連載小説
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天使と悪魔と蛇の家!
「よいしょっと!」
「ここは……なんだかのどかな場所だね……ちょっと暗いけどさ」

海の洞窟を探検してから3週間が経ち、私達はまた別の場所に冒険に出ていた。
あの時手に入れた宝の一部は、パーズの事を忘れないためにも家に大切に保管してある。
それ以外は売ったが、やはり本物の黄金だったので前回より量は少ないものの金額的にはほぼ同じぐらいになった。

「まあここは魔界だからね。しかも暗黒魔界だから昼でも暗いよ」
「なるほど……それでもあまり気にならないって事は私もそろそろ魔物になって来たという事かな?」
「多分ね。まだそんなに変わらないとは思うけど、少しずつ魔物化はしてると思うよ」

私達は今回魔界にある不思議な洞窟に向かっていた。
前回の冒険では大きな怪我はしなかったし、今回はそれほど用意するものも無かったので、体調が万全な今日行くことにしたのだ。

「さて、目的の洞窟がどこにあるか聞いてみる事にしますか」
「でもその前に腹ごしらえしておこうよ!丁度目の前にまかいも専門店がある事だし、そこなら魔界産の食べ物が苦手なセレナでもいけるでしょ?」
「まあまかいもは甘ったるくないし変な気分にならずに済むからね……ねぶりの果実は流石に引いた……」
「あれ結構おいしいと思うけどな……まあ男性のおちんぽと精液には敵わないけどね」
「それ言わないで!本物は見た事無いけどなんか連想しちゃうから!!」

不思議な洞窟の何が不思議なのかというと……入った者があまり帰って来ないという事だ。
どうやら旧魔王時代のエキドナが創り出したダンジョンらしく、内部は罠がかなりの数になっているらしい。
その罠にやられ帰って来ない、もしくは男性なら内部で魔物に掴まりそのダンジョンに永住している可能性もあるが……魔物まで帰って来ないというので不思議だ。
帰って来た人も少なからずいるようだが、入った後の記憶が一切無いらしく、気付いたら外にいるというこれまたちょっぴり怖い事になっていた。

「はは、下ネタに恥ずかしがってる間は大丈夫だよ」
「まったく……たまに性行為に出掛けてるモーリンが言うと生々しいんだけど……」
「何言ってるんだよ!ボクたまにしか行ってないんだよ?旦那がいるサキュバスだったら毎日旦那とシてるよ!」
「いやまあ……もはや何も言うまい……」

だから、今回は帰って来られない可能性も高いが……それでこそお宝を探す楽しみがあるというものだ。
それに最奥にエキドナがいるのかも気になる……旦那を手に入れてイチャイチャしてるのなら放っておけばいいし、独り身ならお話でもしようかと思う。
まあいたらお宝は貰えなさそうだけどね……その時は経験を宝だと思えばいいだけだ。

「もぐもぐ……まかいものバター焼き美味しい!」
「まかいもソテーも塩がきいてて美味いよ!ちょっと食べてみるか?」
「あ、じゃあ一口頂戴!こっちも一口あげるからさ!」

そのダンジョンの詳しい場所を集めつつ、私達は腹ごしらえをしたのであった。



……………………



「さて、街のハーピーに聞いた感じだとここらへんに入口が……あった」
「おお……いかにもって感じがする……」

情報を集めた私達は、早速教えられた場所まで向かった。
そこには言われた通り禍々しい形をした木や植物に囲まれた洞窟の入口がぽっかりと口を開けていた。
ちょっと大袈裟かもしれないが……まるで獲物を飲み込もうとしている蛇の口のようにも見えた……洞窟の上部に2本尖った岩が付いてるのが牙に見えるのも原因だろう。

