った目から光が消えた魔女、アスコットが大きめの魔法陣を書いている。

「ハァハァ・・・今度こそおにぃちゃんを・・・でも失敗して竜を呼ぶと・・・トルネオ様から直々にオシオキが・・・ハァハァ・・・ぅぅ・・・し、失敗してもいいよね♪」
前回のフルフルであるシィアズィーを召還した後バフォメットであるトルネオに性的オシオキを半年以上食らっていたアスコットは半ば同性愛に目覚めかけているのは余談。
そんなアスコットは内股になって太もも同士を擦り合わせながら地面を杖で削るようにして書いた魔法陣の最後の線を繋げ終わると息を荒げて何かに期待するかのように魔法陣によって発生した光の集合体を凝視していた。

が。

「・・・あれ?? 何か魔法陣の角度がおかしい気が・・・???」
いつもの如く魔法陣が横に寝た状態で召還が始まるのではなく今回はなんと魔法陣の円が地面に対して垂直になっていた。
やがて何か大きなものが2つ魔法陣の光の中から現れる。
だがその2つの影は中々の速度で飛んでおりその2つの影の飛行予定線の先には物凄く固そうな岩壁になっており、影達はあまりの急さに回避が間に合わず2つ共に頭から思い切りその岩壁に突っ込んでしまったのである。

「(ガツン!!)ギャィ!?・・・ギャン!・・・・・・・(ドサッ」
「(カツン!!ギュィ!?・・・ギャン!・・・・・・・(バタン」
勿論其れなりの速度で飛んでいた2つの影達は自重と速度の乗った不意打ちで自滅してしまい2つ共に頭が綺麗に当たった瞬間、短い悲鳴と同時にどちらも時間が止まったかの如く動かなくなった。
そして重力に従うように力が抜けてダラリと下がった首の先の顔から地面へと再び頭突きを食らわせてそのあまりの衝撃に2つの影はのびてしまったのであった。




「・・・・んでじゃ? アスコット。言い訳はあるかの?」
「い、いいえ御座いません!・・ハァハァ」
暫くして以前のこともあってか匂いを嗅ぎつけた元ナルガのアリアと空気中の電気の乱れを敏感に感じ取った元フルフルのシィアズィーによってトルネオに異変が伝わり、すぐさまアスコットの場所が割れて一人と二匹はその竪穴に向かいアスコットを縄で縛り上げて寝転ばせた。
青筋立てて説教を始めるトルネオに対して心なしかアスコットの顔が悦に染まっているのはきっと・・・・キノセイダ。

「・・・まさかリオレイア、リオレウスが同時に召還されるなんて・・・」
「でもアリアちゃん? まだ小さいところを見るとまだ子供みたいよ?」
「え、こんなにデカイのに・・・ですか?」
トルネオがアスコットにおしおき兼お説教をしているのをBGMに元竜の2人はのびている二匹のところで調査を開始し、シィアズィーの調べでこの二体はサイズこそ一般的だがまだ幼体であることが判明し、アリアがその事実に目を見開いて丸くしているとその件の二匹がぼんやりと青白い光に包まれていくではないか。

「え? こ、この子たちも魔物化するの!?」
「どうやら意識が無いことが一つの変化の起因のようね・・・」
学者のような物言いをするようになったシィアズィーだがまさにその通り。
彼女は目が見えるようになったことを機に本を読み始めいつの間にやら街随一の学士になっており、夫のシィアルヴィーと共に現在は『異世界からの召還に伴う魔物化の現象について』とタイトルを銘打って研究に勤しんでいる上に街の管理者の三柱の一人、立憲担当者アヌビス・ラガの補佐もしているという。
ちなみにアリアは森林地帯保安警備隊という役職に夫のインテグラル共々就いているのであった。

「あれ? 待ってシィアズィーさん。リオレウスって雄だけですよね?」
「えぇ。・・・どうなるのかしら・・・」
シィアズィーとアリアはどんどん人型になっていく2匹を観察していく。

