読切小説
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川べりにて
 その船は河口近くの岩陰に停泊していた。
 どうやら望んだ停泊ではなかったらしい。そのことはすぐにわかる。なにせ船の甲板では、突然の侵入者を用心棒たちが取り囲んで大騒ぎが起こっているのだ。彼らと戦っているのは二人、体格のいい戦士と、女の魔法使い。
 そして船内、入り組んだ細い通路に、騒ぎを避けるようにしてさらに二人の侵入者が歩いている。

「レラフさんたち、大丈夫かな」

 二人のうちの一方が、気がかりそうに背後を振り返った。もう一方が歩きながら肩を竦める。

「リーダーと姐さんなら大丈夫だろ。それより心配しなきゃいけないのはこっちだぜ」
「主力のヤコが上だもんな」
「そうそう。ここの用心棒がまだ残ってると面倒だ」
「まあ通路が狭いから囲まれる心配はないと思うけど……」

 彼らは冒険者である。普段は主に遺跡潜りをしているが、依頼があれば今のように、同じ人間を相手にした依頼を引き受けることもある。今回彼らが請け負ったのは、この辺りを根城にする人買いのグループの情報を掴むことだった。
 彼らは首尾よく、敵が“商品”の輸送に使っている船を突き止めた。さて襲撃をかけるのはいいが、親玉に逃げられてしまっては意味がない(どうせグループのリーダーが自分から正面に出てきたりはしないだろう)。それに、場合によってはもっと悪い事態だって想定できた。そういうわけで彼らは、メンバーの二人が暴れて敵を引きつけ、その隙に残りの二人が親玉を押さえるという作戦を立てたのだった。

「っと、ジェイス」

 二人のうちの一方、レットが立ち止まり、剣を持った指で行く手を指し示す。呼ばれたジェイスが顔を向けた先、通路の半ばに一つの扉。位置関係からして、あれが目的の部屋だろう。二人は扉の前に張りついた。レットがそっとノブを捻るが、それは途中までしか回らなかった。鍵開けをしている暇はない。
 互いに目配せをひとつ。一呼吸おいて、彼らは扉を蹴り破った。

「……!」

 案の定、そこは人買いたちの親玉の部屋だった。狭い船室の中、部屋の主は奥のソファに悠々と腰掛けて彼らを待ち構えている。
 その右手に、一本のナイフ。
 刃先は傍らに立たせた子どもの首筋に当てられている。“もっと悪い事態”、──奴隷を人質に取られるケースだ。こうならないために、本当ならば奴隷たちの部屋を先に押さえたかった。だが、どうやら相手は彼らよりも判断が早かったらしい。レットが顔を険しくして親玉の男を睨む。

「その子を放せ」
「放しますよ。大切な商品だ、私だって傷つけたいわけじゃない」
「よく言うぜ。お前の顧客のことも調べたぞ。随分な……」

 言いかけたジェイスは、人質になっている子どもにちらりと目をやって言葉を切った。子どもが耳に入ってどう思うかを気遣ったのだ。そんなことは意に介さず、男は肩を竦めてみせる。

「私の仕事はお客様方にこの子たちをお売りするまでですよ。その先のことは関知しません」
「この……」
「ですがまあ、ここは諦めるとしましょうか。命あっての物種ですからね」

 さあ、通してもらえますか? 男の言葉に、ジェイスは舌打ちした。レットを振り返る。彼が頷きを返すと、二人は揃って入り口の前を開けた。
 男が満足そうに立ち上がる。

「ありがとうございます。……さあ、行こうか」

 そう言って、彼は首筋に刃を当てられたままの子どもを促した。背中を押された子どもがつんのめるようにして歩き出す。
 敢えて神経を逆撫でするような笑みを口元に浮かべたまま、男が二人の前を悠々と通り過ぎようとした、そのとき、

「おっ、と」

 わざとらしい声と共に、ジェイスが持っていた短剣を取り落とした。
 男の目が落下していく短剣の軌跡を追う。次の瞬間、生じた隙を逃さずレットが男のナイフの刃を掴んだ。同時にジェイスが人質をもぎ取るように男から引き離す。蹴り払われて転がったジェイスの短剣が動きを止めたときには、男は既にレットによって床に組み伏せられていた。
 ジェイスはレットを振り返った。男のナイフで切ったらしい手からは血が滴っているが、他には怪我はなさそうだ。そのことを確認してから、彼は抱き寄せていた子どもの方へ向き直った。小さな両肩に手を置いて支える。
 その顔を覗き込んで、ジェイスは言った。

