連載小説
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整体接骨院『癒』のその後
「朝陽くん!次はこっちの患者さんにね!」

「・・・・・(コクコク)」

どうも、皆様、ホロロホルンの整体整骨院『癒』で整体師をやっています井伊 朝陽です。

整体接骨院『癒』は今日も大忙し。
雑誌記者さんの取材から少し経って、多くのお客様に来ていただけるようになりました。

いえ、お客様が少なかったというわけではないんです。
ただ常連様がほとんどで、新しいお客様が来ることは滅多にありませんでした。

それが、あの雑誌を見たよ!と言って来ていただけるようになったんです。
という訳で、今日も大忙し。

「ねぇ、今日のお仕事終わったら、お姉さんのところにご飯食べに来ない?ご馳走するわよ?」

常連様のラミアのお姉さん。
来るたびに、僕を誘ってくれるのですが、行ったら絶対捕まるので、失礼の無いように、お断りしています。

「・・・・・(フルフル)」

「あら、そう?来てくれたら私が朝陽くんを気持ちよくしてあげるのに。」

その提案に揺らいでしまいそうですが、ここも丁重にお断りを・・・って、尻尾でお尻触らないでください。

「・・・・・・!」ワタワタ!

「もう反応が可愛いわねぇ♪このまま押し倒しちゃおうかしら?」

尻尾が体を巻きついてくる。
困ったなぁ・・・。

「あの蛇女。私の朝陽くんに・・・!馴れ馴れしいんじゃない?」

「確かに目に余るものがあるな。あんな羨まs・・・じゃなかった。いかがわしい行為は見逃す訳にはいかない。それと、あなたの朝陽殿ではないがな。」

「羨ましいですぅ〜。」

他の患者さんも騒がしくなってきたし・・・。

ふと尻尾の巻付きが弱くなった。
お姉さんの視線を追うと、そこには初老のおじいさんが、この接骨院の医院長で、ある意味、有名な方です。

「来たわね。セクハラおじいさん。」

「ほっほっ。今、現在進行系でセクハラしとる、あんたに言われたくないわい。」

有名というのも、患者さんにセクハラばかりしている先生なんです。
腕のいい先生なんですが・・・(汗)
まぁ、ここに来る患者さんはいい人ばかりで、何も言わないのが救いです

と、おじいさん・・・じゃなくて医院長が僕を見てウインクを一つ。
意図を汲み取った僕は、ラミアのお姉さんに会釈をしてその場を後にする。

「あぁ・・・せっかく朝陽くんとお近づきになれると思ったのに・・・。」

「それなら、ワシとお近づきに・・・。」

「おじいさんは遠慮しとくわ。」

「残念じゃのう・・・。せっかく若者の若さを吸おうと思っておったのに。」

「若さを吸われる!?」

遠くで会話が聞こえてくるあたり、問題は起こしてないみたいで一安心。

さて、次の患者さんは・・・。

「初めまして。今日はよろしくね♪」

サキュバスの方です。
とても豊かなお胸をお持ちで・・・ゲフンゲフン。

『今日はよろしくお願いします。』

メモ帳を見せてニコリと笑顔。
喋れなくても、意思疎通はできます。
それに、笑顔は人の緊張を解す効果があります。
なので、どんなことがあろうと笑顔は忘れない。

「それで早速なんだけど、最近、肩が凝ってて辛いの。」

それを聞いて、僕は早速、マッサージを始める。
胸が大きい人は、どうしても、重心が前に行きがちだから、それに耐えようと肩に力が無意識に入る。
結果、肩こりが起こりやすかったりする。

で、この肩こりの大変なところは、調子が悪くなる場所が増えることです。
この方も、例外ではないみたいで。

『最近、目が疲れたり、頭が痛くなったりしますか?』

「あぁ、そう言えば、肩こりがひどくなってきたと同時に、頭も痛くなってきたわね。」

肩こりは、頭への血行も悪くさせるので、結果、血が行き渡りにくくなり、頭が痛くなるんです。

施術を始めるために、手に集中を向けて、魔力を集めます。
僕の魔力は、相手に干渉する特徴があるので、どういう場所を優先的にマッサージすればいいか手に取るようにわかります。

魔力を溜めてから、それを患者さんの肩に置きます。
「・・・・(ピクン)」

初めての患者さんには、違和感がないように、魔力の浸透力を調整してマッサージを行います。

はじめはゆっくりと・・・。

「・・・いやん♥」

表面の緊張が解れてきたら、改めて強めにマッサージを・・・・。

「だ・・・ダメぇ・・・。気持ちよすぎぃ・・・♥」ビクンビクン

肩には複数のツボがありますので、そのツボを押しつつ、コリが解消できるように、魔力を浸透させます。
力は強めに。

「そ・・そんなところまでぇ・・・!激しいぃぃぃぃい♥」

最後に、一気に力を入れます。

「らめぇぇぇぇぇえ!!もうらめなのぉぉお!いk・・・・♥」コテン

サキュバスの患者さんが、力が抜けたようにベッドに突っ伏してしまいました。
でも、これで肩こりは大丈夫でしょう。
最後に、体の老廃物が流れやすいように、全身をマッサージをして終わりです。

「も・・・もう・・・ゆるひて・・・。」

何かつぶやきが聞こえますが、気にせず・・・。

・・・・・・。

さて、終わりました。

「す・・・すごい気持ちよかったぁぁぁ。」
満足いただけて何よりです。

「ほぇぇ・・・。朝陽くんのマッサージ、すごいね。」

「あんなの受けたら、放心状態になるのも頷けるわね。」

「あれで完膚無きまでいじめて欲しい・・・。」ビクンビクン

周りが、騒いでいますが、気にしないように、次の患者さんへ。
でも、副医院長の先生が、俺を引き止めました。

「朝陽くん、君、朝から働きずくめだろう?先に休憩してな。」

「・・・・・・(コクッ)」

「ただでさえ、最近は休みが取れてない状態なのに休憩まで取れないなんて、流石に申し訳ないよ。」

「・・・・・(フルフル)」

最近働きずくめで忙しいのは確かです
でも、楽しい忙しさといいますか、毎日が充実してて、まったく苦になりません。

「まぁ、あんたがそう言うなら大丈夫なんだろうけど、あまり無理はしないようにね。」

「・・・・・(コクッ)」

「さて、じゃあ、早く休憩にいってk・・・。」

カランカラン。

入口のドアが開く音。
そこには、魔物娘の患者さんは、大勢いました。

「・・・・・さっき言ったばかりで申し訳ないけど、もう少し手伝ってもらっていいかい?」

「・・・・・(コクッコクッ)」ニコリ

今日も本当に大忙しです。

追伸・・・接骨院で働いている独身男性に春が訪れたようです。
     彼女が出来たという意味でね♪
13/10/23 19:19更新 / 心結
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■作者メッセージ
ある魔物娘と朝陽くんの会話。

「そういえば、どうして朝陽くんは彼女作らないの?あれだけ有名になったら彼女の一人くらいホイホイチャーハンじゃない?」

『確かに、彼女を作ろうかな?と思ってた時期がありました。でも、多分彼女を作ってしまったら、お仕事せずに彼女のためにしかマッサージをしなくなりそうで・・・。』

「私、立候補します!」

「いや、あたいが!」

「ボクが彼女になってあげる!」

「・・・・・・(オロオロ)」

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