読切小説
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あなたを導く、希望の炎。
僕、三原 裕弥(みはら ゆうや)は用事で峠越えのルートをドライブ中。この峠を越えれば、目的地の街に着く。ところが、そこで力が抜けたのか急に睡魔に襲われた。ヘビーウェットで視界も悪く、ここで無理して事故っては洒落にならない。仕方ないので、偶々見つけた神社の駐車場に入って昼寝することにした。戦略的撤退だ。

思えばこの戦略的撤退が、僕の運命の分かれ道だったのかも知れない。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

目が覚めた。
時計を見ると、もう2時間経っていた。

じーっ。

「うわぁっ!!」
まったく、ぶったまげたなぁ。
目が覚めると、そこには銀髪の巫女さんがいた。しかもこっちをずーっと見つめている。
「よく眠れましたか?」
彼女が優しい笑顔で、そう話しかけてくる。
さっきまで降り続いた雨で気温が下がったお陰で、6月も後半だというのに涼しくよく眠れた。

「良かったら、お参りしていきません?」
まぁ、せっかくなので行ってみることにした。
その最中で彼女は手水屋の作法、真ん中を歩いてはいけない、等々いろいろと教えてくれた。

PM3:08
「良かったら、お茶していきません?」
「いやぁ、悪いよ。」
「遠慮なさらずに♪」
そう言うと僕は社務所に通された。
しばらくすると彼女は、二人分の緑茶とようかんを持ってきた。
「んぅ〜やっぱりおいしいですぅ〜♪」
どうやら、彼女はこのようかんがお気に入りのようだ。
「こんないいもの頂いちゃって、本当にいいの?」
「えぇ♪一人は寂しいですから。」

そこでお言葉に甘え、僕もようかんを口に入れた。
「お、これ結構いい奴じゃないの?」
「そこまでじゃないですけどね。」

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「あ、ようかんもお茶もお代わりありますよ。」
「別にそこまで」
「遠慮なさらずに♪」
お茶菓子のお陰か、この白神 永江(しらかみ ながえ)さんとの話も弾んでいった。
そしていつしか、話題は僕の仕事へと移っていった。

ところが・・・僕は就活に失敗してまだバイトの身分。しかも・・・
「あぁ・・・僕、クビになったんです。一つのことしかできないんで。」
「え! 申し訳ございません!! これはとんだ失礼を!!」
「いえ、僕が悪いんです。僕がダメな子だから・・・。」

心配そうな顔で僕を見つめる永江さん。

「ほんと、気にしなくていいですから。」
「・・・では、生活にお困りなんでしょうね。」
「実家にいるからそうでもないけど、やっぱり・・・ね。」
「でも裕弥さん、お仕事の話になってから何だか辛そうです。何かあったんじゃないんですか?」
「だからさ、自分の力b」
「いいえ、それとは違う、何かを感じます。嫌なことが、慢性的にあったんじゃないんですか!?」

永江さんは僕の肩に手を掛け、思いっ切り顔を近づけてきた。
その表情は柔らかはそのままに、しかししっかりとしていた。
「先生怒らないから、正直に言いなさい?」と言うセリフが似合いそうな表情で。

もう、隠し通すことは出来なかった。

「・・・実は・・・」

その職場では、サービス残業が常態化していた。帰りが1時間遅くなるのは当たり前。しかも1時間近く掛かる開閉店作業にも給料は支払われない事になっていた。
そして手当はほとんど無し。これが正社員ならまだしも、バイトでこの有様である。

人間関係の良さと楽しい職場の雰囲気で何とか続いてはいたものの、マルチタスクが苦手だったことに加えて福利厚生のふの字もないサビ残地獄に疲れ果てていたのは事実である。

「・・・許せません。」
「え?」
「労働者に還元するどころか搾取するなんて・・・その社長、許せません!! 本社の住所はどこですか!?」
「永江さん、ストップ、ストーップっ!!」