「悪かったな、怖い思いさせて。……怪我ないか?」


    ◯


 夕暮れ時。ミッシェンの町へと続く街道を、四人の冒険者が歩いていた。
 ミッシェンから伸びる街道は二本ある。近隣の都市に繋がる東側の街道は、行商人や旅人たちの往来が盛んだ。そしてもう一方、北西へと伸びた街道の方はというと、こちらの一番の通行人はミッシェンを活動の拠点とする冒険者なのだった。川沿いに敷かれた街道の先には、大規模な古代遺跡群が存在するのである。この辺りの冒険者にはよく知られた存在だ。
 この彼らもその遺跡のひとつから帰還したところらしい。体格のいい戦士に女の魔法使い、短剣を腰に帯びた若者、そして最後の一人は短い黒髪の、まだ骨格も育ちきっていない子どもである。四人ともかなり疲れきった様子で、魔法使いのヤコなど足元も定まらず仲間に肩を貸されていた。彼女はあらぬ方向に視線を彷徨わせながら、ブツブツとうわごとを呟いている。

「レラフの精子……お腹いっぱい……」

 極めて卑猥なうわごとだった。
 ヤコは人間ではない。妖狐(ヨウコ)と呼ばれる魔物である。このことは、彼らパーティのメンバーを除けばごく親しい一部の者しか知らない。……ともかく、いくら彼女でも普段ならここまで欲望を口から撒き散らしたりしない(考えてはいるだろうが)。今日、彼女がぶっ壊れているのには理由がある。訪れていた遺跡の深部で、彼らは一匹の魔物と遭遇したのだ。
 種族はわからない。ただ、膨大な魔力と威圧感を持つ魔物だということは肌でわかった。襲われれば無事では済まなかっただろう。幸いそんなことにはならなかったが、どうやら魔力に敏感なヤコは“当たって”しまったらしい。

「帰ったら速攻ベッドイン、帰ったら朝まで……」
「姐さん耳、耳出てる」
「帰ったら[ピーーーーーー]」
「姐さんそれはやばい、それは流石にやばいって」
「……仕方ないな」

 歩く淫語拡散機と化しているヤコを、後ろにいるジェイスが頑張って取りなしている。その彼の手にも負えなくなってきたあたりで、彼女に肩を貸しているレラフがおもむろに口を開いた。

「ジェイス、ローズ、悪いが今晩はどこかで野宿してくれ。町に帰るのは明日にする」
「あー……」
「この状態のヤコを抱えて町の中を歩くわけにはいかないからな」
「……了解。ローズもそれでいいか?」
「僕はべつに」

 ジェイスが尋ねると、それまで黙っていたローズはぶっきらぼうに答えた。その顔が露骨に気まずそうなのは、この後レラフとヤコが二人でなにをするかわかっているからだろう。もちろんナニをするのである。
 手早く野営のための道具を分けて、それからレラフたちはジェイスとローズから離れていった。ヤコがずるずると引き摺られながら手を振っている。

「じゃあね〜楽しんでくるからね〜ジェイスたちも楽しんでね〜」
「……オレらだけでどう楽しめってんだ」

 ジェイスは苦笑とともに呟いた。気をとりなおして、ローズを見下ろして声をかける。

「さて、とりあえず、とっとと火を熾しちまうか」
「ん」

 ローズが頷く。二人は街道を外れ、少し離れた河原へと下りていった。野営をするなら水場は近い方がいい。あんまり近すぎても増水なんかの面倒が出てくるが。
 それから二時間ほど経ち、日が沈んで辺りが薄暗くなってくる頃には、二人は野営の準備を整えて夕食にかかっていた。本当ならば今夜には町の食事とベッドにありつけるはずだったのだが、残念ながら保存食の固いパンと皮の敷物で我慢だ。まあ、文句は言うまい。
 火にかかった鍋から自分の分のスープのおかわりをよそって、ジェイスはローズに向かって手を伸ばした。

「ほらローズ、皿貸せ」
「僕、もういい」
「またそういうこと言って。食わないと細っこいままだぞ」
「……」

 沈黙を挟んで、ローズは大人しく皿を差し出した。同じようにスープをよそってやる。「……ありがと」と皿を受け取って、湯気を立てるスープにふうふうと息を吹きかけるローズを、ジェイスは満足しながら眺めた。無理に食べさせようというつもりはないが、一日動いてきた後なのだからしっかり食べた方がいいのは間違いない。なにより、彼女はまだ育ち盛りなのだ。
 ローズと出会ってから二年と少し、ずいぶんと背も伸びたが、ジェイスから見れば彼女はまだ年端もいかない子どものままだ。しかもいつでも少年のような格好をしているものだから、同業者の中には彼女が女だと気づいていない者もいるだろう。
 せっかくなんだから可愛らしい格好をすればいいのに、と思わないでもない。だが、まあ嫌なら嫌で構わない。冒険者でいるのなら男のように見えた方が都合がいいこともある。それに──ローズがあえて男の格好にこだわるのは、もしかしたら自らの過去のことがあるからなのかもしれなかった。

