読切小説
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ほねっこ
死んだ肉体には魂は宿らない。本当にそうなのだろうか?そうであれば彼女とは出会えなかったであろう。しかし、その魂が元々生きていたときのもなのか、一度死んで魔物として起き上がった時にできたものなのかはわからない。そんなものは関係はない。ただ彼女は彼女として目の前にいる。それがなによりも私には大切なことだ。

私はしがない泥棒だ。泥棒といっても世に言う大泥棒のように秘密の財宝を危険を侵して手に入れることもなければ、不貞な悪徳商人の財産を盗み苦労人に分けるなんてこともしない。故人の棺桶をあけ貴重品を拝借しささやかな生活費を稼いでいる。
そんな私を罰当たりや卑怯者と思うかもしれないが世間に迷惑をかけているわけでわけではないので多目に見て欲しい。そもそも生きている人間と関わるなど面倒でかなわない。飲み屋で会った詐欺師にはそんなことで金を稼いでなにが面白いのかと言われたが大きなお世話である。仕事に面白みを求めているわけではないのだ。

私の仕事は基本的に夜に行われる。人付き合いの嫌いな私であるが仕事は別だ。裕福な家で死人が出ることを情報屋から買い。葬儀社や教会で埋められる日取りをきっちりと調べる。どんな外れた仕事でも準備というものは必要だ。さて、数ヶ月前にとある貴族の娘が亡くなった。今夜はそこに行くとしよう。

貴族の墓となれば亡くなって数週間はそれなりに警備がいき届いているが、何ヵ月もなれば話は別だ。人がいたところで形ばかりの管理人であろう。賄賂を幾らか渡せばそれでことは済む。たとえ教会の人間がいても賄賂で済んでしまうのだから信仰なんて粗末なものだ。

目当ての墓の前に着いた。“カタリーナ・セディアールここに眠る”
名前などどうでもいいのだが情報の人物と違う墓を開けても意味がない。私は手慣れた手つきで小さな結界を張り墓についている防除の呪文を剥がす。そしてなんの感慨もなく魔法で墓石ごと周囲の土ごと魔法で切り取り脇へと移す。これで顕になった棺桶の中にある金目物をもらいきれいに土と墓石を元に戻す。その後、防除の呪文を掛ければ元通り。この盗みが明るみに出ることはない。

さて今回の儲けはいかほどだろうか。防除の呪文を剥がし棺桶の中身の確認に移る。

‘ガツッ’

棺桶に手をつけようとしたときなにか音がした。気のせいかと思い再び棺桶に近づいた。

‘ガツン’

‘ガツン’

‘ガツン’

どうやらなにか起こっているらしい。ならば逃げるしかなかろう。状況がわからないからこそ手が打てない。そんなときは一刻も早く我が身の安全を優先するのがプロというものだ。

しかし、遅かったようだ。勢いよく棺桶の蓋ははずれて中からなにか出てきた。視認する間もなくこちらへとそれは飛びかかる。
だが、こちらも最低限の攻撃手段がないわけではない。不測の事態に備えておくのも仕事というものだ。
私は袖口から小瓶を飛びかかられる前に投げる。あらかじめかけていた魔法で小瓶は爆散し無数の針となり対象へと突き刺さる…はずだったのだがどういうわけかそのままなんの音沙汰もなく対象へ吸い込まれてしまった。

‘とーん’

そんな音が聞こえたかと思うとそれは私に飛びかかることなく目の前に着地した。

「…おなか…へった」
それは骸骨という風貌とはいささか違っていた。顔は年頃の少女といった年齢だろうか。ちょうどこの墓に眠る娘も18という若さで亡くなっている。状況から彼女で間違いないであろう。少女の顔は整っていて美人であるがその顔に表情はなく、骨のような白い割れた仮面が覆っている。きれいな茶褐色の髪を束ねるはドラゴンの爪を思わせる造形の骨。全身を見ると手足は完璧に白骨の骸骨だが所々の間接から青白い炎が灯っている。胴体は灰色の肌をしている。丸み帯びながらも華奢に絞まった体格を守るようにあばら骨や背骨を思わせる骨が肌を覆っている。

はてさてどうしたものだろう…攻撃の魔法が苦手である私はあらかじめ準備していたさっきの小瓶が実際に最終兵器だ。それが失敗に終わり逃げ切れないとなればもう策はない。
まぁ…法や教会で死罪になるより墓のなかの本人に殺されるのであれば泥棒としては気分がいいものだ。
そんなふうに覚悟を決めたところで骨の彼女は不意にしゃがみこんだ。骨の彼女は器用に私のズホンと下着を剥がして顕になった私のものを口にくわえた。