「それじゃあ早速入るよ。今回は壁や天井に魔力の影響かほんのり明かりがあるから松明も発光魔術もいらないね」
「それなら魔力も温存できるし大助かりね」

だからといって入口で足踏みしていても始まらない。
私達は気を引き締めて、その口の中へと飛び込んで行った。

「さて……まずはどんな罠が来るかな……っと」
「いきなり露骨に怪しいオブジェがあるね……」

入ってからほとんど歩かない通路上に、3頭の蛇の彫刻が置かれていた。
振り向けばまだ小さく外が見えるようなところに置いてある彫刻……どうみても怪しい。

「まあさわらぬ神に崇りなしって事で、一応離れて通ろうか」
「そうだね……いや待ってモーリン!止まって!!」
「え?いきなりどうし……うわあっ!?」

彫刻の蛇は3体とも大きく口を開けているので、もしかしたらあそこから何か噴射するかもしれない。
そう考えた私達は、出来るだけ彫刻から離れ、口の部分の前を通らないようにちょっと前屈みで進もうとした。
しかし、その時不意に反対側の壁を見てみたら……いかにも何かが噴出されそうな黒い筒が壁から突き出ていたのを発見した。
蛇を避けて前屈みになると丁度顔に当たるようになっている筒……これを見た瞬間、蛇はフェイクで本当の罠はこっちだと私は思った。
だから先に行こうとしたモーリンを慌てて止めようと思ったのだが時既に遅く、筒から噴出されたピンク色の煙に見事に包まれてしまっていた。

「大丈夫モーリン!?」
「あ……あうあ……あ……」

私はなるべく吸い込まないように口にタオルを当てて、モーリンを心配しながら煙が消えるのを待つ。
毒性のガスでなければいいが……もし毒性であれば急いで町まで戻って医者に診てもらわないといけない。即効性であればそれすら出来るかわからない。

「あ……あん……♪」
「モー……リン?」

すぐに煙は拡散して、倒れていたモーリンも起き上がった。
一先ず大丈夫そうかと思ったがどうにも様子が変だ……ふらふらしているし、心なしか身体が少し紅くなっている。
それに何か変な臭いもする……なんというか……発情した雌の臭いというか……まさか……

「ねえモーリン……」
「ひゃん♪何セレナ、そんなにエッチしたいの?」
「は?何言って……!?」

もしやと思いモーリンの肩をグイッと持ってこちらに顔を向けさせたら……とろんとした恍惚の笑顔を浮かべていたモーリンがそこにいた。
だらしなく涎を垂らし涙を浮かべ……よく見たら頬が興奮で真っ赤になっていた。
身体の方に目をやるとより顕著で、胸は乳首が勃っているのが服の上からでもわかるし、股の辺りがジワリと濡れているのが確認できる。

「身体が疼いて仕方ないよぉ……男のおちんぽが欲しいけどぉ……まずはセレナも気持ち良くなろうよぉ……」
「ちょっと!尻尾を足に絡めないで!!しっかりしてよモーリン!!」
「逃さないよ……一緒にエッチしよう……『チャーム』!」
「くっ!危な!何魅了しようとしてるのよ!」

どうやら噴き出したガスは対象を発情させるものだったらしい。
ものの見事に発情したモーリンは意識がハッキリとしてないようで、ふらふらと私に近付き服を脱がせようとしてくる。
このままでは私はモーリンに犯されてしまう可能性がある……なんとか視線を逸らせたのでかわせたが、実際魅了魔術まで使ってきた程だ……実際行為まで及ばされたら、経験のない私じゃそういった事には百戦錬磨のサキュバスであるモーリンにあっという間に堕とされてしまうだろう。それだけは避けなければ。

「悪いけどモーリン……眼を覚ましなさい!!『エレクトリックヴォルト』!!」
「ぎゃぴ!!」

という事で私は、自分の性器を自分の手で弄りながら私の性器を触ろうとしてきた尻尾を握り、高電圧の電撃をモーリンに浴びせた。
一気に身体を駆け巡る電気に、モーリンも体を硬直させてビクッとなっている。
一見絶頂したようにも見えない事は無いが、流石にそうではなくて電撃の痛みで悶えてるのだろう……そうであってほしい。

「どう?意識はハッキリした?」
「う〜ん……なんとか……ありがとセレナ……」

ペタッとその場に座り込んだモーリン……とりあえず正気は取り戻したようだ。

「それじゃあ先に進むわよ」
「あ、ちょっと待ってセレナ!」
「何?なんかあった?」
「えっと……一回だけオナニーさせて……」
「……終わったら言って……」

それでも身体の疼きは止まらなかったようで、そんな事を言ってきたモーリン。
無視しようかと思ったが、ずっと性欲が溢れた状態で歩いていても集中もクソもないだろうから、仕方が無いので一回だけさせる事にした。
もちろんそんなものを見る気は一切無いので、私はモーリンが満足するまで罠の先で眼を瞑って耳を塞ぎながらじっと座って待っている事にした。
耳を塞いでいても少し聞こえてくるが、気にしないようにする為私は他事を考える事にした。
例えば……天界で修行している時に食べたチョコが甘くて美味しかったなとか、こっちに来てから食べた贅沢バーガーもボリュームあって満腹になったなとか……食べ物の記憶は偉大だなぁ……