「お前、ずいぶん大きくなったよな」
「なに、急に」
「いや……」

 昔のことを思い出して、という言葉をジェイスは引っ込めた。初めて会った頃の話を彼女は嫌がるのだ。
 ジェイスたちが最初に彼女に出会ったとき、ローズは奴隷の身だった。もちろん、この国でも奴隷の取り引きは違法だ。ジェイスたちは教団の依頼を受けて人買いのアジトに潜入し、そこで捕まっていた彼女と出会ったのだ。追い詰められた敵のリーダーに人質として連れ去られようとしていた彼女を救い出したのが、ジェイスと、同じ冒険者で一時的に協力していたレットだった。
 アジトに捕まっていたのは子どもから若い大人まで、その大半は女性だった。彼女たちは依頼を出した教団に保護され、その後は無事にそれぞれの暮らしを送っていると聞いている。だが、彼女──ローズだけはどういうつもりか、ジェイスたちと一緒に冒険者になりたいと言い出したのだ。彼らも一度は止めたが、彼女は強情だった。どうせ一度売られた身だから故郷に戻ったところで居場所なんてないのだと。
 それ以来、彼女はジェイスたちの仲間として活動している。元は長かった黒髪をばっさりと切って、ジェイスが教える冒険者のイロハを少しでも早く覚えようと頑張っている。今では立派にパーティの一員だ。その素っ気なさの割に他の冒険者連中からもそれなりにかわいがられて──

「ごちそうさま」

 焚き火の向こうから聞こえてきた声に、ジェイスは物思いから引き戻された。見れば、ローズが空になった皿を置いてこちらをじっと見つめている。ジェイスは頬を緩めた。

「片付けるか」
「うん」

 二人で川に降り、食器を洗う。大して時間もかからず、彼らは焚き火の側に戻ってきた。鍋のスープの残りは明日の朝食だ。
 レラフとヤコは飯を食ったんだろうか、とジェイスは思った。食ってないだろうな。あの状態のヤコがそんな暇を与えるとは思えない。この夜空の下、今ごろ二人で睦み合っているのだろう。

「いいなー……」

 食器を片づけながら、ジェイスの口から自然と言葉が溢れ出た。そんな彼を冷ややかな目で見て、ローズは素っ気なく言う。

「ジェイスだって町に戻ったら“そういうお店”に行くんでしょ」
「いやそういう話じゃ……いやまあ行くけど」
「行くんじゃん」

 突っ込む彼女の表情はまるで汚いものを見るようだ。粗野な冒険者らしくもなく、ローズは日頃からこの手の話から距離を置いていた。人買いに売られる以前は主神教に敬虔な家庭で育ったのだろう、とは、以前レラフが言っていたことだ。
 それはともかく、ジェイスにもジェイスなりの言い分がある。彼はなにも、セックスすることだけを羨ましがっているわけではない。いやまあ行くけど。

「そうだけど、そうじゃないだろ。自分を好きな人とするってのはさ」
「愛がなきゃ嫌だなんてピュアなことないんじゃなかったの」
「そりゃそうだけどさあ。リーダーと姐さんがあんだけラブラブなの見たら、オレだって羨ましくなるよ。レットにだっていつの間にか美人な彼女ができてるし……っと」

 言いかけて、彼は慌てて口をつぐんだ。失言だ。
 レットはジェイスたちと同じようにミッシェンを拠点としている冒険者である。彼は基本的に単独(ソロ)で活動しており、これまでも依頼によってはジェイスたちのパーティと組むこともあった。ジェイスとは特に馬の合う友人だ。そんな彼に「美人の彼女ができた」のはごく最近のことだった。ジェイスにしてみれば、もちろん友人の幸福は素直に喜ぶべきことだ。……それでもやっぱり、羨ましいものは羨ましい。
 だが、この話は彼女の前では禁句だった。禁句というか、ジェイスはなるべくローズの前でこの話題を出さないようにしていたのだった。そっと窺うと、彼女は案の定、普段から無愛想な顔をさらに不機嫌そうにしかめていた。

「何?」
「いや、その、悪い」
「何が?」

 ジェイスは言葉を濁した。ローズが睨んだ。
 彼女が冒険者になると言った理由。それはあのときジェイスと一緒に彼女を助けたレットにあるのではないかと、彼は常々思っていたのだ。レットはいいやつだ。誠実だし、信頼できる。たまにレットと話すことがあると、ローズは普段より嬉しそうにしている気がする。
 そんな彼にも今は恋人がいる。相手の娘とも彼女は仲が悪いわけではないようだが、それでも彼女からしてみれば面白くないだろう。ローズは顔をしかめると、膝を抱えていた腕を解いて立ち上がった。

