「あたしたちはモテない。シャレにならないほどモテない」
　黒色の獣毛と肌を持った女が、酒をあおりながら言った。タンクトップにホットパンツ姿で、人間離れした肌を露出している。黒の中で真紅の瞳が目立つ。
「今さら、何を分かり切ったことを言っているのだ」
　黄色と黒色の獣毛で手足を覆われた女が、呆れたように言う。こちらもタンクトップにホットパンツ姿で、人間離れした獣毛を露わにしている。
　犬の耳と尻尾を持った黒い女と、虎の耳と尻尾を持った女は、渋い顔で酒をあおった。

　ジュリアは、魔犬として知られるヘルハウンドという魔物娘だ。大柄で黒い体と燃えるような赤い瞳が特徴である魔物娘である。彼女は、虎の魔物娘である葉青と飲むことが多い。今も、葉青の部屋で酒を飲んでいる。イヌ科とネコ科の魔物娘であるにもかかわらずだ。
　理由の一つは、共にモテないからだ。ヘルハウンドは、前述したように黒い身体と赤い瞳をしているため避けられるのだ。その上、好戦的で反抗的な性格をしている。人虎は虎の毛と爪を持ち、大柄で筋肉質の体をしている。しかも、不愛想で誇り高い。これではモテないだろう。
　現在、日本では魔物娘たちが暮らしている。人間からすれば異形の体の持ち主だが、いずれも容姿が優れている。ジュリアと葉青も、彫の深い整った顔と肉感的な体を持っている。ただ他の魔物娘達は、優れたコミュニケーション能力を持っているのだ。ヘルハウンドと人虎には、それが無い。
　結局はサキュバスなどの、優れた容姿とコミュニケーション能力を持つ魔物娘に男を取られるのだ。あるいはイヌ科なら、コボルドのような愛嬌のある魔物娘が選ばれる。ネコ科なら、ワーキャットが選ばれる。こうしてモテないヘルハウンドと人虎は、共に酒を飲んで憂さを晴らすわけだ。二人は、カツオの刺身をつまみにして純米酒「美少年」を飲んでいる。
「こうなったら男をさらって、やってやる。あたしの先祖はそうして来たんだ」
　ジュリアは、据わった眼で言い放つ。
「やめとけ、お縄を頂戴する羽目になる。どれだけ多くのヘルハウンドが臭い飯を食っているのか分からないのか？」
　葉青の冷めた言葉に、ジュリアは唸り声を上げる。
　ヘルハウンドは、男を力づくで手に入れることで知られる。だが、現代日本でそんなことをしたら犯罪だ。刑務所では、何百人というヘルハウンドが机や椅子、石鹸やうどんを作っている。
　もっとも、反抗するのが本能であるヘルハウンドだ。刑務所内で暴動を起こしたり、脱走を企てたりする。法務省も、ヘルハウンドには悩まされている。近年では、アカオニやオーガと言った鬼の魔物娘が刑務官となり、ヘルハウンドと仁義なき戦いを繰り広げているのだ。
「あたしたちに犯罪をやらせたくないなら、国家が男を用意しろ！用意しないなら男を犯してやる！」
　ジュリアは、「美少年」をがぶ飲みしながらわめく。
　葉青は、呆れたように首を振る。
　二人は、しばらく無言のまま酒を飲み続ける。ふと、ジュリアが顔を上げた。葉青をじっと見る。
「どうした？」
　葉青は怪訝そうに言う。
「こうして見ると、お前は男前だな」
　ジュリアは据わった眼で言う。
　葉青は体を強張らせる。
「言うまでもないが、私は女だ」
「いや、見方によっては男に見える。もう、男でも女でもどっちでもいい気がしてきた」
　ジュリアの瞳は、地獄の業火を思わせる。
　葉青は、脂汗を流しながら後ずさりした。

　ジュリアは、うなり声を上げながら彷徨していた。あの後、葉青に襲いかかったが、部屋から叩き出されてしまった。欲望を満たすことの出来ないジュリアは、もはや魔獣そのものだ。こうして目を燃え上がらせ、荒い息を吐き、涎を垂らしながら日中の街路を徘徊している。
