連載小説
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シルクルート2「…守ってあげる」
家に帰ってきてからも、ねぇちゃんの様子はおかしかった


やたら俺に近いというか、ひっついているというか…俺の側から離れてくれない


俺が理由を聞いても


「…気にしないで」


と一点張りだ


無表情だし何を考えているのかわからないのだ


「ねぇちゃん、そろそろ夕飯作らないと」


「…ん」


ちゃんと家事をやる辺り、問題は無いんだけどなぁ


「…たくま、危ないから気をつけて」


「いやただ味噌汁作るだけやから…熱っ」


うっかり鍋から出た熱い蒸気に触れてしまう、少しだけ熱かった


「…たくま!?」


「あ、ちょっと触れただけやから大丈夫やで」


「…だめ、見して」


ねぇちゃんに問答無用に手を掴まれる、本当に一瞬だったから何もないんだけど


「…あむっ」


「んぉっ!?」


急に指を咥えられた、おかげで変な声を上げてしまった


「ね、ねぇちゃん何してんや!」


「…消毒」


「怪我したわけやないんやって!」


舌のぬめりとした感触が指に絡みついて、何というか変な気持ちになる


「…じゅる、れろ…ぁ…ん」


「ね、ねぇちゃん…!」


「…ちゅ、んっ…ちゅぅぅぅ…」


「ぐっ…お…!?」


やばっ、これ…指吸われて…


「…ちゅぷっ…もう、平気?」


「へ、平気…やから、離して…!」


「…ん」


ようやく指が解放された、あのままだとヤバかっただろう


「…たくま、休んでていい」


「え、いやまだ料理が…」


「…危ないから」


台所から追い出されてしまった、そんなに危なかったのだろうか


「なんじゃたー坊、シルクの手伝いしていたのではないのか?」


「あ、姉さま…いや、台所から追い出されてもうてな」


「シルクが…何かしたのか?」


「いや、ちょっと熱い蒸気に触れただけで…俺は何もしてないと思うんやけど。なんか危ないからって…」


いや、もしかしたら別のところで何かしてしまったのか?


「シルクは優しい子だからな、無理に追い出したりはしないはずだが…」


「なんや、そもそも今日は様子がおかしかったしなぁ」


「そうなのか?」


「今日、ねぇちゃんと出かけたんやけど…」


ひったくりの件を話す、するとシャクヤ姉さまが納得したようにうんうんと頷いた


「なるほどな、シルクのやつ…それで…」


「何か知ってるんか姉さま?」


「たー坊、お前は昔にシルクと商店街に行った時のことを覚えているか?」


「え、まぁ…うっすらと」


俺が迷子になった時のやつ、だよな…あんまり覚えてないんだけど


「それが原因じゃな」


「原因って…あんまり覚えてないんやけど」


「確かにまだたー坊が小さかった頃だからな、覚えていないのは無理ないか…後でワシからシルクに言っておくからたー坊は気にせず家事に励めよ」


「うーん…そうする」


昔か…何があったんだっけ?