「おーい、もういいよセレナ」
「あ、やっと終わって……なんで下半身に何も穿いてないの?そしてなんで鞄に下着がぶら下がってるの?」

今まで食べた物の事を考えていたら肩を揺すられた。
どうやら自慰が終わったみたいなので、眼を開けたら……目の前に1本の筋が……というかモーリンの性器があった。

「濡れちゃったからね。とりあえず飲み水で洗ったから乾くまでこうして干しておく事にするよ」
「……変態露出魔……」
「仕方ないだろ?ノーパンでズボン穿くのは嫌だし、替えも持ってきてないもん。そもそもズボンだって濡れちゃったしね。それにもしまた同じような罠があって引っ掛かってもこれならすぐにオナニー出来るし」
「はぁ……怪我しないようにね……」


盛大にため息を吐きながら、私は奥へと進む事にした。


「さて、この先に何が……っと」
「分かれ道だね」

しばらく順調に進んで行くと、3方向への分かれ道が出てきた。
普通に考えるとこのうち奥に続くのは1方向だけだろうけど……いったいどれだろうか?

「うーん……適当に進んでみるしか……」
「待った。多分真ん中の道が奥に続いてるよ」
「え?」

何か目印になる物は無いかなと思ったが、海の洞窟の時と同じくそれらしきものは見当たらなかった。
それなら地道に一つ一つ調べるしかないかと思って足を進めようとしたら……モーリンが自信ありげに真ん中だと答えた。

「なんでわかるの?」
「両脇の道から大人数の精の匂いが微かにだけどするからさ。多分左右は居住スペースになってて、さっきボクが引っ掛かった罠に掛かった男女が仲良くセックス中さ」
「はぁ……じゃあ真ん中行ってみようか……」

なんか良くわからないセンサーだが、性行為に対してはどんな上位魔物よりも秀でてるサキュバスが言うのだから正しいのだろう。
という事で左右の道は無視して真ん中の道を進むと……

「うわ……何これ……こっちで本当に正解だったわけ?」
「まあ魔界だしこれぐらいあるでしょ」

今度は、通路の上下左右にうねうねしてねばねばした気味の悪い細長い植物みたいなもの……一言でいえば触手がびっしりと敷き詰められていた。
ちょっとでも通ろうと思えばすぐに捕まって全身凌辱が待っている事間違いなしだろう。

「これ通らないと駄目?」
「多分ね。抜け道も見当たらないし、200メートルぐらいだから頑張れば捕まらずに行けるかもよ?」
「なんでモーリンは他人事みたいに言ってるの?」
「サキュバスになってから近所に住むワーウルフさんのお誘いで触手の森に行った事あるけどその時はただ気持ち良かっただけだからね。見た感じ同じようなものみたいだしそんなに実害は無いかなとボク的にはだけど」
「あっそ……絶頂し続けて足腰立たなくなって先進めなくなるってオチが見えたわよ」
「あ……可能性あるね。じゃあ避けて行ったほうがいいか」

他に道は無さそうだし、ここをどうにかして突っ切るしかない。
触手達には悪いが……魔術で消させてもらおう。

「燃えろ!『ホーリーフレイム』!!」
「あー駄目だ。燃えてもすぐ消えちゃう上に再生も早いや。多分洞窟全体に帯びてる魔力の影響だね」

聖なる炎の塊を召喚し触手に当ててみたが……少し燃えた後勢いが急激に無くなり消火され、焦げた部分も少ししたら再生してまたくねくねし始めた。

「くっ、ならば切り取るだけならどう?『ワインドカッター』!」
「なんか切り口がグロテスク……でも、やっぱり再生しちゃうみたいだね」

今度は切り裂く風を発生させて広範囲の触手を斬り落としたが、切り口から変な粘液が出てきたと思ったらあっという間に元通りになるように生えた。

「これは飛びながら四方から来る触手を斬り落とし、再生してる間に進みつつ再生してまた襲ってきたものをまた斬り落として……って進むしかないみたいだ」
「えええぇぇ……」