「……僕、焚き木拾ってくるね」
「ん? 焚き木ならまだ……」

 呼び止めたジェイスの声を無視して、そのまま彼女は行ってしまった。後ろ頭をガシガシと掻きながらその背中を見送る。それから、ジェイスはぽつりと呟いた。

「……トイレかな」

 デリカシーの欠片もない男である。





 焚き火から離れて、ローズは夜の川べりを歩いていた。その足どりは荒い。辺りに人がいないものだから、機嫌の悪さを隠そうともしない。
 ジェイスが無神経なことなどわかっている。奴隷として扱われていたところを助け出され、彼らのパーティに加わる形で冒険者になって、それからもう二年以上だ。今更いちいち腹なんて立てていられない。……それでも、この話題だけは駄目だった。どうしてもムキになってしまう。焚き火の側を離れたのは、ジェイスに当たらないようにするための彼女なりの努力だった。

「はぁ……」

 星空を見上げて、ローズはため息をついた。こんな風にイライラしている自分が嫌になる。ジェイスだってなにも彼女を怒らせようと思って言っているわけではない。それどころか彼はいつだって自分のことを気にかけてくれている。そんなことくらいはローズにだってわかっている。それなのに自分は未だに──子どものままだ。
 ため息をもう一度。いつまでもこうしていても仕方がない。彼の元へ戻ろう、そう心に決めて踵を返しかけたローズは、

「……?」

 ふと視界に映ったものに、眉をひそめて立ち止まった。
 遠目に見て、それは宙に浮かぶ光の点に見えた。歩くよりもゆっくりと川べりを移動しながら、青白く瞬きを繰り返している。こんな夜でなければ、そしてあんな風に光っていなければ、蝶かなにかがふらふらと飛んでいるようにも見える。あるいは風に吹かれるシャボン玉か。
 普段ならローズは独りでそんな得体の知れないものに近寄っていったりしない。引き返してジェイスに報告するべきだ。……だが、どういうわけか今の彼女はそういう気になれなかった。それはもしかしたら、さっきのジェイスとのやりとりが尾を引いているからかもしれない。それを差し引いても、その光には不思議と惹かれるものがあった。
 もう少し近くまで行くと、それが小さな火のような形をしていることがわかった。蝋燭よりは少し大きく、だが熱は感じない。ゆらゆらと風に煽られるわけでもなく揺らめく炎に向かって、ローズは恐るおそる歩いていった。
 もう、手を伸ばせば触れられる距離だ。ここまでなにかあればすぐに反応できるように警戒しながら歩いてきた。だが今のところ、この炎がローズのことを認識している様子はない。彼女は注意深くそれを観察した。そっと指を伸ばして──

(……)

 いや、やはりやめておこう。
 一人だけで行動しない、というのが、遺跡を探索するときの鉄則だった。今も同じだ。自分になにかあってもここからでは助けを呼べない。戻ってジェイスにこのことを伝えて、それからどうするか決める方がいい。
 ローズは手を引っ込めた。
 そのとき、それまで動かなかった炎が突然ローズに向かってきた。

「え──」

 彼女が咄嗟に身動きできないでいるうちに、炎は、音もなく彼女の中に入ってきた。





 戻ってきたローズは、ちゃんと手に焚き木を抱えていた。
 細い枝の束を地面に置く。それから彼女はさっきまでいた場所に再び座るでもなく、焚き火を回ってジェイスの隣までやって来た。ジェイスがずれて場所を開けると、そのまますとんと腰を下ろす。

「ん、どうした?」
「別に」

 さっきまでとは様子の異なる彼女に、ジェイスは眉を上げて問いかけた。ローズの返事は相変わらず素っ気ない。だが機嫌はよさそうだ。ジェイスとしてもさっきの失言は気にしていたから、なにがあったか知らないが機嫌が治ったならそれに越したことはなかった。それに──なんといっても、ジェイスにとって彼女はまず可愛い後輩なのだ。懐かれるのは悪い気はしない。

「ねえ、ジェイス」
「なんだ?」
「さっきの話だけどさ」

 ローズはジェイスの肩に頭を預けた。視線は目の前の焚き火に向いたまま、そろそろ火は小さくなってきた。薪木を加えようとジェイスが腕を伸ばしたとき、

「僕が相手になったげようか?」
「……は?」
「だから、ジェイスのこと好きな人としたいんでしょ? 僕がしてあげてもいいよ」
「ああ……」

 彼女の口調はごく自然だった。ヤコはまだ起きてこないよ、壁に護衛依頼の張り紙が出てたよ、そういう言い方である。伸ばした手を引っ込めて、ジェイスは二、三秒ほど考え込んだ。
 それからばっと彼女の顔を見つめ直した。
 ローズもまた彼を見た。真意の読めない目だ。少なくとも、ジェイスにはそう見えた。