まずリオレイア。
清水の流れるように一本一本風に靡きながら腰まで伸びていく淡い桜色の髪、元々の甲殻の色がそのままついた鱗と尻尾。
体は図鑑通りのシルエットになっていくがやはり子供だっただけあって身長が低く、恐らく立ち上がったらアリアの胸に顔を埋められるくらい。

しかしその見た目に反して余りある存在が胸である。
シィアズィーの豊満な胸囲には及ばないものの図鑑のドラゴン娘よりは確実に上であり、形も綺麗であった。

「・・・お、おっきいですね・・・」
「えぇ、将来的に考えると・・・凄いプロポーションになると思うわ。」
「で、ではリオレウスの方は・・・・・」
その自己主張が激しいレイアのソレを凝視する2人だったが額から汗を垂らしたアリアが視線を意図的にリオレウスに移し、つられてシィアズィーもそちらに移す。

リオレウス。
本来雄のみの個体の飛竜はこの世界に来るとどうなるのか。
その答えが今目の前にあった。

肩口でざっくりと切られた濃紺色の髪は少しゴワゴワしてはいるものの何処と無く女性の髪質を持っているようで風が撫でるとさらりと波がたった。
鱗や尻尾は蒼。
そして身長もレイアと全く同じ。

「・・・リオレイアと違って・・・」
「・・・俎板(まないた)・・・」
そう、観察していた二人が嘆きを漏らした通りぺたんこだった。

「・・・ふぅ、説教はつかれr・・・うむ? なんじゃ? 2人ともワシを見ておるが?」
どうやら説教が終わったようで肩を握り手で軽く上から何度か打ちながらコチラへ歩んでくるトルネオは自身に(特に胸。)向けられている視線に何かしら意図を感じ取って少し不機嫌気味にアリア達2人へ会話を向ける。トルネオに失礼な言い方だがペタで有名なバフォメットより少ない。

「ふむ・・・今回は敵が1、同志1か・・・ふむふむ・・・」
「じゃあいつものように宿屋へと・・・」
「まってアリアちゃん。もうすぐ卵から生まれるんだから早く帰らなきゃダメよ?」
「平気ですよ。少しくらい♪ ちゃんと留守の間は魔女の方が見てくれていますから♪」
トルネオはそのまま2人を通り過ぎて件の気絶している2匹へと視線を向けるとなにやら納得したようで。
気絶したままの2人をもうすぐ母親になるアリアとそれを心配するシィアズィーはそれぞれ抱き上げていつもの宿屋に連れて行くこととなった。
ただしアスコットは亀甲縛りでトルネオにひきづられてだが。



余談だが、何故魔女が卵の見張り番をしているのかというと・・・
アリアが卵を産んだ後でほとんど家を留守にする共働きのアリア夫妻に代わってサバトの方からベビーシッターならぬ見張り番としてトルネオが気遣いにより派遣したのが定着したのだ。



所変わって街の中の一角にて。
警備任務から戻ったインテグラルは街の大通りを愛しの妻のいる我が家へ向かって歩いているとほんの数m先にインテグラルが見知った顔があった為に彼はその顔見知りに向かって一言、声を大きくして問いかけた。

「おーいっ! セイヴ!!」
「・・・ん? ・・・おぉ! インテかっ!? 」
はたして、声をかけた者はまさに彼が思ったその人であった。

「やぁ、久しぶりだな。セイヴが軍医としてついてきたあの時以来だったかな・・・どうしてココに? 国に戻ったんじゃないのか?」
「うむ・・・じつはな、人質だった母親が先日息を引き取ってな・・・・・あの国にいる理由がなくなってな。」
久々に逢ったのに立ち話はなんだから、とすぐ近くの自宅へと招待したインテグラルは彼をリビングのテーブルに座らせて紅茶を出し昔話に華を咲かせてはじめたのである。
そんな談笑中、セイヴと呼ばれた細身の長身であり中性的な顔立ちの男はインテ不意の質問に少し俯き気味に答えるがその口元は微笑んでいた。