「ママ、あのお姉ちゃん変だよ？」
「シッ！見てはいけません」
　通りすがりの親子に不信の目で見られているが、今のジュリアは気に留めていない。性欲が爆発寸前で、ほとんど狂っている状態だ。
　ジュリアの鼻に匂いが飛び込んできた。風上から一人の少年がやって来る。成長途中の未発達な体をして、どこか危うい感じがする。性に目覚める年ごろの少年だ。
　ジュリアは舌なめずりをした。

　ジュリアは、少年を抱きしめながらなめ回していた。少年は、Ｔシャツにショートパンツ姿だ。黒い首輪をつけ、銀色の鎖でつながれている。ジュリアは、少年の顔をなめ回しながら太ももを愛撫している。少年は、虚ろな顔で宙を見ていた。
　ジュリアは、少年をさらってきて貪ったのだ。欲望を抑えきれなくなったジュリアは、とうとう少年を拉致、監禁、凌辱、調教してしまったのだ。
　さらうことは簡単だった。独りで学校から帰る少年に声をかけ、チョコレートを食べさせたらついてきた。六人に一人の子供は貧しいのか、この国は貧乏になったんだな…。そうジュリアは宙を見ながらつぶやく。
　もちろんジュリアは、貧困問題について考えるよりも欲望を優先した。ジュリアは、自分の借りているアパートに少年を連れてきて監禁した。ここの大家と住人は、ジュリアと後ろ暗いことをする仲だ。儲けさせてやったこともある。だから、ジュリアが何をしようと口を出さない。ここに少年を連れてきて監禁すると、思う存分貪ったのだ。
「ああ…、お前の匂い、味、感触、たまらねえよ…」
　ジュリアは、執拗に少年の顔をなめ回す。少年のＴシャツを脱がし、ショートパンツを引き下ろす。トランクスもむしり取り、未成熟な体を露わとする。今日もまた、少年を貪るのだ。
　ジュリアは純米酒の瓶を手に取り、少年の胸に酒をかける。少年は、か細い悲鳴を上げる。
「冷たいけれど少し我慢しろよ。お前の体をつまみにして酒を飲みたいんだ」
　ジュリアは、少年の薄い胸に舌を這わせながら酒をなめ取る。喘ぐ少年を見上げながら、小さな乳首を舌で弾く。ジュリアは、か細い少年の体に酒を注いでいく。少年の体は、酒の匂いで包まれる。雌けだものは、胸から腹へと舌を這わせて酒をなめ取っていく。
　ジュリアは、少年に股を閉じることを命じた。そうして股に酒を注ぐ。
「お前はわかめ酒を知っているか？まあ、大して毛の生えていないガキだから分からねえだろうな」
　ジュリアは、少年の股にたまっている酒をすすった。舌を鳴らして部屋中に音を響かせる。酒を飲みながら、少年の小ぶりなペニスを舌で嬲る。
「酒に漬けたチンポはうめえよ。ああ、本当にチンポはうめえ。もっと早くお前をさらうべきだったよ」
　少年のペニスは固くそり返り、少年は荒い息を吐く。ジュリアは、少年の反応を楽しみながらペニスを舌と口で味わう。皮を舌でむき、緩急をつけて甘噛みをする。
　少年は、悲鳴を上げながら弾けた。ペニスが激しく震え、白濁液を噴出する。ジュリアは、笑いながら精液を顔で受け止める。ジュリアの黒色の顔は、白く汚れていく。
　射精が終わると、少年はぐったりとした様子でうつむいた。赤い顔をして荒い息を吐いている。ジュリアは、その顔を楽し気に見上げている。白濁液で汚れた顔を少年に近づけ、見せつけた。彼女の顔からは精液の臭いが漂う。ジュリアは、わざとらしく鼻を鳴らして臭いをかぐ。そして手で精液を拭い、少年に見せつけながらなめ取る。
「次は、お前にうまい物を食わせてやるよ」
　ジュリアは、タンクトップとホットパンツを脱ぎ捨てた。ブラジャーとショーツもはぎ取る。そして、生クリームのたっぷりと乗ったケーキを箱から取り出す。むき出しになっている豊かな胸に、ケーキを押し付けて塗りたくる。黒い胸が白い生クリームで染まっていく。