・・・何とか永江さんをなだめ、その場は落ち着きを取り戻した。

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「その話、私も経営者として許せません。」

そこに割って入ってくる刑部狸の惠子さん。永江さんとは顔なじみで、大型家具店を経営しているそうだ。

「でしょう、惠子さん?」
「ごめんね、話に割って入っちゃって。ところで裕弥くんだったっけ? 失礼なこと聞くけど、時給はいくらだったの?」
「700。」
「え!?最賃ギリギリじゃない!! ますます許せないわ!! そんな働き方してたら、遠からず潰れちゃうわよ?」
「でも実際みんなはそれに耐えて」
「裕弥さん。もう、働かないでください。」
「え!?」
「だってあまりにも働かせ方に問題がありますよ! 裕弥さんは、とっても真面目で優しい方です。本来ならそう言う方が報われるべきなのですが、現実はまったくもって真逆です。そう言う方を利用して、搾取する。そんな経営者があまりにも多すぎます!!」
「同意です。うちも先代はそう言うところがありました。スタッフのみんなは商品の良さに自信を持っていたから、もっと魅力を伝えたい。なのに先代は「冷やかしは帰せ」って言うの。当然みんなのモチベーションは下がるし、定着率も良くなかった。」
「そう言えば、僕もありますよ!! レ(禁則事項:某黒い国産車ディーラー)で「冷やかしは帰れ」的にあしらわれたこと!!」
「その時、どうでした?」
「何というか、敷居の高いアンタッチャブルな世界なんだなって感じました。そして、店に入りづらくなりました。当然親しみなんて持てるわけありません。」
「それと全く同じ事が、うちでも起こってた。だから私の代になった時、もっとスタッフの待遇を良くしようって決めたの。人も雇って、余裕を持たせて。お客さんとの雑談も、思う存分やりなさいって。そこで発生する人件費は、宣伝費として呑むって。」
「その頃からですよね、来店数が増えたのって。」
「えぇ。来客数が増えて、賑わいが出来て。スタッフにも笑顔が戻って、噂が噂を呼んで。スタッフにかかる費用は増えたけど、中心街のど真ん中だから人も来てくれると確信した。手軽に買える雑貨も増やして、思った通り純利益も増えてるから結果的には良かったの。」

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気が付くと、永江さんと惠子さんがひそひそ話をしていた。
(白神さん。ストレートに訊かせてもらうけど、ひょっとして裕弥くんに気があるの?)
(え、えぇ・・・まぁ・・・)
(じゃさ・・・)
(え!?そんな!!)
(そのくらいしないとああいう子は動かないわ。と言うより、真面目一辺倒で来てるから動き方がわからないのよ。)

話が終わり、永江さんが僕の元にやってくる。
「あの、裕弥さん!!」
「何ですか?」
「私と、一緒に暮らしませんか?」

ぶぶっ!!!

何てコト言ってるんだ、この人は!?
あまりに突飛なこと言うからお茶を鼻から噴き出しちまったじゃねーか!!

「でも裕弥くんは、白神さんの夫になった方がいいわ。」
「そうですよ!! 白蛇のそばにいると、一生お金に苦労しないで過ごせるんですよ。」
「いいですって!!いくら何でも」
「悪いけど、うちでは雇ってあげられない。だって、白神さんが欲しがってるから。」
「はいっ♪もう悪徳企業になんて裕弥さんを渡しません♪あ、惠子さんのところは違いますよ。」

・・・

途端、永江さんの表情が変わった。
それは何か楽しみを目の前にしている子供のような表情。
そして目は、それを飛び越してハンターのそれであった。

永江さんの手に、青い火が灯った。
その日はだんだん大きくなり、ついにはサッカーボール大にまで膨れ上がった。

「私の想い、裕弥さんに受け取って貰います!!」

まずい!!確かあの炎は・・・!!
とっさに逃げようと思ったが、惠子さんに後ろから取り押さえられてしまい・・・
「だめよ、裕弥くん。もう、白神さんに甘えちゃいなさい。」
もう、逃げられなかった。

そう言うと、その青い炎を僕の胸に押し当てた。
そしてその腕をそのまま首に回すと、ぎゅっと抱きしめられた。
「もう、苦しまなくていいんです。耐えなくていいんです。
私と一緒に、悠々自適な生活を送りましょう!!」

さらにホールドが強くなり、僕の顔はその胸の谷間に埋められた。
もう一方の永江さんの手が、僕の後頭部をなでた。
「こんな私でよろしければ、思う存分甘えてください。」
永江さんは、ここまでの短時間で僕の性格を熟知していた。