「あ、すまん・・・・・・俺達のせいかな?」
「いや、元々病弱だったんだ。君らのせいではないよ。・・・まぁ、それは今では過去だがな。君こそどうしたんだい? この街で。」
未だに先の侵攻での寝返りで人質に不自由させてしまったのではないだろうかと心に影を持っていた彼の自己嫌悪に対して軽く否定をして目元にある小さな飾り気のないモノクルをそっと触れて位置を直すセイヴは一度首を軽く振りもう一度モノクルの位置を直していつもの笑顔でインテに聞き返す。

「ん? あ、そうかセイヴは知らなかったっけな・・・教会連中が出した命令で侵攻したとき襲ってきたドラゴン、知ってるかい?」
「あぁ。そしてその後君が彼女を庇って致命傷を負ったのも仲間から聞いたよ。ほんとに正義感が昔から強いんだな、ははっ。」
「うっ・・・そ、それでだ。」
どうやら昔から彼は正義感が強くて自己犠牲の精神の持ち主だったようで、セイヴに指摘されて顔を紅くするのはご愛嬌。
それをはぐらかすようにしてその質問にインテは満面の笑みでこう答えた。

「あのあと付き合って・・・今では夫婦さ。ちなみにもうすぐ第一子がうまれるんだぜ!? 卵見てくか!?」
「ほほぅ! そいつはめでたいな!! だが遠慮しておくよ。」
「まぁ見て行けって!」
互いに笑いあい更に談笑は続く中でセイヴが不意に何かを思い出したかのような顔つきになってインテに再び笑顔で向き合う。

「そういえばこの街に何しに来た、のヤツに答えていなかったな? オレはこの街で医者をすることになったのさ!」
「おぉ! もしかしたらセイヴが俺達の子供の掛かり付けになるかもな!」
その事にたいしてセイヴが「そうかもなっ!!」というとまた互いにワハハと声を上げて笑い始めてた。

暫く談笑しているとなにやら外が騒がしくなっていた。

「・・・あ、ラガさん! どうしたんです?」
「おぉ、インテか。今新たにドラゴンが来たそうだ。・・・2匹もな。」
インテが何事か、とドアを開けたその先にちょうどドアをあけようとした状態でアヌビスのラガが固まっていた。
タイミングが少し悪かったようでちょっと紅くなった顔を逸らしながら手を引っ込めて事の顛末を語るラガは話し終えると一つ溜息をして遠くを見つめた。

「・・・別種のドラゴンが4匹もいて平和でいられるのは・・・古今東西この街だけだろうなー・・・・・はぁ〜・・・・」
「・・・あー・・・心中お察しいたしますのでどうかもどってきてくださぁい!」
軽くトリップしていたラガを肩を揺さぶって戻していつもの搬送先になった宿屋へと行く『三人』であった。


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

(・・・っあ〜っ・・・い、いってぇ・・・・ん? なんだ・・・ここは・・・?)
まどろみの中から少しずつ意識が戻っていったレウスはぼんやりと目を開けると見たこともない白くて圧迫感のある壁のようなものが見えた。
そして首だけを左右にゆったりと回すとどうやらどこかの建物のようで、一番最初に視界に入ったものが天井というものだと理解して再び天井へと視線を戻す。


(んぁ? なんかせまっ苦しいな・・・ん? んん!? )
一度目を閉じて身じろぎするとそこでレウスは改めて自分がニンゲンの匂いがひどく強い布の上にいることを認知して自分がどういうことになっているか確認の為に本来ついていなかった腕を自分の顔へ手を這わせていく。

「な、な、なんじゃこりゃぁぁぁ!!!」
その驚愕の真実に異を唱えようと本能的に否定の意を篭めて悲鳴を出すレウス。
しかし、いつもならけたたましい大音量で響くはずの暴力的な声はまさしく声変わり前の強気の少女のような筋の通ったアルトヴォイスであった。
そんなレウスがシーツを押しのけて跳ね上がると。

ゴンッ!!