細かくは覚えてないんだよなぁ…でも、原因はそこにあるらしいし


「とりあえず、ねぇちゃんに料理は任せてみんなを呼んでくるかな」





「…たくま」


台所で私はさっさと料理を作ってしまう、あまり長い時間たくまから離れるわけにはいかない


「…」


正直今日は浮かれ過ぎていた、たくまと二人きりでのお出かけだったから…だからたくまを脅威に晒してしまった


私がちゃんとよく考えて行動していれば、たくまの方にひったくり犯が向かうこともなかった


間一髪で抑えつけられたけど、あと少し遅かったらたくまが突き飛ばされたり、殴られたり…


ううん、下手をしたらたくまにもっと大変なことをされていたのかもしれない


さっきだって、料理を手伝おうとしてくれたから…怪我をさせてしまった


台所に入れなければたくまが誤って怪我をすることもない、そう…たくまは私が守るの


「…ちゃんと、守るから」


いつだって脅威は目を離した隙にやってくる


これからはずっと側で見守っててあげないと、あらゆる脅威から守ってあげなきゃいけない


「…もう二度と、あんな思いはさせない!」


10年前に、たくまと私は2人でおつかいを頼まれて商店街へ遊びに行った


たくまに頼れるお姉ちゃんを演じたくて、弟にいいところを見せたくて、我先にと商店街を進んでしまった私は後ろのたくまが逸れているのに気がつかなかった


お使いを終わらせて、お姉ちゃんは凄いんだよって後ろを見ると、後ろについてきているはずの弟はいなかった


我ながら馬鹿だと、なんで気付かなかったのかと思う


弟にいいところを見せたいという姉心で、まだ小さな弟を危険に晒してしまった


誰かに連れ去られたらどうしよう…危険な場所に行ってはいないか?など嫌な考えが頭を駆け巡る


幸い、たくまはすぐに見つかった


たくまは私から逸れた場所から移動せずに、じっと待っていてくれていた


私は駆け寄ってたくまを抱きしめた、もう何も考えられなかった


マンティスは感情をあまり出さない魔物だというが、この時の私は顔を歪めてずっとひたすらに謝っていた


ごめんね…先に行ってごめんね、寂しい思いをさせてごめんね…って


でも、そうしたらたくまは


「大丈夫だよ、ねぇちゃん」


って笑いかけてくれたの


「寂しかったけど、ねぇちゃんは絶対に戻ってくるって思ってたから…僕ここで待ってたんだ。迎えに来てくれてありがとう、ねぇちゃん」


そういって笑いかけてくれたたくまを見ていたら、私は情けなくて、申し訳なくて…


姉として、絶対に見せないと決めていた泣き顔を…たくまに晒した


幼い子供みたいに全部垂れ流して泣いて、足に力が入らなくて座り込んで、ただ謝り続けた





そこで、今の私の大好きなたくまが


その時、一番欲しかったたくまが現れたの


「僕の大好きなお姉ちゃんは、シルクねぇちゃんは…誰よりも優しくて…そしていつも僕を守ってくれるお姉ちゃんなんだよ」


だから、泣かないでって


私の中の世界が一気に変わった


もう、この上なくたくまが愛おしくて…もうこの場で押し倒して交わりたいほどだったの



私がたくまに対して、頼れるお姉ちゃんじゃなくて…女になった瞬間だった


だから私は決めた


もう絶対にたくまを1人にはさせない


誰一人としてたくまを傷つけさせない


私がたくまを守るって、心に誓った


程なくして、たくまが家から離れてしまって10年も経ったけどそれは今でも変わらない


ううん、10年も離れていたからさらにその気持ちは強くなった


たくまは見違えるほど大きくなって、逞しくなったけど…それでも私はたくまのお姉ちゃんなんだから


たくまが、一人の男性として大好きだから


「…今度は、ちゃんと守るからね」


「シルク、少しいいか?」


気がつくと姉さんがいた、少し考え過ぎていたみたいだ


「…姉さん、何?」


「うむ…たー坊が台所から追い出されたと言っていてな」


「…もしかして、たくま…怒ってた?」


やっぱり無理に台所を追い出すのはダメだった…でも台所は危険だから


「いや、怒ってはいなかったが…たー坊は自分が何かしたんじゃないかと気にしていてな」


「…たくまは悪くないの、でも危ないから…」


「たー坊を危険から守ろうという気持ちは分かるが、それはあくまで個人の邪魔をしない範囲での話じゃろ?もうたー坊は守られるような歳じゃあるまいし、あまりアレコレとやっていてはたー坊の為にもならんぞ」


「…でも」


たくまを、守らなきゃ…


「シルク、せめてたー坊に話したらどうだ?あのままだとお前、たー坊の方がお前から離れてしまうぞ」


たくまが、いなくなる?


「…っ!や、やだ…!」


「だったらふたりでしっかりと話し合え、気持ちを伝えろ。それで多分丸く収まるぞ」


「…わ、わかったの」


(やれやれ、たー坊も大変だな…まぁワシじゃ解決するのは無理な問題だし、頑張ってもらうしかないんじゃが…)
15/04/02 04:55更新 / ミドリマメ
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■作者メッセージ
クールで優しいけど過保護なお姉ちゃんもいいと思うんですよ、その点でマンティスは適役だと思ったのですが…うーんどうなんだろうか


色々他の作者様のSSを見ていたらマンティスは負った傷を舐めてくれるというシチュエーションがあるそうで、ならシルクねぇちゃんもしてくれるんじゃないかな?と思いました。


それにしてもシルクねぇちゃんはマンティスなのによく喋る、しかしあまり口数を減らしてしまうと話を進め辛くなってしまうし…難しいなぁ


挿絵が意外と高評価だったのでこの話にも追加してみました、いかがでしょうか?

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