そして、僕の心の中の何かは、滅びの言葉を言ったあとの天空の城(何のことかはご想像にお任せしよう)の如く崩壊していった。
しばらくすると、目の前の全てが歪んで見えた。頬に生暖かい水が伝わって、目が涙でいっぱいになっていることに気付くまでには少し時間が掛かった。
「ここでは、感情を抑える必要はありませんよ。」
僕は、泣き虫の子供が母親に抱かれて泣くかの如く永江さんの胸元で泣きじゃくった。
「大丈夫ですよ。思う存分、泣いてください。ここなら、誰にも聞こえません。もう、こんな苦しみとは今日でお別れですから。」
「永江ざん、なぎゃえじゃん・・・」
「んー、よしよし。」

僕はそのまま泣き疲れて、気が付けば眠ってしまった。
永江さんの柔らかさが、凄く気持ちよかった・・・。

「うん、裕弥くんも完全に『堕ちた』わね。それじゃ、仲良くね。」

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0:00AM
気が付くと、もうこんな時間だ。
「裕弥さん。今日は泊まっていってください。」
「まぁ、最初っからどこかで車中泊するつもりだったからなぁ。」

そして、広い和室に通された。
そこには布団が敷かれていた・・・一組だけ。

「ここで、しばらくお待ち下さい。」

20分後。
永江さんが部屋に戻ってきた。
上半身は昼と同じ、美しい白髪のお姉さん。
だが、下半身は・・・蛇になっていた。
面食らってはいるが、白蛇なのだから当然か・・・と納得した。

そして、その服も・・・
「しっかし、よく見るとなかなか刺激的な格好ですよね。」
「ふふ。私のお○んこ、見たいんですか?」
「え!?」
「裕弥さんになら、見せてあげます。」
「違いますって・・・永江さん、人の話聞いてます!?」

「ふふ、裕弥さん。私が、私だけが、このお○んこだけが、裕弥さんを気持ちよくできるんです。他の雌などに裕弥さんを渡すなど、あり得ません。他の雌になど目が行かなくなるくらい、たっぷり愛し合いましょうね。ここにいれば、生活苦なんてあり得ないんですから。」

不満は聞くし要求には応えるけど、絶対に逃がさない。
優しい眼差しの中に見える、永江さんの本気。
だが、とんでもない世界に足を踏み入れてしまったと気付くには、もう遅すぎた。

「裕弥さん♪」
永江さんが一気に飛びかかり、僕は一瞬で押し倒された。
「私、あのときに決めました。裕弥さんを貰います。」
「え、えぇぇぇぇーーーーっ!!??」

あまりに信じられない言葉に、思わず声を張り上げた。
それは例えるなら、どこの解体屋にでもあるいいとこ2万のボロアルトに200万出すようなモノだ。

「裕弥さんは、自分の取り扱い方を知らないだけです。どんないい素材でも、使い方を誤ればその力を発揮できません。例えば、カーボンで実用的なお皿なんか作りませんよね。要求性能に対してコストが掛かりすぎます。」
「カーボンはクルマの軽量化に効く素材だし、カッコいい。だけど僕はどこに行っても」
「いいえ、これまでに「適所」に出会えてなかっただけですよ。生活は保証しますから・・・」

「私の、一生の伴侶になって下さいね。」
すると、永江さんは反論する暇も与えずに唇を付けてきた。
大胆に、激しく。でも丁寧に、余すところなく僕の口の中を犯す。
彼女の吐息と匂いに、僕もクラクラしてきた。
気が付くと、僕も彼女と舌を絡ませあっていた。

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部屋に流れる、ゆったりとした空気。
それに反していきり立つ僕のモノ。

「三原 裕弥さん。私、白神 永江はあなたの一生を保証することを、ここに誓います。そしてこの身を、あなたに捧げます。ですから、私にその身を捧げ、一生を共にすることを誓って頂けますか?」

「ごめん。正直、その要求はヘビーすぎる。」
「はぁ・・・そうですか。仕方ありませんね・・・」

ぽっ。
またもや彼女の手に、火が灯った。
しかもそれは明らかに色が濃い。
「同意して頂けないのなら、強引にでも裕弥さんを貰います!!」
「え・・・!?」
「この炎に込められた魔力は、昼間とは比べものにならない濃さです。一瞬で、私の身体を欲して犯し出すことでしょう。そして、私以外のメスと交尾することなど考えられなくなるでしょう。」
「待て!!いくら何でも極端すぎるぞそれは!!」

僕がそう言うと、永江さんはこう言った。

「これは裕弥さんの為なんです。私の腕の中で、ずっと笑っていて欲しいんです。それが叶うなら、私のヒモになろうとも構いません。」
「永江さん・・・」

そう言うと、彼女は僕の胸元に手を置いた。

・・・ん? 胸元に手を置いた!?