「っあ〜っ!?!?」
「いだっ!?」
何かが凄い衝撃でレウスの額を打ち付ける。
あまりの痛さに足を抱えるようにして縮こまり、両手で額を押さえて尻尾を不機嫌そうにベットへ不定期に叩きつけているレウスは少し痛みが引いてきたので何にぶつかったのか確認するべく涙目になりながらも前へと視線を移したその先にはアリアがレウスの寝ているベットへ方膝をついたままやはりレウスと同じように両手で額を押さえて天井を仰いでいた。

「っぁぁ・・・・い、いきなり起き上がらないでよっ! 痛いじゃない!!」
「っえ? あ、あぁ・・・わ、わりぃ・・・」
アリアの方も痛みが落ち着いたのか暫くして両の手が額から退いてレウスの目を鋭い目つきで睨むようにしてみて注意を言うが、レウスはその鋭い視線に一瞬怯えて少し腰を引いてしまったのだった。

レウスがアリアに注意を受けている途中で部屋のドアが質感のある木材独特の音を立てて開き、レウスがベットの上で半身を上げた部屋にやってきたのはシィアズィーとレイアだった。

「あら、アリアちゃんと喧嘩できるくらいには元気になったのね?」
「おはようリオレウス兄・・・んん〜・・・姉さん?」
「はぁぁ? お前ら誰・・・ん? ・・・スンスン・・・あ? この匂い・・・まさか?!」
レウスが混乱する中、アリアとシィアズィーはこの世界と今まで自分達に起こったことなどを説明して先に説明を受けていたレイアがレウスが疑問に思ったことを解説していく。
説明を聞いていくうちに段々と大人しくなっていくレウスは結局最後までアリア達に対して質問等は無かった。

「・・・」
「さて、一息に説明したけど・・・質問はあるかしら? レウスちゃん?」
「ちゃんはやめろっ!!・・・なんでオレは雌になってんだ?」
粗方の説明が終わりシィアズィーが色違いの瞳をレウスに向けて質問はないかと問いただすが【ちゃん】が気に食わないようでほとんど目を閉じて俯いていたレウスはその言葉を聞いた瞬間に目を見開いて大声でシィアズィーに対して威嚇をする。
レウスの尻尾が激しく一振りし一瞬の沈黙の後にレウスは再び悲しそうな顔で床の方を向き、悲壮感を漂わせる声色でシィアズィーに対して問うのだった。

「これは推測だけど・・・この世界にはドラゴンは雌しかいないからこの世界の理が貴方の体を作り変えてしまった、ということじゃないのかしら?・・・キツイこと言うけど、もう雄には戻れないわ。」
「・・・もう・・・戻れないのか・・・っ・・・」
「・・・リオレウス兄さん・・・」
冷たく突き放すかのように言い切るシィアズィーは確りとレウスの事を見つめて答えるも俯いてベッドの縁に座り込んでしまった彼は視線を上げることなくその答えを聞き入れて終には泣き出してしまった。
その今まででは考えられないくらい弱気になった自分の兄だった姉に驚きと共に同乗の念が生まれたレイアはゆっくりとレウスの元へ歩みより隣のスペースへ腰を下ろして背を摩り始めた。

部屋の中では咽び泣く女性の声が数分の間響いており、普段は聞こえる小鳥の囀りさえ今はなりを潜めてしまったようだ。

「・・・わりぃ・・・リオレイア・・・迷惑かけたな、ありがとう。」
「うぅん。ねぇs・・兄さんも無理しないで? 私達兄妹でしょ?」
「そ・・うだな、そうだったな。あと・・・もう姉でいいぞ。ふふ・・・ん? 誰かきたみたいだぞ?」
何分か経ってやっとレウスが無き止んだ時、不意に廊下から革靴独特のカツンカツンという音が2つ響き始めてそれはちょうどアリア達のいる部屋の前で止まった。
次の瞬間には扉を二回ノックされて小気味良い音と共に来訪者が姿を現した。

「アリア、無理していないかい?」
「インテ! それにラガさん・・・・と、後ろの人は?」
「お初にお目にかかる。今度コチラの街の医院にて医師を務めることになったセイヴというものです。インテグラルとは旧知の仲でして、なにとぞよろしくお願いします。」
インテが入室するとアリアが表情をコレでもかというくらいに明るくし愛しの夫に走りよって行くとその後ろのラガとともに入ってきた見慣れない男に視線がいきインテにすぐさま問いかけると男自身から自己紹介がされて皆がそれぞれ挨拶を始めた。