ここを触手に捕まらずに進む為にはモーリンの言う方法しかないだろう。
再生には5秒ぐらい掛かるし、ある程度広範囲に切り裂きながらちょっとずつ進むしかなさそうだ。

「じゃあ行くわよ……モーリンは後ろ側をお願いね」
「了解。前方は任せたよセレナ」

私達は覚悟を決め羽ばたいた……心なしかさっきまで不規則に揺れていただけの触手が私達に狙いを定め始めた気がする。

「それ!ワインドカッター、ワインドカッター、ホーリーフレイム!!」
「くっ!シャドウスライサー!イ―ビルフレア!」

意を決して触手地帯に突っ込んだ私達。予想通りその瞬間上下左右の触手が一斉に私達に襲ってきた。
互いに習得している斬撃系の魔術と発火系の魔術を駆使して迫り来る触手を薙ぎ倒す。
しかし、斬られたり燃やされたりしてもすぐに再生して再び私達に襲いかかってくるせいで中々進めない……それでも、1メートルずつ、ゆっくりとではあるが前に進んでいた。

「ホーリーフレイム!よし、半分進んだ!」
「あと半分!シャドウスライサー!油断せずに進むよ!」

かなり魔力を消耗しながらではあるものの、順調に進む私達。
時々足に巻きつかれたりするけれど、そんな触手をもう片方が焼き切ったりして事なきをえながら、とうとう触手地帯を抜けだすところまで進んだ。

「よし、脱出!」
「これで安し……危ないセレナ!!罠だ!!」
「なっ!?」

後は懸命に伸ばしてくる触手を振り払うだけ……そう思って油断していた。
なんと、普通の壁だと思っていた場所から急に触手が大量に出て来て、私の身体目掛けて伸びて来た。
完全に安心しきっていた私は咄嗟に魔術が出せず、ただ迫ってくる触手を見ているしか出来なかった。

そして……

「きゃああああ……あれ?」

触手がもう目の前まで迫ってきて……何故か遠ざかった。
一体何が起きたのかと思っていたら……よく見ると私達の周りに何かが張り巡らされていた。

「ふぅ……よかった……どうやら効果があったようだね……」
「あ……モーリンそれ……」

私の後ろを飛んでいたモーリンが何かをしたのかと思い振り向いてみたら……モーリンの手にはボタンの付いた球体が握られていた。
それは先日海の洞窟で針を越える時に使った結界発生装置だった……待っている間にパーズに聞いたところ針を防ぐ以外にも普通に使えると言う話だったので持ち帰ってきており、今回も何かしら使えるかもと思って持ってきていたのだった。

「ささっとここから離れよう。なんか結界がミシミシと言ってるし、そうもたないかもしれないからね」
「だね……最初から使ってたらって思ったけど、これだと持ち堪えてくれそうもないもんね……」

蠢く触手の中を無理矢理押し通り、なんとか危機を脱出した。

「ふぅ……結構魔力を消耗しちゃったわね……」
「はい、精補給剤。あまり美味しくないけどこれで魔力は回復出来るよ」
「ありがと……うえ……」

不味い精補給剤で消耗した魔力を回復させながら奥に進む。
あまり美味しくない味に顔をしかめ、それでもたしかに回復する魔力を感じながら歩を進めていると、またしても分かれ道が出てきた。
今度は2択だが……右と左どちらだろうか?

「今度も精の匂いとかするの?」
「……うん。エッチな臭いが右から漂ってくるね。多分だけど一つ目は無事に抜けた後さっきの触手にヤられた人や魔物がここに永住してるんじゃないかな」
「あー。だから帰って来ない人や魔物がいると……ありえるわね……」

もしやと思ってモーリンに聞いてみたら……やはり片方から性臭がしたようだ。
右から漂ってくると言うので私達は左の道を進む。
しかし、この調子だと次もエロトラップな気がする……命が脅かされる事はないからまだいいが、私としては死ぬほど恥ずかしい辱めを受ける破目になるのでなんとしても避けたいところだ。

「さて、お次は何かな……?」
「なんだこれ?花?」

曲がりくねった道をぐいぐいと進んでいたら、曲がり角があった。
そこを曲がった瞬間、辺りには赤青黄色ピンク白オレンジ紫……とにかくいろんな色の花が洞窟中咲き乱れていた。
触手とは違うみたいだし、魔灯花とも違うようだ……でも、こんなところに咲いている花が普通の花とは思えなかった。

「ちょっと怖いけど……今のところ実害は無いわね……」
「そうだね。別に変な匂いも蕩けるような匂いもしないし、踏まれた程度じゃ問題無いみたいだけど燃やすのはやめておこうか」

ただ何かが起こりそうもなかったから、一応結界を張って花の上を進む事にした。

「見てる感じでは特に変わった様子は無いわね……」
「アルラウネの幼体ってわけでもないし、別に消火液とか吐き出してくる様子もなし……今までの罠の感じだとこれは真の罠を隠す為のカモフラージュかもしれないけど、今のところそれっぽいものも無い。本当になんだろうね?」