・・・

しまった!! 炎を送り込まれた!!!!!

途端、体が熱くなる。

目の前の美しい顔に。
さらさらのロングな銀髪に。
大きな胸に。
そして・・・股間に。

永江さんを犯したくてたまらない。
だけど、最後の一線を越えるわけには
「裕弥さん。私を、犯してください。あなたのモノにしてください。」
!!!
「・・・そして、私のモノになって下さい。」

・・・僕が、永江さんのモノになる。
それは一体どういう事を意味するのだろうか。
僕は一体どうなってしまうのか。

「別に、これまで通りの生活を送って頂いて構いません。最後に私の元に戻って頂けるのならば、多少の『火遊び』で嫉妬などいたしません。ですから・・・」

・・・

「ハ・メ・て♪」

「永江さんっ!!」
いくら堅物な僕でも、ここまで露骨にやられては耐えられなかった。
激しく怒張したモノを、永江さんの中に突き入れる。
ぬるぬるの中が、とっても気持ちいい。
その時だった。

ぶちゅん。

何かを突き破る感触があった。
これって、まさか・・・!?

永江さんの顔を見ていると、笑顔と苦痛が混ざった表情をしていた。
「もしかして永江さん、初めてを僕にくれたの!?」
「はい、初めては私が養うことを覚悟した相手にと、決めていましたから・・・」
「どうして僕なんk」

そう言おうとすると、永江さんは人差し指を僕の口に当ててきた。

「私の求めるものは腕力でも、財力でもありません。むしろ、その逆♪ なが姉ちゃん、なんて甘えられたら濡れちゃいます♪」
「はぁぁ!?」
「あぁ、もう可愛いなぁ。ゆーくんのこと、ずーっと護ってあげたいよぉ♪」

どうやら、本当の永江さんはベタ甘お姉ちゃんタイプだったようだ。
そして、一気にスイッチが入ってしまったようだ。

「ねぇ、ゆーくん。もう痛くないから、好きにして♪」
永江さん、それ反則です。
そんなこと言ったら、腰を振らずにはいられないじゃないですか!!

「あん♪ゆーくん、やっと本気になってくれたんだ♪」
「なが姉ちゃん見てたら、僕も火がついちゃった。」

ん?・・・『なが姉ちゃん』!?
僕も何でそんな呼び方をしたんだ!?
そんな呼び方をしたら濡れるって言ってたし・・・しかも魔物娘相手だぞ!?
そんなモノ、火に油を注ぐようなモノだ!!
しかもその油は灯油や食用油なんかじゃなくて・・・ガソリンだ!!!

「ねぇ。お姉ちゃん、ゆーくんのイくところ見てみたいの。お姉ちゃんのことをオナホだと思ってもいいから、ガンガン犯して中出しして♪」
その言葉を聞くやいなや、僕はゆっくりと腰を振り始めた。
そして徐々にスピードを速めていく。
「なが姉ちゃんのおま○こ、すっごくぬるぬるで絡みついて気持ちいいよ。本当に初めてなのかと思っちゃうくらい。」
「ほんと? お姉ちゃんのま○こ気持ちいい? ゆーくんのお○んぽもすっごく気持ちいいよ♪もっと激しくして♪」
「ダメだ、これ以上激しくしたらすぐに」
「我慢しちゃだーめ♪ ゆーくんはずーっとお姉ちゃんに甘えてればいーの♪」
「わかったよ、なが姉ちゃん!!」
そして、僕は自らを射精に導くべく、ラストスパートを掛けた。