「っ!!」
「・・・っ♪」
そんな中リオ姉妹はその丁寧な挨拶をした男を見た瞬間、体の内から一気に体温が上昇していく。
姉妹は男に対して今まで感じたことの無い感情に戸惑いながらも敵意の無いその男におのおの挨拶をするのであった。

「り、リオレウスだ。・・・も、元オスだ。」
「リオレイアです。リオレウス姉さんとは姉妹です♪」
「これはご丁寧に・・・私は医院にいますので何かあった時はすぐ駆けつけますので。・・・それでは皆様ごきげんよう。」
男が自分達へ近づくたびにレウスは顔がどんどん紅くなっていき、レイアは頬に赤が差していた。
そして目の前まで来るとレウスはしどろもどろになりながらも決して視線を合わせずに尚も紅くなっていた。
対してレイアは両頬に両手を当てて頬を染めながら男に対してレウスとは逆に目を合わせて挨拶をする。
対照的な2人を見てクスリと微笑んだセイヴは宣伝も兼ねて挨拶を返して一礼をし、部屋をゆっくりとした足取りで後にするのだった。

「・・・ねぇシィアズィーさん・・・レウスちゃん、もしかして・・・」
「えぇ♪ でもレイアちゃんも満更ではないみたいよ?」
「あらら・・・2人ともあのセイヴさんに一目ぼれしちゃったって事?」
部屋から退室するセイヴを名残惜しそうに見やる2人の視線は誰がどう見ても恋する乙女である。
その2人の恋慕に夫をもつ二人は井戸端会議よろしく小声でヒソヒソと話していたその横でラガがリオ姉妹の前に立ち二人の様子を上から下まで見回すと唐突にこういった。



「とりあえずようこそこの世界へ。たとえ望もうが望まざろうが、だがな・・・さて。君たち2人には住居を用意したので街で生活してもらうことになる。・・・これには拒否権は無いが希望があれば何かいってほしい。」



「とりあえず俺達をココに召還した張本人を呼んでくれ。・・・本気でぶん殴りたい。」
「姉さんダメよ。・・・ここは住んでるとこを聞かなきゃ・・・ね♪」
ラガは本来バフォメットであるトルネオが言うべき言葉を言うと一拍置いてそれぞれ姉妹に視線をあわせながら希望は無いかと質問をすると物凄くイイ笑顔で物騒なことを言う姉妹の後ろにはとても黒いオーラが出ているのであった。


・・・アスコット逃げてっ!


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

「・・・あれから三ヶ月か。」
「どうしたの姉さん? そんな深刻な顔をして・・・」
リオ姉妹はすっかりと慣れた様子で新たな住居のリビングにて寛いでいた。
レウスがソファで寝そべり天井を見上げながら呟いた言葉にすぐ傍で分厚い本をテーブルに置いて椅子に座って読みながらその言葉に反応したレイアが本から目を離してレウスのほうへ向き直る。
そこには凛としたはずの表情なのにその眉尻は下がって不安そうな目つきをした姉がいて思わずレイアは心配して聞いてみた。

「いや、何・・・なんかさ、こう、なんか胸の中がドクンっとなるんだがよ・・何かの病気かな? あの男に会った頃から・・・」
「姉さんも? ・・・実は私もなのよ・・・」
レウスは寝相を横に変えてレイアと視線を合わせると手で自身の胸を指差してその指差した手をギュッと違う手で包む。
そんな姉の独白に対して同意の意を示すとレウスは再び天井を見やるように仰向けになって腕を頭の後ろで交差させて溜息を一つ吐いた。