特に何かが起きるわけでもなく、普通に進んでいけるこの状況がかえって怖かった。
最初の罠が像が囮で催淫ガスが本命、2つ目の罠は見えてた触手が囮で隠れてた触手が本命と罠の2段重ねになっていた事から考えると今回も花以外の何かがあるのではないかと思うが……それらしきものは何も見当たらなかった。

「う〜ん……あれ?なんだあの影……?」
「人……かな?魔物も居るみたいだけど……って何か様子がおかしいぞ?」

そのまま進んでいると、先の方に何かの影が見え、言葉になってない声も聞こえてきた。
近付くにつれそれが倒れている人影……中には魔物だと思われる影も混ざっているという事がわかった。
いったいどうしたのだろうと急いで駆け寄ったら……もの凄い惨状が目に入った。


「あへ……るーくぅん♪イクううっ♪」
「あふ……ふあ……あ……!」
「エメラ……エメラぁ……うっ!!」


「うわぁ……」
「凄い……なんだこれ……」

涎を垂らし、盛大に潮を吹きながら絶頂しているリザードマン……四つん這いになって性器から愛液を垂れ流し身体を震わせているレッサーサキュバス……誰も触れていないのに勢い良く射精している男性……それ以外にもあちこちで快感の悲鳴を上げながら身体を震わしている男性と様々な魔物の姿があった。
誰も彼もが虚ろな瞳で何も見えていない様子で、裸の状態で性的興奮に包まれていた。

「なんだろうねこの集団……」
「さあ……皆気持ちよさそうにしてるけど……特に性的刺激を受ける要因は見当たらないけどな……」

なんだかよくわからないが、頬を叩いてみたり揺すってみたりさっきモーリンにやってみたように電撃を浴びせたりしたが止まる様子は無く、それぞれ身体から粘液を吐きだし続けていた。
なんか気味が悪いが……私達じゃどうしようもないので、一先ず放置して先に進む事にした。

「もしかしてこの花が快感をもたらしているとかかな?」
「かもしれないけど……私達はなんともないのよね……結界のおかげかな?」
「かもね……」

なんとも言えない気分の中、私達は結界を張ったまま花の群生地帯を抜けた。
あまり長時間起動しておくと調子が悪くなるかもしれないので、ああなっていた原因が花にあると考えて、花の影響はもうないだろうと思う場所まで来てから結界を解除した。

「さてと……最奥まで後どれだけあるかな?」
「そうね……一つ一つのスパンが長かったし、さっきの花の所なんて1時間ぐらい歩いてた気がするし……もうそろそろなんじゃない?」

しかしここまでエロトラップづくしだった……
旧魔王時代のエキドナが作りだしたダンジョンだという話だからてっきりこちらの命を狙ってくるような罠ばかりかと思ったが……どうやらそんな事は無く、きちんと時代に合わせて変えていたらしい。
まあおかげで魔力の消耗以外の苦労は無くかなり深いところまで来れたわけだ。これなら既に最奥には旦那も居るんじゃないかと思う。

「お?なんか見えてきたぞ!」
「本当ね……最奥の部屋かな?」

考え事をしながら歩き続ける事数分……真っ直ぐになった道の行き当たりに、揺らめいている炎の影らしいものが見えた。
急ぎ足でその部屋に入ってみると……今までとは全く違う雰囲気の部屋に出てきた。

「これは……」
「ここだけ旧世代の罠のままって感じだね……謎解き系だと思うけど、失敗したらタダじゃ済まなそうだ」

天井には2頭の大蛇の絵が環を作るように描かれている部屋……目の前には岩の扉があるが、押しても引いてもビクともしないよう固く閉ざされている。
部屋を見渡すと……2つの火が点っている松明と4つの火が点いていない松明の計6つの松明が部屋の中央にあり、3×3マスのパネル上に置かれた、意味ありげな3つの四角い岩。そして、刺されば一溜まりもないであろう棘がびっしりと付いた壁が左右に存在していた。
その他にもパネルと松明を避けるように描かれた蛙と蛞蝓の模様、松明の真上には何かの金属で出来た輪が吊り下げられているが炎のせいで取れそうもなく、また扉にはボタンが4つ付いていた。

「多分どれかのボタンが扉を開くボタンだね。他の3つの内一つ以上は壁が迫ってくるもののような気がするからうかつには触れないな」
「だよね……何かヒントは無いかな……」

パネルと輪は何か意味がありそうだ……蛙と蛇と蛞蝓の絵は何か意味があるのだろうか?