「は?」
思わず声を出してしまった。というか瞬間に蹴りを喰らわせていた。死を覚悟したにも関わらずなんとも予想だにしない流れである。さらにこの状況で私が暴力を行使するなど混乱の極みだ。
蹴られた骨の彼女はその場で‘バラバラ’と音をたてその場に崩れ落ちた…いや、頭だけが少し遠くでまだ軽快に回っている。徐々に速度が落ち回ることをやめた彼女と目が合った。相も変わらず無感動、無表情である。先ほどの私の行いに怒っている様子はないようだ。そう思いズボンを直しているとバラバラの彼女の体は元に戻り立ち上がり自分の頭部を取り装着する。しかし、そのまま頭部まで真っ直ぐに歩きそのまま頭部くっつけたのでいわば顔面の位置が真逆だ。

「おなか…すいた…」
そう言ってふたたびこちらに歩を進めようしているなだろう。しかし、目の前にいる私を目印に進めば進むほど距離が開いていく。当たり前だ。首の向きが逆なのであるから。

「???」
とうの本人は全く理解していないらしい。はじめて困惑という表情が彼女から垣間見ることができた。

「まぁ…いいか」
このままにしておいても危険は無さそうだ。そう思い私は棺桶の中身を拝借することにした。指輪にネックレス、ブレスレット…こんなものかな。貴族といえど世知辛い世の中だ。娘の貴重品すべて墓にいれることはしないだろう。

‘カシャンカシャン’
横で音がするので見てみると骨の彼女がいた。いまだに首は逆についたままだ。どうやら試行錯誤してやっとの思いでこちらに来たようだ。真逆についた顔の表情は半泣き状況である。さすがに可哀想だが元に戻すと襲われかねないのでそれは出来ない。半泣きになりながら彼女はなにか訴えているようだ。しばらく観察しているとなにかを指差していることに気づく…その方向は身体が逆なため明後日の方角を指している。おおむね思い出の品でもとってほしいのであろう。何個か目星をつけ順番に彼女の目の前に持ってくると何個目かで嬉々として彼女は頷いた。
ふむ…見たところ小さな箱ようだがなんだろうか?

「開いて…」
いままでのように感情のない声ではなかった。それは息苦しいほど情緒的で聞いた私の胸が締め付けられてしまうような…
そしてその声に促されるように箱を開いた。

……
開いた箱はオルゴールだった稚拙でだからこそ心に響く金属の反動が優しく結界の中を染めていく。
どこかで聞いたような懐かしい旋律。箱の中で回る人形は彼女をかたどったものだろう、棺桶の中の服と同じものを着ている。

「…くだらない」
そう言ったのは何故なのだろう。自分が酷く惨めに思えた。きっとこの骨の娘はわかっているのだろう。自分がもう既に死んでいることを。

かったるいな…
そう呟くも私の行動は早かった。貴重品をバックに詰め、骨の彼女に棺桶の中にある生前の服を庶民的な調子に再度魔法で再編し、予定通りに棺桶と墓を元に戻し結界を解除し拠点となっている宿へと戻った。
もちろん彼女の首は正面に戻り手にはあのオルゴールが握られていた。


正午、日も上がり仕事をやり終えた心地よい疲れのなかの目を覚ます。体を伸ばすと昨日保留した問題が目に入る。

なぜ連れてきてしまったのだろう…
けっきょく寝ようと思うも襲われそうになるので彼女は絶賛拘束中である。
骨の彼女、墓の名前を信じるならば名はカタリーナ・セディアール。

「おなか…すいた…」
昨日からこの言葉ばかりでまったく進展がない。なぜ?と問うも返答がないどころではなく会話にすらならない。
なんとかならないだろうか。ため息をつきながら昨日頂いてきたものを確認する。相場を頭に浮かべながらいくらか上乗せできないか思案する。一段落し昨日の仕事の消耗品を確認した。そういえば緊急用の攻撃を彼女には浴びせていた…しかし、吸収されてしまったのだったか…
可能性として魔力がエネルギー源なのかもしれない。そう思い簡単な治癒魔法を彼女に注いでみた。

「う、ーん。」
しばらく注ぐと表情に人間味が出てきた。そう思い安心しているとすーすーと控えめの寝息をたてていた。“まるで生きているように”