「あぁっ、もう出るっ! なが姉ちゃんに中出ししちゃうよっ!!」
「ゆーくん、来てっ!!お姉ちゃんのま○こに中出ししてぇぇぇっ!!」
「ッ―――――ー!!!」

ぼびゅっ、どびゅっ・・・

「あぁんっ、ゆーくんのせーえきいっぱぁい・・・。」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「どう・・・だったかな。」
「うん、凄く気持ちよかった。」
「良かったわぁ。でも、初めての相手が・・・魔物娘でごめんね。」
「うぅん。どうせ彼女なんて出来ないと思ってたから。」
「人間の姿でも出来るから、こんどからそっちでさせてあげる!! ゆーくんもそっちの方がいいでしょ!?」
「確かにそうだけど、たまにはこの姿のまましようよ。白蛇としてのなが姉ちゃんを否定したくないからさ。」

その一言を聞いて、永江さんは急に泣き出した。

「ゆーくぅぅぅん!!! こんな私を受け入れてくれるなんて、やっぱりゆーくんは優しいよぉぉぉ!! 私、ゆーくんの理想の女になれるよう頑張るからね!!」

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翌朝。
「うわぁぁ、ヤべぇぇっ!!寝過ごしたぁぁぁっ!!!」
僕は元来、物事を字義通り受け取る。しかも空気は全く読めない。
おまけに同時に二つのことができない。
実はこの症状、何とか言う障害の疑いがあるらしい。
その為特別に、専門の施設で講習を受けている。

今日はその講習に行く日なのだが、寝過ごした上にクルマの鍵が見あたらない。
「あれ!?あれ!!??」
僕は完全にパニックに陥っていた。
「ゆーくん。」
「あーもうどこいったんだー!!??」
永江さんの声も聞こえていない。
「捜し物はこれですか?」

永江さんの手には、その鍵が握られていた。

「そう、それそれ!!返してくださいよぉ!」
「ダメです!」
「どうして!!」
「そんな状態で運転させるわけにはいきません!!今日は休むと連絡を入れましたので、安心してください。」
「あのさぁ・・・永江さんは僕の将来を潰す気?」
「ふーん。」
「ちょっと!!答えてくださいよ!!」
「せっかく近くなったのにー。」

・・・多分、原因はアレだな。

「なが姉ちゃんは、僕を今後どうしたいわけ?」
「私と結婚して、ここに住んで欲しいですー。」
「僕が結婚ですって!?」
「昨日言いましたよね、もう働かないでって。それに・・・」

『遺産処理の任せ方』
『遺言書の書き方』
『悪用厳禁!世界の自殺』
何とも物騒なタイトルの本が彼女の手に握られていた。
それらは全て、僕のクルマの中にあったモノだ。

「いや、その本は興味本位で」
「こんなモノに興味を持つこと自体、正常とは思えません!! 自分では気付いてないでしょうが、ゆーくんは間違いなく疲れています!!」
「そんな大袈裟な」
「それに、寝言・・・聞いちゃいました。『生まれてきてゴメン』とか、『自分なんかいなければみんな幸せだったのに』とか『自分なんてジャンク品』とか・・・正直、心配です。」

・・・

僕は、うなだれることしかできなかった。

すると、永江さんが僕の頭を撫でた。
「ですから、ここでゆっくり休んでください。どうせ、ゆーくんが働く必要はないのですから。」

「いいですか、黙って聞いてください。」

「昨日も言いましたが、優しさと真面目さがゆーくんの魅力です。しかし、そのような方がそこにつけ込まれ、悩み、苦しみ、時に発狂し、そして最悪は自らの命を絶つ。そのような光景を、私は何度も見てきました。だから、私はそのような方を見つけたら積極的に話しかけ、そして大切にしてくれそうな方との仲を取り持ってきました。」
「やっぱり、なが姉ちゃんは優しいね。」
「だけど、ゆーくんにはただの強さでは足りなかった。ただ弱点を補強するだけでは足りなかった。それこそ、丸ごと護る必要があった。」
「それって結局僕がダメって事なんじゃ」
「防水仕様の電気モノってあるわよね。アレだって、電気回路を密閉して防水を実現してる訳でしょ。実は世界って、そう言うモノよ。」
「でもやっぱりそれって一人じゃ何も出来ないって事なんじゃ」
「・・・私は、それでもいいと思う。私だって全知全能の神じゃないです。何でも自分一人で出来なくちゃいけないなんて、思わないことです。」
「しかし」
「それに、白蛇の夫になるのは社会的にとても大切なことなんです。そして、それは誰にでもなれるわけではありません。誰にでもできる仕事は他の人に回してあげてください。そしてゆーくんは、ここでゆーくんにしかできない仕事をしてください。」