「あ、見てセレナ!松明の所に何か書いてある!」
「えっなになに……ここを抜けたくば速やかに力を示せ。さもなくば汝に風穴が開くだろう……か」
「うーん……とりあえず失敗したらやっぱり左右の壁が迫ってくるってのはわかったけど、特にヒントってわけでもなさそうだね……」

力を示せば扉は開く……つまり、ここの謎を解けと言う事だろう。
とりあえず私は一番謎っぽい謎であるパネルと岩の所に移動した。
この岩を動かしたらどうなるのか……気になった私は、とりあえず岩の一つ、真ん中の列の一番左にあった岩を上の列に押してみた。
案外軽い岩のようで、ちょっと押しただけで簡単に動いた。

「うわっ!?」
「何?どうかし……炎の位置が変わってる?」

岩の位置を動かしてみた結果……目の前の松明の炎の位置が変わっていた。
最初は2行3列に並んでいた松明の真ん中の列2つが燃えていたのに、岩を動かしたら右の炎が消えてた。
どうやらこのパズルと松明の炎は連動しているらしく、これを解いて火を消して輪を取れと言う事だろうか?

「とりあえず一つ一つメモを取りながら動かすよ……いい?」
「うん。メモは任せて。動かし方と炎の位置を書いておくから」

まずはパターンを覚えなければいけないから、私は一つずつ岩を動かしていった。
最初に動かした岩を元の位置に戻し、今度は横に動かしてみると……今度は未だ火が点き続けている松明の奥の松明が燃え始めた。
また戻して今度は下に動かすと……横に動かした時と変わらなかった。

「う〜ん……なんだこれ……真ん中の左側の炎が一回も消えてないぞ?」
「本当にわけがわからない……」

それから他の岩も上下左右に動かしてみたのだが……どうしても一つだけ消えない炎があった。
もしかしたらこの炎を消すスイッチは無いのではないかと思えてきた……実際もう岩ごとの違いは無いと動かした時にわかっているので、おそらく全パターンは試したはずだからだ。
そもそもの考え……つまり、岩を動かして対応する火を消す事自体が間違っているんじゃないかと考え始めた、その時だった。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


「……ん?いったい何の音だ?」

急に鳴り始めた地響き……まさか……

「……壁が迫ってきてるううううううう!?」
「ウソ!?なんでだよ!!ボク達まだボタンなんて押してないぞ!?」

何事かと思ったら……やっぱり左右の棘壁が迫ってきている音だった。

「そうか!ここを抜けたくば速やかに力を示せ、さもなくば汝に風穴が開くだろう……って事で、速やかに示せなかったから迫ってきてるんだ!!」
「んな馬鹿なああああああ!!」

私達は別に何かのボタンを押した記憶は無いのに迫ってきた壁。
どうやら時間制限があったらしく、無慈悲にも時間切れのようであった。

「早く通路に逃げ……って入口が塞がれてるうう!?」
「壁と一緒に閉まったようだね……このままじゃボク達の身体が穴だらけになっちゃうから、なんとしても壁をぶち開けるよ!!」

咄嗟に引き返そうと思ったら、私達が入ってきた入口に分厚そうな壁が憚っていた。
これは私とモーリンが初めて出会った日に攻略した遺跡の扉みたいだ……そんなに経ってないけど懐かしい……だなんて思っている余裕は無かった。

「あの時みたいに壁を壊すよセレナ!!」
「ええ!ジェノサイドホーリー!!」
「ジェノサイドシャドウ!!いっけえええ!!」

それでも、あの時と同じように全てを破壊しつくす光と闇の球を二人同時に打ち出し、壁を壊そうとした。
壁に当たる二つの魔術……あの時と同じように爆風を起こしながら混じってはじけた。
私達は吹き飛ばされないように床に伏せて、爆風が巻き上げた煙が晴れるのをジッと待っていたのだが……

「……なっ!?」
「壊れてない……それどころか傷一つ付いてないだって!?」

しかし、煙が晴れて現れたのは通路では無く……傷一つ付いていない扉だった。
どうやらあの遺跡以上の防御魔術が壁に施されているらしい……周りの壁ですら無傷であった。
私もモーリンもこれ以上の攻撃力を持つ魔術なんて覚えていない……万事休すだ。

「クソッ!どうすればいいんだ!!」
「ああああああああああああああああああああああああ!!」

叫び続けながらあたふたする私。そんな私にお構いなく迫ってくる壁。
そもそも制限時間が短すぎる……どうしたら数十分で力を示せると言うのか……
力が今やったみたいに単純な破壊力であれば可能かもしれないが謎解きなんてこんな短時間で解けるわけが……ん?

