連載小説
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業務日報
おはようございます!

タクシー会社 『渋谷交通』 社長兼インキュバスドライバーの、渋谷 将吾と申します!

ショゴスであり、愛する妻、フォーカリアと立ち上げたこの会社。

睡眠時間は不定期になるとはいえ、きっちり休息・食事と、妻の"燃料補給"の時間はとれている為に、以前より充実した毎日を送っております!

妻が基本的に設備を整えちゃったんで、最低限の減価償却分と生活費ぐらい稼げればOK!

そして妻に設備を維持して貰う為、妻の身体へ燃料補給し続けた結果...私、インキュバスになってしまいました!

インキュバス化した身体、凄いですね。

以前より、車両の運転に関する集中力が高まったように感じます。
これも妻の愛ゆえでございましょうか!

そんな私、ドライバー渋谷の、仕事風景の一部始終でございます!



***



【1、とあるサラリーマン御一行】

「いやー、いつもありがとうございます。渋谷さん。」

いやいや!お客様片には普段から懇意にしてもらってますからねー!

あー、こちら渋谷。いつものルートです。どうぞ。

『はい。ご主人様。特に混雑等は御座いません。』ザザッ

「安いし着くのが早いしなんで、僕も田中も助かってますよ。」

「あんまり遅くなりそうだと、上司が手配してくれるもんな。『愛する妻を待たせちゃいかん!』って。」

ほーう。それはそれは!良い上司さんではないですか!

「ちょっと前までは、キャバクラに誘ってくるようなヒトだったんですけどね」ガタガタ

「お、おい古谷...その話はよそうぜ...」ガタガタ

アッハハハ!お二人とも、奥さんには頭が上がらないようですねぇ。古谷さんはぬれおなご、田中さんは白蛇の奥様でしたっけ?

「いやほんとに!お仕置きが恐ろしすぎて!」

「俺も似たような事があったときに、嫉妬の炎(弱火)で死ぬかと思ったわ...!」

まぁまぁ。愛ゆえにって、やつですかね!

「そうですね〜。普段から尽くしてもらってますから。僕ももう妻がいないとやっていけないでしょうね。」

「俺もたまに締め落とされそうになるけど、そんな嫁が大好きになっちまったしなー。」

愛されるって、良いですよねー。
私も妻がいなければ、この仕事やってけないですから!アッハハハ!

「渋谷さんの奥さんも、魔物娘なんです?」

そうですよ。ショゴスっていう種族で。
世話焼きな、でもちょっとアホの子というかなんというか...しかしそれが可愛い!

「へぇ。ショゴスっていうと、安藤んとこのキキーモラの奥さんと似たような雰囲気なのかな?」

安藤...キキーモラ...あーあの!うちの2つ隣ですよ。

「そうなんですか!?あそこの奥さん、安藤がイタズラしすぎて、どえらいことになったそうで...」

ええ、ええ!逃げる旦那さんを乗せましたね。すぐ捕まってましたけど。本人曰く『今でもトラウマ』らしいですよ!

「僕も聞きましたよ。あんな可愛らしい奥さんでも、怒ると怖いんですね...。」

「古谷、また他の女に可愛いとか思ってたら、嫁さんに絞られるぞぉ?」

「や、やめてくれよ〜、流石に車内の会話まで聞こえないでしょ。それに一番好きなのは妻...だし...」ニュルリ

「......」

......古谷さん?

「...見覚えのある耳の形したスライムゼリーが、どこからともなく出てきた...」

「......古谷。」

「な、なんだい?」

「......ドンマイ。」

...あ、家の前で奥様が待ってますね。

「ヒッ...」ガタガタ

「古谷...中島課長に有給って伝えとこうか?」

「い、いや、まだ、そうと決まった訳じゃないし...その時は自分で言うよ...」

バタン

「......」

......奥様、笑顔でしたねぇ。

「......だね。でも街灯に照らされてるのに、目の光が消えてたね。」

......

「......」

......

「......有給、だろうなぁ。」

......でしょうねぇ。

『ご主人様。"アホの子"のワタクシから、後程お話が御座います。』ザザッ

......

「......ドンマイです」



〜この後滅茶苦茶燃料搾取された〜



***



【2.必死なチャラ男と夢見る少女】

「は、はは早く出してくれ!!」

お、おぅ、了解です!

「......」チラッチラッ

ど、どうかしたんですか?何かに追われてたり?

「......」ガタガタガタ

(なんか既視感が...あ、安藤さん時のだ)

いやー、前のお客さんは、妻に悪戯したら覚醒したヤバイ、とか言って逃げてましたねぇ...ま、メイドみたいなのに捕まってましたけど!アッハハハ!