そして、がばっと抱きしめられ、下半身もしっかり巻き付かれた。

「ゆーくん。ずっと、一緒にいてくださいね・・・。」

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2ヶ月後。

ハンダが、よじった銅線に流れていく。
今度このお社で祭りがあるのだが、提灯の配線にダメージが見つかり数個足りなくなったので買い換えようと永江さんが言っていた。しかしこんなのはすぐ直ると、はんだごてを取り出して直しているのだ。
実は納期の面でもかなりタイトだったので、直ってほっとしているようだ。

「ところで、なが姉ちゃん。ここに来てしまったって事は、神色としての勉強」
「要りませんよ。神職としてここにいてもらっている訳ではありませんから。それに・・・」
「あぁ、キミが噂の裕弥くんか。まったく、白蛇様・・・じゃなかった、永江くんに娶られるなんて羨ましいにも程があるぞ、うりうり。」
話に割り入って、フランクに話しかけてきたこのオッサン。この人が宮司の宮原 栄二さんだ。ちなみに栄二さんがわざわざ「白蛇様」という言葉を取り消したのは、永江さんがそれを嫌がっているからなのだとか。
「神主も神様もフランクだなんて、どんなお社なんだよ」
僕が笑いながら突っ込んだ。

僕は結局、押し切られて施設通いをやめた。
本当にこれで良かったのか、正直自分には判断ができない。
だが、一つだけ言えることがある。

僕は結局、永江さんの甘さに完全に溶かされていると言うことだ。
そして、自分が手持ちぶさたの時は・・・永江さんにべったりだ。
(いや、むしろ永江さんが僕にべったりと言うべきか!?)
「上辺だけのお勉強の為にゆーくんと離ればなれになる方が、よっぽど苦痛です。そんなことをする暇があったら、私をもっと・・・愛してください。私に、愛されてください。」

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あの夜の3日後、いきなり婚姻届を渡された。
しかも親は説得済みだそうだ。
確か母は蛇が大嫌いなはずなのだが・・・

・・・

「私は、お二人とも仲良くありたいと思っています!! ですのでお母様の前では決して蛇の姿はお見せしません!! そして何より、白蛇の名にかけて裕弥くんを必ず幸せにします!!ご両親にも、経済的な心配はさせません!! どうか、裕弥くんを私に下さい!!」

・・・神様である永江さんが、両親に思いっきり頭を下げた。

「・・・しかし、裕弥は」
「裕弥くんは急に体調を崩して、うちで休んでいます。おそらく、将来に対する悲観が重荷になっていたのでしょう。」
「全く・・・あいつはいつもそうなんだ。情けない奴だ。世の中を生きていけない。」

ここで、永江さんはキレたらしい。

「何なんですか!! いくら何でも言い過ぎです!! 大体、この世の中が異常なんです!!」
「だが現実問題として」
「あんな優しい性格が潰れてしまうのなら、裕弥くんを働きには出しません!! それでも大丈夫な体制は、もう築いています!! そんなに憎いのであれば彼の一切をこの家から引き払って、”白神 裕弥”にさせましょうか!? 私はそれでも一向に構わないんですよ!?」

「・・・こりゃ参った!! 永江さん、合格だ!!」

「え?」

「・・・あなたが本気であり、裕弥を任せられる方だとわかりました。是非本人の了承を取り付けて、結婚してやってください。」
「私が蛇が苦手だって、裕弥から聞いたのね。でも裕弥が幸せになれるなら、白蛇と結婚してもいいと思っています。それに私も今の姿(※完全に人間)なら平気ですし。」
「ありがとうございます!!必ず、必ず幸せにしてみせます!!」
「裕弥にも、伝えておいてくれ。必ず結婚しろと。そして無理に帰ってくる必要もないと。」

・・・

そしてこれが、母から渡された手紙だ。

「裕弥へ。

今日、永江さんがうちに来て結婚の許可を願い出ました。結論から言うと、両親の答えは「推奨」です。裕弥が幸せになることが、一番の望みです。彼女の言動からは裕弥を本気で大事にすると言う意志が、すぐにわかりました。それにあなたは優しすぎる上にどこか危なっかしいので、永江さんのようなしっかりした女性が必要なはずです。