「お前、なに言って」
「なにびっくりしてるの。僕は数に入ってなかった?」
「そ、……りゃそうだろ」
「僕だって女だよ」

 ローズが唇を尖らせる。地面に置いた手に彼女の小さなそれがそっと重ねられて、ジェイスは思わず肩を揺らした。手はするすると腕を上って、その肩に添えられる。彼女はそのまま身を乗り出して、責めるような眼差しでジェイスを覗き込んだ。
 いつの間にか身動きが取れなくなっていることに、そのときジェイスは初めて気づいた。しなだれかかってくるローズを押し返すことができない。視線すら外せない。まるで高位の魔物に射竦められたように、彼女を跳ね除けることができなくなっている。ほとんど彼の膝に跨るようにしながら、ローズはジェイスの耳に口を近づけた。

「ジェイスが好きなおねえさんみたいな身体じゃないけど。おっぱい小さいし、美人じゃないし。……でも」

 肩に置いているのとは反対の手を自分の前に回し、彼女はジェイスの両脚の間、自分が跨っているそのすぐ下をさらりと撫でた。

「でも、コッチは自信あるよ。ジェイスも知ってるでしょ、僕がどういう場所にいたか」
「待て、ローズ、待て!」

 様子がおかしい。気づくのが遅すぎるかもしれないが、ジェイスはようやくそのことに気づいた。見ればローズは唇に、彼女らしくもない妖艶な微笑みを浮かべていた。迫る口調は情熱的だ。まるで──さっきのヤコみたいに。
 単なる連想に過ぎないが、彼はおおよそ正しい答えを直感した。魔物の魔力だ。取り憑かれているか操られているか、それはわからないが。もしジェイスに魔法の心得があれば、彼女の頭上に立ち上る魔力が見えていただろう。
 ジェイスには魔力は見えない。だが、彼女の言うこと──彼女がどういう場所にいたか、ということの方についてはよく知っていた。幼いローズが売られ、幼少期を過ごしたのは、性奴隷を専門に扱う売人の下なのだ。これまでジェイスたちもあまり突っ込んで尋ねたことはないものの、彼女もまた“そういった教育”を受けさせられていたことは察していた。
 火が落ちる。焚き火の明るさに慣れていた目が束の間、夜の闇に包まれる。その暗闇の中でも、彼女がまだ自分の方を見つめていることが、体の重みと息遣いだけでわかった。ローズが動く気配があって、唇に柔らかいものが押しつけられた。

「んむっ……」
「……っは、ん……」

 口はぴったりと塞がれて、やがて唇を割って小さな舌が侵入してきた。ジェイスは本能的に舌を絡めてそれに応えた。彼女の攻撃は、巧妙に彼の反撃を誘っているようだ。舌先が歯茎をなぞると背筋が粟立った。息が上がった。
 いつの間にか、ジェイスは自分から彼女を貪っていたことに、彼女の顔が離れてから気づいた。絡み合った唾液が糸を引く。だんだんと暗闇に目が慣れて、星明かりと熾火の僅かな光でも、その瞳が興奮に濡れているのが見て取れた。

「ローズ……」

 動けないでいる彼を見下ろしながら、ローズは上着を脱ぎ落とした。邪魔な荷物やベルトはキスをしている間にそこらに放り出されている。彼女は両手を背中に回して、片方の手を裾から、もう片方をうなじから服の中へと差し入れた。普段は過剰なほど肌を隠しているのに、今はちらりと服の隙間から肌色が覗いている。
 わずかに背を反らして束の間、やがて裾から引き出された手に、柔らかい布が握られている。さっきまで彼女の胸を押さえていた布だ。締めつけから解放されて、下から見上げる彼女の胸は明確に膨らんでいるのがわかった。今ではもう、どう見たって少年には見えない。女の子──頬を染めた、好色な、女の子だ。ローズは彼女の身体に回されていたジェイスの両手をそっと取ると、それをまとめてさっきの布であっという間に縛り上げてしまった。
 布はまだほのかに温かかった。

「おい、なんだこれ」
「念のため。逃げられたくないもん」

 あっさりと彼女は言う。ロープワークはジェイスが教えた技だった。
 ローズが腕を交差させて服の裾に手をかける。もう、ジェイスも止めることはしなかった。するすると服が捲られて、肉づきの薄い腰と腹が、そして彼女はそこで手を止めて挑発的にジェイスを見下ろした。その先を期待していた彼を見透かすように、目が三日月の形に笑う。手はすぐに動きを再開した。これから育っていくのだろう形のいい胸、そしてその先端につんと立った蕾が覗く。服を頭から抜いて、彼女は目を閉じたまま頭を振った。短い黒髪がパッと広がった。
 服を両手に絡ませたまま脇を下ろす。夜空の下、彼女は完全に裸になった上半身を晒していた。