「はぁ・・・あいつのとこに相談行くか・・・」
「あいつ? 」
「フルフルだよ。シィアズィーっていったか? あいつ年増だからなんかしってるかもよ?」
元飛竜の内でもっとも長寿なフルフルの所へ行けば何か分かるかもしれない。
そう思った姉妹はすぐさまシィアズィーの住宅兼研究所へと足を運ぶ。
そして目的の住居につきその重そうなドアに3回ノックすると果たして出てきたのは目的の人物だった。

「はいはい何方様・・・あら? レウスちゃんにレイアちゃん?」
「だからちゃんはやめろっ!!・・・シィアズィー、ちょっと相談なんだが・・・」
「・・・ちょっと上がっていきなさい。お茶を出すから。」
レウスの鬼のような形相が瞬間でなりを顰めて俯いてしまい雰囲気が姉妹共々暗くなったのを見てただ事ではないと判断したシィアズィーはすぐに中へと姉妹を連れ込んで言ったのだった。

リビングのソファに座らされた姉妹は山のように重なった資料をどかしながらテーブルに場所をつくり、シィアズィーもキッチンから両手で廊下に散らばっている資料やらレポートやらを除けて尻尾の上に器用に載せたティーポットとマグカップをこれまた器用にテーブルの上へと置いてお茶の準備をしていき、3つのカップに茶が注がれて3人ともが座ったときにシィアズィーから口を開いた。

「で? 私のとこに相談に来たって事だけど・・・」
「あぁ・・・」
「実はですね・・・」
シィアズィーのその言葉を待っていたかのように姉妹はシィアズィーに今まで無かった胸の高鳴りのことをこと細かく説明していくがちょっとシィアズィーの様子がおかしい。
説明を進めていくごとに真剣だった顔が徐々に笑顔になっていき姉妹が説明を終わる頃にはそれはもう今にも噴出しそうなぐらいの笑顔であった・・・いや、噴出して笑い始めた。

「な、何がおかしいんだっ! こっちは真剣にきいているんだぞっっ!」
「そうですよ! ちょっとひどくないですか?!」
「ックックック・・・ご、御免なさい・・・ック・・・い、いいわ・・・た、対処法をお、教えてあげるわ・・・ックック・・・」
行き成り腹を抱えて笑い出したシィアズィーに大層ご立腹の姉妹だったが対処法を教えると言うシィアズィーの言葉にその怒りはスッと引っ込んで言った。

「ふ、ふぅ・・・ごめんなさいね? それで対処法だけど・・・」
「・・・っ」
「・・・っ」
呼吸を整えて落ち着いたシィアズィーがテーブルに身を乗り出して姉妹の下に口を寄せると姉妹もそれに習って身を乗り出し今か今かと続きを待っていた。

「レイアちゃんの尻尾の毒・・・この前検査したらそれがお薬の代わりになるのよ。」
『な、なんだってー!?』
姉妹は驚きのあまり上体をのけぞらせているのを横目にシィアズィーの口元はつりあがっている。
レイアの毒がクスリ代わりになる。それは嘘でもあって本当でもある。何故なら今日に至る2ヶ月前、二人がこの世界に着てから一ヶ月のときドラゴン種の身体検査ということで医院にて集まったときレイアの毒も調べたが何とその毒、本来体力を削るはずの毒がこの世界に来て変質したようでギルタブリル並の媚毒になっていたそうな。

そんな純粋な子供を当然の如く騙すシィアズィー。熟女マジぱねぇ。

「ど、どうやって治療するんだ・・・教えてくれっ! シィアズィー!!」
「お、教えてください! お願いです!!」
「わ、わかったわ・・・だから離して? ね?」
この世の終わりという顔をしてシィアズィーのブヨブヨした下半身にガッシリと姉妹共々縋り付くその様に一抹の罪悪感が出たシィアズィーだった。


数分後。


「なるほど・・・わかったぜ! ありがとなっ、シィアズィー!」
「ありがとうございました! シィアズィーさん! 早速言ってきます♪」
「えぇ行ってらっしゃい♪」
リビングを飛び出すように出て行く姉妹を笑顔で送り出すシィアズィーであったが姉妹が部屋を出て暫くして更に笑顔を作って片手で口をふさいでこう言ったのである。