　ジュリアは、少年を抱き寄せた。少年の顔を自分の胸に押し付ける。少年の顔が生クリームで汚れる。
「ほら、あたしの胸ごとケーキをなめ取るんだよ。舌を丁寧に這わせてなめ取れよ」
　少年は、ゆっくりと舌を這わせる。黒い肌についた白いクリームが、少年のみずみずしいピンク色の舌でなめ取られていく。少年の舌が動くたびに、ジュリアの胸は唾液で濡れながら弾む。室内の照明が、濡れた胸を光らせる。
　少年は、ジュリアの乳首をすった。ジュリアは喘ぎ声を上げる。乳首はたちまち固くなっていく。ジュリアは少年の頭を撫でながら、もっとなめろと催促する。
　ジュリアは、いったん少年を引き離す。そしてレモンクリームが乗っているケーキを取ると、自分の下腹部に押し付けて塗りたくる。
「さあ、今度はレモン味のケーキをなめ取るんだ。少し酸っぱいけれどおいしいぞ」
　ジュリアは少年の頭をつかみ、自分の下腹部に顔を押し付けた。ジュリアのヴァギナからは液があふれ、レモンクリームと混ざり合っている。少年の顔は、液で溶けたクリームで汚れる。少年の顔を甘酸っぱい匂いがおおう。
　少年は、黒い肌に塗りたくられたレモンクリームを子犬のように舐めた。愛液で溶けたクリームが少年の口の中に広がる。舌が鳴るごとに、黒い魔犬は口を開けてあえぎ声を漏らす。
　魔犬に手で催促されると、少年は陰毛を舌でかき分ける。濃い茂みは、クリームと液でべったりと濡れている。少年は丁寧になめ取っていく。欲望に狂った魔犬になめ方を仕込まれたのだ。茂みのクリームを舐めつくすと、液を絶え間なくあふれさせる泉に口を付ける。そのまま肉厚のヴァギナを吸い上げる。
　唸り声を上げると、魔犬は少年を押し倒した。そのまま少年の上に乗ると、ヴァギナをペニスに押し付ける。そのまま激しく擦り付ける。ヴァギナから飛び散る液が、少年の下腹部を濡らす。少年のペニスは再び固くなる。魔犬は、ヴァギナの中に少年のペニスを飲み込んだ。
　魔犬は、笑い声を上げながら腰を動かす。欲望の赴くままに快楽を貪る。少年は、掠れた声で父さんとつぶやく。
「お前が父さんになるんだよ！あたしの中で子種汁をぶちまけるんだ！」
　魔犬は、少年の上で踊りながら哄笑した。

　ジュリアは風呂からあがると、ビールを飲みながら少年を愛撫していた。ジュリアは、満たされた気分で酒をあおっている。風呂の中で少年を洗いながら、散々嬲ったのだ。少年は鎖を外されていたが、首輪は付けている。彼は、ぼんやりと宙を見ていた。
　零はあたしのものだ。ジュリアは少年の名をつぶやく。零というのは無いという意味だ。親も周りの人間もこいつを必要としていないのだろう。だったら、あたしのものにしてもいいはずだ。ジュリアは、勝手に決めつける。
　チャイムが鳴り響き、ジュリアの満たされた気分は邪魔された。こんな遅い時間に誰だ？ジュリアは、顔をしかめながら立ち上がる。ドアの覗き穴から外をのぞく。
　外には警察官たちがいた。ジュリアは驚愕する。零のことがばれたのか？この辺りの連中は、他人のことなんか気にしないはずだ。通報するわけがない。それに零の周りの連中も無責任な連中だ。なぜ、警官がいるんだ？
　ジュリアは、窓から家の周りを探る。既に、アパートは包囲されていた。ドアが激しく叩き鳴らされる。警察官の呼び声が、部屋の中まで聞こえてくる。
　ジュリアは、零を左腕で抱えて窓から飛び出す。アパートの二階だが、この程度の高さはヘルハウンドには障害では無い。巧みに着地すると、警察官をすり抜けながら零を連れて逃げようとする。ジュリアの鼻に狼の匂いが入った。ジュリアは舌打ちをする。警察官たちの中にはワーウルフがいた。ワーウルフたちは、ジュリアの前に回る。