「ずいぶん暖かくなったと思ってたけど。ハダカになったら、まだちょっとだけ寒いね」
「……お前は」
「ん?」
「お前は、……レットのことが好きなのかと……」

 なにがあったのかはわからない。だが、実は別人だったり何者かに操られているのだったりということはないようだ。普段とは明らかに様子が違うものの、ジェイスはそう判断した。言葉の端々、態度の各所からそのことは読み取れた。これはローズで、これが彼女の本音なのだ。
 あは、と彼女は笑った。悔しそうな、吐き捨てるような、笑いだった。

「知ってたよ、ジェイスがそう思ってるってことは。ジェイス、バカだもん」
「ば、馬鹿ってお前」
「それはレットさんのことは尊敬してるよ。いい人だと思う。あの場所から助け出してくれたこと、感謝もしてる。
 でも、助けてくれたのはジェイスも同じじゃん。あれから冒険者としての生き方を教えてくれたのは誰だった? ずっと側にいて助けてくれたのは誰? 好きにならないわけないのに」

 服を投げ捨て、ジェイスの胸元で両手を拳に握って、彼女は恨みがましく言い募る。ローズがずっと言えなかった本音がこれだった。彼らのパーティに加わって二年、なにも最初から好きだったわけではない。むしろ最初は軽薄で信頼できない人だと感じていた。今だってそうだ。ジェイスはバカだし、女好きだし、……だが、好きになってしまったら仕方ないじゃないか。ずっと後輩としてこんな自分の世話を焼いてくれる彼のことを見ていたら、感謝もするし、信頼もする。もっと一緒にいたいと思う。
 それなのに当のジェイスの方では、彼女はレットのことが好きだなんて勘違いをしている! は、と息を吐いて、ローズはかぶりを振った。その顔は元の揶揄うような笑みを取り戻している。

「でももういいんだ。わからせてあげるから。僕がどれだけジェイスのこと好きか」
「ローズっ……!」

 しなやかな猫のように腰を捻って、ローズは片手でジェイスのベルトを外した。そこがテントになっているのを見て、彼女は嬉しそうに口の端を緩める。ローズの細い指が下着を剥ぐと、醜い欲望に反り上がった彼の一物が姿を表した。

「よかった。僕じゃ勃たないかと思った」
「っ……お前、なあ……!」

 ジェイスはぐっと歯を食い縛った。今度は彼が恨み言を言う番だ。その中には仲間に対して興奮してしまっている疚しさも大いに含まれている。仲間で、しかも後輩なのに。だが仲間でも、後輩でも、今の彼女は一人の女だった。女にこんな風に求められて勃起しない男などいない。
 ローズの指が男根に絡みつく。玉袋から根元に置かれた手は、そのまま裏筋をゆっくりと亀頭まで撫で上げた。腰に震えが走る。ローズは手をゆるく筒にして、緩急をつけながら肉棒を擦っている。曖昧な刺激がもどかしく、ジェイスは無意識に脚を動かした。はっ、と溢れた息が熱いのがわかる。追い立てられるように生まれた射精感はあっという間に迫り上がってきた。

「っ、ローズ……」
「そろそろ、でしょ?」

 情けない、懇願のようになったジェイスの台詞に、ローズは見透かしたように笑いかけた。同時に二本の指が雁首にかかり、きゅっと締めつける。ぞわぞわと両脚の間を快感が這い回り、押し縮められてとうとう爆ぜて──そうなる直前、彼女はふっと手を離した。

「え……」
「っふふ、どうしたの、ジェイス?」
「お前、そんな」

 あとちょっと。あとちょっとだったのに。歯噛みする彼を見下ろして、ローズはにやにやと笑っている。

「だって、もったいないでしょ」

 そう言うや、彼女は自らのベルトに指を這わせた。するりとズボンから引き抜いて、他の荷物と同じように放り出す。前を外して、彼女はジェイスに跨ったまま器用にズボンから脚を抜いていった。まず左、次に右。交互に小さな膝が見えて、暗い中でも彼女が太腿の付け根まで剥き出しになったことがわかる。
 そして彼女は、下着も同じように脱ぎ始めた。ふっ、ふ、と興奮に浅く吐息が漏れている。おあずけを喰らわされているジェイスも同じようなものだ。彼は声を搾り出した。

「そういうのも、……小さい頃に覚えさせられたのか」
「そうだよ。僕、優秀だったんだから」
「くそ、ガキになんてことを……」
「安心してよ。実際“使う”のはジェイスが初めてだからさ……!」

 やがて完全に生まれたままの姿になったローズは、腰を浮かせた姿勢のまま、ジェイスの一物に片手を添えた。切先が濡れた肉に触れた。
 なにか言う暇もなく、熱い肉は先端からジェイスの分身を押し包んでいった。