「さぁて、アリアちゃんと一緒にお祝いの準備しなきゃ♪」



恐るべし熟jy(略 
まぁそ独り言を聞いていたのは小鳥ぐらいだろう。

そして場所は移り姉妹は医院の前までやって来た。
街で唯一の医療機関であるだけあってその大きさは伊達じゃなく周りの建物が兎小屋に見えてしまうのは致し方なしというとこだろう。

その医院の前で姉妹は先ほど言われた事を脳内でもう一度再生してその行動にうつるべく医院の中へと入って行くのであった。

「ようこそ、如何なさいました?」
「セイヴ先生に会いたいのですが・・・急用で。」
「会えるか?」
入り口のガラス張りのドアを潜れば真っ先に白壁のカウンターが見えてきてそこに座っているラミアらしき人とマミーの受付嬢が姉妹に笑顔で用件を聞いてきた。
するとレイアはアポ無しでも出来るだけ早く会いたいという旨を伝えるとぶっきら棒な態度のレウスもそれにのってきた。

「では暫くお待ちください。」
マミーの女性は徐に立ち上がりカウンターの後ろのカーテンの中へ吸い込まれるようにしていなくなったが数分待たずして戻ってきて姉妹に対して笑顔で建物の奥を手のひらで指し示してこういった。

「セイヴ先生はこの奥72番診察室にいらっしゃいます。本日の診察は終了されているのでごゆっくりどうぞ。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうな。」
姉妹はそれぞれ姉妹らしい礼を述べ示された方角の廊下へと歩を進める。

「69・・・70・・・71・・・72! ここか! おい、入るぞ!」
「ま、まって姉さん! まずノックしてよ!」
「やぁ、こんにちわ。構わないよ、それに姉妹揃ってどうしたんだい?」
レイアより急ぎ足になったレウスは早々に部屋を見つけ出すと気分が高ぶりすぎているのかノックを忘れてドアを開けて入って行く。
それをあわてて窘めるレイアだったが笑い声と共に挨拶をしてきた椅子に腰掛けた目的の人物セイヴによって止められた。
セイヴが当たり前のように疑問を姉妹へ投げかけると姉妹はお互いの顔を見つめて頷きあいセイヴに向き直り、次の瞬間に信じられない行動にでる。

ドスッ

「ひゃぅぅ♪」

ドスッ

「ひゃうん♪」

「なっ!? な、何をしているんだいレイア君っ!? 姉と自分に尻尾を差すなんてっっ!!」
そう、レイアはレウスに自身の尻尾から分泌される淫毒をセイヴの目の前で打ち込んだのだ。
しかも特濃のものを。
そんなものを打ち込まれて一瞬にして発情期のメス猫のようになるのは火を見るよりも明らかであり、そんな状態のレウス達は自然とセイヴの方へジリジリと近寄っていきセイヴに抱きついた。

「ハァハァ・・・だ、だってよぉ・・・ハァハァ・・・」
「うくっ・・・ハァハァ・・・私達貴方に始めてあったときから胸にへんなモヤモヤがあったんです。・・ハァハァ・・・そんな時貴方のことでシィアズィーさんに相談したら言われたんですよ。」



『いい? このモヤモヤを直すのにはセイヴ君の前でレイアちゃんの尻尾の毒をレウスちゃんに打ち込んで自分にも打ち込むの。あとはセイヴ君がどうにかしてくれるわ♪』



「・・・オゥ・・・ジーザス・・・」
セイヴはこの時色々と諦めたそうだ。
そのまま三人はなしくずし的に交わってしまったのは言うまでもない。


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

「すまない。場の雰囲気に流されたとは言え君達をキズモノにしてしまった。」
「・・・まだ・・・セイヴさんのが・・・ナカにぃ・・・♪」
「ぅぁ♪・・・イイ・・・きもちぃ・・・メスさいこぅ・・・♪」
トロトロに蕩けてベッドの上で寝そべる姉妹を尻目にベットの縁に腰掛けて自責の念からか俯いていたセイブだったがキッパリとした物言いをして顔を上げる。