彼女が眠っている間にいくつかの店で品物の換金を済ませ、次の街に行くための最低限の準備する。

宿に帰るとまだ彼女は寝ているようだった。しかし、荷物を置くために背を向けると‘ガシャン’と音がした。振り向くと骨の彼女は不敵に仁王立ちしている。

「はじめまして、ですね」
通る少し高めの声と共に骨の指をビッと伸ばし私の眉間を指す。…実際に勢い余って少し刺さってしまっている。

「…はじめまして」
とりあえず私は両手を上げて抵抗の意思がないことを表す。しかし、さきほどとはうって変わってずいぶんと凛々しい顔付きしている。

「あなたは?」
視線で射るように質問を投げ掛けてくる。まだ指は眉間に刺さったままだ。

「私はしがない墓泥棒だ。名前は適当にポールとでも呼んでくれ」

「へー、墓荒らしなんだ」

「違う!荒らしではない、あくまで泥棒だ!」
それは最低限の誇りと言える。あんな分別をわきまえない輩と一緒にされるのは嫌だ。

「確かに…昨日の感じは盗賊って感じじゃなかったわね」

「昨日の記憶があるのか!?」

「…」
私が声を荒らげるととても嫌な…嫌悪感たっぷりの険しい顔をしている。

「わたしは死んだのよね?」

「…そうだ」

「そう…オルゴールは?」

「あ、あぁ持っている」

「聞かせて…」
私はポケットからオルゴールを出して蓋を開けた。

どこかで聞いたような懐かしい旋律。稚拙であるが魂に染みる金属音。

「いいわ…ありがとう。」
静かに目を閉じ聞いていた彼女はなにかを覚悟したようにそう言った。それと同時に私の眉間に刺さっていた指を抜く。

「わたしのことはキャロルと呼んで。」

「……いいのか?」

「ええ…名前など粗末なものでしょ?」

「…そうだな」

「ポール…」

「なにかな?」

「わたしを…その…」
彼女は急に視線を反らしてソワソワとしている。

その仕草が妙に魅力的で私は次の瞬間には唇を奪っていた。ずっと前からこうしたかった気がする…出会うずっと前から。

口づけを交わし名残惜しくも唇を放す。

「君は…」
言葉は彼女からの口づけで止められる。

「なにも言わないで…」
もう一度唇を重ね合わせる。さきほどより深く長く。
唇を放し彼女の額に自分の額をつけて顔を両手に抱き彼女を感じる。灰色味がかった肌が冷たく気持ちがいい。

彼女の肌を感じながら徐々に首もとへ、さらに手をとり剥き出しの骨を舐めていく。

「はん!」

彼女の間接を舐めると体が跳ねる。
剥き出しの骨の感覚は独特のものであるようだ。次は胴体に埋まるあばらを舐めてみた。

「やっ!だめぇ…そこは…」

構わずに丹念にあばらを舐め回す。

「はっ、うあん!やっや!ひん!」
どうやら胴体部分は他の箇所より感度いいようだ。あばらを丁寧に触りながら灰色の肌を舐めていく。

「はぁ…もう」
そう言った彼女の秘所部分を見ると淡い青白い炎は先ほどより勢いをまして揺れている。思いきってそちらに手を伸ばす。その炎は冷たい彼女の体に反し暖かい。炎の源泉に手を伸ばすと秘所を隠していた助骨は横に動き私の手を受け入れる。

‘ちゅっく’
粘質のある水音が部屋に響く。

「いやぁ、恥ずかしい…」
彼女は恥辱に体を反らして目を瞑る。

そんな途方もなく可愛らしい彼女にもう一度口づけをかわす。

「…いれるよ」
私がそう言うと目を合わせ彼女は無言で応えてくれた。

腰を合わせゆっくりと彼女のなかに侵食していく。

「はぁー、あぁ…」
艶のある吐息が私を溶かす。彼女のなかはとても暖かい。すべてが入ると冷たい肉壁が絡みついてくる。激しい温度差による快感と彼女の膣の動きにより理性はふっとんだ。私は気づくと腰を激しく打ちつけていた。

「…っ、やん!…すごい…はげしっ、んっ!」
いつしか腕を、足を絡ませ、お互いの唇を貪り激しく私たちは登り詰めていく。

「うっ、出るぞ…」

「ひゃん!…うん…一緒に…あん!」

「あぁ…」
そう言いさらに動きを速める。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!ふぁめ!くる!くるよっん!」

「ああ!いくぞっ…」

「はぁやっん!ひぃき!にゃめ!やっ!ひゃぁんんんんんんんんんんんんんんん!」




その次の日、私たちは次の街へと旅立った。買っておいた服を私は彼女にプレゼントした。明るいチェック柄の上下は骨の彼女によく似合う。
彼女は顔を隠す為に今はフードを被っている。その表情は見えないがフードの影から覗かせる紅い目は微笑んでいるように私は感じた。


12/01/02 01:11更新 / 包み紙

■作者メッセージ
なんだかなーって感じ。説明くさくて甘々ですがそれでも呼んでくださると嬉しいです。

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