「っあ、あ、ああ」
「ぅ、ぐ……」

 予想に違わず、彼女の中は狭かった。身体そのものがまだ小さいのだから当然だ。だが、無理やり開いていく苦しさはない。ジェイスを虐めている間に、どうやら彼女の方も既に下着の中で出来上がっていたらしい。肉壁は彼の陰茎の進みに合わせて形を変え、それだから圧迫感がそのまま圧倒的な快感に変わっている。
 一方で、ローズもまた直前までの余裕は吹き飛んでいるようだった。開きっぱなしになった口からはだらしなく嬌声が溢れ、膝はガクガクと揺れてもはや体重を支えていられない。ゆっくりと進むはずだった挿入は、ず、ずず、と彼女の震えによって勝手に進んでいく。その感触がまた彼女を責め立てて、中がうねるように収縮する。
 既に一度爆発直前まで追い詰められたジェイスには過酷すぎる刺激だった。

「あっあっあっ、ああああっ」
「ぐぅっ……」

 ローズが一際高い声で鳴く。我慢しようとする余裕もなく、挿入しただけでジェイスは絶頂した。
 こんなに長い射精をジェイスは初めて味わった。今もまだ、彼の息子は飽きる様子もなくドクドクとローズの子宮に向かって精を吐き出し続けている。それというのも、彼女の膣がまるで別の意思を持った生き物のように動いて搾り取ってくるからだ。ローズ本人はジェイスの体の上で正体を失ったようにびくびくと痙攣している。

「はっ、……は、は──……」

 絶頂が緩やかに引いていくと、彼女はくたっとジェイスの上に倒れ込んだ。
 服越しに柔らかい双丘を感じる。ジェイスとローズは二人して荒い呼吸を繰り返した。彼は頭上に伸ばしていた腕を下ろして、ローズの裸の肩を抱いた。ローズが気づいて頭を上げる。

「あれ、ジェイス、手」
「あのぐらい、時間かけりゃ解けるよ。いつまでも捕まってるわけないだろ?」
「む……」
「それに、あのままじゃ抱きしめられない」
「……」

 やっちまった、という後悔はある。いくら向こうから迫られたとはいえ、体の関係を作るには彼女の年齢では早すぎだ。仲間としては断って、ちゃんと諭してやるべきだったのかもしれない。有り体に言うと賢者タイムである。
 だが、あれが──さっきの訴えが彼女の本音なのだとしたら、それを聞くことができたのは素直によかったと思う。彼女はかわいい後輩で、その想いに応えられるなら自分だって嬉しい。なにより、自分を好きな人とするのはやっぱり格別だった。
 ジェイスは彼の胸に顔を埋めているローズの頭を撫でた。大人しく撫でられているかに見えたローズは、だが、彼が最後の台詞を言ったあたりで、唐突にその肩を震わせ始めた。

「……ふふ、ふふふふふふ」
「っ、おい」

 ジェイスは焦って声を上げた。繋がったままだった男根が急に、新しい快感を伝えてきたのだ。上半身はジェイスにしがみついたまま、ローズは秘部を引き抜くように腰を持ち上げていた。肩越しに、さっきとは逆に背中のラインと小さな尻が見えた。

「お前、まだ!」
「だってジェイスまだ硬いじゃん」
「そ、それは」

 そうなのだ。さっきあれだけ射精したのに、彼の息子はまだ元気なままだった。顔を赤くするジェイスに、ローズは彼の胸に手を置いて上体を支えながら「それに、」と続ける。

「言ったでしょ、僕がどれだけジェイスのこと好きかわからせてあげるって。こんなので足りるわけないよ」
「……」
「ジェイスだって、ね?」
「なんだよ?」
「挿れただけで出ちゃうなんて。挽回のチャンスが要るでしょ?」

 ジェイスはぽかんと口を開けた。言葉を失うジェイスに、意地悪く彼女は笑ってみせる。お前もすぐイったくせに、という言葉が浮かんだが、彼はその言葉を呑み込んだ。
 代わりに、彼はローズの動きに意識を集中した。時間が経って感覚に慣れてきたのか、彼女は今ではことさらに快感を煽るような仕草で上下の動きを繰り返している。まだ大きいとはとてもいえない胸が、それでも揺れているのが見えて眺めがいい。その動きに呼吸を合わせ──ジェイスは、思いきり腰を突き上げた。

「ひぅンっ!?」

 ローズが甲高く鳴いた。どうやらまた軽く絶頂したらしい彼女に、ジェイスは「あんま調子乗んなよ」とぼやく。なにせここまで主導権を握られっぱなしなのだ。
 はっ、はっ、と肩で息をしながら、彼女は背中を丸めて上目遣いにジェイスを見た。

「いっ?」

 今度は反対にジェイスがびくっとする番だった。彼の息子はまだローズの中で大きくなったままだ。それを包んでいる彼女の膣が、突然ぞわぞわと律動しはじめたのだ。慌てて顔を伺うと、まだ呼吸の整っていない彼女は目だけで笑っている。思いもよらない反撃だった。

