連載小説
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三匹の狐
翌日の早朝。

ガラガラッ
「帰ったぞ〜。」
家の扉をあける。二日ぶりの家の匂いが懐かしく感じられる。
・・・・・・なんか変なにおいもするけど。

「・・・・・・。」
シーン。という擬態語が似合いそうな空気が流れる。とても静かで、物音すら感じられない。
「おーい、如月ー。」
「・・・・・・。」
何も聞こえない。

「まあいいや、入ってくれ。」
そう言って後ろに居る美弥と葉月を家に上がらせる。
何処か顔が赤い二人であったが、どうしたのだろう。
妖は、耳も人間の数倍よく聞こえ、嗅覚もいい。だから如月がナニをしているのかがわかったのかも知れない。
・・・・・・まあ、俺も分かってはいる。多分アレだアレ。
「・・・・・・自慰ですね。」
言うな、葉月。
「ですね。」
肯定するな、美弥。
「ですよね、主様?」と二人。

「聞くなぁぁァァァァあああああああああああああああああああ!!」
何でそんな事平然と言えるんだ、この狐は。
バカなのか?バカなんだな?バカなんだよな?

「はぁッ・・・・・はぁッ・・・・・・・・・・・・。」

なんだか廊下を進むと、奥の部屋から熱を帯びた息の音が聞こえる。
アー、ナニモキコエナイヨー(現実逃避)

「如月さん、気持ちよさそうですねぇ・・・。」
葉月の息が少しずつ熱を帯びる。尾もくねんくねんと大きく艶めかしく動く。
「そりゃあ、近くにいる大好きな主様の気を感じてしまった背徳感と悦びで・・・・・・。」



「「キャーーーー。」」
何故か嬉しそうに悲鳴を発して居る二人。尻尾が自分の顔に凄い勢いでポフポフ当たる。毛がもっふもふなのでそんなに痛くはない。
ただ、尋常じゃないほどに甘ったるい妖気が気分を悪くさせる。俺は辛党だ。

どいつもこいつも、やはり妖である事に変わりはないようだった。


          §


「・・・・・・で、作戦なんだが。」
 俺は新しく自分の使役狐となった二人の紹介を終え、作戦の話を始めた。
この作戦は、如月の謀反を考えず、ただただ正面突破すると云う単純なものだ。ただ、内容は「屍ノ札」を使って相手を消耗させてから捕獲という「戦争」という殺し合いには似つかわしくないものだ。
 面白い事に、妖達には人を殺すという事に抵抗があるらしい。
 だからだろうか、受動式の最盛期(1200年前から1400年前)にはこの地方一帯を支配していたのに対し、妖が女体化して、人間を殺すことに抵抗を示す様になってから、最強だった受動式は衰退して、小国の術団に変わってしまったらしい。

「ここから遠隔操作でニ体の「屍」を飛ばしながら突撃する。担当は葉月と美弥。そして俺に如月が就け。」

「「「はい!!!」」」

「実行は明後日の子ノ刻から寅ノ刻までの間とし、葉月は『屍ノ札』の練習をするように。」

「「「はい!!!?」」」

「え、じゃあ、練習の後は勿論主様からの魔力の補給を・・・・・・?」
如月が挙手をして発言をする。ここは小学校か?
「ぶぅーぶぅー。」
美弥のブーイング。
俺は美弥の精神年齢は4歳と判断。まだ小学校にいていい歳ではない。
「え〜いいじゃないですか〜私は主様のために御奉仕も兼ねて練習もしたいですし〜〜。」

「いや、そんなことは断じて無い。あるはずがない。あったとしても全力で拒否する。否定する。妖だとしてもお前らは綺麗なんだから体を大切にすべきだっっ!!」
二秒もかからないうちに俺が叫んだ言葉がこれだ。多分これをマシンガントークという。

「ふふふ、優しいんですね、主様は。」

「でもそれが・・・・・・。」

「私達を惚れさせている・・・・・・」

「「「理由なんですけどね!」」」

三人の口撃。俺の言葉は裏をかかれ、撃沈した。

やはり数の利に勝るものはない。それは弁論でも戦争でも同じ。

一騎当千の猛者が居たって、全ての兵を屠り戦を終わらせる事は出来ない。

勿論、術者とただの兵隊も同じ。

最強と謳われた猛者は、必ずと言っていいほど沢山の兵が出した沢山の策略によって戦死している。






・・・・・・この事とは関係ないけれど、如月が色々な粘液やあせで濡れているのは愛嬌か何かなんだろう。


「それと、美弥は今夜俺の部屋に来るように。」

「「「ええっっ!!」」」

「一番初めに私がお仕えしましたのに・・・・・。」
と如月。
「主様!!こんな幼稚園児の様な脳味噌を保持した奴が好みなんですか!?」
と葉月。
「うふふふ、今夜は主様とあんなことやこんなことで眠れない夜を・・・・・・」
と美弥。明らかにテンションがおかしい。

「いや、おれはそんな事をするつもりは皆無だ。ただ、契約の話で、ちょっとね。」

俺は言葉を濁す。これはここで言うべきではない。これは、俺と美弥の問題だ。

             §
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
三人の内、誰かが生唾を飲むような音がした。多分、経験の浅い葉月だ。

「行くぞ・・・・・・。」

「3、2、1・・・・・・。」
「突撃ィィィイイイイ!!」
その号令とともに召喚した「屍」と呼ばれる式を召喚するための術式を書いて束ねた単語帳の様なものを取り出し、そこからニ、三匹召喚する。

 俺の書いたオリジナルの型であるから、少し操るのに手こずるかもしれないが、葉月は練習をしたし、美弥は教育官であったからであったからすぐに操れるだろう。


「グギャルヲギャアァアアアアアアアアアア!!」
屍の雄叫びが周囲の森に木霊して鳥たちが目覚める。
屍がまき散らすのは妖気ではなく怨念であるから、目覚めるのも無理はない。
ましてや、こんなに肥大した怨念の塊を召喚されたら本能の内、恐怖をつかさどるものが警報音と危険信号を内側から外に聞こえるほど発し、「外」を崩壊させるであろう。
 勿論、外とは自分自身の身体だ。
 精神を崩壊した後の自傷行為、すなわちリストカットの様なものだ。

「ひ、ひゃぁーー」
 一度もこの屍を見た事のない如月は腰を抜かす。耳が痙攣して、尻尾の毛が逆立ち、今にも泣きだしそうだ。

 「泣くなよ〜?如月。今から俺はコイツの強化型を12体呼びだすからさ。」

 「ええっ!?」


 ブチッと適当に札を引きちぎり、召喚する。

「グルァァアアアアア!!ギャグヴヴァルガアアア!!グアアアアア!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
如月は泣きだし、俺に抱きつく。距離的には屍に近くなった気がするが、彼女にとって「好きな人」である俺の隣にいる事はとても安心できるのだろう。





・・・・・・何か自意識過剰なことを言った気がするがそれは気のせいにしておこう。




12/07/28 21:12更新 / M1911A1
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■作者メッセージ
やっほ−
またこうしんしたよー。

この頃金がないから小説執筆が娯楽になってるよー。

次ではバトルがあるっぽいよー。

あははー

人が死んじゃうのは楽しいけどこの二次小説では魔物娘に殺させると規則違反なんだよねー。

まあ、最初っからカワイイあの娘たちに手を汚させるなんて事はさせないぜー。(笑)

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