　ヘルハウンドは、ワーウルフに吠えずに襲いかかる。爪の生えた右腕を突き出し、牙をむく。一頭のワーウルフが、後ろに下がりながらヘルハウンドの攻撃を受ける。もう一頭が、左側からけん制してくる。ヘルハウンドは、ステップを踏みながら突破しようと前に出る。だが二頭のワーウルフは、後退しながらもヘルハウンドを邪魔する。
　後ろに、一頭のワーウルフが現れた。ヘルハウンドは後ろに蹴りを放つ。ワーウルフは、後ろに下がってヘルハウンドの攻撃を受ける。後ずさりしながらも、体勢を崩さずにヘルハウンドの背後を取る。ヘルハウンドは舌打ちをする。囲まれてしまった。しかも零がいるから戦いにくい。
　右側のワーウルフが踏み込んでくる。同時に、後ろ側のワーウルフが襲いかかって来る。ヘルハウンドは、右側に右手を突き出して突き進む。爪を受けたワーウルフはよろける。後ろから飛びついてきたワーウルフを振り払おうと体を振る。だが、零がいるために上手く行かない。
　ヘルハウンドは、ワーウルフの左すねに左足で蹴りを入れた。ワーウルフの動きが一瞬鈍くなる。左側からワーウルフが襲いかかって来る。零が奪い取られそうになる。ヘルハウンドは、ワーウルフの左腕にかみつく。ワーウルフは手を離す。
　ヘルハウンドは、後ろから羽交い絞めにされた。右側からも飛びつかれる。振り払おうとするヘルハウンドから、零が奪い取られる。零を取り戻そうとヘルハウンドはもがく。
　応援の警察官たちが駆けつけて来た。ヘルハウンドに次々と飛びつく。咆哮を上げながらヘルハウンドはもがく。だが、地面へと押し倒され、取り押さえられる。
　こうしてジュリアは、お縄につくこととなった。

　葉青は、零と共に公園にいた。事件の後、零は施設に入った。零の父親は貧困の中での子育てにより消耗しており、零を育てることは無理だと判断されたからだ。葉青は、定期的に零の様子を見に来ている。
　ジュリアを通報したのは葉青だ。ジュリアの様子が明らかにおかしいために、彼女を探ったのだ。その結果、ジュリアが零を拉致、監禁、凌辱、調教していることに気が付いたのだ。
　ジュリアは有罪となり、現在は刑務所で机や椅子の製造に従事している。自業自得だな、葉青は無言でつぶやく。お前はこの子に対してどう責任を取るつもりだ。
　葉青は零を見る。零はジュリアを求めていた。ジュリアに与えられた快楽が忘れられないのだ。ジュリアのことを話す時、零は顔が赤くなり息が荒くなる。性に目覚めたばかりの少年は、ジュリアに調教されることで幼いけだものとなっていた。
　この子が暴走しないように気を付けなければならないな。葉青はため息をつく。ジュリアの馬鹿がお勤めを終えたら、この子に対する責任を力づくでも取らせよう。あいつのことだから、即座にこの子を抱きすくめると思うが。
　葉青は少年を見た。育ち始めている未成熟な体は、独特の怪しい魅力がある。性を求める幼いけだものは、雌獣には魅力的に見える。葉青は、自分の下腹部の奥底でマグマのようなものが渦巻くことが分かる。
　馬鹿なことを、葉青は唇をかみしめる。他の女の男を奪い取るほど、私は節操なしでは無い。第一、魔物娘のご法度だ。葉青は、零から目をそらす。
　目をそらしたところに、近所の少年たちが遊んでいる姿があった。いずれも未成熟な体が変化していこうとする年頃だ。雌獣には、少年たちの目覚め始めた性を嗅ぎつけることが出来そうな気がする。
　零でなければ良いかもしれない。合意の上でなら、法に反しても魔物娘としては良いかもしれない。虎の魔物娘は、低く喉を鳴らす。

　こうして、もう一匹の雌けだものが道を誤ることとなった。