確かに蛇は苦手だけど、気にしないで大丈夫。
もし裕弥にその気が少しでもあるなら、思い切って永江さんと結婚しなさい。

母より」

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水曜日の昼下がり。
ご神木の周りでは子供達が走り回っている。
近所のご老人は日陰に作られたベンチで世間話の真っ最中。
駐車場ではあの日の僕のように、営業周りのサラリーマンが昼寝休憩。
時には、コスプレ写真を撮り逃げする奴までいる始末。

だけど、うちではその全てを受け入れるようにしている。それには、栄二さんの方針がある。

「俺たちは、ここをお堅い場所にはしたくないんだよ。ここに住むみんなに、交流の場を提供できたらと思っている。」

近くの田圃を見てみると、今成長真っ盛りの稲が青々としている。
実は最近まで、あんまり元気がなかったらしい。
このあたりのみんなは「白蛇様の奇跡だ」と口々に言っている。

「なが姉ちゃん、本当に僕がここにいる意味ってあるのかなぁ。」
「少なくとも、私にはあるわよ。昼は栄二さんがいてくれるけど、夜は一人っきり。私は、一人になるのが嫌なんです。」
「それに偶然かどうかはわからんが、裕弥くんが来てからこのあたりでいいことが立て続けに起こっているのは事実だからなぁ。それに永江くんが幸せなら、もうそれだけで意味はあると思うぞ。」

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その晩。
今夜のなが姉ちゃんは、巫女装束に身を包んでいた。
「ゆーくん、巫女さんを犯してみたいと思ってたでしょー♪」
「な、何でそんな!?」
「他の子はマズいけど、私ならいくらでも犯していいよ?」

「なが姉ちゃぁぁぁん♪♪♪」
「ゆーくん♪私もしたくてしたくて褌ぬれぬれだよ♪」
ちょw何か凄くフェチ心くすぐられるんですけどwww

今日は人の姿でさせてくれることになっているので、まずは正常位で1発。
「なが姉ちゃん、四つんばいになって。」
そして2回目はバックで犯すことにした。
しっかし、どうしてバックというのは征服している感じがするのだろうか。
「あっ、あんっ。ゆーくん、さっきより激しいよぉ。お姉ちゃん、気持ちよくってどうにかしちゃいそう♪」
相変わらずなが姉ちゃんの声はエロい。その声だけで簡単に反応させられてしまう。
おまけにする前には例の炎を入れて貰っているので、余計に興奮するのだ。
「あふぅんっ!!!」
「あれ? なが姉ちゃん、イっちゃった?」
「うん・・・イっちゃった。ゆーくんに初めてイカせられちゃった。だぁいすきな男にイカされるのって、すっごく気持ちいいんだね。」
「僕も、イってくれて嬉しいよ。今まではイかせてもらってばかりだったからね。だけど・・・」

ずちゅっ。

「ひゃんっ!?」
「僕はまだイってないから、イカせてね。」
「ひゃんっ! ゆーくん!! だめっ!! 今イったばかりだからぁっ!!」
「ごめんっ、なが姉ちゃんっ!! 僕ももう少しでイけそうだからっ!!」

ずちゅっ、ぬちゅっ・・・

「そろそろだっ! 中と外、どっちがいい?」
「中、なかぁぁぁっ!!」
「じゃ、イくからねっ!!」
「私も、私もよぉーーーっ!!」

・・・

「まさか、ゆーくんに2回もイカされるなんてね。」
「綺麗で優しい巫女姉さんをバックで犯せたから、僕もすっごく興奮した。」
「そう言ってくれると嬉しいわ。それとゆーくん、もしリクエストがあったら言ってね。可能ならどんなコスチュームででも、どんなプレイででもさせてあげる。」

「ゆーくん、これからももっと、もーっといっぱいHしましょうね♪」
「なが姉ちゃん♪」
13/09/07 16:38更新 / ぜろトラ!

■作者メッセージ
何か、いつにも増してダダ甘お姉ちゃんになってしまいました。
白蛇さんは嫉妬深くてファイヤーボール投げつけちゃうそうですが、それ以前に彼女の甘さで溶けちゃいそうですね。

ちなみに、またもや過去作の狸が登場しちゃってます。他のキャラも上手く使えないかなぁ(ぇ

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33