「ああああ……あ!」
「……ん?どうかしたの?」
「わかった!わかったよモーリン!!なんでこんな単純な事に気付かなかったんだろう!」

命の危機が迫っているせいか、慌てふためく私の脳みそがフル回転し始めた。
そして気付いたひとつの真実……これならいけるかもしれない。
そう思って私は、すでに半分諦めモードに入っていたモーリンに向けて思い付いた事を言ってみた。

「私達は最初から力を示せばよかったんだ!!謎解きなんて回りくどい方法じゃなくて、直接扉に叩き付けてやれば良かったんだよ!!」
「へ……?つまりどういう事?」
「簡単だよ!ありったけの魔力をあっちの扉にぶつければいいのよ!!」
「……やってみる価値はあるね……魔力は残ってる?」
「同じものを一発撃つだけの魔力ならギリギリね。モーリンは?」
「同じさ!だからこれがラストチャンスだ!!」

そう、正解のボタンを押すと言うのも、この部屋の謎を解けばいいと言うのも、全てが私達の勝手な憶測でしかなかった。
だから松明に書かれていた言葉の通り、私達は最初から力そのものを示せば良かったと考えた私は、全身の魔力を絞って最後の賭けに出る事にした。
それは、私達の力を扉にぶつけると言う事だ。間違っていたら死は免れないが、他に思い付くものもない。

「いくぞ!ジェノサイドシャドウ!」
「いっけええ!!ジェノサイドホーリー!!」

ありったけを込めた破壊の魔術は、先程よりも強い爆風を散らしながら、扉にぶち当たった。

「どうだ!?」
「やったか!?」
「セレナ!?やったかはだめっ!!」

二人並べるほどの幅まで迫ってきた壁……もうもうと立ちこめる砂煙……
この煙が晴れた時に扉があったらもう私達は助からない……心臓が高鳴る中、煙が晴れるのを待っていた。
そして、もう二人が横に並べない程壁が迫って来たとき、ようやく煙が晴れて……

「よし!壊れてる!!急げ!!」
「どうやら当たりだったようね……もう時間が無いから急いで!!」

そこには扉が無く、奥に続く道が開けていた。
私達は全速力で通路まで走り、一気に飛び込んだ!




ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……



「ハァ……ハァ……た、助かったぁ……」
「し、死ぬかと思った……」

先にモーリンが出て、次に飛び出した私の足が通路に出た瞬間、左右の壁は隙間無く閉じていた。
あと数刻遅ければ私達は死んでいた……本当にギリギリだった。
まさか何も考えずにとりあえずぶっ放せばいいが正解だとは思わなかった……明らかに謎解き用だと思わせるような物自体が罠だったとは……恐れ入った。

「へへ……駄目だ。ボク当分動けそうにもないや……」
「ハァ……私も……もう這って動ける程の元気もないや……」

生きてると実感できた瞬間、全身から力が抜けてくたっと倒れてしまった私達。
まあ一応危険は脱したし、しばらくこのまま休むのもいいと思っていた。

「……あれ?何かが這ってくる音がしない?」
「やめてよそういう事言うの……何?またぶよぶよでも来るんじゃないでしょうね……」

しかし……通路の先から何かが這ってくる音が聞こえてきた。
思い出されるのは海の洞窟でのぶよぶよ……あんなのに今遭遇したらひとたまりもない。
もはや何も出来ないが、とりあえず警戒しながら通路の先を見ていたら……何か蛇のようなものがシルエットが見えてきた。
ここはエキドナが作ったダンジョン……という事はもしかして……

「どうも、お疲れさまでした。大丈夫ですか?」
「あ、あんたは……?」
「私はここに住まうエキドナのフィアです。お疲れでしょうから、私の居住スペースまで運んで差し上げましょうか?」
「お、お願いします……」
「御安いご用です。ダンジョンを作ってから幾百年。相手は殿方で無かったとはいえ初めて成功者が出たので私も嬉しいのですよ。是非ゆっくりとお話させて下さいませ」