「責任を取らせてほしい。どんな形でもいいから。」
「・・・じゃあ・・・お嫁さんにしてぇ・・・♪」
「だいじにぃ・・してくれよぉ・・・♪」
段々意識がはっきりしてきたのか姉妹の答えはやはり姉妹だからか揃っていた。
セイヴは強張っていた表情を緩めて姉妹に向かって振り返ると姉妹は共に笑顔でセイヴを見つめていた。

「・・・分かった。じゃあ婚約指輪の変わりに何か送りたいんだが・・・何がいいかい?」
「私は・・・」
「オレは・・・」
互いに言いかけたその言葉を姉妹は目を合わせただけで互いにわかってお互いタイミング良くセイヴに向かって更に笑顔を明るくして同時に言う。


『名前。』


「わかった。・・・・・・・・今すぐに?」
「うん。」
「勿論だろ。」
ハハッ、と乾いた笑みを浮かべたセイヴだったがすぐに向き直りそれぞれの頭をなでながらそれぞれに名前を言っていったのだった。



それから一年が経ち・・・



「ありがとうございました先生。」
「いえ。それではお大事に。」
ぺこりと一礼して体質する若いワーキャットの親子を見送ったセイヴは次の患者に備えるべくカルテを編集していた。
すると従業員用の扉から静かに一人、薄い青のナース服を着た看護婦らしき女性が入ってきてセイヴに気付かれないように近寄っていく。
そして後ろまでつくと腕を組んで気付いてくれないことに少し苛立ったのか大きめの声で愛しの夫名を呼ぶ。

「おい、セイヴ。」
「うぉっ!? ・・・なんだ・・・インスか。どうした?」
驚いて椅子に腰掛けたまま後ろを振り向けばインス、そう呼ばれたのは幾分か身長が伸びたレウスが仁王立ちでだった。

「パイアが森林警備の出張から帰って来るんだが・・・」
「おや? もうそんな時間か・・・」
その事実に壁掛け時計をみるとまだ空は明るいがもうすぐ夜間勤務の人との交代時間であった。
そんなセイヴはパイア、もう一人の妻であるレイアが帰ってくるということで今日の仕事の残りを纏めて帰り支度をする。

「・・・夕飯は何にする?」
「インスに任せるよ。」
ありきたりな会話なのに声の節々からは喜びに包まれた感情がはいっており、部屋の空気もどこか暖かい。

「・・・ねぇインス?」
「ん? なんだ、セイヴ?」
そんな空気の中セイヴは荷物を纏め終わり鞄のフックを掛けたとき不意にインスへと声をかけるとインスは予想していなかったのか少し焦った様子であったが如何せん仁王立ちのままでセイヴの後ろに控えていた。
そんな彼女からは見えないのに笑顔で後ろの彼女に更に問いかける。

「その名前・・・気に入ってもらえたかな?」
「っ・・・・い、今更なんだよ・・・気に入ってるに決まってんだろう・・・バカァ・・・
最初その意図に気付かなかったインスだったが語尾が消え入りそうなくらいの小声だったのでそのデレ分たっぷりのつぶやきはセイヴには聞こえなかった。

「ん? 今なんて?」
「う、うるせぇ! はやく帰るぞ!! 」
後ろへ振り返りインスの顔をうかがうように下から覗き込むセイヴだったがソレを良しとしないインスの手で肩口を掴まれてしまいソレはかなわなかったが尻尾を見ると激しく左右に振られておりソレの意味するところは・・・

そして我が家に途中で合流したパイアと共に3人で帰宅するその様は・・・



幸せそのものでした♪



【完】

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さぁ、これでもうリオレイア&リオレウスは狩れまい!!ww
・・・すいません調子込みました・・・orz

一応補足的に・・・・
インス(レウス)=オレっ娘、ツンデレ。
パイア(レイア)=従順、姉思い。

さて・・・次回は何を書こうかな・・・ん? メモが・・・『砂漠の黒い影』・・・(ティーン!!

いかがでしたでしょうか?(´・ω・)

11/10/09 01:15 じゃっくりー

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