「……」
「……」
「……上等だコラっ!」

 ジェイスは腕を伸ばしてローズの肩を掴んだ。そのまま勢いよく身体を起こし、彼女を敷物の上に転がすように押し倒す。
 その雑な扱いに興奮したようにローズは笑っている。


    ◯


「おっっはよぉ〜〜!!」

 昨日と同じ場所で再会したヤコは、やたらとツヤツヤした顔で二人に手を振った。

「おはよう……」
「……」

 対するジェイスとローズは二人ともげそっとしている。結局あの後は空が白みはじめるまで睦み合っていたのだから当然だ。二人とも終わりの方はわけがわからなくなって、最後にはどちらからともなく気絶するように眠ったのだった。完全にゆうべはお楽しみである。
 目を覚ましたローズは、すっかり普段通りの素っ気ない様子に戻っていた。きっと文字通り「憑き物が落ちた」のだろう。かといって昨夜の記憶までなくしたのかというとそんなことはないらしく、今朝の彼女はいつもより輪をかけてつんけんしていた。その真っ赤な耳が妙に愛おしく感じたのは、単純すぎるというものだろうか。
 ヤコの顔を見たローズは、すぐに彼女に詰め寄った。その腕を無言で引っ掴む。ヤコが戸惑った声を上げた。

「お? お? どしたどした?」
「いいから来て」
「いいけど、ちょちょちょ、おーい?」
「……どうしたんだ。なにかあったのか」

 そんな彼女たちを見送って、レラフが不審そうな顔をする。彼だってあのヤコと一晩を過ごしたはずなのに特に普段と変わる様子がないのが空恐ろしいところだ。ともかく、ジェイスは彼に向かって「まあ後で」と誤魔化した。後で落ち着いてから報告するにしても、今ここでなにがあったのかを伝えるのには妙な気恥ずかしさがあった。
 一方で、離れた場所にヤコを引っ張っていったローズは、残された男二人に背中を向けて怒ったように彼女に尋ねた。尋ねたというよりは決めつけるような口調だ。

「あれ、ヤコのでしょ」
「あれって?」
「だから、っその」

 ヤコはわかりやすく表情に「?」を浮かべた。誤魔化したわけではない。彼女からしてみれば、いったいローズがなにを怒っているのか本当に心当たりがないのである。訊き返されるとは思わず、ローズは口篭った。説明しようとすると昨夜のことを話さないといけない。言葉を探して、顔がだんだん熱くなるのを感じた。
 だが、ローズにはわかっていた。夕べ、あの炎が体の中に入ってきたとき。彼女は自分の内側の奥底から湧き上がるような欲望の他に、自分のものではないよく知った誰かの気配を感じたのだった。そう、あれは確かにヤコの気配だった。理屈はわからないが、あの人魂は彼女のものだ。
 ローズの予想は当たっている。強い魔物の魔力に当てられたヤコの肉体は、レラフと“発散”して前後不覚の中、持て余した自分の情欲の一部を魔力の塊という形で周囲にばら撒いた。もちろん、これは無意識のことで、本人に自覚はない。いくらローズに責められても心当たりがないのは仕方がないことだった。
 その代わり、ヤコはその結果起こったことについてはすぐに看破した。妖狐ヤコ、アホだが色恋に関しては専門分野である。

「じゃあローズ、やっとジェイスとくっついたんだ。よかったじゃ〜ん」
「違っ……くっ、つく羽目になったの! ヤコのあれのせいで!」
「またまたぁ。だってずっと好きだったじゃんね?」
「なッ……!」

 図星を指されてローズは絶句した。声もないまま口をぱくぱくと動かして、それからようやく言葉を搾り出す。
 
「なんでそッ、き、気づいて……」
「わかるよぉ〜、アタシはジェイスとかレラフみたいな朴念ちんじゃないんだから」
「……」
「まあまあそんな顔しないで。街に帰ったら詳しく聞かせてよ」
「やだよ!」
「そう怒んないでさ〜」

 話は決まったとばかりにヤコは残りの二人の方へ手を振った。さっきとは反対に、首を捻って文句を言うローズの背中を今度はヤコが押していく。賑やかな彼女たちの様子を、ジェイスが苦笑しながら、レラフは首を捻りつつ見守っている。
 いつもの通りの騒がしさで、四人はミッシェンへの残りの道を歩き始めた。
24/01/28 13:26更新 /

■作者メッセージ
「ほらほらローズ、飲んでないじゃ〜ん」
「僕はいいって。いつも言ってるでしょ」
「そうそう。やめとけよ」
「あれ〜? 珍しいじゃんジェイス。いつもなら一緒に飲ませたがるのにぃ」
「酔ってまたこないだみたいになったら困る」
「…………やっぱ貸して。僕も飲む」
「お、おい?」
「あっははは!」
「おい姐さん! ちょっ、リーダーもなにか言ってくれよ!」
「……俺は止めんが。無理はするなよ」

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