やはりここのダンジョンの管理者のエキドナであった。
倒れていた私達を蛇体で包み込み、通路の奥へと運ぶ……奥にあった扉を開けると、たしかにそこは机にベッドに食器にとエキドナのフィアさんの居住スペースになっていた。

「一応魔力探知であなた達が最後の部屋まで来ていた事はわかってました。あそこの部屋のみ現魔王風アレンジがさほどなされて無かったので心配してましたが、どうやらギリギリなんとかなったようで良かったです」
「本当にギリギリでしたよ……なんであそこだけそのままだったのですか?」

ふわふわのソファーに座らされた私達。
ぐたーっとしていたら美味しい紅茶を淹れてくれたのでそれを飲みながら、私達はフィアさんとお話し始めた。

「いえ、実を言うと全ての罠は私がまだ純粋な魔物だった時から手を付けていません。魔王の代替わりが起きた時に最初の毒ガスは催淫ガスに、分かれ道の先に存在していた毒草や毒の果実は全て現在の魔界の植物や果実に、人を犯し時には傷付け殺める触手は人々を性的に襲う触手に、そして一息吸うだけで人々を苦しめ死に至らせる毒花粉を振り撒く花は人に幸せな幻覚を見せる花粉を振り撒く花に変わったのです」
「あーあの花は幻覚を見せるものだったのか……じゃあ倒れていた人達はその花粉を吸って好きな人とセックスしてる幻覚でも見てたって事か」
「そういう事です。ああ、あそこに倒れていた人達ならご心配なく。魔力を粗方搾りとった後はこのダンジョンから出て行くように幻覚を見せて外に出しますし、外に出てしまえば正気に戻りますから。花粉が付いてる相手には触手も襲いませんし無事に脱出出来ます」
「じゃあ安心ですね……」

最後までよくわからなかった3つ目の罠にそんな恐ろしい効果があったとは……
好きな人が特に居ない私とモーリンがその花粉を吸っていたらどうなっていたのか気になるところだが、もちろん試す気は無い。

「私はそれらを乗り越えて来てくれる殿方を待っているのですが、やはり途中で皆さん引っ掛かってしまい最後まで来れないのですよね」
「そういえばフィアさん、さっき最後の罠まで来れたのはボク達が最初だって言ってたけどさ、もしボク達があのまま謎が解けなかったら見殺しにしてたの?ボク達じゃなくて男の人でも?」
「いえ……実はあの壁に挟まれても死ぬ事はありません」
「え!?」
「このダンジョン全体に私の魔力が張り巡らされてますし、現在の魔王の魔力で死なないようになってます。例えるなら魔界銀で作成した剣のようなものです」
「なるほど……」

最後の凶悪な罠も一応死なないようになっていたらしい。
まあ魔力が張り巡らされている時点で私は即堕ち確定だっただろうから、なんとか抜け出せて正解だったのには変わらないが。

「ところであなた達は何故私のダンジョンへ?」
「いやあ、実はボク達トレジャーハンターやってまして、こんな洞窟なら何か宝でもあるかなと思いまして……」
「なるほど……攻略記念ってわけではないですが、私が昔集めた財宝の一部を分けてあげましょうか?」
「え?いいんですか!?」
「ええ。こっそりと町へ出かける事もありますが、滅多にお金は使いませんし、これだけあっても困りますからね」

そのままフィアさんとの会話が盛り上がった私達は、ご飯まで頂いてしまった。
フィアさんの作った料理はとてもおいしかった。

「それではお二人ともまた機会があれば遊びにいらして下さい。今渡した私の脱皮した皮を身に着けていれば全てのトラップは発動せずにここまで来れるので次は苦労無いと思いますよ」
「ありがとうございます。ではまた来ますね!」
「フィアさんにも旦那さんが出来る事を願ってます!」
「はい!あなた達が攻略出来たのですから、攻略不可能でない事は証明されましたからね。今までと違って余裕を持って楽しみに待てます!」

そして、ひとしきり盛り上がって辺りもすっかり暗く……いや、魔界だから逆に明るくなってから、私達は帰路に着いたのだった。


今回は物としての報酬は一つずつ装飾品を貰っただけではあるが、旧時代の貴重な話を聞けたりしたので、私達の心は満足だった。
13/06/05 11:31更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
という事で今回はエキドナのダンジョン攻略でした。
この世界の魔物が作ったダンジョンはエロトラップが多いと思いますw
なおこの数ヶ月後に男性攻略者が出てきたのでフィアさんは無事結婚出来たとか。

次回は反魔物領にある森の探索!そこで見つけた遺産とは……!?の予定。

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