「......」ガタガタチラチラ

それでなんですけどね、実はそのメイドが...って、うちの妻よりプルプルしてらっしゃる...

「...そ、そこ!そこで止めてくれ!!」

え?あ、はい。

「さすがにここまで来れば...!」

キキッ

「釣りは良い!」

え!?こんな多くて良いん...行っちゃったよ。



《帰り道》



いやぁ、こんなに貰っちゃって...大丈夫かな?

...!?

ね、寝間着の女の子が...ケモミミの女の子が四足で後ろから走ってくる!?

キキッ

ど、どうなさいました...?

「あの、もしかしてさっきまで、誰か乗せてませんでした?」

え?あ、あぁ、乗せてましたよ?

「スン...スン...オニイサンノニオイ...ウスイケド...コノクルマノキタホウガクハ...はい、ありがとうございます。」

?は、はーい。

バタン ペコリ ギュゥゥゥゥン...

すげぇもう見えねぇ。...ネズミっ子?



〜後のお隣さん"夫婦"がこの二人だと知るのは、もう少し先の話〜

......恋したドーマウスってあんなに速く走れるんだね...。



***



【3.不幸なタクシー強盗】

アッハハハ!こんな貧乏タクシー狙っても、なんも無いっすよ!!

「うっせー!金出せ金!」ギラリ

わお、ナイフですか!やめて下さいよー?車って高いんですから!

「てめーはてめーの心配をしやがれ!」

まぁまぁ金ならお渡ししますからー。

「舐めやがって!もっとあるだろ!」ザクッ



...おい。



「な、なんだよ...?」ビクッ

今、何した?

「て、てめーが舐めたことしやがるからシートにぃぃぃ!?」ギャリリリリリ

あーあ...折角うちの妻と一緒に選んだシートだったんだがなぁ?

「あがっ頭が...!ちょっ!?待...!?」ドルルン...ドルルン...

アッハハハ!

よぉし。運賃はまけてやらぁ...ちょっとドライブ付き合えよ...

「ひ、ひいぃぃぁぁあああ!!!」




「」ブクブクブク

いやー、崖寸前までドリフトしたぐらいで伸びるなんて!120km/hぐらいしか出てないのに!

...あ!いけね!無線繋がないと心配されてしまうなぁ。パチン

『ご主人様...』ザザッ

あいあい、もうすぐ帰るよー?

『ご主人様。あの、時速100km以上で現在地が動いたのですが。しかも、向かう先が崖...だったのですが。』ザッ

あー。(配車用にGPSついてんの忘れてた...)大丈夫。ごめんね心配かけて。

『いえ。ワタクシ、断じて焦りはしませんが。焦りはしませんでしたが。...お隣のドーマウスの奥様が何事!?と起きてしまったので、改めて謝罪しようかと思います。』ザザッ

(ドーマウス起こすほど焦らせてしまったのか...)うん、一緒に謝りに行くよ...ほんとごめん!すぐ帰るよ。

『御待ちしております。ところで...』ザッ

うん?

『何があったのか、ご説明下さいますね?』ザザザッ

アッハハ『ご説明下さいますね?』アッハイ



〜この後滅茶苦茶お説教された。ガチで〜



***



【番外.休日の渋谷夫妻】

いやー、今日はドライブ日和だね、カリア。

「ご主人様。確かにワタクシは、デートのプランはご主人様のご希望通りに、と申し上げましたが。」

あれ?ドライブデート、お気に召さなかった?

「滅相も御座いません。ご主人様とデート出来るのなら、どのような場所でも至福の時で御座います。...ただ。」

ただ?

「お仕事でも車の運転をなさっていて、お疲れなのではないかと。」

アッハハハ!いや、ありがとう、心配してくれて!

私はね、カリア。愛する人を助手席に乗せて、好きな車を運転するのが、昔からの夢だったんだよ。

それこそ今まさに!カリアは私の夢を叶えてくれてるんだよ。

これ以上贅沢な希望は無いかなぁ。

「......」

......カリア?なんかめっちゃプルプルしてそうな振動が伝わってくるんだけど。

「気のせいで御座います。ご主人様。」

なんか視界の端の横顔が、普段の深緑じゃなくて真っ赤になってる気がするんだけど。

「...ご主人様は、運転に集中なさってくださいまし。」

アッハハハ!了解!...可愛いなぁ。
19/03/05 15:31更新 / スコッチ
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■作者メッセージ
「それにしてもドライブデートとは...車内で交わるなど、誰かに見つかるかもしれませんよ?興奮しますが。」
「僕のトキメキを返せーい」

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